14節 ガラス
16.14.1 適用範囲
この節では、主として建具に取り付けるガラス工事を対象としている。
板ガラスは、近年外装材としても活用され、その用途が広がっている。例えば、メタルカーテンウォールでは開口部以外にも使用され、アトリウムやトップライトを形成している。また、建具枠に納めるのではなく、壁面がガラスのみで形成される点支持工法(DPG工法とも呼ばれる。)等も出現している。
16.14.2 材 料
(a) 建築用板ガラスの種類と厚さ及び特性を、表16.14.1に示す。
なお、ガラスの厚さを「ミリ」と表示する場合は、製品記号であって、寸法単位の「mm」ではないことに注意する。
表16.14.1 板ガラスの種類と厚さ及び特性
(b) ガラス厚さの設定
外部に面する帳壁に使用するガラスの厚さは、平成12年建設省告示第1458号に定められている(16.1.7 (d)参照)。
また、平成12年建設省告示第1458号において適用除外となっている部位(高さ13m以下)に対する風圧力について、板硝子協会では、平成12年建設省告示第1458号に提示される計算式をそのまま適用することを提案している。
なお、「標仕」の適用範囲外ではあるが、2〜3辺支持状態のガラス及び点支持工法(DPG工法とも呼ばれる。)等の場合での、ガラス厚さの算定もガラスメーカーの提案式が、カタログや技術資料に掲載されているので、該当する場合には参考にするとよい。
(c) 板ガラスの概要
(1) フロート板ガラス(JIS R 3202)
溶解したガラス(約1,600℃)を溶融した金属(錫)の上に浮かべて製板するフロートシステムにより生産される透明、かつ、極めて平滑なガラス。
現在、流通する板ガラスの主流である。厚さは、2ミリから25ミリまで14種類ある。すり板ガラスは JIS R 3202の附属書 Aに規定されている。
(2) 型板ガラス(JIS R 3203)
2本の水冷ローラーの間に、直接溶解したガラスを通して製板するロールアウト法により生産されるガラス。下部のローラーで型付けされる。
型は、旧来のものが数種類に整理されており、選択には注意が必要である。
(3) 網人板ガラス(JIS R 3204)
(2)のロールアウト法の2本のローラーの間に、同時に網(線)を挿入して生産されるガラス(火造りともいう。)。網入板ガラスは、防火設備(旧乙種防火戸)用として認定されているが、線入板ガラスは防火設備(旧乙種防火戸)用として使用できない。
(4) 熱線吸収板ガラス(JIS R 3208)
フロートシステムにより生産される板ガラスで、ガラス原材料に日射吸収特性に優れた金属を加え、着色し生並されるガラス。
ガラスの色は、国内生産品はグリーンのみである。
熱線吸収効果で、日射を 30〜40%程度吸収し、冷房負荷の軽減効果がある。
(5) 熱線反射ガラス(JIS R 3221)
ガラスの片面に金属の反射薄膜を付け、生産されるガラス。ミラー効果、可視光線を遮り、窓際のまぶしさや局部的な昇温の防止、冷房負荷の軽減効果等がある。
現在、次の2種類の製法がある。
@ オンライン熱反
フロートシステムにより生涯されるガラスに、その徐冷の前工程で、金属をスプレーする製法。反射色調は、シルバー系がある。反射膜は、室外側でも室内部でも使用できるとされているが、反射膜の耐久性上、室内側が望ましい。
A スパッタ熱反〈高遮へい性熱線反射ガラス〉
フロート板ガラスを製品化したのち、所定の寸法に切断し、真空容器内に入れ、電圧をかけて金属薄膜を付ける製法。
オンライン熱反に比べて反射膜の反射率が高く、熱線吸収率も高い。一般には、高性能熱線反射ガラスと呼ばれている。
反射色調は、使用する金属により多彩で、10数種のものが市販されている。反射膜は,室内部に限定される。
(6) 合わせガラス(JIS R 3205)
