02節 長尺金属板葺
13.2.1 適用範囲
(a) この節は、折板葺を除く長尺金属板による横葺、瓦棒葺、立平葺、ー文字葺等の屋根葺形式を対象としている。
なお、瓦棒葺は心木なしの場合を対象としている。
(b) 作業の流れを図13.2.1に示す。
図13.2.1 長尺金属板葺の作業の流れ
(c) 施工計画書の記載事項は、おおむね次のとおりである。
なお、赤文字を考慮しながら品質計画を検討する。
屋根葺形式ごとの具体的な品質管理項目は、表13.2.5を参照されたい。
@ 専門工事業者名及び施工管理組織
A 工程表(着工及び完了の時期)
B 下葺(材料及び工法)
C 鋼板類(種類、厚さ)
D 谷、棟、軒先、けらば等の納まり
E 折曲げ及び小はぜ掛け
F 壁との取合い等の工法
G 付属材料
H その他専門業者の工法の仕様
I 風圧力及び積雪荷重に対応した工法、作業のフロー、管理の項目・水準・方法、品質管理体制・管理責任者、品質記録文書の書式とその管理方法等
(d) 金属屋根工事の計画立案から施工管理まで担当する専門技術者の一例として、(-社)日本金属屋根協会では、昭和61年度より「金属屋根工事技士」の育成・教育を行っている。
13.2.2 材 料
(a) 平成25年版「標仕」では、屋根葺材に使用する長尺金属板の種類、塗膜の耐久性の種類、めっき付着量、厚さ等は、耐久性や耐風圧性を考慮して、設計者がすべて特記することとされた。
長尺金属板葺の場合は、一般的に、従来「標仕」で標準とされていた JIS G 3322(塗装溶融 55%アルミニウムー亜鉛合金めっき鋼板及び鋼帯)による CGLCCR-20-AZ150が使用されることが多い。
なお、長尺金属板の表示記号の意味を図13.2.2に示す。
図13.2.2 長尺金属板の表示記号
(b) 屋根葺材の厚さ
上記のように、屋根葺材の厚さは構造計算等の結果を踏まえて特記されるが、めっき鋼板及び塗装鋼板では、耐久性を考慮して、最低寸法を0.4mmとする。ただし、ポリ塩化ビニル被覆金属板及び耐酸被覆鋼板においては、金属板原板の厚さが示される。
(c) 表13.2.1に金属屋根材料の概要、表13.2.2に金属屋根材料と屋根葺形式の関係を示す。
表13.2.1 金属屋根材料の概要(その1)
表13.2.1 金属屋根材料の概要(その2)
表13.2.2 金属屋根材料と屋根葺形式の関係
(d) 金属屋根材料とその特徴等を次に示す。
(1) 長尺めっき鋼板
(i) 溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯(JIS G 3302)
@ 材質、用途により16種類に分けられる。屋根用には種類の記号の末尾に Rが付けられている(例:SGCCR)。現在では無塗装のまま使用されることは少ない。
A めっきの種類は非合金化めっき(亜鉛めっき)と合金(亜鉛と鉄の合金層)に分けられ、めっきの最小付着量(g/m2)は両面の合計で 60〜600g/m2である。屋根用には非合金化 Z25、Z27が使用されることが多い。耐食性は亜鉛の付着量に比例する。
B酸、アルカリ溶液及びガスに侵されやすいので、使用環境に注意する。
(ii) 塗装溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯(JIS G 3312)
@ 溶融亜鉛めっき鋼板の表面をりん酸化成処理をし、熱硬化性合成樹脂塗料を両面又は片面(裏面はサービスコート)に焼付け塗装したもので一般にカラー亜鉛鉄板等と呼ばれている。
A 原板は溶融亜鉛めっき鋼板の冷延原板を使用しており、材質は8種類に分類される。屋根用は種類の記号の末尾にRが付けられている(例:CGCCR)。
B 屋根用の裏面の色はベージュである。
C 塗膜の耐久性は表13.2.3に示すように3種類に分類されているが、屋根には2類及び5類(2コート、2ベーク)以上を使用する。塗膜はアルカリに弱いため(特に1類及び4類)モルタルが付着した場合、水洗い等により取り除いておく必要がある。また、釘、鋼板の切り粉(切削屑)等の鋼が塗膜の酸化を促進させるおそれがあるので、屋根面に残さないようにする。
