2023年12月27日
6章 コンクリート工事 3節 コンクリートの材料及び調合
3 節 コンクリートの材料及び調合
6.3.0 一般事項
建築物に使用するコンクリートが所要の性能を満足するようにするためには、使用前に、各材料が所定の品質を満足することを試験又は生産者から提出された資料等により確認するとともに、「標仕」 2 節[ コンクリートの種類及び品質]に示される各種規定を満足するよう、試し練り等を行って適切に調合することが重要である。
6.3.1 コンクリートの材料
6.2.1(c)でも述べたように、平成28年6月13日に平成12年 建設省告示第1446号の一部が改正され、エコセメントや再生骨材H を使用したコンクリートについても JIS A5308に適合したものであれば国土交通大臣の認定を受けなくても使用できるようになったため、平成28年版「標仕」からは、これらのコンクリートについても一部の材料の組合せや用途を除いて特記をせずに使用できることとなった。
(a) セメント
(1) セメントの分類
( i ) セメントの分類を図6.3.1 に示す。
わが国におけるポルトランドセメント(JIS R 5210)の全アルカリは、低アルカリ形を除くとNa2O換算( Na2O + 0.658K2O ) で 0.75 %以下であるが、使用する骨材によってはアルカリ骨材反応を起こすおそれがある。
なお、かつては「アルカリ骨材反応抑制対策に関する指針について」(平成元年 7月 建設省住指発第244号)の通達で、低アルカリ形ポルトランドセメントの使用がアルカリ骨材反応抑制対策の一つとして記されていた。 しかし、低アルカリ形が1995年に 11.000t 生産されたほかはほとんど製造されておらず、普通ポルトランドセメントのアルカリ量も低くなっていることなどから、平成12年にこの通達は廃止され、平成14年の国土交通省通達では「低アルカリ形の使用による抑制対策」の条文が削除されている。
図6.3.1 JIS によるセメントの分類
(ii) ポルトランドセメントは普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント及び耐硫酸塩ポルトランドセメントの6種類を基本とし、これに低アルカリ形の6種類を加え全部で12種類あり、その主な品質は表6.3.1に示すとおりである。
表6.3.1 ポルトランドセメントの種類 ( JIS R5210:2009)
@普通ポルトランドセメント(普通セメントと略称される場合もある。)は、建築のコンクリート工事用として現在最も多く使用されているセメントである。「標仕」では、特記のない場合は普通セメント又は混合セメントのA種を使用することになっているが、高炉セメント及びフライアッシュセメントともA種はほとんど生産されていないがめ、一般には普通セメントを使用することが多い。
A早強ポルトランドセメント(早強セメントと略称される場合もある。)の比表面積(ブレーン値)はJISでは表6.3.1のように定められているが、市販品では 4,700 cm2g程度である。比表面積はセメント粒子の細かさを示す値で、この値が大きいほど細かくセメントと水との化学反応(水和反応)が活発になるため、図6.3.2に示すように他のポルトランドセメントよりも早期に強度が得られる。そのため、工期の短縮に有効であると共に、硬化初期の水和発熱量(凝結・硬化中に起こる発熱を水和熱という。)が大きいことから寒中コンクリートにも適している。ただし、発熱によるひび割れ等の弊害を伴うこともあるので、使用する季節や用途に注意が必要である。
図6.3.2 モルタルの圧縮強さ (JIS R 5201)
(「セメントの常識」より)
(iii) 高炉セメント(JIS R 5211)は、普通ポルトランドセメントに適量の高炉スラグ微粉末を均ーに混合したもので、その分量によってA種、B種及びC種の3種類(表6.3.2参照)が規定されているが、A種及びC種の生産量は少なく、市販品としてはB種のものが一般的である。
(iv) シリカセメント(JIS R 5212)は、普通ポルトランドセメントに適量のシリカ質の混合材を均ーに混合したもので、その分量によってA種、B種及びC種の3種類(表6.3.2参照)。耐薬品性に優れているが、2010年以降国内では生産されていない。
(v) フライアッシュセメント(JIS R5213)は、普通ポルトランドセメントに適量のフライアッシュ(火力発電所等で石炭の燃焼時に発生する微粉状の石炭灰)を均ーに混合したもので、その分量によってA種、B種及びC種の3種類(表6.3.2参照)が規定されているが、高炉セメントと同様、一般にはB種のものが多く流通している。
(vi) 上記高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメントの3種類を混合セメントと呼び、このうちB種及びC種の混合セメントは、ポルトランドセメントと比較すると、化学的な作用又は海水に対する抵抗力が大きいなどの長所がある。しかし、同一調合の場合、一般に中性化の進行が早く、早期強度の発現が小さいので、かぶり厚さや型枠の存置期間の検討が必要である。
表6.3.2 混合セメントの種類 (JIS R5211 : 2009、R5212:2009及びR5213:2009)
(F) エコセメントは、都市ごみ焼却灰を主とし、必要に応じて下水汚泥等を加えたものを主原料として製造される資源リサイクル型のセメントであり、2002年に JIS R5214 (エコセメント)として JIS化された。JIS R5214では、構成鉱物や塩化物イオン含有量によって普通エコセメントと速硬エコセメントに分類されている。2003年には、これらのうち塩化物イオン量が 0.1%以下の普通エコセメントのみが、JIS A5308(レディーミクストコンクリート)に取り入れられた。また、 2004年 4月からはグリーン購入法特定調達品目にも指定されている。
ポルトランドセメントとは
固まったときの色合いが、イギリスのポートランド島の石灰石に似ているので、ポルトランドセメントと名づけられた。粘土、石灰石を粉砕、焼成して石膏を加えてつくる。
(2) 高炉セメント及びフライアッシュセメントの品質
