10節 工事現場施工
7.10.1 適用範囲
(a) ここでいう工事現場施工とは、鉄骨製作工場で加工・製作されたのち、工事現場に搬入された各部材の仕分け・建方及び部材相互の接合によって、鉄骨工事が完了するまでに要する作業並びにこれらに関する仮設工事を対象とする。
(b) 工事現場施工は、鉄骨製作工場での鉄骨製作と異なり受注者等が直接施工管理を行うものである。
(c) 工事現場においては受注者等は、必要に応じて受注者等の鉄骨工事担当技術者(以下、担当技術者という。)を別に定めて、担当業務とその責任を明確にするよう指導する。
担当技術者には、(一社)日本鋼構造協会の「建築鉄骨品質管理機構」が認定登録している「鉄骨工事管理責任者」(7.1.4 (c)参照)の有資格者等が参考となる。
(d) 計画に際し、担当技術者は、設計図書をはじめ工事現場状況や制約条件を調査・確認し、各種検査の計画を立案したうえで施工計画書を作成し、監督職員はこれを検討し品質計画について承諾をする。
(e) 担当技術者は、計画に基づいて、鉄骨工事の各工程で検査及び確認を行い、設計図書に示された品質を確保する。
(f) 受注者等が工事現場で行う検査の項目は、次のとおりである。
なお、監督職員は、受注者等が行った管理、検査の結果について報告を受けたのち、必要に応じて検査を実施する。
(1) アンカーボルトの埋込み
(位置・出の高さ、モルタル面の精度)
(2) 搬入された鉄骨製品の外観
(曲がり・傷の有無、塗装部の傷の有無等)
(3) 建方
(建入れ精度・接合部の精度)
(4) 高カボルト接合
(一次締め、マーキング、ピンテールの破断状態、
とも回り・軸回りの有無、締付け後のナット回転量、余長等)
(5) 工事現場溶接接合
(開先部の精度、溶接外観、表面欠陥、内部欠陥)
(6) デッキプレート工事
(焼抜き栓溶接、アークスポット溶接の外観、母材への影響)
(7) スタッド工事
(溶接外観、打撃曲げ試験結果、母材への影響)
(8) 他工事との関連溶接
(ビード外観、溶接位置・長さ)
(9) 工事現場塗装
(素地ごしらえ、塗膜厚、外観)
(10) 耐火被覆
(下地処理、厚さ、かさ比重)
7.10.2 建方精度
(a) 建方精度の確保は、接合部の耐力確保と並んで工事現場施工の品質管理のかなめである。本接合完了後の建方精度を確保するためには、アンカーボルトの据付け精度、工事現場接合部の精度確保が前提となる。
(b) アンカーボルトの据付け精度は、JASS 6付則6[鉄骨精度検査基準]付表5[工事現場]による( 7.13.1参照)。
(c) 高カボルト接合部の精度はJASS 6付則6付表2[高カボルト]により、工事現場溶接接合部の精度は、JASS 6付則6付表1[工作および組立て]による。
(d) 本接合完了後、建方精度の測定を行う。その精度はJASS 6付則6付表5[工事現場]による。
特に建物外周部の柱の倒れは外装仕上げ材の納まり、SRC造での鉄筋の納まり等に影響が出る場合があるので関連工事に反映させる。なお、建方精度の測定に当たっては、温度の影響を考慮する。
7.10.3 アンカーボルト等の設置
(a) アンカーボルト
(1) 適用範囲
アンカーボルトによって鉄骨骨組(鉄骨鉄筋コンクリート造の鉄骨も含む。)を鉄筋コンクリート造部分(RC造)に接合し、固定することを定着という。
一般には、鉄骨柱とRC造の基礎との接合部すなわち柱脚を指すことが多い。
ここでは定着の代表的な部位として柱脚を取り扱うが、図7.10.1に示すようなほかの定着部位についても準用できる。
図7.10.1 定着部位の例
(2) アンカーボルトの役割
柱脚の形式は、骨組の規模柱からの応力伝達の条件により多岐にわたるが、基本的には、(イ)露出形式、(ロ)根巻き形式、(ハ)埋込み形式 の3つに分けることができる。その例を図7.10.2に示す。
一方、アンカーボルトに要求される役割は、次の2種に分けられる。
