4節 軽量鉄骨天井下地
14.4.1 適用範囲
(a) この節は、一般的な天井仕上材の下地となる軽量鉄骨下地材を用いた屋内及ぴ屋外軒天井の下地工事に適用する。屋外の用途としては、外部に面するピロティ、ひさし等の天井である。ただし、天井材の単位面積当たりの質量が20kg /m2を超える天井、水平でない天井等の特殊な要求性能や不整形な形体の天井は,特記による。
また、システム天井は、材料、部材等や工法においても、「標仕」とは異なり、除くものとする。
なお、天井下地材を「標仕」に規定する軽量鉄骨下地材とし、天井仕上材をせっこうポード(厚さ9.5mm)とロックウール化粧吸音板(厚さ9.0mm)の2枚張り程度とした一般的な天井の場合、天井材の単位面積当たりの質量は約15kg /m2程度である。
(b) 作業の流れを図14.4.1に示す。
図14.4.1 軽量鉄骨天井下地工事の作業の流れ
(c) 施工計画書等
(1) 施工計画書の記載事項は、おおむね次のとおりである。
なお、赤文字を考慮しながら品質計画を作成する。
@ 工程表(必要に応じて室別、場所別に工程表を作成)
A 製造所名,施工業者名及び作業の管理組織
B 使用材料の材質、種類,形状、寸法等
C 加工、機器場所等(切断溶接等)
D 加工,組立、又は取付け工法
E 風圧力による検討(屋外の条件、場所等の検討)
F 耐震性の検討(大規模空間の天井に関しては崩落対策の検討)
G 養生方法
H 作業のフロー、管理の項目・水準・方法、品質管理体制・管理責任者、品質記録文書の書式とその管理方法等
(2) 施工図の検討は、次について行う。
(i) 吊りボルトの割付け
(ii) 各部取合いの納まり及び補強方法(設備用機器類,改め口等)
(3) 野縁・野縁受の運搬・保管には、曲がりやねじれが生じないよう留意する。
(4) 施工箇所の点検項目としては次のような点がある。
(i) 前工事として天井内配管等の完了確認
(ii) 吊りボルト取付けのための天井インサート位置・割付けの確認
(iii) 天井周辺部の壁面の精度確認
以上のような点について確認を行い、天井下地材の施工に支障がある場合は、関係者による協議を行いその処置方法を決定する。
(5) 墨出し
基準墨をもとにして施工図に従い、周囲の壁面に天井下地材の下端の墨出しを行う。
14.4.2 材 料
(a) 天井下地材
(1) 天井下地材及び天井下地材付属金物は、JIS A 6517(建築用鋼製下地材(壁・天井))の規格を満たすものとする。図14.4.2に天井下地材の構成部材及び付属金物の名称を、表14.4.1に天井下地材の構成部材の種類及び組合せを示す。
図14.4.2 天井下地材の構成部材及び付属金物の名称
表14.4.1 天井下地材の構成部材の種類及び組合せ(JIS A 6517:2010を基に作成)
(2) 天井下地材に使用する材料の防錆処理は表14.4.2の亜鉛の付着量で示される。製品は、溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯をスリッターにより定尺幅に切断し、冷間ロールフォーミングにより成形されたものが用いられている。
(3) 天井下地材の性能は、JIS A 6517により定められており、亜鉛の付着量、部材の形状安定性試験及び載荷試験を行い、表14.4.2の規定に適合したものとなっている。
表14.4.2 天井下地材の性能(JIS A 6517 : 2010を基に作成)
(4) 天井下地材の構成部材の寸法は、JIS A 6517により表14.4.3のように定められている。
表14.4.3 天井下地材の構成部材の寸法(JIS A 6517 : 2010)
(5) 野縁受は、19形と25形で板の厚さが異なるので注意して使用する。
(b) インサート及び吊りボルト
インサートは鋼製とする。断熱材打込み等の場合で特殊インサートを用いる場合は設計図書の指定による。また、吊りボルトはJIS A 6517では転造ねじ、ねじ山径9.0mm(円筒部径8.1mm以上)としており、防錆処理としてはJIS H 8610 (電気亜鉛めっき)に規定する1級以上、JIS H 8625(電気亜鉛めっき及び電気カドミウムめっき上のクロメート皮膜)に規定する1級CM1A以上又はこれと同等以上としている。
14.4.3 形式及び寸法
(a) 天井下地の組み方の一例を図14.4.3に示す。
図14.4.3 天井下地の組み方
(b) 屋内の野縁間隔は、「標仕」14.4.3 (b)で、図14.4.4のように定めている。
図14.4.4 屋内の野緑の間隔
(c) 軒天井、ピロティ天井等屋外の野縁等の間隔は、地域性、個別性等の諸要件により風荷重が異なるので「標仕」では特記によるとしている。したがって、設計担当者等が構造計算等によって野縁等の間隔等を定めることになる。
なお、監督職員は、施工計画書で、実際に使用する部材の断面性能等を使った構造計算により確認された工法であることを確かめて、承諾することになる。
14.4.4 工 法
(a) 野縁は、一方向に配置するものであり、格子組みとすることはまずない。配置の方向は、照明器具締との関係を考慮し、なるべく野縁を切断しないようにする。
(b) コンクリート打込みのインサートを使用しないで、あと施エアンカー等を用いると、コンクリートに打ち込まれているパイプ等を損傷することがあるので避ける対応が望ましい。