表13.2.3 塗膜の耐久性(JIS G 3312 : 2013)
(iii) 溶融アルミニウムめっき鋼板及び鋼帯(JIS G 3314)
@ 鋼板に溶融したアルミニウムをめっきしたもので、耐高温性、熱反射性、耐酸性に優れている。
A 耐熱用と耐候用の2種類に大別され、屋根用には耐候用を使用することが多い。耐候用は純アルミニウム液を用いアルミニウム層、合金層はともに耐熱用に比べて厚い。
B 表面が軟らかく傷つきやすいので、運搬時等での取扱いに注意する。加工時にめっき層に亀裂が入った場合は、犠牲防食作用が期待できないので早目に補修する。
亜鉛めっきが施された鉄であれば、万が一キズが発生し素地の鉄が露出してしまった場合でも、イオンになりやすい亜鉛が鉄よりも先に溶け出して電気化学的にキズ周辺を保護し、鉄の腐食は進行しなくなる。この作用を犠牲防食という。
(iv) 溶融亜鉛–5%アルミニウム合金めっき鋼板及び鋼帯(JIS G 3317)
@ 機械的性質は溶融亜鉛めっき鋼板と同等であるが、めっき層に約5%のアルミニウムを含むため、亜鉛、アルミニウムの複合酸化物被膜を形成し、亜鉛の溶出速度を抑制するため、より高い耐食性を有する。
A めっき層の加工性は溶融亜鉛めっき鋼板に比べて優れている。無塗装のまま屋根に使用されることは少ない。屋根用は種類の記号の末尾にRが付けられている(例:SZACCR)。
(v) 塗装溶融亜鉛ー5%アルミニウム合金めっき鋼板及び鋼帯(JIS G 3318)
@ 塗装溶融亜鉛めっき鋼板よりも原板の耐食性が優れ.加工性も優れている。
A 塗膜の耐久性は塗装溶融亜鉛めっき鋼板と同じである。屋根用は種類の記号の末尾にRが付けられている(例:CZACCR)。
B 屋根用の裏面の色はベージュである。
(vi) 溶融55%アルミニウムー亜鉛合金めっき鋼板及び鋼帯(JIS G 3321)
@ 鋼板の表面に質量比でアルミニウム55%、亜鉛43.4%、シリコン 1.6%の合金めっきを施している。通称ガルバリウム鋼板と呼ばれ無塗装のまま使用することが多い。
A アルミニウムの特性(耐食性、加工性、耐酸性、耐熱性、熱反射性)と亜鉛の特性(犠牲防食作用)を兼ね備えている。アルカリには弱いので、コンクリート、モルタル等との接触は避ける。
B 異種金属との接触により接触腐食を起こすことがあるので、留付け金具にはステンレス製あるいは亜鉛めっき等により絶縁処理されたものを使用する。シーリング材は、シリコーン系、変成シリコーン系等を用いる。シリコーン系は汚染が生じることがあるので、使用部位に注意する。
(F) 塗装溶融55%アルミニウムー亜鉛合金めっき鋼板及び鋼帯(JIS G 3322)
@ 原板に前記鋼板を用いているため、JIS G 3312、JIS G 3318に比べ耐食性に優れる。
A 鋼板の塗膜の耐久性は、JIS G 3312と同じである。屋根用は種類の記号の末尾にRが付けられる(例:CGLCCR)。
B 屋根用の裏面の色はベージュとグリーンの2種類がある。
(G) ポリ塩化ビニル被覆金属板(JIS K 6744)
溶融亜鉛めっき頒板や電気亜鉛めっき鋼板にポリ塩化ビニル(塩ビ樹脂)を積層又は塗り付けたもので、一般に塩ビ鋼板と呼ばれている。塗膜は、塗装溶融亜鉛めっき鋼板と比較すると厚く、より高い耐久性を有する。「標仕」では屋根用として、用途による種類がA種(高耐食耐候性外装用)で下地鋼板がSG(溶融亜鉛めっき鋼板)を使用することにしている。
(ix) 耐酸被覆鋼板
@ 溶融亜鉛めっき鋼板等を原板として、その両面に無機繊維と合成樹脂とを数層厚膜に被覆するか、合成樹脂のみを膜厚に被覆したものである。
A 耐酸性、耐アルカリ性、耐塩水性に優れ、熱・電気等に対する絶縁性がある。
B 被覆が厚いため、加工時の曲げ角度は鈍角にするほか、切断面は補修塗装する。保護フィルムが付いている場合はそのまま加工し、積置きする際にも、塗膜同士の接着を防ぐため、保護フィルムを挿入する。
(2) ステンレス鋼板
ステンレス鋼板はJIS G 4305(冷間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯)、JIS G 3320(塗装ステンレス鋼板)があるが、一般にコイルが使用されている。