2枚以上のガラスの間に接着力の強い特殊樹脂フィルム(中間膜)を挟み、高温高圧で接着し、生産されるガラス。同類には、合成樹脂を注入し、接着するものもある。
破損しても中間膜によって破片の大部分が飛散しない性質がある。
用途は、住宅や学校用の安全ガラスのほか、高層階のバルコニーの手すりや中間膜を種々変えた装飾用等がある。使用する板ガラスは、原則としてJISに規定されるものの組合せであり、製品の種類は多岐にわたる。また、耐貫通性に優れた厚い中間膜を使用した合わせガラスは防犯合わせガラスとして製品化されているが、地震時や台風時の飛来物に対しても防災上の効果がある。
(7) 強化ガラス(JIS R 3206)
ガラスを強化炉で 650〜700℃程度まで加熱したのち、両表面に空気を吹き付け急冷してガラス表面付近に強い圧縮応力層を形成し、耐風圧強度を約 3倍に高めたガラス。破損時の破片は、細粒状になるので鋭利な破片は生じにくい性質がある。強化型板ガラスは、型の凹凸度合いが少ないものに限られる。
熱処理後のガラスは、切断加工はできない。
用途は、枠のない強化ガラスドアや手すり等のほか、住宅や学校用の安全ガラス、点支持工法(DPG工法とも呼ばれる。)等がある。
強化ガラス内部では、表面の圧縮力と内部側の引張力がバランスを保っており、製造過程で混入した微細な異物に起因する傷や表面の傷が成長して、圧縮応力層内(ガラス厚の1/6)を超えて内部の引張応力層に達すると、応カバランスが崩れ外力が加わっていない状態でも不意に破損することがある。これを自然破綻と呼んでいる。
強化ガラスが破損するときには、一瞬にしてガラスの全面が細かい粒状の破片になるが、粒が離れずに塊となって脱落することがある。このように強化ガラスが破損し脱落して人にけがを負わせるおそれがある場合や、破損時に人が転落する危険性がある場合には、強化合わせガラス仕様にするとよい。
使用に際しては、板硝子協会「強化ガラス・倍強度ガラス使用手引書」等を参考にするとよい。
自然破損を防ぐための手段としこ、製造時にヒートソーク処理を実施することが有効であるが、破損をゼロにする技術は現在のところない。ヒートソーク処理とは、強化加工後に再加熱処理を実施し、強化ガラスに微細な不純物が含まれていた場合、強制的に破損させる方法てある。
(8) 倍強度ガラス(JIS R 3222)
強化ガラスと同様な加熱処理を行い、耐風圧強度を約 2倍に高めたガラス(HSガラスとも呼ばれる。)である。熱処理後のガラスは、切断加工はできない。
破損時の破片は、フロート板ガラスの割れ方に近い形態である。用途は、一般窓ガラス用であるが、フロート板ガラスでは厚さが不足するような風圧力が大きく、かつ、開口面積が大きい部位に使用する。
倍強度ガラスは熱処理をしてしいるため、理論上製造過程で混入した微細な異物に起因する自然破損は起こり得る。通常、倍強度ガラスにはヒートユニクー処理は行わない。
使用に際しては、「強化ガラス・倍強度ガラス使用手引書」等を参考にするとよい。
(9) 複層ガラス(JIS R 3209)
一般に2枚のガラスをスペーサーで一定の間隔(一般に6又は12mm)に保ち、その周囲を封着材(一般にブチルゴム等)で密閉し、内部に乾燥空気(内部の圧力は外気圧に近い。)を満たしたガラスである。
なお、現在では、中空層側のガラス面に特殊金属をコーティングして断熱性及び日射遮蔽性を高めた製品であるLow-E複層ガラス(日射取得型:適度に日射熱を採り入れる寒冷地に適したタイプ、日射遮蔽型:室内への日射熱の侵入を低減する温暖地に適したタイプ)が多く使用されるようになった。また、それに併せて内部を真空にした真空ガラスや内部にガスを封入した製品もある。
使用するガラスは、原則としてJISに規定されるものの組合せであり、製品の種類は多岐にわたる。また、断熱効果が高く、冷暖房負荷の軽減効果と結露防止効果がある。