(i) 高炉セメントは、高炉スラグ微粉末の混合比(分量)によって使用したコンクリートの硬化途中の強度発現性状等が異なるため、上記 (1)(B)でも記したように、高炉スラグ微粉末(分量)によって3種類に分類されている。B種は規格上 30%を超え60%以下となっているが、市販されている高炉セメントの高炉スラグの混合比(分量)は 43%前後のものが多い。
普通ポルトランドセメントと比較すると次のような特徴がある。
@ 初期強度はやや小さいが、4週以降の長期強度は同等又は同等以上になる。
A 耐海水性や化学抵抗性が大きい。
B 一定量以上使用した場合にアルカリ骨材反応の抑制に効果がある。
(ii) フライアッシュセメント
良質なフライアッシュはコンクリート中でボールベアリングのような働きをし、練混ぜ水を減少させることができ、ワーカビリティーの良いコンクリートが得られる。 また、水和発熱量が比較的小さく、マスコンクリートに適する。更に、高炉セメントと同様にアルカリ骨材反応の抑制にも効果がある。
なお、上記(1)(D)でも記したように、フライアッシュの混合比(分量)によって3種類に分類されており、B種は規格上 10%を超え20%以下となっている。市販されているフライアッシュセメントのフライアッシュの混合比(分量)は 17%前後のものが多い。
(b) 骨 材
(1) 骨材は、コンクリート体積の約7割を占め、その品質がコンクリートの諸性質に大きな影響を及ぼすので、良い品質のコンクリートをつくるためには原則として.堅硬で物理的・化学的に安定であり、適度な粒度・粒形を有し、有害量の不純物・塩化物等を含まない骨材を使用する。しかし、骨材の品質は、地域差もあり、あらかじめその地域の骨材の種類と品質の実態を把握しておくことが重要である。やむを得ず低品質の骨材を使用しなければならない場合には、コンクリートの要求性能と骨材の品質との関係を試し錬りを行って十分に把握し、必要に応じて計画調合等を検討することが重要である。
(2) 骨材の種類及び品質
(i) 骨材の種類は、「 標仕」6.3.1 (b)により、JIS A5308の附属書A (規定)[レディーミクストコンクリート用骨材]に規定されている砕石及び砕砂、スラグ骨材、人工軽量骨材、再生骨材H並びに砂利及び砂である。
(ii) フェロニッケルスラグ細骨材、銅スラグ細骨材及び電気炉酸化スラグ骨材は、普通骨材に比べて密度が大きく、使用される地域も限定されている。また、再生骨材H は、全国的に十分な供給量がまだ流通していない。よって、これらの骨材を使用する場合は、設計担当者が特記しなければならない。
(iii) 骨材の品質は、砕石及び砕砂は、JIS A5005(コンクリート用砕石及び砕砂)に、高炉スラグ粗骨材及び高炉スラグ細骨材は、JIS A5011-1(コンクリート用スラグ骨材ー第1部:高炉スラグ骨材)に、フェロニッケルスラグ骨材、銅スラグ骨材、電気炉酸化スラグ骨材及び再生骨材H は、それぞれ JIS A5011-2(コンクリート用スラグ骨材ー 第2部:フェロニッケルスラグ骨材)、JIS A5011-3(コンクリート用スラグ骨材ー第3部:銅スラグ骨材)、JIS A5011-4(コンクリート用スラグ骨材ー第4部:電気炉酸化スラグ骨材)及びJIS A5021(コンクリート用再生骨材H ) に規定されている。
(iv) スラグ骨材を他の骨材と併用する場合、表面がガラス質のため、使用するスラグ細骨材の種類によっては保水性が小さくなり、 天然の骨材に比ベブリーディング量がやや多くなったりブリーディング速度が速くなったりする場合があるので注意しなければならない。 このような場合には、微粉末の使用、実積率の大きい骨材の使用、高性能AE減水剤の使用等材料の選定に加え、水セメント比の低減等の検討が必要である。
(v) 骨材の密度及び吸水率
@ 骨材の強さは、密度及び吸水率によりある程度の判定ができる。通常、絶乾密度は 2.5g/cm2以上、吸水率は 3.0%(細骨材は 3.5%)以下ならよいとされている(表6.3.3 参照)。
しかし、砂利や砂の場合、一部の地方では、これを満足するものが人手できない場合もある。 この場合は、絶乾密度は 2.4g/cm2以上、吸水率は 4.0%以下なら、コンクリートとして所要の性能が得られることを試し練り又は信頼できる資料等により確かめられれば使用してよい。
表6.3.3 JIS A 5005 : 2009による砕石・砕砂の物理的性質
A 普通の石材の吸水率は表6.3.4 に示すとおりであるが、おおむね吸水率の少ないものほど堅硬、密実で良質の骨材になると考えられる。
表6.3.4 石材の吸水率
B骨材の絶乾状態及び気乾状態並びにその際の吸水量、含水量等の関係を図6.3.3 に記す。
図 6.3.3 骨材の含水状態
(3) アルカリ骨材反応抑制対策
( i ) アルカリ骨材反応に関しては、昭和60年頃から問題が顕在化し、平成元年には建設省の技術審議官通達、監督課長通知、建築指導課長通知等が出されたが、平成14年には新たに「アルカリ骨材反応抑制対策について」(平成14年国官技第112号:技術審議官等通達)と連用のための「「アルカリ骨材反応抑制対策について」について」(平成14年 国営技第55号:建築課長通達)の(別紙)「アルカリ骨材反応抑制対策(建築物)実施要領」が、平成15年には「アルカリ骨材反応抑制対策(建築物)実施要領に関する運用について」 の事務連絡が出され、その後のJIS A5308(レディーミクストコンクリート)の改正、 JIS Q1011 (適合性評価一日本工業規格への適合性の認証一分野別認証指針(レディーミクストコンクリート))の制定、「標仕」の改定を経て、その対策が確立されてきた。
(ii) 「アルカリ骨材反応抑制対策(建築物) 実施要領」における検査・確認の方法を、次に示す。
@ アルカリシリカ反応性試験方法(化学法)による骨材試験は、施工着手前、工事中 1回/6箇月、かつ、産地が変わった場合に、受注者等が公的試験機関に依頼して行う。 また、試験に用いる骨材の採取にも受注者等が立ち会うことが原則となる。
A アルカリシリカ反応性試験方法(モルタルバー法)による骨材試験は、コンクリート生産工程管理用試験に規定される骨材のアルカリシリカ反応性試験方法(迅速法) で骨材が無害であることを受注者等が確認する。この場合も、施工着手前、 工事中1回/6 箇月、かつ、産地が変わった場合に、公的試験機関で行い、試験に用いる骨材の採取にも受注者等が立ち会うことが原則となる。
