2022年09月03日
デジタルファシズム
デジタル・ファシズム 日本の資産と主権が消える (NHK出版新書 655 655) [ 堤 未果 ] 価格:968円 |
■各国が警戒するオンライン会議ツール「ZOOM」(P22)
カナダのトロン大学グローバルセキュリティ研究所が、「ZOOM」の暗号化キーが、中国の北京にあるサービスを経由していたことを公表した。
この発表を聞いた台湾行政院は、すぐに政府及び特定非政府期間に対し、ZOOMを使用しないように勧告した。
アメリカ上院は議員らに利用禁止を通達し、同時期にNASAも利用を禁止する。グーグルやマイクロソフトは、社内会議でのZOOM禁止令を出した。ニューヨーク市は、市内の学校に、オンライン授業でZOOMを使わないように呼びかけている。
ドイツではデジタル委員長が、機密保護に関する懸念から、国内企業にZOOMを極力控えるべきだと訴えている。
そんな中、日本では、内閣官房情報通信技術総合戦略室と、内閣サーバーセキュリティセンターが、国会審議の質問通告や政策に関する国会議員とのZOOM解禁を、各省庁に通知したのだ。
■2024年にタンス預金が没収される?(P174)
・終戦直後の1946年日本で行われた預金封鎖
政府は預金者が銀行に殺到するのを防ぐため、予告なしに「預金封鎖を行います」と発表した。
ピンときた国民は慌てて銀行に走り、預金をできる限り引き出した。
だが、ここで政府は、さらなる発表をする。
「お札は新しいデザインに切り替わります」それ以降は古いお札が無効になるということでだ。預金封鎖前に急いで銀行から下ろした預金も、自宅の現金も銀行に持っていって新しいお札に交換しなければ、もう使えなくなってしまう。
その翌日、政府は預金封鎖を開始した。人々が銀行に持ってきた旧貨幣を数えると、一人一人の資産が明らかになる。これを記録しデータが揃ったところで、いよいよ本命の政策を実行する。10万円を超える預金に、財産税をかけたのだ。財産税は資産総額が大きいほど税率も高くなる。例えば1500万円を超える資産を持ている人にかけれれた財産税は90%。多額の資産を持つ富裕層は一網打尽だった。
マイナンバーの導入は2023年に完了するように設定されている。マイナンバーの口座紐づけによる国民の預金把握。2024年に、新札が発行される。「オリンピックとコロナパンデミック対策のための大規模な財政出動」
多くの人が「預金封鎖の再来」を不安視するのは、不気味なほど1946年と同じ条件が揃っているからだ。2024年に登場する新一万円札のデザインに使われる渋沢栄一が、かつて預金封鎖を実施した渋沢敬三大蔵大臣の祖父だったというのも、当時国民が受けたショックを覆うと、何とも言えないブラックジョークだろう。
(財産税は財産権の侵害だ、憲法にひっかかるじゃないか。いまの憲法では違憲になる。しかし、自民党の日本国憲法改正草案の99条第1項には、「緊急事態の宣言が発せられたときは、法律の定めるところにより、内閣は同一の効力を有する政令を制定することができるほか、内閣総理大臣は財政上必要な支出その他の処分を行い、地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる」)
■生体識別情報を収集する「TikTok」(P24)
中国の動画共有アプリ「TikTok」は、規約を以下のように変更した。
(あなたのユーザー・コンテンツから、フェイスプリントやボイスプリントといった、アメリカの法律で定義されている、生体識別情報を収集することがあります。)
これによってTikTokは、ユーザーがら許可なく、顔写真や声紋といった、生体識別情報の収集ができるようになった。
生体認証は安全性が高い認証方法だが、その分不正に入手されればかなり精巧なな偽造パスポートなどが作られるため、なりすまし被害が防げず深刻な問題を引き起こす。
■最高権力を持つ「デジタル庁」が来る(P28)
2021年5月12日
「デジタル庁設置法」や「デジタル社会形成基本法」など・合計63本もの法案を束ねた「デジラル関連法案」が衆議院本会議で可決された。
デジタル庁には、大きな特徴が三つある。
一つ目は、権限がとてつもなく大きいこと。
デジタル庁は内閣の直轄機関であり、デジタル改革大臣は内閣総理大臣を直接補佐する立場だ。そして通常は閣議決定を通さないと出せない他の省庁への勧告も、直接出せる強い権限がデジタル改革大臣に与えれれる。つまり、内閣府より上位に位置する省庁だ。
二つ目は巨額の予算がつくこと。
三つ目は民間企業との間の「回転ドア」の存在だ。
IT人材不足が著しいここ日本で、公務員レベルの給与で良い人材を集めようとしても限界がある。ならば回転ドアをくぐるように、民間企業と政府の間を自由に出入りできるようにすれば、今の仕事を辞めずに柔軟に働いてくれるだろうと。
だが、本当にそうだろうか?