(10) 耐熱板ガラス
網入板ガラス以外で防火性能を有するガラスであり、低膨張防火ガラス、耐熱強化ガラス、耐熱結品化ガラスがある。
当項については、「標仕」には記載されていないが近年使用例が増えている。防火設備において、主構成材料として位置付けられており、また、品種によっては特定防火設備の認定実績を有するものもある。
詳細については、製造所に確認するとよい。
品質については、(-社)カーテンウォール・防火開口部協会、板硝子協会及びガラスブロック工業会が定めた「耐熱板ガラス品質規格」がある。
耐熱板ガラスで耐熱強化ガラスは、熱処理をしているため、製造過程で混入した微細な異物に起因する自然破損は強化ガラス同様に起こり得る。製造時のヒートソーク処理、破損脱落時の安全性、はめ替え等のメンテナンス等を十分に考慮することが望ましい。
(d) ガラス留め材
建具枠に板ガラスを固定させ、かつ、板ガラスの耐風圧性、建具としての気密性、水密性及び耐震性等が確保できるものをいう。
材料(工法、コストとも連動する。)は、次のものがあるが、各種性能はそれぞれ特長があるので、指定は特記による。
ただし、防火設備に使用する板ガラスの留め材は、建築基準法に基づく防火性能の認定を受けた材料に限定され、また、昭和46年建設省告示第109号では、「帳壁として窓にガラス入りのはめごろし戸(網入ガラス入りのものを除く。)を設ける場合にあっては、硬化性のシーリング材を使用しないこと。(ただし書きあり。)」としている。
(i) シーリング材
JIS A 5758(建築用シーリング材)に規定されるタイプGが用いられるが、その適用等は9章7節を参照する。また、各種性能を確保するためには、シーリング材の充填幅(目地幅)に一定の制限がある。
(ii) グレイジングガスケット
JIS A 5756(建築用ガスケット)付属書JA(参考)[ 建築用ガスケットの種類 ]JA.2に規定されるグレイジングガスケット(Gl)には、図16.14.1に示すグレイジングチャンネル、グレイジングビートの2種類がある。
ガスケットの材質は、JIS A 5756 4.4[主成分による区分]表4に規定される5種類がある(表16.14.2参照)。
(iii) 構造ガスケットは「標仕」17章を参照する。
表16.14.2 ガスケットの主成分による区分(JIS A 5756 : 2013)
図16.14.1 グレイジングガスケットの例(JIS A 5756 : 2013)
(e) セッティングブロック
建具下辺のガラス溝内に置き、ガラスの自重を支え、建具とガラスの接触を妨げる小片であり、一般にガラスの横幅寸法のおおよそ1/4の所に2箇所設置する。
なお、開き窓、軸が偏心したたて軸回転窓及びたてすべり出し窓では、戸先にガラス重量をかけない工夫として、軸近傍の下かまちと戸先の縦かまちとにセッティングブロックを設置することもある。
材料は、クロロプレンゴム系、EPDM(エチレンプロピレンゴム)系、塩化ビニル系があり、ポリプロピレン製があり、一般に、厚さ6ミリ以上の比較的大きいガラスには、クロロプレンゴム系が、それより軽いガラスには、塩化ビニル系を使用することが多い。ポリプロピレン製は樹脂製建具のセッティングブロックとして使用される。
なお、ガラス留め材をシリコーン系シーリング材とし、セッテングブロックにクロロプレンゴム系又はEPDM(エチレンプロビレンゴム)系を使用する場合は、セッテングブロック材料の可塑剤により、シーリング材が変色する原因となるため、耐シリコーンタイプの材料が特記されるか、又はシーリング材とセッティングブロックとを接触させない工夫がされていることを確認することが必要である。
セッティングブロックの形状寸法は、通常、次式により定める。
さらに、合わせガラスの中間膜や複層ガラスの封着材等に悪影響を与えないようにするため、セッティングブロックの材質と他の有機材との適合性を確認することも必要である。