@ ステンレス鋼板は鉄にクロム、ニッケル等を配合した合金であり、多くの鋼種があるが、建材製品に使われる代表的な種類については、14.1.5(c)(1)を参照のこと。このうち屋根用には一般的にSUS 304、SUS 316が用いられる。
なお、最近は塩害等に対する耐食性を高めた製品(SUS445等)も屋根用として使われている。
A 特 性
1) 耐食性に優れ、錆びにくい。これは合金中のクロムが酸化保護被膜(不働態被膜)を形成するためである。
2) 衝撃に強い。鋼、銅、アルミニウム等に比べて強度が大きく衝撃に強い。
3) 耐熱性に優れ、溶融温度が高く、高温下での強度が大きく、高温耐火性に優れている。
4) 熱伝導率が比較的小さく、熱膨張率もアルミニウムより小さい。
B 使用上の注意
1) 材料の貯蔵時等で鉄板やアルミ等の異種金属と直接接触させない。接触部分に水分が入ると接触腐食を起こすことがある。
2) 表面に鉄粉等を放置するともらい錆が発生するので、よく清掃する。
3) ステンレス構板にけがき線を入れる場合は、けがき釘等は錆を誘発するので赤鉛筆や筆や専用用具を用いる。
4) 普通鋼に比べてスプリングバックが強いので、折曲げ等加工時に注意する。
(3) 留付け用部材等
小ねじ、ドリルねじ及びボルト類は亜鉛めっき又はステンレス製品とする。留付け用部材等の長さ、太さ、形状等は屋根葺工法、野地板の種類等に合わせたものとする。
平成22年版の「標仕」より木下地に関する規定が削除されたことから、屋根葺材等を木下地に留め付けるために使用する釘に関する記述を削除した。しかし、役物の取付け等の特殊な部位で釘を使用することもあるので、表13.2.4に使用例を示してある。
表13.2.4に留付け用部材の例を示す。
表13.2.4 留付け用部材の例
(4) 下葺材料
(i) 「標仕」では、下葺材料は、JIS A 6005(アスファルトルーフィングフェルト)によるアスファルトルーフィング940、又は平成25年版から採用された改質アスファルトルーフィング下葺材を使用することとされている。改質アスファルトルーフィング下葺材の品質は、「標仕」表13.2.2に適合するものとされている。下葺材の種類は特記によるものとされているが、「標仕」では、コンクリート下地のように釘又はステープルが打てない下地に下葺材を直接施工する場合は、改質アスファルトルーフィング下葺材(粘着層付タイプ)を使用することとされている。
(ii) アスファルトルーフィング940の構成及び改質アスファルトルーフィング下葺材(一般タイプ、複層基材タイプ、粘着層付タイプ)の代表的な構成を図 13.2.3に示す。
@ アスファルトルーフィング940の表面は、着色塗料を塗布したものと塗布しないものがある。
A 改質アスファルトルーフィング下葺材は、アスファルトに合成ゴムや合成樹脂を添加した改質アスファルトを使用したルーフィングで、アスファルトルーフィング940に比べて、ステープルや釘打ち部の水密性に優れており、また、低温性状や高温性状が改良されている。用途によって様々な材料構成があり、アスファルトルーフィング940と同様な基材に、改質アスファルトを被覆し、表裏面に鉱物質粉粒を付着させた一般タイプのほか、鉱物質粉粒の代わりに、表裏面に合成繊維、プラスチックフィルム、紙等を用いて、軽量化を図るとともに高温時の施工での表面のべたつきを改善した複層基材タイプ、裏面に粘着材層を配置し、下葺材施工時の仮止めにステープルや釘等が不要で、ステープルや釘打ち部の水密性が更に優れた粘着層付タイプがある。
(イ)アスファルトルーフィング940
(ロ)改質アスファルトルーフィング下葺材(一般タイプ)
(ハ)改質アスファルトルーフィング下葺材(複層基材タイプ)
(ニ)改質アスファルトルーフィング下葺材(粘着層付タイプ)
図13.2.3 代表的な下葺き材料の構成
(5) その他の材料
(i) 付属材料:面戸、唐草、けらば包み、棟包み等
(ii) 留め金具:ステープル、アンカーボルト等
13.2.3 工 法
(a) 屋根葺形式は、建物の意匠等にかかわるため、「標仕」では特記とされている。心木なし瓦棒葺、立平葺及び横葺の例を図13.2.4〜6に示す。
