2節 路 床
22.2.1 一般事項
(1) この節は、路床と現地の土質条件、気象条件及び舗装構造によって必要となる凍上抑制層、フィルター層を対象としている。
(2) 路床は、アスファルト混合物層又はセメントコンクリート版及び路盤を通じて分散された交通荷直を最終的に支える部分である。
(3) 路床は、通常は現地盤の土をそのまま利用するが、地盤が軟弱な場合には、路床の改良が必要となる。改良工法としては、置換え工法と安定処理工法がある。
(4) 路床土は、地域によって粘土から礫質土に至るまで多くの種類のものがあるが、通常の土の分類に応じた設計CBRとの関係を、表22.2.1に示す。
表22.2.1 路床土の性質による設計CBRの設定
22.2.2 路床の構成及び仕上り
(1) 路床は、路床土及びその上に設ける凍上抑制層又はフィルター層から構成され、各層の役割は次のとおりである。
(ア) 凍上とは、路床や路盤内の水分が凍結して体積が膨張し、舗装を持ち上げることで舗装が破損する現象をいう。寒冷地域や凍結融解を受けるおそれのある地域では、凍結深さから求めた必要な置換え深さと舗装厚さを比較して、置換え厚さが大きい場合、路盤の下にその厚さの差だけ凍上の生じにくい材料の凍上抑制層を設ける。特に、建物等により一日中日陰となる箇所においては凍上について十分留意する必要がある。
(イ) フィルター層は、透水性舗装の施工で設けられる層であり、透水性の表層及び路盤を通過した雨水を円滑に路床に浸透させるとともに、軟弱な路床土や地下水が浸入し路床が軟弱化して舗装が破壊することを防ぐために設ける層である。
(ウ) 路床の設計CBRが3未満の軟弱な場合には、安定処理工法の適用を検討する。安定処理工法に用いる添加材料(安定材)には、セメントや石灰等がある。
(2) 路床の仕上り面と設計高さとの差が、+20mm、-30mm以内であることを確認する。
(3) 路床の締固め完了後に現場密度を測定し、室内試験で求めた最大乾燥密度の90%以上の締固め度が得られていることを確認する。
22.2.3 材 料
(1) 盛土用材料の種別は、特記による。特記がなければ、「標仕」表3.2.1による。
(2) 凍上抑制層に用いる材料
疎上抑制層に用いる材料は、凍上を起こしにくく、入手しやすい材料を使用することが望ましい。
材料別の判定基準の例は次のとおりである。
(a) 砂:75μmふるい通過量が6%以下
(b) 火山灰、火山礫:粗粒で風化の兆候がなく、排水性が良好で75μmふるい通過量が20%以下で強熱減量が4%以下
(c) 切込砂利:4.75mmふるい通過分のうち、75μmふるい通過量が9%以下
(3) フィルター層用材料
(ア) 材料は、路床の粘性士が侵入しにくく、高含水比になっても軟弱化することなく、適度の透水性を有するものが望ましい。
(イ) 透水性舗装のフィルター層は、川砂、海砂、良質な山砂等で75μmふるい通過量が6%以下のものとする。
(4) 路床安定処理用材料(安定材)
(ア) 路床の安定処理を目的として添加する安定材として、「標仕」表22.2.1にセメント及び石灰が示されている。このほか、有機質土等の特殊な土の安定処理を目的とした、セメント系安定材や石灰系安定材が市販されているので、セメントや石灰では安定処理の効果が十分に得られない場合には、これらの採用を検討するとよい。
(イ) 一般的に、砂質土に対してはセメント系の安定材がよく、シルト質土及び粘性土には石灰系の安定材が効果的である。
(ウ) 安定材の混合時の粉じん発生を抑制するため、防じん処理を施した安定材も市販されている。
(エ) セメント及びセメント系固化材を地盤改良に使用する場合には、条件によっては六価クロムが土壌環境基準を超える濃度で溶出するおそれがあるため、国土交通省では、平成12年3月24日付で「セメント及びセメント系固化材の地盤改良への使用及び改良土の再利用に関する当面の措置について」が発出され、所管の建設工事の施工に当たっては六価クロム溶出試験を実施して六価クロムの溶出量が土壌環境基準以下であることを確認するとされている。
22.2.4 施 工
(1) 置換え工法とは、軟弱な路床土を撤去し、砂や砕石等の支持力の大きい材料で置き換える工法をいう。