@ 建方用アンカーボルト
躯体工事完了後は構造耐力を負担しないアンカーボルトで、主に建方の手段として用いる。
A 構造用アンカーボルト
躯体工事完了後も構造耐力を負担するアンカーボルトで、引張カ・せん断力及びこれらの組合せ力を負担する。
アンカーボルトの施工に当たっては、上の役割について留意する必要がある。
図7.10.2 柱脚の形式
(3) アンカーボルトの形状・寸法及び品質
(i) アンカーボルトの形状・寸法及び品質は7.2.4による。
(ii) アンカーボルトの形状の一例を図7.10.3に示す。
図7.10.3 アンカーボルトの形状の例
(4) 「鉄骨造の柱の脚部を基礎に緊結する構造方法の基準を定める件」を次に示す。
(平成12年5月31日 建設省告示第1456号、最終改正平成19年9月27日)
建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第66条の規定に基づき、鉄造の柱の脚部を基礎に緊結する構造方法の基準を次のように定める。
建築基準法施行令(以下「令」という。)第66条に規定する鉄骨造の柱の脚部は、次の各号のいずれかに定める構造方法により基礎に緊結しなければならない。ただし、第一号(ロ及びハを除く。)、第二号(ハを除く。)及び第三号の規定は、令第82条第一号から第三号までに規定する構造計算を行った場合においては、適用しない。
一、露出形式柱脚にあっては、次に適合するものであること。
イ.アンカーボルトが当該柱の中心に対して均等に配置されていること。
ロ.アンカーボルトには座金を用い、ナット部分の溶接、ナットの二重使用その他これらと同等以上の効力を有する戻り止めを施したものであること。
ハ.アンカーボルトの基礎に対する定着長さがアンカーボルトの径の20倍以上であり、かつ、その先端をかぎ状に折り曲げるか又は定着金物を設けたものであること。ただし、アンカーボルトの付着力を考慮してアンカーボルトの抜け出し及びコンクリートの破壊が生じないことが確かめられた場合においては、この限りでない。
二.柱の最下端の断面積に対するアンカーボルトの全断面積の割合が20%以上であること。
ホ.鉄骨柱のベースプレートの厚さをアンカーボルトの径の1.3倍以上としたものであること。
ヘ.アンカーボルト孔の径を当該アンカーボルトの径に5 mmを加えた数値以下の数値としかつ、縁端距離(当該アンカーボルトの中心軸からベースプレートの縁端部までの距離のうち最短のものをいう。以下同じ。)を次の表に掲げるアンカーボルトの径及びベースプレートの縁端部の種類に応じてそれぞれ次の表に定める数値以上の数値としたものであること。
二、根巻き形式柱脚にあっては次に適合するものであること。
イ.根巻き部分(鉄骨の柱の脚部において鉄筋コンクリートで覆われた部分をいう。以下同じ。)の高さは、柱幅(張り間方向及びけた行方向の柱の見付け輻のうち大きい方をいう。第三号イ及びハにおいて同じ。)の2.5倍以上であること。
ロ.根巻き部分の鉄筋コンクリートの主筋(以下「立上り主筋」という。)は4本以上とし、その頂部をかぎ状に折りげたものであること。この場合において、立上り主筋の定着長さは、定着位置と鉄筋の種類に応じて次の表に掲げる数値を鉄筋の径に乗じて得た数値以上の数値としなければならない。ただし、その付着力を考慮してこれと同等以上の定着効果を有することが確かめられた場合においては、この限りでない。
ハ.根巻き部分に令第77条第二号及び第三号に規定する帯筋を配置したものであること。ただし、令第3章第8節第1款の2に規定する保有水平耐力計算を行った場合においては、この限りでない。
三、埋込み形式柱脚にあっては次に適合するものであること。
イ.コンクリートヘの柱の埋込み部分の深さが柱幅の2倍以上であること。
口.側柱又は隅柱の柱脚にあっては、径9 mm以上のU字形の補強筋その他これに類するものにより補強されていること。