グローバル企業と政府の間を利害関係者が頻繁に行き来するアメリカでは、「回転ドア」は利益相反と同義語だ。企業から出向してくる人間たちは政策決定の場に入り、自社に都合の良い政策を誘導した後、再びドアをくぐって会社に戻り、出世の階段を上がってゆく。
政府の内部事情がわかるので、当然インサイダー的な情報漏洩も危ぶまれるポジションだ。
企業側に有利なこの仕組みによって、軍需産業に製薬業界、食品、農業、エネルギー、金融業界に教育ビジネスと、巨額の税金が流れ続けている。
■政府サービスにアマゾンはOKか?(P32)
安全システムに関わる政府システム、他国の民間企業に任せるケースは世界でも珍しい。
デジタル化する際、マイナンバーに統合される私たち日本国民の戸籍、年金、税金、健康保険などの個人情報を扱や、防衛、外交などの国家機密情報を扱う政府にとって最優先事項はまずセキュリティだからだ。
政府は知っているだろうか?
アマゾンがCIAやNSAなど、米国の諜報機関との関係が深い企業であることを。
■公立学校の敷地の5G基地が建てられる(P199)
高速大容量インターネット通信環境をチャンスと捉え、即座に動いた企業が楽天だ。
同社は全国の自治体を対象に、楽天モバイル基地局を学校の敷地内に設置することを条件にした、校内通信ネットワークに使うことを条件にした、校内通信ネットワークに使う回線を原則無料で提供する「GIGAスクール構想支援プラン」を発表した。
真っ先に手を挙げたのは千葉市だ。2020年3月、熊谷俊人市長は楽天と協定を締結。千葉市内の公立学校は通信ネットワークの環境整備や4Gから5G基地局の段階的設置等を楽天モバイルから導入する方針を固めた。
一方、千葉市の住民や保護者は市からこの件を知らされておらず、事後通告だったことに批判の声が上がっている。
特に5G局については、子供たちの健康への影響を不安視する声があるからだ。
電磁波などへの懸念から、ベルギー、スイス、イタリア、アメリカ・カリフォルニア州などで5G基地局設置が禁止されている。
■韓国と手を組んだゆうちょ銀行(P184)
2021年5月27日
韓国大手の新韓銀行が、日本のゆうちょ銀行と、小売金融・デジタル分野で新しいビジネスモデルを開拓する業務協約の覚書を交わしたことを発表した。
新韓銀行? 日本では新韓銀行が100%出資する現地法人の「SBJ銀行」として全国展開している外資系銀行だ。羽田空港や福岡空港内に支店を持ち、住宅ローンも提供している。シティバンク銀行に次いで二番目に金融庁の許可を受けた銀行だ。
新韓銀行の信用評価技術とゆうちょ銀行の持つ資本力を合わせれば、大きなビジネスチャンスが生まれるだろう。
だがそれは同時に、ゆうちょ銀行に口座を持つ私たち顧客の個人情報が、韓国に流れるリスクを背負うこととイコールだ。
お金の流れを追ってみると、隠された全体像がよくわかる。
新韓銀行の株は、51%が外国資本に握られている。
■2021年5月 改正銀行法(P186)
銀行が買うことのできる非上場企業の株式の上限を5%から一気に100%まで引き上げた。
これは、コロナ不況で弱った国内中小企業を、銀行が最安値で書い叩き、リストラなどのコストカットで株価を吊り上げてから転売することを可能にする法律だ。外資規制がないために、今や優れた技術力を持つ日本の中小企業を、外資のハゲタカファンドが目の色を変えて物色している。
■キャッシュレス決済一位の韓国はカード地獄(P105)
1997年のアジア危機で、IMFに介入された後、国を上げてキャシュレス計画を推進してきたのが韓国だ。
財政危機を脱するために国民の消費を促し、常態化していた小売り店などの脱税を防止するというのが表向きの理由だったが、その背景には、IMFの指示で財閥が解体された後に国内金融機関を最安値で手に入れた外国人投資家とグローバル企業群の強い意向が見え隠れしていた。
国民のクレジットカード利用率を一気に引き上げるために、韓国政府は大胆な政策を実行する。300万ウォン(約30万円)を上限に、年間カード利用額の20%を税控除の対象にし、一定以上の売上がある小売店にはカード決済の導入を義務化した。さらにカード決済レシートには当選金総額18ウォン(約1億7300万円)の宝くじ抽選番号がついてくるという大盤振る舞いだ。
この政策は大成功だった。
韓国ではクレジットカードと国民登録番号が紐づけれれているため、カードを使った消費行動は、いつどこで、何をいくらで買ったか、全ての履歴が記録されてゆく。小売店は、帳簿のごまかしができなくなった。
小売店でキャシュレス決済のインフラが整備されると同時に、大量のカードが発行された。
外資系のハゲタカファンドたちは、自分たちの手に落ちた金融機関と政府に対して容赦ない要求を出す。彼らから圧力を受けた韓国政府は、ついに禁断の規制緩和に手をつけてしまった。