(iii) 「標仕」では、高炉スラグ骨材を除いて、原則として骨材は「アルカリシリカ反応性試験の結果が無害と判定されるもの」(アルカリシリカ反応性による区分Aのもの)を使用することとしているのでアルカリシリカ反応性による区分を受注者等にレディーミクストコンクリート配合計画書及びアルカリシリカ反応性試験成績表で確認させておく必要がある。
なお、アルカリシリカ反応性試験方法は、JIS A1145(骨材のアルカリシリ力反応性試験方法(化学法)) 又は JIS A1146(骨材のアルカリシリカ反応性試験方法(モルタルバー法))による。
(iv) しかし、地域等によっては、上記の試験の結果が 「無害と判定されないもの」や「試験を行っていないもの」(アルカリシリカ反応性による区分Bのもの)を使用せざるを得ない場合もある。 その場合は、事前調査により設計担当者が区分Bのものを使用することを特記しなければならない。 特記により区分Bの骨材を使用する場合は「標仕」 6.3.1 (b)(2)に基づいた対策を受注者等に提案させ、その内容を設計担当者等と検討して対応の可否を判断する 。
(4) 高炉スラグ粗骨材を使用する場合は、JIS A5011-1 に基づいて使用する骨材の絶乾密度吸水率及び単位容積質量が、 同 JIS の区分Nを満足することを受注者等に確認させ、その結果を報告させることが必要である(表 6.3.5 参照)。なお、高炉スラグ粗骨材は、普通骨材より吸水率が大きく気乾状態で用いると練混ぜ運搬及び打込み中にフレッシュコンクリートの品質が変動しやすいので、事前に散水により吸水させて用いることが望ましい。
(5) 電気炉酸化スラグ骨材は、JISマーク表示認証製品で、生産工場からレディーミクストコンクリート工場に直接納入されていること及び電気炉酸化スラグ粗骨材の絶乾密度による区分が Nであること(表6.3.5 参照)、並びに再生骨材H は、 JIS マーク表示認証製品であることを受注者等に確認させ、その結果を報告させることが必要である。
表6.3.5 JIS A 5011-1 : 2013による高炉スラグ粗骨材(区分N) 及び
JIS A 5011-4 : 2013による電気炉酸化スラグ粗骨材(区分N) の材質
(6) 粗骨材の最大寸法等
(i) 粗骨材の最大寸法
粗骨材は、鉄筋相互間及び鉄筋とせき板との間を容易に通る大きさでなければならない。 粗骨材の最大寸法は「標仕」 において次のように定めている。
@ 砕石、高炉スラグ粗骨材、電気炉酸化スラグ粗骨材及び再生粗骨材H は20mmとする。また、砂利は 25mmとする。
A 基礎等で 断面が大きく鉄筋量の比較的少ない部材の場合は、「標仕」5.3.5[鉄筋のかぶり厚さ及び間隔]の範囲で砕石、高炉スラグ粗骨材及び再生粗骨材Hは 25mm、また、砂利は 40mmとすることができる。
B 鉄筋のあきは、粗骨材の最大寸法の 1.25倍以上とする(「標仕」5.3.5 (d)(1) 参照)
C 無筋コンクリートの粗骨材の最大寸法は、コンクリート断面の最小寸法の1/4 以下、かつ、40mm以下とする。ただし、捨コンクリート及び防水層の保護コンクリートの場合は25mm以下とする (「 標仕 」 6.14.2 (a)参照)。
(ii) 骨材の粒度及び粒形
@ 骨材は、適切な粒度分布のものでなければならない。 粒度の良否によってコンクリートのワーカビリティーや単位セメント量に著しい差が生じ、ひいてはコンクリートの強度や耐久性にも影響を与える。
A 骨材の形は、球形に近いものが理想的で、偏平、細長のもの、かど立っているものなどは、コンクリートのワーカビリティーを悪くし、同一水セメント比で同一スランプを得るための細骨材率が大きくなり、単位水量、単位セメント量も多くなる。 また、偏平、細長のものは、コンクリートが外力を受けたときに不均ーな応力分布が生じて、破壊しやすいためにコンクリートの強度も低下する。
B 粒度分布を表すには次のような方法があり通常 1) 及び 2) が用いられる。
1) 各ふるいの通過率
2) 粗粒率〈FM〉
3) 各ふるいの累加残留率
4) 各ふるいの残留率
C コンクリートの品質を確保して圧送性を良くするには、骨材の粒度分布が適切であるとともに 0.3mm以下の細骨材が 15〜30%混入していることが望ましい。
(7) その他留意が必要な骨材の品質
(i) 骨材の単位容積質量・実積率
@ 単位容積質量は、単位容積当たりの骨材質量 (kg /ℓ) で、骨材の粒度が適切であれば、最大寸法が大きいほど単位容積質量は大きい。
A 実積率は骨材を容器に詰めた場合、どの程度隙間なく詰まっているかを表す指標で、 6.3.1 式より求める。 空隙率は 6.3.2 式による。
実積率
=骨材の単位容積質量 / 骨材の絶乾密度 × 100 (%) (6.3.1式)
空隙率 =100 − 実積率(%)..........(6.3.2式)
B 同一粒度、同一密度の骨材では、実積率が大になるほど骨材の粒形が良いことになる。また、骨材の密度、最大寸法及び粒度が同様な場合には、粒度分布が良いほど実積率は大となる。
C 骨材に対応する標準的実積率を表6.3.6 に示す。
表 6.3 6 骨材の実積率の標準的な値
(ii) 骨材中の泥分
泥分が骨材表面に付着していると、骨材とセメントペーストとの付着を妨げ、コンクリートの強度を低下させる。また、コンクリート中に混合している場合は、単位水量が増加し、体積変化も大きく、ひび割れも発生しやすい。
(iii) 細骨材の有機不純物
有機不純物としては、腐植土、泥炭質等があり、これらに含まれるフミン酸やタンニン酸の量が多いと、セメントベースト中の Ca(OH)2と反応して有機酸石灰塩を生じ、コンクリートの硬化を妨げ、強度や耐久性を低下させる場合がある。
(iv) 細骨材中の塩化物
@ コンクリート中の鋼材は、コンクリートの pHが10 以上の場合は、鋼の表面が鉄の水酸化物 Fe(OH)2の不働態皮膜で覆われているので錆は発生しないが、多量の塩化物が混合すると、塩化物イオンによって不働態皮膜が破壊されて錆が発生する。