ハ.埋込み部分の鉄骨に対するコンクリートのかぶり厚さが鉄骨の柱幅以上であること。
鉄骨造の柱の脚部を基礎に緊結する構造方法の基準を定める件
(5) アンカーボルトの位置と高さ
(i) アンカーボルトの埋込み精度は、ボルトの平面的な位置とボルト頭部の突出し寸法が主なポイントである。また、柱建方時にアンカーボルトがベースプレートの孔に無理なく挿入でき、ナット締付け時のベースプレートとの密着度を高めるために、長さ方向の垂直度を正確に保つことも大切である。
(ii) ボルト頭部の出の高さは、二重ナット締めを行っても外にねじが3山以上出ることを標準とする。
(b) 構造用アンカーボルト及びアンカーフレーム
構造用アンカーボルト及びアンカーフレームの形状並びに寸法は、特記によることとしている。
(c) 建方用アンカーボルトの保持及び埋込み
(1) アンカーボルトの保持は、あらかじめアンカーボルトに振れ止め等を溶接し組み立てたものを、取付け場所に固定する。
組立に際しては、型板を用い正確に組み立てる。また、取付け場所に固定する場合にも、図7.10.4のように型板を用い通り心に正しく合わせる。
(2) アンカーボルトの保持及び埋込みの工法
(i) アンカーボルトの埋込み方法には、図7.10.4に示す方法があるが、上部の移動を止めるだけでなく、下部のコンクリートの流れによる移動も確実に止めなければならない。
(ii) 簡単なものではアンカーボルトの下部を基礎の鉄筋に鉄線で緊結する程度であるが、重要なものでは、下部のコンクリートに金物を埋め込んでおき、これに溶接する方法、鉄筋あるいは鉄骨を用いてフレームを作り、これを固定しておきアンカーボルトと緊結する方法がある。
「標仕」表7.10.1の工法を図示すると図7.10.4のようになる。このうち、A種は(イ)、B種は(ロ)、 C種は(ハ)である。
なお、「標仕」のC種はアンカーボルトの台直しを考慮した方法であるが、台直しは引張力の低下を招くなど構造的には好ましくないため、事前に設計担当者と打ち合わせておく。
台直しのために薄鉄板を用いた漏斗状のラッパを用いるが、ラッパはコンクリートの硬化後取り外すことになる。取り外したのちは、直ちに布等を詰め、ごみ等の入らないようにする。また、ラッパの外側のコンクリートは、厚さが薄くなると割れるおそれがあるので注意が必要である。この方法によるアンカーボルトの位置の修正は、一般に、ラッパの径の 1/4〜1/5 程度とされている。ラッパの代わりにポリスチレンフォーム保温材等を用いることがあるが、あとの処置がうまくいかないので注意する。
図7.10.4 アンカーボルトの埋込み方法
(iii) その他の方法
@ 箱抜き方法
アンカーボルト位置に塩化ビニルパイプ、紙パイプ、スパイラルチューブ等を埋め込み、 コンクリート硬化後にそのあなにアンカーボルトを挿入し、グラウト材を入れて固定する(図7.10.5参照)。この時ベースプレート下面の密着を兼ねてグラウトする方法もある。図7.10.4の(イ)〜(ハ)と比較して精度については、良好な結果が期待できる。ただし、塩化ビニルパイプ、紙パイプはグラウト前に取り除いておかなければならない。
埋込み型の柱脚の場合は、柱全体について箱抜きをする場合もある。
図7.10.5 箱抜き方法
A あと施工アンカー(接着系アンカー)
基礎コンクリートの打込み・硬化後に所定の位置にドリルであなをあけ、アンカーボルトをエポキシ樹脂等で固定する。使用できるボルト軸径と長さ、許容引張力、基礎鉄筋との関係について確認しておくことが必要である。これと似た方法として、エポキシ樹脂の代わりにグラウト材を使うこともできるが、この場合はあな径がやや太くなる。
B アンカーボルトを2つに分ける方法(特許工法)
図7.10.6 のようにコンクリートに埋め込まれる部分と、あとから溶接する部分の2つに分ける方法で、コンクリート打込み・硬化後、ボルトを溶接する。引張り耐力を期待することも可能ではあるが、その場合、ロッドとボルトの心ずれ・プレート板厚により許容耐力が決められているので注意が必要である。