L = W / ( n × t × f) ただし、t < a、b / a ≦ 1、L ≧ b
L:セッティングブロック1個の長さ(cm)
W:ガラスのの質量 ( N )
n:セッティングブロックの個数(一般に2箇所)
t:ガラスの厚さ(cm)
f:セッティングブロックの許容荷重( N/cm2)
クロロプレン系、EPDM系、ポリプロピレン製で 50、
塩化ビニル系で 30
a:セッティングブロックの幅(cm)
b:セッティングブロックの厚さ(cm)
5ミリガラスで1.5m2の窓ガラスに塩化ビニル系を使用する場合
t = 0.5
よって、W= 0.5 × 1.5 × 104 × 2.5 × 10-3 × 9.8 ≒ 190 (N)
n = 2、f =30(塩化ビニル系)
よってL= 190 / ( 2 x 0.5x 30 ) ≒ 7(cm)
aは、t + ( 0.6〜1.0) ≒ 1.2 (cm)、
b ≦ aより
bは、0.6〜0.8 (cm)
よって、L × a × bは、
7 × 1.2 × 0.8 (cm)となる。
16.14.3 ガラス溝の寸法,形状等
(a) ガラス溝の寸法、形状とは、図16.14.2に示す面クリアランス(a)、エッジクリアランス (b) と掛り代 (c) の寸法、形状を指し、「標仕」表16.14.1に必要な値が定められている。
一般に枠見込み 70及び100mmのアルミニウム製建具では、「標仕」表16.14.1の値を標準としている。これらの値は、「標仕」16.2.2(b)の外部に面するアルミニウム製建具の種別A、B及びC種に合致し、また、耐震性は、16.1.7(a)(6)よりRC造又はSRC造を想定したもの(層間変形角が1/300程度)である。したがって、層間変位が大きい楊合は、「標仕」表16.14.1は、そのまま適用することができない場合がある。また、ガラスに種々の機能が追加されている場合は別途検討が必要である。
これらの寸法の意味は、次のとおりであるが、要求性能によって必要寸法が変わり、サッシ枠の見込み寸法に影響するため、指定は特記による。
なお、引違い戸、片引戸や上げ下げ戸等の障子では、枠見込み70mmのサッシにおいて、面クリアランスを5mm以上確保することが難しいので、「標仕」表16.14.1の(注)にあるように排水機構を設けて面クリアランスを3.5mm程度とする場合もある。
図16.14.2 ガラス溝の寸法
(1) 面クリアランス(a)
建具の気密性、水密性を確保するため、ガラス留め材の機能が十分に発揮できる寸法である。したがって、ガラス留め材の種類によって、当然変わる値である。例えば、ガラス留め材がシーリング材の場合は、シーリング材の確実な充填ができる値が、最小値となる。また、グレイジングガスケットの場合は、ガスケットの形状に合った値が必要になる。
(2) エッジクリアランス (b)
建具の耐震性(層間変位追従性)を確保し、かつ、ガラスのはめ込みが無理なく行える寸法である。また、建具の下辺では、セッティングブロックの厚さを確保する寸法も必要となる。
耐震性により定まる値は、建具が受ける変形量により決まり、その変形量は建具の開閉形態によって異なる(16.1.7(a)(6)参照)。
ガラスのはめ込みにより定まる値は、建具のガラスはめ込み形式によって異なる。
エッジクリアランスの値は、四方押縁形式では、耐震性により定まる値で決まる。また、やり返しでガラスをはめ込む形式では、ガラスのはめ込みにより定まる値(やり返しができる寸法)で決まる。
(3) 掛り代(c)
建具の気密性、水密性を確保するため、ガラス留め材の機能が十分に発揮できかつ、ガラスの耐風圧性を確保する寸法である。また、ガラスの小口が屈折により室内から光って見えないことを条件とすることも検討しなければならない。
