12 節 暑中コンクリート
6.12.1 適用範囲
(a) 暑中コンクリートは、日平均気温の平年値が 25 ℃を超える期間が適用期間となっている。日平均気温の平年値とは、過去30年間の日平均気温をKZフィルター(単純移動平均を数回繰り返す方法)を用いて、9日間の移動平均を 3回行った値である。例えば、東京では 7月13日から 9月 8日までが適用範囲となる。
(b) 暑中コンクリートは、次のような問題を生じやすい。
@単位水量の増加・・・・・・強度低下
Aスランプ低下率の増大・・・ポンプ圧送困難、ワーカビリティー低下
B凝結、硬化の促進・・・・・打継ぎ不良、仕上げ不良
C急激な表面乾燥・・・・・・表面ひび割れの発生
D高温なコンクリート・・・・ひび割れの発生
コンクリートの温度が高い時は反応速度が早く凝結、硬化の進み方が早くなる。例えば、コンクリートの温度が 30℃になると 20℃の場合に比べ、輸送時間 60分のときでスランプが 1〜 2cm低下する。また、同じスランプを得るのに単位水量が 4〜7kg/m3 増加する。
詳細については (一社)日本建築学会「暑中コンクリートの施工指針・同解説」を参考にするとよい。
6.12.2 材料及び調合
(a) セメントの温度が 8℃高いと、コンクリート温度は約1℃高くなる。セメントの温度が高い場合は、入荷後セメントサイロ内に一定期間放置して温度を下げるなどの対策が望まれるが、そのような対策をとるのは困難な場合が多く、骨材又は水を冷やす方が現実的である。
(b) 骨材は、コンクリート1m3 中に占める使用料が最も多いので、骨材温度はコンクリートの練上がり温度に大きく影響し、骨材温度が2℃高いとコンクリート温度は約1℃高くなる。 骨材の温度上昇を防ぐには、直射日光を当てないように屋根を設けたり、骨材に散水するなどの措置を講じるのがよい。ただし、細骨材に散水しても冷却効果は少なく、また、表面水の管理が難しくなるため、注意が必要である。
(c) 水は比熱が大きく、コンクリートの線上がり温度に及ぼす影響は、使用量の割には大きく、水の温度が 4℃高いとコンクリート温度は約1℃高くなる。したがって、なるべく低温のものを使用するのがよい。
(d) 6.12.1で記述したように凝結が早くなるので、凝結時間を遅延するためにAE減水剤の遅延形I種又は高性能AE減水剤遅延形I種を使用するのがよい (6.3.1(d)(3)参照)。この混入は、コンクリートのワーカビリティーを保つのに非常に効果がある。
(e) 高温下で養生されたコンクリートは、20℃で養生されたコンクリートよりも強度発現が停滞する傾向にあることから 「標仕」では構造体強度補正値(S)を特記により定めるとしている。特記のない場合は、上述の理由から、構造体強度補正値を 6 N/mm2 とすることとしている。
6.12.3 製造及び打込み
(a) 6.12.1(b)の弊害を抑制するため、「標仕」では、荷卸し時のコンクリート温度を、原則として 35℃以下とすることとしている。しかし、最近では各地域の最高温度が高くなる傾向にあり、盛夏期では、使用材料の温度制御等の対策では 35℃を超えることが避けられない場合も予想される。そのような場合を想定し、材料・調合、打重ね時間、養生方法・期間等についてあらかじめ検討し、対策を講じておくのがよい。
(b) せき板及び打継ぎ面が乾燥していると、あとから打ち込まれるコンクリートから水分がせき板及び打継ぎ面に吸収されるため好ましくない。ただし、散水後にせき板及び打継ぎ面に水がたまっているとコンクリートの品質が低下し、特に打継ぎ面に水がたまっていると打継ぎ部の一体性が損なわれるため、たまった水は高圧空気等によって取り除く。
(c) 輸送管が直射日光の当たるところに設置されると、配管の段取り替えや運搬車の待ち時間等で輸送管内のコンクリートの温度が上昇し、コンクリートのワーカビリティーが低下して閉塞やコールドジョイント等のトラブルが発生しやすい。したがって、輸送管等の運搬機器は、できるだけ直射日光を受けない場所に設置することが望ましい。 直射日光を受けるような場合は、輸送管をぬれたシート等で覆い、コンクリート温度の上昇を防ぐようにする。
(d) 「標仕」では、コンクリートの練混ぜを開始してから90分以内に打込みを終了するように定められているがそのためにはコンクリート運搬車の現場到着後の待ち時間をできるだけ短くすることが必要である。
(e) 打ち込まれるコンクリートが接する箇所の温度が高いと、これらに接したコンクリートの表層部は、急激に水分が吸収されるなどして、一体性や付着強度に悪影響を及ぼすことになる。したがって、打ち込まれるコンクリートが接する箇所は、表面温度が上昇しないように散水あるいは直射日光を防ぐなどの対策を講じる必要がある。ただし、散水によって冷却する場合は、型枠内に水がたまらないようにする必要がある。
(f) 暑中環境における打込みでは.コンクリートの凝結が急速に進み、コールドジョイントが発生しやすくなる。このため、打込み継続中における打重ね時間間隔の限度内にコンクリートが打ち込めるように、1回の打込み量、打込み区画及び打込み順序を考慮した打込み計画を立て、これに基づいて施工を行う。
6.12.4 養 生
(a) 表面からの水分の蒸発を防ぐことが大切であり、打ち上がったコンクリートの浮き水の状況や風速等を考慮し、急激な乾燥のおそれがある場合は散水を行う。打込み後は.6.7.2 に準じて湿潤養生を行う。
(b) コンクリート上面ではブリーディング水が消失した時期以降にコンクリートが乾燥の影響を受けるので、湿潤養生はこの時期から開始するのがよい。せき板に接している面は、封かん養生に相当する程度の養生条件が保たれているものと考えられるので。養生は脱型直後から開始すればよい。
(c) 湿潤養生終了後に、直射日光や風等によって急激にコンクリートを乾燥させるとひび割れが発生しやすくなる。湿潤養生後は、養生シート等をできる限り長く存置させて、急激な乾燥を防止するのがよい。
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