キャシング貸し出し金額の上限規制を撤廃したのだ。
これによって、消費者はクレジットカードで最高1000万ウォン(約95万円)まで自動的に借入ができるようになった。
キャシュレスで買い物をすればするほど、その購買データを元にした自分好みの広告が次々と送られてきて購買意欲がそそられる。
カード会社ごとにポイントや特典がつくため、それを期限内に消化しようとしてますます買い物をしてしまう。
国民がカードを使いまくったおかげで、景気はV字回復。クレジット会社の8割りを占めるVISAとマスターはもちろんのこと、韓国金融業界の大株主である外国人投資家たちは、空前の株式上昇とカード決済手数拡大に勝利の乾杯をあげたのだった。
だが、キャッシュレスの副作用が、韓国国民の暮らしと、社会全体を確実に蝕んでゆく。
カード支払いの延滞率が、一気に増加。260万人が平均金利13%のカードローンを利用。うち56%が3社以上かた借りる多重債務者になっている。
■現金が大切な理由(P171)
ナチス政権下で全体主義の苦い経験を持つドイツでは、キャッシュレス化に反対する声がすくなくない。
緑の党の議員たちははっきりと、監視されない自由を手放さないために、お金に関するプライバシーは絶対に必要だと口を揃える。
スエーデンでは、キャッシュレスの浸透とともに強盗事件の発生件数が減った。だが、同時に詐欺事件の発生件数も上昇している。
デジタル化が進むごとに、サイバー犯罪の攻撃性が年々増加しているのだ。
キャッシュレス先進国のスエーデンでも、世論調査で7割近くの人々が、現金を残したいと回答している。理由はこうだ「通貨が完全にデジタル化されたら、システムを止められた時自分を守る術がなくなる」
■膨大な生徒たちの個人データをグーグルが収集する(P195)
福岡県久留米市では、市内の公立学校にグーグルのOSを搭載したクロームブックを一人一台導入した。プラットホームを提供するグーグルにとって、そこで収集される全小中学校の膨大なデータは、タブレットの納入額をはるかに超える価値を持っている。
生徒がタブレットを使うたびに、情報がどんどん蓄積され、個人のプロフィールが作られてゆく。
グーグルは通常これらの情報と他のデーターベースに蓄積された情報を組み合わせることで、正確で詳細な個人のプロフィールを分析し、加工し、商品化して利益を上げている。
インターネットの閲覧履歴ほど、人の関心の優先順位がわかる情報はない。
グーグルは検索履歴や訪問履歴をもとに、利用者の関心を持ちそうな広告をブラウザ上に表示するのだ。
■「改正特定商取引法」2021年6月9日国会を通過(P181)
特定商取引とは、訪問販売、電話勧誘販売、マルチ商法など、高齢者を中心に年間10万件もの被害報告が出される分野だ。
悪質な詐欺商法から消費者を守るために、それまでは契約書を紙で渡すことが義務づけられていたが、改正法では、なんとこれを、消費者側の同意があればデジタル化できるようルール変更してしまった。
コロナ禍で海外から特殊詐欺なども増えている中、デジタルに弱い高齢者は、恰好のターゲットになるだろう。
今まで本人が安易に契約しても、運よく途中で発覚することがあったのは、紙の契約書の存在に、家族や民生委員が気づいたからだ。
■街からグーグルを追い出した市民たち(P89)
2017年。トロント市はグーグル系列のIT企業に、デジタル都市建設を発注した。
カナダ政府もトロント市も企業にすっかりお任せで、マスコミも「夢の未来都市」などと礼賛、計画は着々と進んでいた。
だが、メディアが企業にそれほど支配されていないカナダで、人々は次第にこの計画の負の部分に気がつき始める。
町中にセンサーを張り巡らし、住民の行動を逐一スマホから追跡し、収集した膨大な個人データが「都市作りの参考資料」としてグーグルの姉妹会社に送られるという。
SNSには、次第に反発する声が溢れ始めた。
何月何日の何時何分にどんなゴミを捨て、
どこからどこまでバスに乗り、
どこの書店に寄ってどんな本を買ったか、
誰と会ってどこで何を食べ、何を飲んだか、
それを全部グーグルに知られることになるんだって?
プライバシーや個人情報の問題もさることながら、利便性と引き換えに自治や主権を差し出すことへの不信感、さらにもともとアメリカ人に対してある種のライバル意識が見え隠れするカナダ人特有の不満も加わって、デジタル都市計画に対する反対意見は日増しにネット上で高まってゆく。
その結果、住民の反発を行政側も抑えきれず、グーグルの姉妹会社は2020年5月に撤退を発表、計画は中止に追い込まれたのだった。
デジタルで後れをとっている日本だからこそ、今ここで立ち止まり、他国の事例を検証すべきだろう。
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