図7.10.6 アンカーボルト溶接方法
(d) 養生
アンカーボルトは、コンクリートに埋め込む前に、ねじ部に打ち傷や錆がないことを、埋め込まれる部分には油類がついていないことを確認する。
また、露出部は埋め込まれてから建方までの間に、錆の発生、ねじ山の損傷、コンクリートの付着等が生じないように、布、ビニルテープ等で養生しておく。
(e) 柱底均しモルタル
(1) ベースプレートは、この下面に施工される柱底均しモルタルにより支持される。
ベースプレートが小さい場合は、全面モルタル塗りを行い仕上げるが、ベースプレートが大きい場合は、モルタルとの密着性に問題が出ることがあるため、あと詰め中心塗り工法が普通である。中心塗りモルタルは大きさ 200〜300mmの角形あるいは円形とする。塗厚は特記されるが、「標仕」表7.10.2の A種の場合は50mm、B種の場合は30mmが一般的である。
(2) モルタル途りに当たっては、コンクリート面のレイタンス等を取り除き、モルタルとコンクリートが一体となるように施工する。
(3) モルタルの調合は「標仕」7.2.9による。充填する場合は、空隙の生じないよう入念に詰める。しかし、このモルタル充填は面倒な作業であるうえに、充填が不完全であると構造上問題となるため慎重な施工が必要である。構造上重要でベースプレートが大きい場合は、充填が困難なので、流動性の良い無収縮モルタルを用いるのがよい。
(4) 柱底均しモルタルの一般的な工法の例を図7.10.7に示す。「標仕」表7.10.2の工法のA種は(イ)、B種は(イ)又は(ハ)である。このほか(イ)の一種である(ロ)全面あと詰め工法がある。「標仕」では特記がなければA種としている。
なお、「標仕」ではグラウトに使用するモルタルは、A種の場合は無収縮モルタルとし、B種の場合は硬練りモルタルでもよいこととしている。また、無収縮モルタルを使用する場合の工法は、特許等の関係もあり、製造所の仕様によることとしている。
図7.10.7 ベースプレートの支持方法
(f) ナットの締付け
(1) ナットの締付けは、建入直し完了後、アンカーボルトの張力が均ーになるようレンチ等で緩みのないように行う。
(2) ナットは、 コンクリートに埋め込まれる場合を除き二重ナットを用いて戻止めを行う。
(3) アンカーボルトの締付け力及び締付け方法はナット回転法で行い、ナットの密着を確認したのち 30゜回転させる。
(g) 柱脚部鉄筋の処理
柱脚部分が鉄骨鉄筋コンクリート造の場合は、建方の際柱脚の周囲にある鉄筋が障害になることが多いが、この鉄筋をなるべく傷めないように取り扱うことが必要である。曲げた鉄筋は再び元の位置に戻すので、なるべく緩やかに曲げるのがよい。鉄筋を曲げたり、元の位置に戻したりする場合、850〜900℃に加熱して曲げるのが望ましい。温度管理をせずに適当に加熱すると、低温域で曲げることになり、鉄筋がもろくなり折れることもあるので行ってはならない。
なお、鉄筋を曲げる場合の角度は30°以下が望ましい(図7.10.8参照)。
ベースプレートと鉄筋が当たる場合は、この角度が守れなくなるので、そのようなことにならないよう、鉄骨工事着手前に検討する必要がある。
図7.10.8 柱脚鉄筋の納まり
7.10.4 搬入及び建方準備
(a) 建方計画
(1) 建方は、効率の良い建方順序を選定するとともに、建方途中の構造の不安定な状態での事故のないように、十分な検討をする。また、建方用機械の取扱いに無理がないようにし、作業員の安全、周辺に対する安全等災害予防に十分な処置が必要である。
(2) 建方計画書の記載事項は、おおむね次のとおりである。
@ 工程表
(準備開始時期、各節ごとの組立及び接合時期、完了時期)
A 施工管理体制
B 組立順序(図面に表すのがよい)
