11 節 寒中コンクリート
6.11.1 一般事項
寒中コンクリートの適用は「標仕」では特記によることになっており、その適用期間の原則はコンクリート打込み後の養生期間にコンクリートが凍結するおそれのある期間である。寒中コンクリートでは、初期凍害の防止と低温による強度発現の遅れに対する対応の2点が技術的課題である。
JASS 5 12節[寒中コンクリート工事]では、初期凍害防止の対策を講じなければならない期間を、打込み日を含む旬の日平均気温が 4℃以下の期間とし、低温による強度発現の遅れに対する調合上の対策及び養生条件の検討が必要な期間を、材齢 91日までの積算温度が 840°D・D を下回る期間としており、解説の中で、表6.11.1のような地域と期間を定めている。
気象庁による 1981〜2010年の平滑平年値を各旬ごとに表6.11.2 に示す。
気象記録のある気象台、測候所、観測所等の高さと異なる場合は、100m 高くなるごとに平均気温は 0.5〜0.6℃低くなるものとして扱う。
表6.11.1 寒中コンクリート工事の適用期間(その1)
(JASS 5 (2009)の表を気象庁平年値 (1981〜2010年)により修正)
表6.11.1 寒中コンクリート工事の適用期間(その2)
表6.11.2 旬平均気温 (0.1℃)(その1)(気象庁平年値データより)
(統計期間:1981〜2010年)
表6.11.2 旬平均気温(0.1℃)(その2)(気象庁平年値データより)
6.11.2 材料及び調合
(a) 寒中コンクリートにおいても、構造体コンクリートの強度は、普通コンクリートと同様、材齢 91日までに所定の設計基準強度(Fc)が得られるものでなければならない。普通コンクリートと異なるのは,圧縮強度 5 N/mm2が得られるまでは、コンクリートが凍結しないように適切な養生を行うことが必要ということである。調合は、養生計画に応じて、養生期間内に圧縮強度 5 N/mm2 が得られるように定めなければならない。
(b)「標仕」では、かつて積算温度により管理することを原則としていた。しかしながら、積算温度方式は、一般的な現場での適用が難しいため、普通コンクリートと同じく、設計基準強度(Fc)に、「標仕」表 6.3.2 の構造体強度補正値(S)を加えた値以上となるように調合管理強度を定めて管理をすることとしている。
「標仕」6.11.2(c)の「ただし書き」における積算温度とは「材齢(日)」と「温度 + 10(度)」の積で求められる値であり、 28日間 20℃で養生した場合に 28(日) × ( 20 + 10 )(度)= 840°D・D となる。適切に初期養生が行われた場合には、日数と温度の組合せが変わっても、積算温度が同じであれば同程度の強度が得られるといわれている。経済的な養生方法で、材齢 91日までの積算温度が 840°D・D 以上となる場合には、普通コンクリートと同じく、設計基準強度(Fc)に、「標仕」表6.3.2 の構造体強度補正値(S)を加えた値以上となるように、調合管理強度を定めて管理をすれば、20℃で 28日間の場合と同様、設計基準強度の確保が期待できる。
しかし、北海道等では、保温養生によって材齢 91日までの積算温度を 840°D・D以上とするのが 不経済となる場合も多い。JASS 5 12節及び(-社)日本建築学会「寒中コンクリート施工指針・同解説」では、コンクリートの積算温度と強度の関係から、設計基準強度が得られる積算温度を、調合管理強度に応じて求める方法が示されており、材齢 91日までの積算温度が840°D・D を下回る場合の調合管理強度の決定、養生計画の立案の際の参考にするとよい。
(c) 混和剤として、AE減水剤遅延形や高性能AE減水剤を用いる場合には、コンクリートの凝結や硬化が遅れて初期棟害を生じる危険性が増すため、初期養生に注意する(6.11.4 参照)。
6.11.3 製造、運搬及び打込み
(a) 寒冷期にはコンクリートの輸送時間が長いと、コンクリートが冷されて、打込み時に「標仕」に定められた所定のコンクリート温度が得られないことがあるため、コンクリート製造工場の選定に当たっては、運搬時間を考慮する必要がある。
(b)「標仕」にコンクリートの荷卸し時の温度は10℃以上、20℃未満と定められているが、理由は次のとおりである。
(1) ワーカビリティーに対する影響がでる。
(2) 打込み中、湯気により作業に支障がでる。
(3) コンクリートの硬化が始まる前に、部分的に凍結するおそれがある。
コンクリートの練上がり時の温度は、6.11.1式で求められる。
(c)セメント投入直前の材料の温度が 40℃を超える場合には、セメントが異常凝結を起こすおそれがあり、「標仕」では禁止されている。
(d)運搬中及び施工中のコンクリートの温度低下は、1時間当たり外気温とコンクリート温度との差の15%程度といわれている。
6.11.4 養 生
(a) 寒中コンクリートでは、初期養生が最も重要であるが、これは初期凍害の防止のためである。コンクリートが凝結中に凍結すると、その後の強度の上昇・回復は期待できない。
養生方法については、信頼できる資料を基に、工期、経済性等を十分に検討して決定しなければならない。
(b)「標仕」6.11.4(b)で、初期養生の期間を圧縮強度が 5 N/mm2に達するまでと定めているのは、凍害は硬化体の組織が粗いほど、また、引張強度が小さいほど激しいので、硬化体形成の目安を、上記の圧縮強度としているからである。
「寒中コンクリート施工指針・同解説」では、「コンクリート温度またはその周囲の温度の中でもっとも低い部分において求めた積算温度による強度の推定値および JASS 5 T- 603(構造体コンクリートの強度推定のための圧縮強度試験方法)による強度が、5.0 N/mm2 以上となった段階で初期養生を打ち切ってよい。」と定めている。
6.11.5 型 枠
型枠の取外しは、圧縮強度によることとし、「標仕」6.8.5では、せき板は圧縮強度が 5N/mm2 以上、支柱はスラブ下で圧縮強度が設計基準強度の 85%以上又は12N/mm2 以上であり、かつ、施工中の荷重及び外力について、構造計算により安全であることが確認されるまでとしている。また、梁下では圧縮強度が設計基準強度以上であり、かつ、施工中の荷重及び外力について、構造計算により安全であることが確認されるまでとしている。
6.11.6 試 験
(a) 初期養生期間の決定、任意材齢の強度の推定、強度上の水セメント比の決定等は、「寒中コンクリート施工指針・同解説」の試料3及び4に示された図表等を参考にして行うとよい。
(b)「標仕」6.11.6(c)は、従来「標仕」6.9.5[構造体コンクリート強度の推定試験]の中で規定されていたものであるが、材齢28日の現場封かん養生供試体の試験が寒中コンクリートを除いて削除されたため、ここに改めて規定されたものである。
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