A JIS A5308 附属書(規定)では、砂に含まれる塩化物量を NaCl 換算で 0.04 %以下と規定しているが、2003年の JIS R5210(ポルトランドセメント)の改正により普通ポルトランドセメントの塩化物イオンが 0.02%以下から 0.035%以下となった。これにより、コンクリートの各材料の塩化物イオンの規格上限値でコンクリート中の塩化物イオン量を算出すると0.30kg/m3を超える場合があるので、受注者等にレディーミクストコンクリート配合計画書でコンクリート中の塩化物イオン量が 0.30kg/m3を超えないことを確認させ、その結果を報告させるようにするとよい。
なお、プレテンション方式のプレストレストコンクリート部材に用いる場合は 0.02 %以下とすることになっている。
(v) 骨材を混合して使用する場合
@ 最近では1種類の骨材だけでは所要の品質や量を確保することが困難となり、複数の骨材を混合して使うことが多くなった。
A 骨材を混合して使用する場合は、JIS A5308 附属書A(規定)の A.9[骨材を混合して使用する場合]による。
1) 同一種類の骨材(例:川砂利と陸砂利(玉砕も含む。)、海砂と山砂)を混合して使用する場合は、混合したものの品質が所定の規定に適合しなければならない。ただし、混合前の各骨材の絶乾密度、吸水率、安定性及びすりへり減量については、それぞれの骨材の規定に適合しなければならない。
2) 異種類の骨材(例:川砂利と砕石、海砂と砕砂あるいは高炉スラグ細骨材等)を混合して使用する場合は、混合前の骨材の品質がそれぞれの規定に適合しなければならない。ただし、粒度調整や海砂の塩化物量の低減目的に混合する場合には、粒度と塩化物量については、混合したものが所定の規定に適合していればよい。
(vi) 全国的に見た骨材の品質と種類を図6.3.4に示す。
図6.3.4 全国的に見た骨材の種類(2012暦年)
(経済産業省製造産業局住宅産業窯業建材課
「生コンクリート統計四半期報」のデータによる)
砂(細骨材)、砂利(粗骨材)の容積比
は約30%と約40%。コンクリートの骨となる材料で、砂は細骨材、砂利は粗骨材といい、5mmを境に区別している。
(c) 水
(1) 水は、コンクリートの凝結時間、硬化後のコンクリートの強さ等の諸性質、鋼材の発錆等に影響があり、極めて重要な材料といえる。
(2) 一般に、セメントの水和に必要な水量は、セメント質量の約40%といわれ、施工時に必要な水量の内、残りの部分はコンクリートのワーカビリティーを良くするものであり、コンクリートの硬化に関与しない余剰水となる。 また、単位水量が多いと乾燥収縮が大きくなったり、透水性が高くなり、耐久性が低下しやすい。
(3) 水中の不純物が鉄筋コンクリートに与える影響
(i) 一般に、アルカリ性の強い水はセメントの凝結を遅くし、弱酸性の水は凝結を早め、強酸性では硬化しにくくなる。
(ii) 苦土や石灰は、セメントの安定性を低下させる。
(iii) 塩化物や塩素は、鉄筋の腐食を助長する 。
(iv) 水の不純物の種類と量の限度は、使用するセメントの組成、使用量等によって異なり、規定しにくいとされているが、濃度が1,000ppm 以下ならば、ほとんど影響がないといわれている。
(4) 水の使用基準等については、JIS A5308(レディーミクストコンクリート)附属書C(規定)があり、この抜粋を次に示す 。
附属書C(規定) レディーミクストコンクリートの練混ぜに用いる水
C.1 適用範囲
この附属書は、レディーミクストコンクリートの練混ぜに用いる水(以下、水という。)について規定する。
C.2 区分
水は、上水道水、上水道水以外の水及び回収水に区分する。
C.3 定義
この附属書で用いる主な用語の定義は、次による。
C.3.1 上水道水以外の水
河川水、湖沼水、井戸水、地下水などとして採水され、特に上水道水としての処理がなされていないもの及び工業用水。ただし、回収水を除く。
C.3.2 回収水
レディーミクストコンクリート工場で、洗浄によって発生する排水のうち、運搬車プラントのミキサ、ホッパなどに付着したレディーミクストコンクリート及び戻りコンクリートの洗浄排水(以下、コンクリートの洗浄排水という。)を処理して得られるスラッジ水及び上澄水の総称。
C.3.3 スラッジ水
コンクリートの洗浄排水から、粗骨材、細骨材を取り除いて、回収した懸濁水。
C.3.4 上澄水
スラッジ水から.スラッジ固形分を沈降その他の方法で取り除いた水。
C.3.5 スラッジ
スラッジ水が濃縮され、流動性を失った状態のもの。
C.3.6 スラッジ固形分
スラッジを105〜110℃で乾媒して得られたもの。
C.3.7 スラッジ固形分率
レディーミクストコンクリートの配合における単位セメント量に対するスラッジ固形分の質量の割合を百分率で表したもの。
C.4 上水道水
上水道水は、特に試験を行わなくても用いることができる。
C.5 上水道水以外の水
上水追水以外の水の品買は、C.8.1 の試験方法によって試験を行い、表 C.1 に示す規定に適合しなければならない。
表 C.1 上水道水以外の水の品質
C.6 回収水
C.6.1 品質
回収水の品質は.C.8.2 の試験方法によって試験を行い、 表C.2 に示す基定に適合しなければならない。 ただし、その原水は C.4 又は C.5 の規定に適合しなければならない。
なお、スラッジ水を上水道水、上水道水以外の水、又は上澄水と混合して用いる場合の品質の判定は、スラッジ固形分率が 3 %になるように、スラッジ水の濃度を5.9 %に調整した試科を用い、C.8.2.4及び C.8.2.5の試験を行う。
表 C.2 回収水の品質
C.6.2 スラッジ固形分率の限度
a) スラッジ水を用いる場合には、スラッジ固形分率が 3%を超えてはならない。なお、レディーミクストコンクリートの配合において、スラッジ水中に含まれるスラッジ固形分は水の質量には含めない。
b) スラッジ固形分率を 1%未満で使用する場合には、12.1に規定する表8(レディーミクストコンクリー ト配合計画書)の目標スラッジ固形分率の欄には、’'1 %未満’'と記述することとし、この場合のスラッジ固形分率の値は、管理期間ごとに 1%未満となることを確認すればよいこととする。
なお、このスラッジ固形分率を 1%未満で使用する場合には、スラッジ固形分を水の質量に含めてもよい。
C.6.3.3 スラッジ水の管理