なお、横葺については建設省の「建設技術評価制度」による「中層建築物における耐風型勾配屋根の開発」に基づき、評価書を受けている製品がある。
図13.2.4 心木なし瓦棒葺
図13.2.5 立平葺
図13.2.6 横葺
(b) 屋根葺工法は、構造耐力上の性能にかかわるため「標仕」では特記とされている。具体的には、葺板の寸法・厚さ、下地(野地板の種類、形状、強度)、留付け方法(吊子の種類・取付け方法、留付け用釘等の種類・強度)等である。
(c) 長尺金属板葺の耐風性能確保、施工方法等については、(独)建築研究所監修「鋼板製屋根構法標準」、(-社)日本金属屋根協会「金属屋根の施工と管理」、同「風と金属屋根 - 改訂版」、同「金属屋根の性能確認」が参考になる。表13.2.5に主な屋根葺形式の設計・施工上の要点を示す。
表13.2.5 屋根葺形式の設計・施工上の要点(風と金属屋根 - 改訂版より)
(d) 長尺金属板葺の工法
(1) 下葺材
(i) 防水を主な目的とする下葺材の施工は、水下側の下葺材が水上側の下葺材の上に重ならないように行う。軒先からこれに平行に張付けを開始し、隣接する下葺材を上下(流れ方向)は100mm以上、左右(長手方向)は200mm以上重ね合わせる。
下葺材の左右(長手方向)の継目は、図13.2.7に示すように、継目(◯印)相互が接近しないようにする。
図13.2.7 下鋼材の施工例
(ii) アスファルトルーフィングの仮留めは、作業効率と安全性の面から必要に応じて行うものでむやみにステープルを打ち込むことは、下葺材を貫通する孔が増えるだけで防水機能面では好ましくない。仮留めを行う場合は、図13.2.7に示すように、下葺材の重ね部分で300mm程度の間隔、その他の部分は必要に応じて900mm以内の間隔とするのが通例である。
一方、改質アスファルトルーフィング下葺材(粘着層付タイプ)の場合は、裏面のはく離紙等をはがしながら施工することで、粘着層による下地への仮止めができるため、ステープルを用いないで施工する(図13.2.8参照)。
図13.2.8 下葺材の施工例(粘着層による仮留め例)
(iii) 棟部はその形状から破断を起こしやすい部位であるため、図13.2.9に示すように棟の両側に250mm以上折掛けとしたのち.棟頂部から一枚もので左右 300mm以上の増張りを行う。増張りは下葺材と同材を用いる。
(iv) 谷部は水が集まる箇所であり、比較的漏水を起こしやすい部位であるため、図13.2.10に示すように左右300mm以上の下止材の一枚ものを先張りし.その上に下葺材を左右に重ね合わせ,谷底から250mm以上延ばす。
谷部に下葺を行うとき、下葺材が下地に密着するようにする。下葺材が下地から浮いた状態で張り付けられると破断しやすくなる。更に、谷底にはステープルによる仮止めは行わない。
図13.2.9 棟部の下葺材施工例
図13.2.10 谷部の下葺材施工例
(v) 壁面との取合いは、屋根面から下葺材を張り進め、壁に250mm以上、かつ、雨押え上端部より50mm以上立ち上げる。仮留めは屋根面と同様に下葺材の種類に応じてステープルや改質アスファルトルーフィング下葺材(粘着層付タイプ)の場合は粘着層にて行う。また、この部位は谷部同様下葺材が下地から浮いた状態で張り付けられると破断しやすくなるので下地に密着するよう張り付ける。
また、施工後躯体の動きによって当該部位の下葺材の破断も起きやすい。したがって建物の構造や気象条件によって柊113.2.11に示すように増張りを行う場合もある。
図13.2.11 壁面との取合い部の下葺材施工例
(vi) 棟板(あおり板)、瓦棒・桟木等及びけらば部の水切り金物を取り付ける前に下葺を行う。これらを取り付けてしまうと、下葺材を留め付ける下地の不陸が大きくなり破断するおそれがある。
(vii) 両面粘着防水テープを使用する場合又は改質アスファルトルーフィング下葺材(粘着層付タイプ)を使用する場合は、しわ又はたるみが生じないように張り上げる。
(G) 軒先は、図13.2.12に示すように、下葺材を軒先水切り金物の上に重ね、両面粘着防水テープで密着させる。