建具の気密性、水密性は、面クリアランスと同様ガラス留め材の種類によって、変わる値である。シーリング材の楊合には、バックアップ材の寸法、形状も影響する。
ガラスの耐風圧性は、強風時にガラスがたわんで、枠から外れないために必要となる寸法で、当然風圧力の大きさとガラス厚さによって変わる値である。
ガラスの小口が見えるかどうかは、掛り代にガラス留め材のガラス溝よりの突出寸法を加えた値によるため、当然ガラス留め材の種類によって変わり、一般にグレイジングガスケットの場合が、シーリング材の場合より突出寸法が大きい。
(b) 水抜き孔
外部に面する建具とは、雨掛りの部位を想定している。
複層ガラス、合わせガラス及び網(線)入板ガラスの小口部分は、次の理由により、長期に水と接触することを避けなければならない。
(i) 複層ガラスでは、2枚のガラスの間に使用されている封着材の接着性能が水分の影響を受け、低下するおそれがある。
(ii) 合わせガラスでは、2枚のガラスの間に使用されている特殊樹脂フィルムが水分の影響を受け、白濁したり、はく離したりするおそれがある。
(iii) 網(線)入板ガラスでは、ガラスの小口に突出する線材が水分の影響で発錆するおそれがある。
したがって、この条件に適合する建具では、万ーガラス回りのガラス留め材に不具合が生じ、建具のガラス溝内に雨水が浸入した場合、速やかに雨水を排出するため、建具の下枠に水抜き孔を設けることとしている。
水抜き孔の直径を6mm以上とするのは、雨水が流れ出る最小値である。また、水抜き孔から雨水が浸入しないようにすることが重要である。
水抜き孔を2箇所とするのは、建具の下枠が完全な水平とは限らないことを想定したものであり、また、セッティングブロックや枠内の突起物が雨水の排出をせき止めることが想定される場合は、セッティングブロック又は突起物の中間に 1箇所追加する。
16.14.4 工 法
(a) 板ガラスの切断、小口処理
(1) 板ガラスの切断は、ガラス切りと呼ばれる工具によってガラス表面に傷をつけ、その傷に沿って折り割る作業である。クリアカット〈クリーンカット〉とは、折り割った状態のきれいな切断面(小口)をいい、JISに記述される許容限度を超える切口欠点がない状態を指す。しかし、10mmを超える厚板ガラスで、幅の広さが異なる状態で折り割ると.切断面が斜めになることがある。
大きな傾斜は、エッジクリアランスの確保に支際があり、また、切断面の大きな欠け等も熱割れ等の要因となるので、修正しなければならない。修正は、粗ずり( F120〜200程度の湿式研磨)で行うのが一般的である。
(2) 板ガラスの端部が建具枠にのみ込まない納まりは、一般的ではないが、例えば、建物の出隈部で隅部に縦枠を設けず、ガラスを直交させ、ガラス間をシーリング材で連続させる場合や1階エントランスに設けるガラススクリーン工法〈ガラス方立工法、リブガラス工法〉の場合が該当する。
いずれの場合も、ガラス切断面が、シーリング材の接着面であったり、人の手に触れる部分となる。したがって、施工性や安全性から、小口加工が必要になる。仕上げの程度は、特記が必要である。シーリング材の接着面となる部分の仕上げの程度は、粗ずり( F120 〜 200程度の湿式研磨)又はつや消し(同#300程度)が、また、人の手に触れる部分の仕上げ程度は、磨き( 同#500程度)が一般的である。
なお、後者の場合で、小口の形状を平面とするかかまぽこ状(丸み角)とする かは設計担当者と打ち合わせて決める。
なお、これらの例は、本来「標仕」の適用範囲外であり、いずれか一方のガラスは、片側縦辺のエッジクリアランスがない状態となる。また、面外力に対するガラスの支持状態も四辺単純支持ではない。更に、ガラス突付け部の気密性、水密性もシーリング材のみに期待する納まりである。したがって、十分な検討や実験を伴わないと、建具に要求される各種性能が確認できないので注意する。