(2) 路床土が部分的に悪い場合、「標仕」22.2.4(1)では、その部分を取り除き周囲の良質土で埋め戻すことになっているが、適切な土がない場合は、「標仕」1.1.8の協議により良質な砂、山砂、砕石、切込砂利等で置き換えることを検討する。
(3) 粘性土や高含水比の土では、こね返しや過転圧により強度が極度に低下する場合があるため、強度の低下が予想される場合は、できるだけ路床を乱さないように、十分注意をして施工しなければならない。
(4) 路床土が、降雨等により著しく水を含み締固め作業が困難な場合には、適切な排水溝を施工すると同時に晴天を待って乾燥させ、十分な締固めを行う。
(5) 安定処理工法は、路床土にセメントや石灰等の安定材を混合して、固化させることにより、軟弱な路床土の支持力を向上させる工法である。添加量は路床土の乾燥質量に対し、一般的にセメント・石灰とも2〜10%である。安定処理層のCBRは、安定処理層を含めた深さ約1mの路床の合成CBRが設計CBRを満足するように設定する。
路床安定処理に際しての留意事項は次のとおりである。
(ア) 路床の安定処理用の混合機械としては、混合専用のスタビライザやバックホウが用いられる。均ーな混合性を確保するためにスタビライザの使用が望ましいが、スタビライザの入手が困難な場合及び施工が小規模な場合には、バックホウを使用する。
(イ) スタビライザは、構造物の近傍では使用できないので、そのような場合にはバックホウを併用する。
(ウ) 安定処理の施工に当たっては、室内配合試験で決定された安定材の量に対し、施工のばらつきを考慮して割増しを行う。スタビライザを用いた施工では割増し率を20%程度とするが、バックホウの場合は、必要な支持力を確保するためには割増し率を50%程度とする。
なお、バックホウのバケット内に特別な混合装置を付けた改良型バックホウが実用化されているが、これを用いるとスタビライザと同等な混合性を確保できる。
(エ) 添加材の散布時及び混合時に粉じんが発生する場合があるので、周辺への影響が懸念される場合には、防じん型の安定材を使用する。
(6) 路床の仕上り高さは、水準測量によるか、丁張りに水糸を張りそこからの高さ(下がり)を測定して管理する。
(7) 構造物周辺等の埋戻し部では、舗装完成後に段差やくぼみ等の異常が生じないよう、また、給排水管等に損傷を与えないように入念な施工を行わなければならない。埋戻しは、良質な材料を用いて十分締め固めることを原則とするが、現状土にセメントあるいは石灰を混合したものを用いると効果的な場合がある。
(8) 路床の部分的な締固め不足あるいは不良箇所を確かめるためには、プルーフローリングを行うとよい。プルーフローリングとは、施工に用いた締固め機械と同等以上の締固め効果をもつタイヤローラ、鉄輪ローラあるいはトラックを路床仕上り面上を走行させ、変位の度合いによって支持力の均一性を調査することである。
異常を発見した場合には、速やかに再締固めや置換、安定処理等の処置をとらなければならない。
(9) 凍上抑制層の敷均しは、モーターグレーダ、プルドーザ又は人力で行い、路床を不必要に乱さないように注意して、1層の仕上り厚さ200mmを超えないように均一に行う。敷均し後、適切な転圧機で十分に転圧する。
(10) 締固め機械の種類、重量及び締固め回数は、路床の性質及び含水益を考慮して定めなければならない。締固め機械の例を図22.2.1に示す。
図22.2.1 締固め機械の例
22.2.5 試 験
「標仕」には、路床に関する試験として、路床土の支持力を評価するCBR試験と、締固めの密度を管理するための砂置換法による土の密度試験方法が示されている。 CBR試験は、現場の路床土や盛士に用いる材料が対象であり、施工に先立ち室内で実施する。密度試験は、仕上り路面の締固め状態の良否を確認するために締固め作業完了後に現場で実施する。具体的な試験手順は、それぞれJIS A 1211(CBR試験方法)及びJIS A 1214(砂置換法による土の密度試験方法)又は(公社)日本道路協会「舗装 調査・試験法便覧」を参照する。
現場CBR試験は、JIS A 1222(現場CBR試験)を参照する。