C 吊り足場等の仮設材や二次部材等で地組みするものの有無(図示する)
D 吊上げの方法
E 主な部材の質量表(部材の質量は平面図に記入するのが分かりやすい)
F 建方用機械の種類、性能(吊上げ能力、作業範囲、設置位置及び保安上の注意事項)
G 建方途中の建入れ測定方法及びその修正方法
H 建方完了時の建入れ測定方法及びその修正方法
I 部材集積場所及び集積方法
J 建入れ検査の合否の基準
K 建方中の強風に対する補強の方法及び仮ボルトの本数等
L 接合作業の手順及び検査方法
M 安全管理及び養生の方法
(3) 建方時の強風等に対する補強には、次のようなものがある。
(i) 鉄骨鉄筋コンクリート造の鉄骨には、コンクリートが打ち込まれるまでは、十分な耐力を発揮できないものがある。特にこのようなものは設計担当者と打ち合わせ、必要な補強をする。
(ii) 鉄骨に重量物を載せたり、土圧をかけたり、通常の構造設計で考えていない大きな荷重を負担させる場合には、計算書を提出させ、設計担当者と打ち合わせて安全を確認する必要がある。
(4) 鉄骨の建方では特記により技能士(とび)が適用される。(「標仕」1.5.2)
(b) 建方機械
建方機械の機種と台数は、最大荷重、作業半径、作業能率等により決定する。この際、建方機械及び建方機械を設置する構造体、架台、路盤、構台等が、自重、風圧力、地震力、クレーン運転時の衝撃力等に対して安全であることを確認する。
(c) 搬入・仕分け
(1) 製品の受入れ
受注者等の製品の受入れに際しては、鉄骨製作工場の送り状と照合し、製品の数量及び変形・損傷の有無等を確認させる。
(2) 製品の取扱い
製品の取扱いに当たっては、部材を適切な受台の上に置き、変形・損傷を防ぐ。部材に変形・損傷が生じた場合は建方前に修正させる。
7.10.5 建方
(a) 地組み
地組みを行うときは、適切な架台・治具等を使用し、地組み部材の寸法精度を確保する。
(b) 建方用設備・器具
建方に使用するワイヤロープ、シャックル、吊金物等は、許容荷重範囲内で正しく使用する。また、定期的に点検し、損傷のあるものは使用しない。
(c) 建入れ直し
(1) 建入れ直しのために加力するときは、加力部分を養生し、部材の損傷を防ぐ。
(2) ワイヤロープの取付け用ビースはあらかじめ鉄骨本体に取り付けられた強固なものとする。
(3) ターンバックル付き筋かいを有する構造物においては、その筋かいを用いて建入れ直しを行ってはならない。
(4) 建入れ直しは、本接合終了後の精度を満足できるように考慮して行う。
(5) 架構の倒壊防止用ワイヤロープを使用する場合、このワイヤロープを建入れ直しに兼用してもよい。
(6) 筋かい補強作業は必ず建方当日に行うこととし、翌日に持ち越してはならない。
(d) 仮ボルトの締付け
建方作業における部材の組立に使用し、本締め又は溶接までの間、予想される外力に対して架構の変形及び倒壊を防ぐためのボルトを仮ボルトと呼ぶ。仮ボルトは普通ボルト等を用い、ボルト1群に対して、高カボルト継手では1/3以上、2本以上、混用接合及び併用継手では1/2以上、かつ、2本以上をバランスよく配置し、締め付ける。仮ボルトのボルト1群を図7.10.9に示す。図7.4.8に示す高カボルトの1 群とは異なる。これを適用しないときは、風荷重、地震荷重及び積雪に対して接合部の安全性の検討を行い、適切な措置を施す。また、溶接継手におけるエレクションピース等に使用する仮ボルトは高力ボルトを使用して全数締め付ける(図7.10.10 参照)。
図7.10.9 仮ボルトにおける1群の考え方
図7.10.10 エレクションピースの仮ボルト
(e)建方補助部材等の工夫
建方の際に、作業を円滑に進めるために補助部材を取り付けることがよく行われる。しかし、これら取り付けられた補助部材により超音波探傷検査が不可能になったり、これらの取付けのために本来望ましくない溶接が行われるケースもある。例えば、前者の例としては、工事現場溶接する大梁を設置する際に使用する「梁受」がある。また後者の例としては、大梁フランジと柱を溶接する際の裏当て金取付けのための開先内の母材断面内での組立溶接がこれに当たる。