(3) 網(線)入板ガラスでは、その小口が長期に水と接触すると発錆するおそれがある。16.14.3(b)のように水抜き孔を設けても、長期を想定すると湿気による発錆も考えられる。したがって、使用する場所に応じて防錆用テープ又はガラス用防錆塗料を施すなどの適切な防錆処理をする。
(b) ガラスのはめ込み
(1) シーリング材を使用する場合(16.14.3及び「標仕」9章7節参照)
シーリング材の硬化には、ガス(2成分シリコーン系では、R2NOH)の発生を伴い、また、高温高湿下では硬化不良を引き起こすおそれがある。したがって、シーリング材充填部が密閉となるような養生を行ってはならない。
@ ガラスの両側とも、シーリング材を使用する場合
セッティングブロックをガラス溝内の所定の位置に配置したのち、面クリアランス、エッジクリアランス及び掛り代が適切になるように、面内・面外・両方向ともガラスを建具の中央に置く。次いで、シーリング材の充填深さが適切になるようにバックアップ材を挿入したのち、シーリング材を充填する。
A ガラスの内外溝のうち、一方のみをシーリング材を使用し、他方の溝はグレージングビードとする場合 .
先付けグレイジングビードとセッティングブロックをガラス溝内の所定の位置に配置したのち、エッジクリアランス及び掛り代が適切になるようにガラスを建具の中央に置く。次いで、反対側溝部について、シーリング材の充填深さが適切になるようにバックアップ材を挿入したのち、シーリング材を充填する。
(2) グレイジングガスケットを使用する場合
(i) グレイジングチャンネルの場合
かまちが分割できる可動部分(障子)に限られる。
グレイジングチャンネルをガラスに巻き付ける際、継目が上辺中央で、隙間が生じないようにする。
グレイジングチャンネルを巻き付けたガラスを分割したかまちにはめ込み、最後にかまちを組み直して完了となる。セッティングブロックは使用しない。
(ii) グレイジングビードの場合
セッティングブロックをガラス溝内の所定の位置に配置したのち、面クリアランス、エッジクリアランス及び掛り代が適切になるように、面内・面外両方向ともガラスを建具の中央に置く。次いで、グレイジングビードを両面から、ガラスと枠との間に押し込み完了となる。継目は上辺中央で隙間が生じないようにする。
(iii) グレイジングビード(先・後付け)の場合
先付けグレイジングビードとセッティングブロックをガラス溝内の所定の位置に配置したのち、エッジクリアランス及び掛り代が適切になるようにガラスを建具の中央に置く。次いで、あと付けグレイジングビードをガラスと枠との間に押し込み完了となる。継目は上辺中央で隙間が生じないようにする。
(c) 養生及び清掃
(1) ガラスのはめ込み後は、ガラスに気付かずに人が衝突したり、物を当てることのないように「ガラスに注意」等のラベルを張る。また、傷防止等必要に応じてガラス全体を養生する。
なお、日射熱吸収の大きいガラスでは、養生材の張付けによって、ガラスが熱割れしないことを確認することが必要である。
(2) ガラスの清掃は、建物完成期日直前に行う。清掃は、一般に水で表面をふき取るが、工事中にガラス面に固着した異物を除去するために薬品類を使用する場合は、周囲部材に影響のないことを確認する。熱線反射ガラスの清掃は、反射膜面を低つけないように注意し、中性洗剤以外の薬品等は使用しない。
また、清掃に当たっては、カッター、金属へら(スクレーパー)等の金属類を用いない。
16.14.5 ガラスブロック積み
(a) 壁部分に、壁用金属枠を用いて現場にて1個ずつ積む工法を対象とし、工場生産されるガラスブロックパネルは対象としていない。
(b) 材 料
(1) ガラスブロック
JIS A 5212(ガラスブロック(中空))には、表16.14.3に示す製品がある。