スラッジ水の管理は、次による。
a) バッチ濃度調整方法 又は連続濃度測定方法を用いる。
バッチ濃度調整方法は、スラッジ水の濃度を一定に保つ独立した濃度調整槽をもつ場合に用いることができる管理方法である。独立した濃度調整槽をもたない場合には、スラッジ水の濃度を連続して測定できる自動設度計を設置して測定することによる連続濃度測定方法を用いればスラッジ水の管理ができる。
b) C.6.2 に適合するように、スラッジ水の管理状況に対応して、コンクリートに使用するスラッジ水の濃度を定めて管理する。
c) バッチ濃度調整方法を用いる場合には、スラッジ水の濃度を測定・記録し、目標スラッジ固形分率となるようにスラッジ水の計量値を決定して、スラッジ水を使用する。
なお、スラッジ水の設度の測定は、1日1 回 以上、かつ、濃度調整の都度行う。
d) 連続濃度測定方法を用いる場合に、はスラッジ水を使用する度にその濃度を自動濃度計によって測定・記録し、自動演算装置を用いて目標スラッジ固形分率となるようにスラッジ水の計量値を決定して、スラッジ水を使用する。
e) スラッジ水の濃度の測定精度の確認は、少なくとも3 か月に1 回の頻度で.C.8.2.6によって行う。 また、スラッジ水の濃度の測定方法として自動濃度計を用いる場合は、始業時にスラッジ水の密度から自動濃度計の表示値を確認し、これを記録する。
f) スラッジ水の濃度及び測定器具の精度確認の記録は、購入者からの要求があれば、スラッジ固形分率の算出根拠として提出する。
C.7 水を混合して使用する場合
2種類以上の水を混合して用いる場合には、それぞれが C.4、C.5 又はC.6 の規定に適合していなければならない。
JIS A5308:2011
(d) 混和材料
(1) 混和材料の使用目的は、おおむね次のとおりである。
(i ) ワーカビリティーの改良
(ii) 長期材齢又は初期材齢における強度の増大
(iii) 水密性の増大
(iv) 乾燥収縮の低減
(v) 耐久性の向上
(2) 混和材料の分類を、 図 6.3.5 に示す。
図6.3.5 混和材料の分類
混和材料について「標仕」 6.3.l (d)では、種類及び適用は特記 によるとし、特記がなければ.種類は次によるとしている。
( i ) 混和剤の種類は、JIS A6204(コンクリート用化学混和剤)によるAE剤、AE減水剤又は高性能AE減水剤とし、化学混和剤の塩化物イオン(Cl-)量による区分は、I 種とする。また、防錆剤を併用する場合は、JIS A6205(鉄筋コンクリート用防せい剤) による防錆剤とする。
(ii) 混和材の種類は、JIS A6201(コンクリート用フライアッシュ)によるフライアッシュの T 種、 lI 種若しくはW種 JIS A6206( コンクリート用高炉スラグ微粉末)による高炉スラグ微粉末、JIS A6207(コンクリート用シリカフューム) によるシリカフューム又は JIS A6202(コンクリート用膨張材)による膨張材とする。
(3) JIS A6204(コンクリート用化学混和剤)の抜粋を次に示す。
なお、JIS A6204 は 2011 年の改正で、6.2のコンクリート試験における空気量は、基準コンクリートの空気量に 3.0%を加えたものに対して、0.5 % を超える差があってはならないこととなった。 また、練混ぜのバッチ数は 1 バッチとすること、圧縮強度試験用供試体の養生温度は 20±2℃とすること、コンクリートの試験日数は 1 日とすること及び管理試験の名称を性能確認試験と改め、 6箇月に 1回の頻度で実施することとなった。
1 適用範囲
この規格は、コンクリート用化学混和剤(以下、化学混和剤という。)として用いる AE剤、高性能減水剤、硬化促進剤、減水剤、AE減水剤、高性能AE減水剤及び流動化剤について規定する。
3 用語及び定義
この規格で用いる主な用語の定義は、JIS A0203(コンクリート用語)によるほか次による。
3.1 化学混和剤
主として、その界面活性作用及び/ 又は水和調整作用によって、コンクリートの諸性質を改善するために用いる混和剤。
3.2 AE剤
コンクリートなどの中に、多数の微細な独立した空気泡を一様に分布させワーカビリティー及び耐凍害性を向上させるために用いる化学混和剤。
3.3 高性能減水剤
所要のスランプを得るのに必要な単位水量を大幅に減少させるか、又は単位水量を変えることなくスランプを大幅に増加させる化学混和剤。
3.4 硬化促進剤
セメントの水和を早め、初期材齢の強度を大きくする化学混和剤。
3.5 減水剤
所要のスランプを得るのに必要な単位水量を減少させる化学混和剤。
3.6 AE減水剤
空気連行性能をもち、所要のスランプを得るのに必要な単位水量を減少させる化学混和剤。
3.7 高性能AE減水剤
空気連行性能をもち、AE減水剤よりも高い減水性能及び良好なスランプ保持性能をもつ化学混和剤。
3.8 流動化剤
あらかじめ練り混ぜられたコンクリートに添加し、これをかくはんすることによって、その流動性を増大させることを主たる目的とする化学混和剤。
3.9 標準形
化学混和剤の種類で、コンクリートの凝結時間をほとんど変化させないもの。
3.10 遅延形
化学混和剤の種類で、コンクリートの凝結を遅延させるもの。
3.11 促進形
化学混和剤の種類で、コンクリートの凝結及び初期強度の発現を促進させるもの。
3.12 基準コンクリート
化学混和剤の性能を試験する場合に基準とする化学混和剤を用いないコンクリート。ただし、流動化剤の性能を試験する場合にはAE剤を使用する。
3.13 試験コンクリート
化学混和剤の性能を試験する場合に試験の対象とする化学混和剤を用いたコンクリート。
3.14 形式評価試験
製品を開発した当初に性能確認として行う全項目試験。
3.15 性能確認試験
形式評価試験で確認された性能と同等の性能をもつことを定期的に確認するために、その一部項目について行う試験。
4 種類
化学混和剤の種類は、性能によって表1、塩化物イオン(Cl-)量によって表 2のとおり、それぞれ区分する。
表1 化学混和剤の性能による区分
表2 化学混和剤の塩化物イオン(Cl-)量による区分
5 品質
5.1 性能
化学混和剤の性能は、6.2 によって試験を行ったとき、表3に適合しなければならない。 (6.2 省略)
表 3-化学混和剤の性能