しかしこれらは、工事現場での工夫により回避することもできる。「梁受」を回避する工夫の例としては、図7.10.11のような梁受け治具の使用等が挙げられる。また、開先内での溶接を回避する例としては、図7.10.12のような裏当て金取付け治具の使用が挙げられる
従来より慣用的に行われている方法についても、品質管理上の問題点に意識をもち、問題点を回避する工夫を行うことが工事現場施工では重要である。
図7.10.11 梁受け治具
図7.10.12 裏当て金取付け治具
7.10.6 工事現場施工検査
(a) 施工者は、本接合に先立ち、ひずみを修正し、建入れ検査を行い。施工管理記録を作成する。また、必要な場合は、監督職員が検査を行う。
(b) 建入れ直しは建方時の誤差、すなわち柱の倒れ・出入り等を修正し、建方精度を確保するために行うものであるが、建方がすべて完了してから行ったのでは十分に修正できない場合が多い。したがって建方の進行とともに、できるだけ小区画に区切って建入れ直しと建入れ検査を行うことが望ましい。
(c) 日照による温度の影響を避けるために早朝一定時間に計測するなどの考慮を払わなければならない。また、長期間にわたって鉄骨工事が続く場合は、気候も変わるので測定器の温度補正を行わなければならない。
7.10.7 工事現場接合
(a) 高カボルト
高カボルト接合は、4節による。
(b) 工事現場溶接
工事現場溶接は、6節によるほか、次による。
(i) 溶接方法
工事現場溶接には、一般に、被覆アーク溶接、ガスシールドアーク溶接、セルフシールドアーク溶接及びスタッド溶接が用られる。
(ii) 溶接技能資格者
工事現場溶接に従事する溶接技能資格者は、7.6.3によるほか、工事現場溶接に関し十分な知識と技量を有する者とする。
(iii) 溶接機器及び溶接材料
溶接機器は工事現場溶接に適したもので、溶接技能資格者に対して取扱いを習熟させておかなければならない。
(iv) 溶接施工
@ 施工順序は、溶接ひずみの建方精度への影響を考慮して決定する(図 7.10.13参照)。
図 7.10.13 平面的にみた溶接順序
A 施工時の天候については7.6.8による。
(v) 検査及び補修
工事現場溶接における検査及び補修は、特記のない場合7.6.10〜12による。
(c) 混用接合
ウェブを高カボルト接合、フランジを工事現場溶接接合とするなどの混用接合は、原則として、高カボルトを先に締め付け、その後溶接を行う。
(d) 併用継手
高カボルトと溶接との併用継手は、原則として高力ボルトを先に締め付け、その後溶接を行う。
(e) その他
増築・改築・修繕あるいは模様替え等において、既存建築物の鉄骨に溶接する場合は、あらかじめ周囲の状況を調査し、特に既存鉄骨について、その溶接性を確かめる。
7.10.8 その他の工事現場施工検査
(a) デッキプレートの種類と形状寸法については、7.2.7による。デッキプレートの敷設に伴う施工上の留意事項と検査項目は、7.7.8による。
(b) 頭付きスタッドの溶接施工の留意事項と検査項目は7節による。
(c) 仮設、鉄筋、カーテンウォール、電気・機械設備等のため、金物、その他を鉄骨部材にあと付け溶接する場合は、母材にアンダーカット、ショートビード等の悪影響を与えるような溶接を行ってはならない。
鉄骨に溶接を行う場合は、鋼材の種類・溶接方法等について7.6.9によればよい。
(d) 工事現場接合部分及び工場塗装の損傷した部分を塗装する場合は、8節により、工場塗装に対応した仕様で検査完了後に行う。
(e) 耐火被覆の施工上の留意事項と検査項目は、9節による。
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