なお、ガラスブロック(中空)の海外製品は、JISと寸法許容差等が異なるため、(-社)公共建築協会では「建築材料・設備機材等品質性能評価事業」において、品質性能基準を定め評価しているので参考にするとよい。
表16.14.3 ガラスブロックの寸法等
(2) 壁用金属枠
壁用金属枠はSUS304又はアルミニウム合金等腐食しにくい材質とし、下枠の外部側に水抜き孔(径6mm以上、間隔 1.0〜1.5m)を設けたものとする。図16.14.3にアルミニウム合金製の形状例を示す。
図16.14.3 アルミニウム合金製壁用金属枠の例
(3) 力 骨
一般には、図16.14.4に示すはしご状複筋又は単筋を使用する。50mm幅のタイプは縦筋として、35mm幅のタイプは横筋として使用する。材質はSUS304で径 5.5mmである。
なお、伸縮目地の横筋等には、同質、同径の丸鋼も使用する。
図16.14.4 力骨の例
(4) 緩衝材
開口部周囲(下枠を除く。)と中間縦目地(伸縮目地)に使用する弾力性、復元性、耐久性のある材料で、一般には合成ゴム発泡体で幅75mm、厚さは5及び10mmの2種類がある。通常はガラスブロック製造所の指定するものを使用する。
(5) 滑り材
壁用金属枠の面内方向部分に張付け、充填モルタルと同枠間を滑らす目的の材科である。一般には厚さ1.2mm程度の塩化ビニル又はブチルゴム製の粘着層付きのテープで幅は25及び50mmの2種類がある。
(6) アンカーピース
カ骨を所定の位置とするため壁用金属枠に組み込む部品で、一般的には SUS304である。鋼製サッシや鋼製枠を使用する場合には、電食防止のために絶縁する必要がある。通常はガラスブロック製造所の指定するものを使用する。
(7) 水抜きプレート
壁用金属枠の下枠溝内に組み込み、ガラスブロック壁内に浸入した雨水を排水孔に導く機能をもつもので、一般的には塩化ビニル製である。通常はガラスブロック製造所の指定するものを使用する。図16.14.5に形状例を示す。
図16.14.5 水抜きプレートの形状例
(c) 工 法
(1) 耐風圧性
ガラスブロック壁面の耐風圧性能が建築基準法(平成12年建設省告示第1458号)に適合した工法は特記される。
(2) 工法詳細
(i) 目地幅の標準寸法は、10mmである。8mm以下にすると.内蔵される力骨(φ5.5 mm)との接触や、モルタルの充填性が悪くなり望ましくない。逆に、15mmを超える幅では、目地モルタルの仕上げが悪くなり、また、目地モルタルのひび割れも発生しやすくなるので、標準寸法に設定するのがよい。
曲面に積む場合は、最小半径をガラスブロックの幅寸法の10倍以上にしないと、上記の目地幅範囲を確保できない。なお、目地幅は、原則として外側 15mm以下、内側6mm以上を確保する。
(ii) ガラスブロック壁面が大きくなると、開口周辺の緩衝材や滑り材だけでは、ガラスブロックの熱変形や地震時の躯体の変形に追従できなくなる。したがって、開口部の幅が 6mを超える場合には、6m以内ごとに 10〜 25mm幅の縦方向の伸縮目地を設ける必要がある。図16.14.6に伸縮目地の納まりを例示する。
図16.14.6 伸縮目地の納まりの例
(iii) 風圧を受けた場合の壁用金属枠の変形を押さえるため450mm以下の間隔で、壁用金属枠を躯体に固着し、モルタルを密実に充填する。
(iv) 力骨の設置間隔は、要求されるガラスブロック壁面への風圧力に対応した間隔であることが必要である。実験結果による力骨の設置間隔は、図16.14.7のようになっている。最大間隔(標準目地幅10mmの場合)は、縦横とも620mmである。
図16.14.7 風圧力の大きさと力骨の設置間隔(実験結果)
(v) ガラスブロック壁面の標準施工例を図16.14.8に示す。
図16.14.8 ガラスブロック壁面の標準施工例
参考文献