5.2 塩化物イオン (Cl-)量
塩化物イオン量は、6.3によってコンクリート中の量を求め、その値が表2に適合しなければならない。(6.3 省略)
5.3 全アルカリ量
全アルカリ量は、6.4 によってコンクリート中の量を求め、その値が0.30kg/m2 以下でなければならない。(6.4省略)
JIS A 6204 : 2011
(4) AE剤
AE剤は、コンクリート中に無数の独立した微細気泡を連行させることができる。この気泡は、コンクリートに次のような効果をもたらす。
@ ワーカビリティーが良くなる(気泡のボールベアリング作用による。)。
A 単位水量を減少させることができる(一般にプレーンコンクリートに比べて 8%程度減少できる。)。
B コンクリートの凍結融解に対する抵抗性を増し、耐久性を向上させる。
C 中性化に対する抵抗性を増大させる。
D 圧縮強度は、空気量にほぼ反比例して低下する。
(5) AE減水剤
(@) AE減水剤は性能に応じて、標準形、遅延形及び促進形に分けられる。その用途等は次のとおりである。
@ 標準形は、主として一般のコンクリートに用いられる。
A 遅延形は、コンクリートの凝結を遅らせ、暑中コンクリートやマスコンクリート等に用いる場合がある。
B 促進形は.コンクリートの初期強度の発現を促進し、寒中コンクリート等に用いる場合がある。
(A) AE減水剤は、セメント粒子に対する分散作用と空気連行作用を併有する混和剤で、所要のコンシステンシーを得るための単位水量は、プレーンコンクリー トに比べて 12〜16%減少できる。
(6)高性能AE減水剤
高性能AE減水剤は、高い減水性とスランプ保持性能を有する混和剤で、凝結時間が通常のコンクリートとあまり変わらない標準形と、暑中コンクリートやマスコンクリート等に適した遅延形とがある。
その主成分の化学的組成からナフタリン系、ポリカルボン酸系、メラミン系、アミノスルフォン酸系に分類される。ただし、この分類は、あくまで便宜的なもので、同系統に属していてもコンクリートに用いたときの性能は、主成分の化学構造が全く同じでないこと、配合されている副次成分の違いなどから必ずしも同ーではない。
高性能AE減水剤は、従来の AE剤や AE減水剤と同様にプラントでミキサーに投入し、他の材料と同時に練り混ぜる方式により、プレーンコンクリートに対し減水率を 16〜25 %程度にすることができる化学混和剤であり、特にスランプロス防止に重点をおいて開発されたものである。
高性能AE減水剤の主な機能は、@高いセメント分散作用、Aスランプ保持作用であり、用途としては次のようなものが挙げられる。
@ 単位水量上限規制への対応
A コンクリートの高耐久性化(単位水量の大幅低減)
B 高流動コンクリートの製造
C 高強度コンクリートの製造
D 単位セメント量低減による水和熱の低減等
(7) 流動化剤
流動化剤は,あらかじめ練り混ぜられたコンクリートに添加、かくはんし流動性を増して、コンクリートの品質と施工性の改善をする混和剤である 。
なお、 I 類コンクリートであっても、レディーミクストコンクリート工場出荷後、荷卸し地点等で流動化剤を添加する場合は、JIS Q1001(適合性評価 日本工業規格への適合性の認証 一般認証指針)及びJIS Q1011(適合性評価 日本工業規格への適合性の認証一分野別認証指針(レディーミクストコンクリート))の認証範囲から外れる可能性がある。 このような場合には、II 類コンクリートとして扱わなくてはならないので、その使用には注意が必要である。
(8) フライアッシュ
( i ) フライアッシュは、燃料として微粉炭を使用している火力発電所のボイラーの煙道に設けられた集塵機で回収される鉱物質の微粉で、人工ポゾランの一種である。 良質なフライアッシュは粒子表面が滑らかで球状を呈しているので、AE剤による気泡と同様な作用をする。
(ii) 良質なフライアッシュを混合すると同ースランプのコンクリートを得るのに、混合率(内割り)10%(質量比)当たり単位水量を3〜4%程度減らすことができる。
(iii) フライアッシュは JIS A 6201(コンクリー ト用フライアッシュ)の I 種、II 種 又はW種に適合するものとし、ワーカビリティーや圧送性の改善、プリーディングの減少、水和熱の抑制等の目的で、セメントの一部として(内割り)あるいば骨材の一部として(外割り)用いられる(内割り、外割りについては(vi)参照)。フライアッシュの品質を表6.3.7 に示す。
表6.3. 7 フライアッシュの品質 (JIS A 6201 : 2008)
(iv) フライアッシュを内割りに混合する場合の混合率の限度は、セメント量の10%以内とする。
(v) フライアッシュの混合によりコンクリー トの中性化が促進されるといわれているので鉄筋に対するコンクリー トのかぶり厚さを確保するよう特に注意する。
(vi) フライアッシュ の混合の内割り、外割り
@フライアッシュを「内割りに混合する」とは図6.3.6 のような割合に混合することをいう。「標仕」6.3.2(2)(vi)Bの場合に適用する。
図6.3.6 フライアッシュの混合の内割り
Aフライアッシュを「外割りに混合する」とは図 6.3.7 のような割合に混合することをいう。「標仕」6.3.2(2)(vi)Aの場合に適用する。
図6.3.7 フライアッシュの混合の外割り
6.3.2 コンクリートの調合
コンクリートの計画調合は、所要のスランプ、空気量、強度及び耐久性が得られ、かつ、「標仕」2節に示される各規定の要求事項を満足するよう、次の項目に注意して定めなければならない。
(1) 調合管理強度及び調合強度
(i) 調合管理強度
平成19年版「標仕」では、調合管理強度(Fm)に相当する値は、設計基準強度(Fc)、構造体コンクリートと供試体強度との差(△F= 3 N/mm2)、気温によるコンクリート強度の補正値(T)を考慮して(Fc+△F+T)としていたが、平成22年版「標仕」からは、調合管理強度は、(△F+ T)に代わって、セメントの種類及びコンクリートの打込みから材齢28日までの予想平均気温に応じて定められた構造体強度補正値(S)を取り入れ(Fc+S)に改められている。
(A) 構造体強度補正値(S) はセメントの種類、予想平均気温の範囲に応じて「標仕」表6.3.2に示すように、3N/mm2、6N/mm2としている。