(c) 野縁と野縁受の留付けクリップは、交互につめの向きを変えて留め付ける(図14.4.5 参照)。
なお、クリップのつめが野縁受の溝側にくる場合は、溝内に十分折り曲げる。特に屋外の場合は注意して行う。
図14.4.5 クリップの留付け
(d) 野縁受及び野縁同士のジョイントは、所定の付属金物を用い、それぞれ吊りボルト、野縁受の近くに設け、そのジョイント部の配置は、図14.4.6に示す千島状になるように施工することが望ましい。
図14.4.6 野緑受、野緑同士のジョイント
(e) 下地張りがなく野縁が壁等に突き付く場合の野縁端部のコ形又はL形の金物は、天井目地の目地底にするとともに野縁の通りをよくするためのものである。
下地張りがなく野縁が壁に平行する場合の端部には.ダプル野縁を用いる。
(f) 照明器具ダクトのための補強
(1) 「標仕」14.4.4 (e)には.設計図書に表示されたものについて行うことと定められているが、この表示とは、照明器具の位置、大きさ、個数が天井伏図、特記仕様書等に表示される場合のことをいう。工事との取合い等により必要となる開口部の補強が設計図書に明示されていない場合は、設計変更により処置する必要がある。
(2) 天井には,点検口,照明器具,ダクト等が設置されるので,器具類の大きさにより、野縁を切断する必要がでてくる。これらの箇所は、強度の不足を補うとともに、野縁の乱れを防止するために補強する必要がある。また、野縁等の切断には溶断は行わない。
開口部の補強は図14.4.7のように行う。
図14.4.7 開口部の補強
(g) 下がり壁、間仕切壁を境として、天井に段違いがある場合は、補強を間隔 2.7m程度に図14.4.8の(イ)、(ロ)のように行う(「標仕」14.4.4 (g)参照)。ただし、(ハ)の場合で、床スラプ等に壁下地が固定されている場合は、補強を行わなくてもよい。
(h) 天井のふところが1.5m以上の場合は、補強用部材又は[ - 19 x 10x 1.2 (mm)以上を用いて、吊りボルトの水平補強、斜め補強を行う(「標仕」14.4.4 (h)参照)。ここでいう補強用部材とは、所定の強度を有する軽量鋼製形材である。
その補強方法は、「標仕」では特記によるとされているが、特記がない場合は、(i)及び(ii)による。
(i) 水平補強は、縦横方向に間隔1.8m程度に配置する。
(ii)斜め補強は、相対する斜め材を1組とし、縦横方向に間隔 3.6m程度に配置する(図14.4.8の(ニ)参照)。また、縦方向の相対する斜め材の接合部と横方向の相対する斜め材の接合部が同じ場所に重ならないように注意する。
天井のふところが、3.0mを超える場合の補強は、「標仕」では特記によるとされており、詳細に検討された所定の方法で行うことになる。
なお、ここでいう水平の補強及び斜めの補強は、耐震性を考慮することを意図したものではない。特別に耐梃性を考慮する必要がある天井の場合には、建物との共振の検討や周辺の構造体や墜とのクリアランスの確保等の検討をしたうえで、適切に補強材を設置するなどの対策を考える必要がある。参考として、「大規模空間を持つ建築物の天井の崩落対策について(技術的助言)」(平成15年10月15日 国住指第2402号)及び「地震時における天井の崩落対策の撤底について(技術的助言)」(平成17年8月26日 国住指第1427号)がある。
また、特定天井(脱落によって重大な危害を生ずるおそれがあるものとして国土交通大臣が定める天井をいう。)については、「特定天井及び特定天井の構造耐力上安全な構造方法を定める件」(平成25年8月5日国土交通省告示第771号)が公布された。
(i) ビル風の影響を受ける高層部分の軒天井、広いピロティの天井の端部等では、風圧による大きな力を受けるため、「標仕」14.4.4 (k)では特記により補強を行うこととしている。
具体的な補強方法は、作用する風圧力により設計されるが、一般的には耐風圧等を考慮した野縁受、野縁、吊りボルト、ハンガー及びクリップを使用する方法がある。
(j) 廊下等天井裏に通るダクト幅が広くて野縁受を吊れない場合に、ダクトフランジにアングル等を溶接して吊っている例があるが、ダクトの振動による悪影響があるので野縁受の部材断面を大きくするなどの処置をとり、必ずダクトと切り離して施工を行う。
また、ダクト等によって吊りボルトの間隔が900rnmを超える場合は、その吊りボルト間に水平つなぎ材を架構し、中間から吊りボルトを下げる2段吊りという方法で対応することができる。
図14.4.8 屋内の天井の補強
(k) 現場での溶接を行った箇所には、「標仕」表18.3.2のA種の鋳止め塗料を途り付ける。
なお、高速カッター等による切断面には、亜鉛の犠牲防食作用が期待できるため、錯止め塗料塗りは行わなくてよい。
(l) 施工後の確認
仕上材取付け前の確認項目は、次のとおりである。
(i) 野縁の割付け、開口部、下がり壁等の位置及び寸法
(ii) 目違いや段差の有無
(iii) 天井の高さ
なお、天井高さの精度は測定器や水糸等を張り、±10mm以内とするのが望ましい。また、天井面にむくり(部屋の中央を若干高くすること)によって感覚的には平面に見えることが知られている。
(iv) 開口部補強の適否
(v) 溶接した箇所の錆止め塗装