1節 共通事項
23.1.1 一般事項
(1) 本章では、植栽工事の主要材料となる樹木を中心に、芝や地被等の植物材料の植付け及び移植と、それを養生管理していくために十分な植栽基盤の整備を対象としている。
(2) 作業の流れを図23.1.1に示す。
(3) 施工計画書の記載事項は、概ね次のとおりである。
なお、赤文字を考慮しながら品質計画を検討する。
@ 工事概要
A 計画工程表
B 現場組織表
C 安全管理
D 主要資材(生産地等)
E 施工方法(主要機械、仮設、運搬、養生、工事用地等を含む)
F 作業のフロー、管理の項目・水準・方法、品質管理体制・管理責任者、品質記録文書の書式とその管理方法等
G 緊急時の体制及び対応
H 交通管理
I 環境対策
J 現場作業環境の整備
K 再生資源の利用の促進と建設副産物の適正処理方法
23.1.2 基本要求品質
(1) 植栽工事に用いる材料には、植込み用土、樹木、地被植物、切芝や種子、肥料等があるが、大部分が植物等の天然素材であり、また、地域的な条件もあり、一律に品質基準を設定することが困難な場合が多い。
「標仕」では、「植込み用土は、客土又は現場発生土の良質土」としているが、良質土の基準は、樹木の活着と正常な生育に適しているか否かを総合的に判断すればよく、特記されている場合を除き、土壌試験等により確認することを求めているものではない。
また、現場発生土が植物の生育等に適さない場合は、「標仕」1.1.8による協議を行い、設計変更等により適切に処置する必要がある。
なお、土壌が植物の生育等に適するか否かの判断に当たっては、(-社)日本造園建設業協会認定「植栽基盤診断士」に相談するとよい。
(2) 樹木、支柱等については、「標仕」23.3.2で品質基準が定められているため、これに適合するものを使用する。
「形姿が良い」とは、客観的な基準を設けることが困難であるが、建物との調和を考慮し、必要に応じて設計担当者と打合せを行い、形状等を定めるとよい。また、「有害な傷がないこと」とは、枯死又は枝損傷の原因となるような病害虫による被害や傷がないことを求めているものである。自然に治癒する程度の傷であれば、要求品質を満たしていると見なすことができる。
なお、樹木の品質寸法規格基準等については、(-財)日本緑化センター「公共用緑化樹木等品質寸法規格基準(案)の解説」を参考にするとよい。
(3) 「標仕」の規定にある「新植の樹木等は、活着するよう育成したものであること」とは、工事が完成した状態における樹木等の生育状態についての要求事項であり、生育良好で、病虫害のない樹木等を、適切な工法で植栽した場合には、この要求を満たしているものと判断してよい。
23.1.3 植栽地の確認等
(1) 植栽基盤の確認
「標仕」では、枯死又は生育不良の第一に挙げられる排水性(透水性)と土壌硬度については、必須確認事項としている。同一敷地内でも土壌条件が異なることがあるため、異なる条件毎に調査が必要である。特に、樹木の有効土層及びその下層地盤が、地山の切土であるか、盛土で重機による転圧をしているか、地耐力向上のための地盤改良を行っている場合には、透水性不良や土壌の高硬度がみられることがあるため、調査が必要である。加えて、コンクリート又は鋼製の植え桝や人工地盤上など、下層に不透水の構造物がある場合は、透水性不良がみられることがあるため、調査が必要である。
下層地盤の排水性が悪い場合は、暗きょ排水を行うものとし、流末処理の方法については、現地の状況を十分把握し、先行の排水工事と調整を行う。暗きょ排水の設置が困難な場合は、植栽地部分を盛り上げた地盤とする場合もある。
土壌が硬い場合は、深耕(粗起し)や普通耕等によって土層を改良する。
土性については、必須確認事項ではないが、指頭法(表23.2.4参照)により容易に判定ができ、透水性や保水性を判定するうえでの参考になることから、確認したほうがよい。
土壌の水素イオン濃度指数(pH)の試験については、「標仕」では、特記によると規定している。強アルカリ土壌の出現が懸念される建染物の解体跡地や強酸性土壌が懸念される土丹や酸性硫酸塩土壌が出現する地域では、確認を行ったほうがよい。
また、電気伝導度(EC)試験についても「標仕」では、特記によると規定している。塩類障害が懸念される海浜埋立地では、電気伝導度(EC)を指標とした塩分濃度の調査.確認を行ったほうがよい。
試験の結果が不良の場合は、監督職員と協議する。
(2) その他の確認事項
生き物である植物を取り扱う植栽工事は、植栽基盤の確認のほか、植栽の時期や植栽地の気象・日照条件と植物との適合性等について確認する必要がある。植物の生育に支障となるおそれがある場合は、「標仕」1.1.8による協議を行う。
なお、植栽工事は、全体工程の終盤に施工することが多く、協議は設計変更のタイミングを失しないよう、できる限り早い時期に行う。
協議又は検討事項としては、次のようなものがある。
(a) 植栽時期の配慮
植物は適期に植栽することが望ましいが、工程上、不適期となる場合や他工事の影響で適期に植栽できない場合は、受注者等と工程調整や養生対策の方法等について協議する。
なお、植栽(移植)の適期については、表23.1.1に示す。
(b) 環境圧に対する配慮
植栽地の環境圧としては、植栽基盤条件のほか、立地・気象・日照・生育空問条件等に由来するものがある。
1) 立地・気象条件が不適合の場合
計画樹種が立地条件(潮風害、強いビル風等)や気象条件(気温、降雨量等)に合わない場合は、工法の見直しや樹種の変更について受注者等と協議する。
2) 日照・生育空間等の局地的な不適合の場合
景観上の設計意図を考慮したうえで、植付け位置の変更等について設計担当者と打合せを行う。
(c) 地下埋設物等による制約
地下埋設物や、地下構造物が支障となる場合は、設計変更の必要性等について協艤を行う。
いずれも植付け位置の若干の変更で済む軽微な場合から、植栽そのものの可否を検討しなければならない場合まで様々である。特に地下埋設物の場合は、樹木の生長への障害だけではなく、樹木の生長に伴う構造物自体への影響も考慮しなければならない。
表23.1.1 造園樹木、芝等の移植適期概見表(東京地方)
(d) 都市緑化で出現する主な土壌の不良要因と植栽上の間題点を、表23.1.2に示す。
表23.1.2 都市緑化で出現する主な土壌の不良要因と植栽上の問題点
(公布と対策 1986年12月臨時増刊 長谷川秀三「土壌改良材」より:一部改編)