なお、構造体コンクリートの強度については 6.2.2(c)を参照するとよい。
(B) 調合強度(F)は、一般的には標準養生した供試体の材齢 m 日における圧縮強度で表し、6.3.3式を満足するように定めることになる。
F ≧ Fm + α × σ ( N/mm2 ) ・・・(6.3.3 式)
α:はコンクリートの許容不良率に応じた正規偏差
σ:強度のばらつきを表す標準偏差
JASS5 では、αを許容不良率 4%に相当する 1.73 を用いている。また、σは発注するレディーミクストコンクリート工場の実績に基づいた値を用いればよい。もし発注するコンクリートの生産実績が少ないなどの場合には、2.5 N/mm2又は 0.1 Fm の大きい方の値を用いる。
(2)調合条件
コンクリートに要求される品質として、所要の強度を確保すること、打込み時のワーカビリティーを確保することは当然であるが、近年、鉄筋コンクリート造の構追物が劣化している様々な事例が指摘されており、コンクリートの耐久性(コンクリート中の塩化物含有量、中性化、ひび割れ、海塩粒子、アルカリ骨材反応による影響等に対して)を確保することがコンクリート構造物の継続的利用に極めて重要となっている。 これらの理由から「標仕」では次の規定を設けている。
なお、次にいう水セメント比の最大値、単位水量の最大値及び単位セメント量の最小値とは、レディーミクストコンクリート工場において調合設計を計画した時のそれぞれの目標値のことである。
@ 「標仕」では.荷卸し地点における空気量は、4.5%と規定されている。
AE剤、AE減水剤、高性能AE減水剤を用いて、コンクリート中に微細な空気泡を連行すると、連行空気量にほぼ比例して所定のスランプを得るのに必要な単位水量を低減でき、ワーカビリティーが改善されるとともに、凍結融解作用に対する抵抗性が増大する。しかし、空気量が 6 %以上になるとそれ以上空気量を増やしてもフレッシュコンクリートの品質は改善されなくなり、空気量が 3%未満では凍結融解作用に対する抵抗性の改善に対する効果が少ない。 このため空気量の確認時期・地点を荷卸し地点とし、その時のコンクリートの空気量を 4.5%としている。
A 水セメント比の最大値(上限値)は、平成22年版「標仕」では、普通ポルトランドセメント及び混合セメントの A種は 65%、混合セメントのB種は60%とされていたが、平成25年版「標仕」では新たに早強ポルトランドセメント及び中庸熱ポルトランドセメントを使用する場合は65%、 低熱ポルトランドセメントを使用する場合は60%とする規定が追加されている。
鉄筋コンクリートの一般的な劣化は、コンクリート表面からの水・炭酸ガス・塩化物その他の浸入性物質によりもたらされるが、これらの劣化要因からコンクリートを健全に守るためには、一般に水セメント比を小さくすればよい。このため強度上必要な水セメント比とは別にコンクリートのワーカビリティー・均一性・耐久性を確保するために水セメント比の最大値を定めている。
B 「標仕」では、単位水量の最大値を185kg/m3 と規定するとともに、コンクリートの強度気乾単位容積質量、ワーカビリティー、スランプ及び構造体コンクリートの仕上り状態が「標仕」2節に規定される品質を満足する範囲でできるだけ小さくするよう規定されている。
近年、良好な砂利、砂に代わり砕石、砕砂が多用されるようになると、スランプを一定値以下に抑えても単位水量は大きくなる一方であり、コンクリートの乾燥収縮率の増大が懸念されている。その一方で、最近は高性能AE減水剤によりコンクリートのスランプを比較的容易に変えることができるようになり、単位水量が 185kg/m3 以下でもスランプ 18cmにすることが容易となっている。このような理由から、コンクリートの品質を確保するためにスランプの規制以外に単位水量の制限が設けられている。
C 「標仕」では、単位セメント量の最小値を 270kg/m3と規定するとともに、Aの水セメント比及びBの単位水量から算出した数値以上と規定されている。
なお、単位セメント量は、6.3.4式によって求められる。
C =W / x ×100 ・・・・・・(6.3.4式)
C:単位セメント量 (kg/m3)
W:単位水量 (kg/m3)
x:水セメント比 ( %)
単位セメント量は水和熱及び乾燥収縮によるひび割れを防止する観点からできるだけ少なくすることが望ましい。しかし、単位セメント量が過小であるとコンクリートのワーカビリティーが悪くなり型枠内へのコンクリートの充填性の低下、豆板や巣、打継ぎ部における不具合の発生、水密性、耐久性の低下等を招きやすい。 このためコンクリートの強度を確保するための条件とは別に単位セメント量の最小値が規定されている。
D 細骨材率
「標仕」 では、「2節に規定するコンクリートの品質が得られる範囲内でできるだけ小さくする」と規定されている。 細骨材率を小さくすると一般に所要のスランプを得るための単位水量は減るが、がさがさのコンクリートとなり、また、スランプの大きいコンクリートでは、粗骨材とモルタルとが分離しやすくなり、ワーカビリティーが低下する。
一方.細骨材率を大きくすると所要のスランプを得るための単位水量を多く必要とし、流動性の悪いコンクリートとなる。このため、レディーミクストコンクリート工場では、所要のワーカビリティーが得られる範囲内で単位水量が最小になるように試験により最適な細骨材率を定めている。
E 混和材料
1) 混和剤の使用量
AE剤については、所定の空気量が得られるようにその使用量を定める。
AE減水剤については、セメントに対する定められた質量比等の範囲内で使用量を定め、空気量については、空気量調整剤 (AE剤)で所定の空気量が得られるように調整する。
高性能AE減水剤については、セメントに対する定められた質量比等の範囲内で単位水量及びスランプが得られるように使用量を定める。また、空気量については、空気量調整剤(AE剤)で所定の空気量が得られるように調整する。
2)良質なフライアッシュは球形をしており、ボールベアリング効果により、ポンプの圧送性を改善する。普通ポルトランドセメントを用いたコンクリートで圧送が困難な場合、フライアッシュU種又はW種を外割りで混合することができる( 6.3.1(d)(8)(E) 参照)。
