鉄骨工事 基本事項についての特集
鉄骨工事において、ミル(mill)とは、製鉄所のことで、鉄鉱石などから鋼をつくり、それを圧延(圧力をかけて延ばす)してH形鋼、角形鋼管などの鋼材製作するところです。
こそで発行される引張強度や成分が表示されている検査証明書(Inspection Certificate)のことをミルシートといいます。
ミルシートにて、設計図に記載されている鋼材の寸法、鋼材種、その成分などや、本工事のため政策された部材か、その流通経路に問題がないかなどを確認します。
同じ断面寸法で鋼材種(SS400やSM490Aなど)が違うものがある場合は特に注意する必要があります。
その鋼材を仕入れて加工し、柱、梁などの建築部材を製作するのが、鉄工所、ファブ(fabricator)です。
鋼材は重量が大きく、現場での取扱い上危険がともなったり、溶接部位の品質は安定した姿勢と状況でする方が望ましいので、なるべくファブの工場にて加工製作を行います。
鉄骨造の構造体は以下の手順で進みます。
【ファブにて】
工作図、現寸図→ 切断 → 溶接 → 塗装
↓
製品検査 適合
↓
出荷 運搬
↓
【現場にて】
現場入荷 <入荷時の検査>
↓
柱・梁の組み立て
↓
ボルト又は溶接による接合
↓
床(デッキプレートとコンクリートなど)
を載せる
といった行程です。
工作図は、設計図書から鉄骨部材を製作、工作するために起こす図面で、現寸図は工作図ではわかりにくいおさまりや代表的な部材などを実物と同じ寸法で描いた図面のことです。
これらは、製作者;鉄工所(ファブ)が起こします。
現寸図は、現寸場という広い黒板状の床にチョークで描いて、全体の寸法、細部のおさまりなどを設計監理者の立会いのもとチェックを行い、おさまりを決定します。最近では、工作図を作ること3Dモデルを作ることで省略するケースもあります。
それでは、まずはファブにおける加工について見ていきます
鋼材の加工
けがき;
けがき針、タガネ、ポンチなどで鋼材の切断位置、孔あけ位置などを鋼材上にとること。
タガネは六角形、丸形、長方形断面の鋼の先を尖らせて先端を刃にしたもので、鋼材を削ったり、はつったりする道具。石を削るタガネもある。
けがき寸法には、製作中の収縮、変形、仕上げ代(切断際の幅)など
考慮するする必要があります。
高張力鋼、軟鋼には、ポンチ、タガネなどによる打痕(だっこん)を残してはいけない。切断や孔あけにより残らないとこのみに行なう。大きな傷を付けると、強度に影響してしまいます。
鉄骨の切断
大型の鋼材は帯のこ盤(バンドソー)などで、小型の鋼材はメタルソー(高速カッター、丸のこ)などで、鋼板はせん断切断機(シャーリングマシン)などで切断する。
バンド(band)は帯、ソー(saw)はのこ、バンドソーは帯のこのことで、帯状ののこを一方向や左右方向に動かして切断する。メタルソーは金属用のこのことで、円形状の丸のこが回転して切断する。シャー(shear)とはせん断のことで、シャーリングマシンはせん断で鋼板を切断する機械のこと。
高速カッターは、メタルソーのうち小型で持ち歩きできるものを指すことが多い。ディスクグラインダーで手持ちで切断することもあり。
その他、レーザー切断機、プラズマ切断機、ガス切断機などもあり
ガス溶断は手持ちのガスバーナーの熱で焼き切る切断法で、切断面はきれいにならず、熱の影響も鉄骨内部に残る。エレクションピースの切断や、解体時の切断などに用いられる。
鋼材の孔あけ
原則としてドリルによる。
普通ボルト、アンカーボルトの孔で板厚が13mm以下の場合は、せん断孔あけをすることができる。高力ボルト用の孔は、必ずドリルあけとする。(JASS6による)
曲げ加工
鋼材を曲げる方法は、べンディングローラーの、複数のローラーの中を通すことにより、常温で行う。
ベンド(bend)とは曲げることで、ベンディングローラーは曲げるためのローラー。H形鋼、角形鋼管、円形鋼管、鋼板などを曲げることができる。
アングル(山形鋼、L形鋼)やフラットバー(平鋼)などを曲げる小型の機械はアングルベンダーと呼ばれている。
バーベンダーは鉄筋を曲げるもの。
常温加工での内側曲げ半径は柱材、梁材などの塑性変形能力を要求されている部材で、厚さの4倍以上、それ以外では厚さの2倍以上とJASSで規定されている。塑性変形能力とは、力と変形が比例しなくなった後(弾性限界を超えた後)でも、耐力が急激に減少せずに変形を続ける能力のこと。
加熱曲げ加工
赤熱(せきねつ)状態(850〜900℃)で行うこと。鋼材は加熱すると変形抵抗性が減少し、曲げやすくなる。しかし、青熱脆性域(せきねつぜいせいいき:200〜400℃)では、強度が増すとともに変形抵抗が増加し、硬くなって割れて壊れやすくなる。赤熱脆性域では曲げ加工はできない。
脆性とは、破壊するまでの変形が少ないこと。反意語は靱性(じんせい)で、粘り強く、弾性(力と変形とが比例し、力を除くと元の状態に戻る)限界をこえも、破壊するまでに大きく変形する。
ディスクグラインダー
円盤を高速で回して、やすりをかけたり切断したりする手持ちの機械。
ディスク(disk)は円盤、グラインド(grind)はこすって研ぐ(とぐ)、磨く、削る、グラインダーは研磨機、研削機という意味。
鋼材のまくれ、たれ、ひずみ、バリ、ミルスケール(黒皮、黒い酸化被膜)などは、ディスクグラインダーで削って取り除き、平滑にする。バリとは材料を切断した際に角にできるギザギザしたでっぱりのこと。
ミル(mill)は製鉄所、スケール(scale)は酸化物の薄い層のことで、ミルスケールは製鉄所の製鋼時についた黒さびの薄い層。
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