13 節 マスコンクリート
6.13.1 一般事項
一般に、断面寸法の大きい部材に打ち込まれたコンクリートは、硬化中にセメントの水和熱が蓄積され内部温度が上昇する。このため、コンクリート部材の表面と内部に温度差が生じたり、また、全体の温度が降下するときの収縮変形が拘束されたりして、ひび割れが生じるなどの問題が起きやすい。また、1回に打ち込むコンクリートの量が大量になる場合が多いので、入念な打込み計画のもとに施工しないとコールドジョイントが生じやすくなる。コールドジョイントが発生しないようにするためには、連続的に打ち込むことが重要である。また、先に打ち込まれ硬化したコンクリートからの拘束をできるだけ小さくするように打込み区画の大きさ、打込み順序・打込み時間間隔を定めることが重要である。
そこで「標仕」では、「部材断面の最小寸法が大きく、かつ、セメントの水和熱による温度上昇で有害なひび割れが入るおそれがある部分のコンクリート」は、マスコンクリートとしてこの節を適用することとしている。
この場合の目安としては、最小断面寸法が壁状部材で800mm以上、マット状部材・柱状部材で 1,000mm以上である。柱状部材では外部拘束が小さいので温度ひび割れが入りにくいが、構造体の強度発現に留意する必要がある。このほかに、設計要求性能のレベル、コンクリート強度、部材形状、拘束の程度、1回に打ち込まれるコンクリー卜量、実績等を考慮して、その適用を定める必要がある。
6.13.2 材料及び調合
(a) 部材の内部温度の上昇は、 他の条件が同じであればセメントの水和熱に比例して増加する。セメントの水和熱の大きさは、セメントの化合物の中でも、C3S(けい酸三カルシウム)、C3A(アルミン酸三カルシウム)の多少によって影響される。したがって、内部温度を低減するためには、できるだけ発熱量の小さいセメントを選定する必要がある。
マスコンクリートには、水和熱の小さい中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント又はフライアッシュセメントB種を用いるのがよい。これらのセメントは地域によっては入手が難しいことがあるので、事前に供給について確認しておくことが必要である。
高炉セメントB種はこれまで「標仕」のマスコンクリートの標準的なセメントであった。 最近の高炉セメントは、高炉スラグの粉末度を高くして強度発現性を改良する領向にあり、発熱速度が速くなるものもあるため、使用に当たっては注意が必要である。
早強ポルトランドセメントは、水和熱が大きいので用いない方がよい。
(b)化学混和剤の中のAE減水剤及び高性能AE減水剤の使用は、単位水量を減少させ、その結果、単位セメント量も少なくなり、温度上昇は小さくなる。特に、AE減水剤遅延形及び高性能AE減水剤遅延形は、セメントの水和反応を抑制し、温度上昇を緩やかにするのでマスコンクリートに適している。
AE減水剤標準形及び高性能AE減水剤標準形を用いる場合は、コンクリートの品質を確保しながら、減水効果が高<、単位セメント量をなるべく少なくできるものを用いるのがよい。
AE減水剤促進形は、セメントの水和反応が促進され、初期の水和熱量を増大させるので、使用してはならない。
混和材を用いる場合は、コンクリート用フライアッシュT 種若しくは U 種又はコンクリート用高炉スラグ微粉末の3000若しくは4000を用いる。 ただし、フライアッシュ I 種は粉末度がU 種より大きく、発熱抑制効果がU種より小さいことが指摘されているので、信頼できる資料若しくは事前の試験等により性状を確認してから使用するのがよい。
(c) コンクリートの練上がり温度が高いと、最高温度も高くなり温度ひび割れが入りやすくなるので、使用する材料はなるべく温度の低いものを用いるようにする。骨材は使用量が多く、練上がり温度に及ぼす影響が大きいので、直射日光が当たらないようにしたり、散水をするなどしてなるべく温度が高くならないようにする。ただし、細骨材に散水すると表面水の管理が難しくなるので、避けたほうがよい。
(d) コンクリートの内部温度上昇を小さくするための重要な事項の一つは、単位セメント量を少なくすることである。粗骨材の寸法を大きくしたり、混和材・化学混和剤を活用するなどの使用材料上の配慮を行うとともに、次のようなコンクリート調合上の配慮が必要になる。
(1)必要以上に調合強度を高くしない。
(2)できるだけ低スランプとする。
(3)必要に応じ流動化剤を有効に使用する。
なお、詳しい内容は、JASS 5 21節[マスコンクリート]を参照するとよい。
(e) 構造体強度補正値(S)は、基本的には一般のコンクリートと同じであるが、中庸熱ポルトランドセメント及び低熱ポルトランドセメントを用いる場合、暑中期間における補正値は 6 N/mm2 ではなく、3 N/mm2でよいことになっている。
6.13.3 製 造
荷卸し時のコンクリート温度が高いほど内部温度上昇は速く進み.最高温度が高くなり.温度降下速度も大きくなる。また、大量のコンクリートを長時間にわたって打ち込む場合、荷卸し時のコンクリート温度が高いと、セメントの水和熱による温度上昇も加わって凝結が速くなり、コールドジョイント等の問題が生じやすい。このため、「標仕」では.荷卸し時のコンクリートの温度を35℃以下と規定している。
6.13.4 養 生
コンクリートの内部温度をできるだけ低くするのが、マスコンクリートの施工の最も大切なことであるが、内部温度を低くする目的で、コンクリート表面を冷水等で冷やしても、マスコンクリートの場合は主に表面部分の冷却のみにとどまり、内部の温度上昇を低くするのにはあまり効果がなく、かえって内部と表面部の温度差を大きくし、ひび割れを誘発する場合が多い。マスコンクリートのひび割れ防止のためには、 内部と表面部の温度差及び部材温度の降下速度をできるだけ小さくすることが重要である。このため型枠の存置期間を長くするなどの養生を行い、せき板等の脱型は表面部の温度と外気温との差が小さくなってから行うことが大切である。
6.13.5 試 験
(a)マスコンクリートの調合計画では、 一般の場合と異なりコンクリート部材の予想平均養生温度に基づいて調合強度を決定している。 また、構造体コンクリートの強度検査では、構造体コンクリートと同じ温度履歴を供試体に与えることが困難であるため、標準養生による供試体の強度試験結果による間接的な検査を行っている。
(b)構造体コンクリート強度の推定試験の判定は、ポテンシャル強度の確認によっているので、材齢 28日の圧縮強度試験結果が、調合管理強度以上であれば合格となる。
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