なお、フライアッシュの種類については、平成22年版「標仕」までは、I種又はU種であったが、平成 25年版「標仕」では、U種又は W種に変更されているので、フライアッシュの混合使用が行われる場合には、受注者等に調合計画表等を提出させて確認するとよい。
3) 普通ポルトランドセメントを用いたコンクリートで水セメント比の制限等により、強度上必要なセメント量を超える場合は、その部分をセメント全量の10%(質量比)の範囲でフライアッシュT種又はU種に置き換えることにより、単位水量の低下、単位セメント量の低下等が図られ、乾燥収縮等を改善することができる (6.3.1(d)(8)(E) ➀ 参照)。
また、「標仕」 では記載されていないが、高炉スラグ微粉末を適量混合することにより、水和熱の抑制、アルカリ骨材反応の抑制、硫酸塩や海水に対する化学抵抗性の向上、水密性の向上等が期待できる。
なお、普通ポルトランドセメントと置換できるフライアッシュの種類については、平成22年版「標仕」まではU種だけであったが、平成25年版「標仕」では、新たに I種も追加されている。
4) 上記 1)〜3)以外で混和材料として多く用いられるものには流動化剤、膨張材、防錆剤等があるがその使用方法使用量についてはコンクリートの種類や使用目的によって異なるので、使用が特記された場合は、コンクリートの所定の性能が得られるよう試し線り及び信頼できる資料を受注者等に提出させて確認することが重要である。
F 塩化物量
コンクリートは、通常pH=12.5〜13程度の強アルカリ性を呈し、その中に埋め込まれた鉄筋の表面は薄い酸化皮膜で覆われ、不働態化して腐食から保設されている。
しかし、大気中の炭醗ガスやその他の酸性物質の浸透によって徐々にアルカリ性が失われ、中性化が鉄筋の位置まで進行すると鉄筋の腐食に対する保澁作用を失い、更に、水分と酸索が供給されると鉄筋は腐食し始める。
コンクリート中に一定量以上の塩化物が存在すると、塩化物イオンの作用によってコンクリートの中性化が進行していなくても、不働態皮膜が破壊され、鉄筋は腐食し始める。
これらの理由から、「標仕」ではコンクリートに含まれる塩化物の値に制限が設けられ、塩化物イオン量で 0.30kg/m3以下と規定されている。
なお、塩化物イオン量が0.30kg/m3を超えることがやむを得ないと判断した場合は、設計担当者と打合せのうえ、受注者等に次の基準に従った処置の方法を提案させ、「標仕」1.1.8 による協議に基づいて処置する必要がある。
1) コンクリート中に含まれる塩化物含有量の基準
鉄筋コンクリート造等建築物の構造耐力上主要な部分に用いられるコンクリートに含まれる塩化物量(塩化物イオン(Cl-)換算)は、原則として 0.30 kg/m3以下とし、やむを得ず塩化物量が 0.30 kg/m3を超え 0.60 kg/m3 以下のコンクリートを使用する場合は、次のイ)からニ)までの条件を満たすものとする。
イ)水セメント比は、55%以下とする。
ロ)AE減水剤又は高性能AE減水剤を使用し、スランプは 18cm以下(流動化コンクリートではベースコンクリートのスランプは15cm以下、流動化後のコンクリートのスランプは21cm以下) とする。
ハ)適切な防錆剤を使用する。
ニ)スラブの下端の鉄筋のかぶり厚さを3cm以上とする。
2)離島等で海砂以外の骨材の入手及び除塩用水の確保が落しく困難であり、塩化物量が 0.60kg/m33を超える場合においては、有効な防錆処理が施された鉄筋の使用等による防錆対策を講ずる。
3) 塩化物量の測定は、「標仕」表6.9.1による。
G アルカリ骨材反応
1) アルカリ骨材反応とは、反応性シリカを含む骨材とセメント等に含まれる Na+、K+ のアルカリ金属イオンが、水の存在下で反応してアルカリけい酸塩を生成し、これが膨張してコンクリートにひび割れ、ポップアウト等を生じさせる現象をいう。
2) アルカリ骨材反応は、この反応にかかわる鉱物の種類によって、アルカリシリカ反応とアルカリ炭酸塩反応とがあり、わが国で問題となっているのは主としてアルカリシリカ反応である。
3) この反応性をもつ鉱物としてはオパール、クリストバライト、トリジマイト、火山ガラス、玉髄、石英等があり、反応性シリカ鉱物を含む岩石としては輝石安山岩、チャート等がある。
4)アルカリ骨材反応は、一般に@反応性骨材、A高いアルカリ量、B十分な湿度の 3条件がそろった場合にコンクリートに被害を生じさせるとされている。
5)アルカリ骨材反応の抑制対策として 次のような方法が考えられる。
イ)反応性の骨材を使用しない。
ロ)コンクリート中のアルカリ総量を低減する。
ハ)アルカリ骨材反応に対して抑制効果のある混合セメントを使用する。
6) 以上のことから、「標仕」ではコンクリートはアルカリ骨材反応を生じるおそれのないものとしている。
H 計画調合の決定
1) 計画調合は、試し練りによってそのコンクリートの性能を確認して定めることを原則としているが、I 類コンクリートを使用する場合は、試し練りは、省略してもよいとしている。
2) 試し練りにおいて、計画スランプ、計画空気量、調合強度(標準養生した材齢28日の圧縮強度 )、その他コンクリートの温度や塩化物量、単位容積質量等を確認する。
なお、試し錬りの計画スランプ、計画空気量については、レディーミクストコンクリートの練混ぜから荷卸し地点までのロスを考慮した目標値であることに注意する。
また、運搬によるスランプロスや空気量ロスは、練混ぜから荷卸し地点までの距離、コンクリートのスランプ、外気温、調合条件等によって相違があるので、レディーミクストコンクリート工場の社内規格を参考にするとよい。
3) 計画調合の表し方
コンクリートの計画調合は、JIS A 5308(レディーミクストコンクリート)の表8[レディーミクストコンクリート配合計画書]により表す。
4) レディーミクストコンクリート工場では I類コンクリートについては、使用する材料で調合設計を標準化している。レディーミクストコンクリート工場における計画調合の定め方の一例を図6.3.8 に示す。
図 6.3.8 レディーミクストコンクリート工場における計画調合の求め方の例
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