2.材 料
10.2.3 その他の材料
a)セメントモルタル
1)使用材料
セメントモルタルの材料は、15.2.2 による。基本的に、セメントは普通ポルトランドセメント、砂は粗目とする。石材が白色系や透明度の高い大理石の場合には、川砂中の不純物によって大理石を黄変させたり、裏込めモルタルあるいは取付け用モルタルの色が表面に透けて見えることがあるので、寒水石粒等白色系の砕砂を白色ポルトランドセメントを用いる。
2)調合
セメントモルタルは使用する部位に応じて、その要求する軟度が異なり、施工性および施工後の品質に影響を及ぼす。セメントモルタルの調合は、目安が「標仕」表10.2.5に定められているが、これ以外は15章に準ずる。
3)混和材料
石工事に用いるセメントモルタルに混合される混和材料は、モルタルの用途に応じていくつかの種類がある。
@裏込めモルタルは、躯体と石材の間を確実に充填し、充填部分にじゃんか等の欠陥が生じず、モルタルと石材や躯体との間に隙間が生じないことなどが要求されるために、減水材・分散剤等の混和材が用いられる。
A敷きモルタルは、いわゆるバサモルと称されるもので、混和材料が使用されることは少ない。
B張り付け用ペーストや目地モルタルには接着性・防水性等が期待され、メチルセルロース、SBRや防水剤等が用いられる。
4)取付け用モルタル
取付け用モルタルは、特に急結性を要し、硬化の早い材料を使用する。最近は止水・充填・補修用の材料である止水用セメントが多く使われている。石裏面の各種の金物は、金物表面が結露しやすく、その際にモルタル中に塩分が存在すると腐食が促進されるため、塩化カルシウムを含む急結剤は使用してはならない。
5)目地モルタル
目地モルタルは、作業性の向上、ひび割れ防止および白華防止等を目的として既調合セメントモルタルが数種類市販されており、既調合材料を使用することが望ましい。ただし、現場調合とする場合は、「標仕」表10.2.5による。
b)石裏面処理材
1)石裏面処理材が使用される目的は、主としてぬれ色および白華の防止であり、湿式工法で採用される。また、乾式工事や空積工法においても、最下段の石は水分の多い環境に取り付けられるため、ぬれ色、白華対策として石裏面処理材を使用することが望ましい。
2)石裏面処理材は、各接着剤製造所によって様々なものが開発されているが、過去の実績や不具合等の例を知っている石材施業者の指定する製品を用いるのが無難である。
3)石裏面処理材は、製作工場で施工することを原則とするが、止むを得ず現場で塗布する場合には換気に留意する。
c)裏打ち処理材
裏打ち処理材は、繊維補強タイプ(クロスヤチョップを樹脂で張り付けたもの)と、石材の荷重受けとしての力石のようなものとに分けられる。
@)繊維補強タイプは、石材が衝撃を受けた場合の飛散・脱落防止を目的として乾式工法や空積工法の壁および上げ裏等で採用される。
A)力石は、石材の小口に引金物を設けにくい箇所、石材荷重を納まり上見ばえよく受けるため、あるいは石材を補強するために石裏面に施すもので、乾式工法、湿式工法および空積工法で用いられる。
d)シーリング材
シーリング材の詳細は第9章6節を参照されたい。シーリング材は使用部位や目的に応じて使い分けなければならないが、石工事において留意すべき点は、目的周辺部の汚染である。
@)成分の移行による石材そのものの汚染は、プライマーによって防止できることが多いので、プライマーを必ず使用する。その際、表面と小口との角の部分は切断状態がシャープでなく欠けていたりして、プライマーが十分塗布できず、しみが発生する要因になることがある。目地幅は、プライマー塗布の作業性等も考慮して、最低 6mm以上を確保する。
A)ほかにもシーリング材に付着した塵あいによる汚れ等にも留意する。
B)特に大理石の場合には、シーリング材からの揮散成分が付着した目地周辺部に、汚染が比較的多いので、事前にシーリング材製造業者および石材施工業者と協議することが望ましい。
C)花こう岩等についても吸水率の大きい材種については同様である。
D)汚染の観点から評価すると、表10.2.12のようになる。シーリング材は、石工事ではなくシーリング工事の範囲で取り扱われることから、硬化後の諸性能に勝る2成分形の使用がほとんどである。
表10.2.12 シーリング材による汚染の観点からの評価
e)ドレンパイプ
ドレンパイプは石裏または石目地裏に設け、浸入水の排水と通気による裏込めモルタルの乾燥促進を図り、ぬれ色や白華を防止するためのものでその仕様は特記による。石材の縦目地ごとに設けることが望ましいが、事例としては縦目地2〜3本ごとおよび出隅・入隅に配置することが多い。一般的に樹脂ネット製の25〜35φのパイプに目詰まり防止用としてクロスのメッシュを巻いたものが使用されている。
f)だぼ穴充填材
だぼ穴充填材にはセメントペースト、エポキシ樹脂、ゴムチューブ等が用いられている。それらは、次の事項に留意して選定しなければならない。
@)だぼ穴に充填しやすい
A)取り付け金物の形式に応じた硬さを持つ
B)適度の接着強度をもつ
C)石材を汚染しない
D)適度の止水性能を持つ
E)変質・膨張しない。