なお、改質アスファルトルーフィング下葺材(粘着層付きタイプ)を用いる場合は、両面粘着防水テープを使用しなくてもよい。
図13.2.12 軒先部防水テープ施工例
(ix) 鉄骨造の場合、屋根の軒及びけらばの槌当たり箇所は.図13.2.13に示すように下葺材をあらかじめ屋根下地材(垂木等)と壁の間に先張りする。先張りした下葺材に重ねる下葺材の重ね顛は,水下から水上へ張り上げる。
RC造等の場合で、当該部位に隙間がない場合は当該処置は必要ない。
図13.2.13 軒先壁当たり部施工例
(x) 下葺材が破損した場合は.図13.2.14に示すように、破損した部分の上側部の下葺材の下端から新しい下葺材を差し込み補修する。ただし、改質アスファルトルーフィング下葺材(粘着層付タイプ)の場合は、破損した部分の上に同材で増張り補修する。
図13.2.14 下葺材補修方法例
(2) 加 工
(i) 長尺金属板のロール成形機等による機械加工が多くなっているが、現場等での折曲げは十分曲げ半径を取り、切れ目を入れずに塗装、めっき、地肌に亀裂が生じないように行う。箱形の隅等は特に注意し、形に合わせて加工する。
ポリ塩化ビニル被覆金属板及び耐酸被覆鋼板を冬期に加工する時は、塗膜に亀裂が生じやすいので、材料を加温してから加工する。
(ii) 小はぜ掛け
@ はぜ組みには、巻きはぜ(二重はぜ.ダブルはぜ)とこはぜ(一重はぜ、シングルはぜ)がある。巻きはぜはダクト等で用いられることが多く、屋根では銅板葺での屋根本体の板と板とのはぎ合せ、防水上特殊な部位に用いられる。図13.2.15に示す2種類がある。
図13.2.15 巻きはぜ
A 小はぜは主として屋根本体の板と板及び軒先、けらば部分のはぎ合せに使用される。小はぜは、図13.2.16のように加工し 3〜6mm程度の隙間をつくり、防水上の毛細管現象を防ぐ(図13.2.17参照)。ただし、隙間のない方が風による吹上げに強いので、隙間が大きくならないように注意する。
図13.2.16 小はぜ
図13.2.17 小はぜの折返し幅の例
(3) 取付け
葺板の取付け方法は、屋根葺形式ごとに異なるため、ここでは心木なし瓦棒葺(通し吊子)の例を示す。
@ 溝板を下葺材上の所定の位置に並べ、各溝板の間に通し吊子を入れる。
A 通し吊子は、母屋に留め付ける。
B キャップは、構板になじみよくはめ込ませ、均一、十分に締め付ける。
(4) 棟、軒先、けらば、壁との取合い部及び谷の納まり
屋根の各部の納まりについて、心木なし瓦棒葺(通り吊子)の例を示す。
@棟(図13.2.18参照)
1) 棟納めは、溝板の水上端部に水返しを付け納めたのち、キャップ掛けを行う。
2) 棟包み固定金具をキャップに取り付けたのち、棟包みを棟包み固定金具に留め付ける。両端は、瓦棒の形状寸法に切りそろえて溝板底部まで折り下げる。
3) 継手は、棟板両端を各々折り返し、重ね継ぎとする。継手内には定形シーリング材をはさみ込み、間隔30mm以内に留め付ける。継手の位置は、瓦棒に可能な限り近い位置とする。
図13.2.18 棟の納まりの例
A 斬先(図13.2.19参照)
唐草は、各通し吊子の底部にドリルねじ留めとし、唐草の継手は、通し吊子の位置で重ね継ぎとする。
図13.2.19 軒先の納まりの例
B けらば(図13.2.20参照)
1) けらば納めは、溝板端部を唐草に十分つかみ込む。
2) けらば端部の長さは、働き幅の1/2以下とする。
図13.2.20 けらばの納まりの例
C水上壁との取合い部(図13.2.21参照)
1) 水上部分の雨押えの一方の端は棟納めに準じ、他方の端は 120mm程度立ち上げて胴縁に留め付ける。
2) 継手の施工は棟納めの継手に準ずる。
図13.2.21 水上壁取合い納まりの例
D 壁との取合い部(13.2.22参照)
雨押えの一方の端は溝板の底まで折り下げ、他方の端は120mm以上立ち上げて胴緑に留め付ける。
図13.2.22 壁取合い納まりの例
E 谷(図13.2.23参照)
谷板は稲妻谷とし、原則として、継手を設けない。葺板の溝板を谷板につかみ込んで納める。
図13.2.23 谷の納まりの例
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