8節 つや有合成樹脂エマルションペイント塗り(EP-G)
18.8.1 一般事項
この節は、建築物の内外壁面、天井等のコンクリート面、モルタル面、せっこうプラスター面、せっこうボード面及びその他のボード面等並びに屋内の木部、鉄鋼面及び亜鉛めっき鋼面に用いる、つや有合成樹脂エマルションペイント塗り仕上げを対象としている。
つや有合成樹脂エマルションペイント塗りは、ホルムアルデヒド発散建築材料に指定されていない塗料を利用した塗装仕様である。屋内の木部、鉄鋼面、亜鉛めっき鋼面に対して、本塗り仕様と同様の用途に適用できる塗装仕様として、4節の合成樹脂調合ペイント塗り及びフタル酸樹脂エナメル塗りがある。しかし、合成樹脂調合ペイント(JIS K 5516)及びフタル酸樹脂エナメル(JIS K 5572)はホルムアルデヒド発散建築材料に指定されており、特記によりF☆☆☆☆以外の材料が指定されている場合には、内装としての使用面積が制限されることになる。つや有合成樹脂エマルションペイント塗りは、ホルムアルデヒド発散建築材料に指定されている塗料を使用していないため、建築基準法のシックハウス症候群対策による規制を受けない。
つや有合成樹脂エマルションペイントは水系塗料であり、合成樹脂調合ペイントやフタル酸樹脂エナメルと比較して、揮発性有機化合物(VOC)の発生が少なく、ホルムアルデヒドの発散等級はF☆☆☆☆である。
18.8.2 コンクリート面、モルタル面、せっこうプラスタ一面、せっこうボード面、その他ボード面等のつや有合成樹脂エマルションペイント塗り
(1) 材 料
(ア) 合成樹脂エマルションシーラー
JIS K 5663(合成樹脂エマルションペイント及びシーラー)に規定される品質のものとする。
(イ) つや有合成樹脂エマルションペイント(JIS K 5660)
JIS K 5660に規定されており、合成樹脂エマルションと着色顔料、体質顔料、補助剤、添加剤等から構成される水系塗料である。
水による希釈が可能で、水を加えて登料に流動性をもたせることができ、臭気が少なく溶剤の揮散による大気汚染や中毒の危険性が少ない塗料である。そのため、従来のアクリル樹脂エナメルを使用していた部位に使われるようになってきている。
塗布された塗料は、水分が蒸発するとともに樹脂粒子が接近融着して連続塗膜を形成する。気温 –5℃以下では凍結するため、低温保管を避ける。また、気温 5℃以下では施工を避ける。
塗装用具や塗膜硬化機構は、9節に述べる「合成樹脂エマルションペイント」と同様であり、一度硬化乾燥すると表面光沢のある耐水性を有する塗膜になる。
(2) 塗 装
(ア) 「標仕」では、天井面等の見上げの部分においては、外観上特に問題がないため、工程3「研磨紙ずり」を省略することとしている。
(イ) コンクリート面に、つや有合成樹脂エマルションペイント塗りを適用する場合の素地ごしらえは、「標仕」表18.2.5を適用する。
(ウ) 塗装方法は、はけ塗り、ローラーブラシ塗り、吹付け塗りのいずれかとする。
(エ) 塗料の塗付けは、同じ方向にそろえ、1日の工程終了は区切りのよい所まで塗装する。途中で終了したり塗り残したりすると、色むらや光沢むら等の仕上り外観に異常を生じることがある。
(オ) 希釈に使用する水は、水道水を標準として、水道水以外の水を使用する場合は、事前に各材料との適合性を確認する必要がある。
(カ) つや有合成樹脂エマルションペイントは水系塗料であるが、塗料の飛散、粉じんの吸入、皮膚や目への付着等、安全衛生に注意する。
(キ) 塗料の標準工程間隔時間及び標準最終養生時間を、表18.8.1に示す。
(ク) 各工程の工程間隔時間及び最終養生時間は、十分確保する。工程間隔時間及び最終養生時間が短いと研磨紙ずりの時に目詰りしたり、研磨目が出たりして、仕上り外観を損ねる場合がある。
(ケ) 下塗りに用いる合成樹脂エマルションシーラーは、上塗塗料の製造所の指定する水系塗料とする。
表18.8.1 つや有合成樹脂エマルションペイント渡りの標準工程間隔時間及び標準最終養生時間
18.8.3 木部のつや有合成樹脂エマルションペイント塗り
(1) 材 料
(ア) 合成樹脂エマルションシーラー
18.8.2(1)(ア)を参照する。
(イ) 合成樹脂エマルションパテ(JIS K 5669)
JIS K 5669に規定される耐水形薄付け用とする。
(ウ) つや有合成樹脂エマルションペイント
18.8.2(1)(イ)を参照する。
(2) 塗 装
(ア) 上塗りとの適合性を確保するため、合成樹脂エマルションシーラーはつや有合成樹脂エマルションペイントの製造所が指定する水系塗料とする。
(イ) 合成樹脂エマルションパテの耐水性は、エポキシ樹脂パテのような反応硬化形樹脂パテと比較すると、十分ではない。したがって、塗膜のふくれやはがれを防止するために、浴室や洗面所等の水回り部分への適用は避ける。
(ウ) 塗料の標準工程間隔時間及び標準最終養生時間を表18.8.2に示す。
表18.8.2 木部のつや有合成樹脂エマルションペイント塗りの標準工程間隔時間及び標準最終養生時間
18.8.4 鉄鋼面のつや有合成樹脂エマルションペイント塗り
(1) 材 料
(ア) 鉛・クロムフリーさび止めペイント2種
18.3.2(2)(ア)を参照する。
(イ) 水系さび止めペイント
18.3.2(2)(ウ)を参照する。
(ウ) つや有合成樹脂エマルションペイント
18.8.2(1)(イ)を参照する。
(2) 塗 装
(ア) 水系さび止めペイント又は鉛・クロムフリーさび止めペイント2種の性能を発揮させるためには、素地ごしらえを十分に行い、鉄鋼面に良くなじませるように塗装する。
(イ) 塗料の標準工程間隔時間及び標準最終養生時間を、表18.8.3に示す。
表18.8.3 鉄鋼面のつや有合成樹脂エマルションペイント塗りの標準工程間隔時間及び標準最終養生時間
18.8.5 亜鉛めっき鋼面のつや有合成樹脂エマルションペイント塗り
(1) 材 料
(ア) 水系さび止めペイント
18.3.2(2)(ウ)を参照する。
(イ) つや有合成樹脂エマルションペイント
18.8.2(1)(イ)を参照する。
(2) 塗 装
塗料の標準工程間隔時間及び標準最終養生時間を、表18.8.4に示す。
表18.8.4 亜鉛めっき鋼面のつや有合成樹脂エマルションペイント塗りの標準工程間隔時間及び標準最終養生時間