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この本は、Confessions of a Medical Heretic by Robert S. Mendelsohn 1979年の翻訳であるが、日本で最近問題となった「製薬大手ノバルティスファーマの高血圧治療薬ディオバンの論文不正事件」や「千葉県がんセンター腹腔鏡手術死亡問題」等、日本の医療における多くの問題点もこの本を読めば理解できる。医者にかかる時に読むバイブル的書物だ。
また、小児科の先生で、子育てに大変役に立つことが、多く記述されている。
■医者と患者と製薬会社
「医者は患者に害をおよぼすな」
この無害優先の教えは医学生が暗記するように命じられる西洋医学の父ヒポクラテスが残した「誓い」の一節で、医学の第一の鉄則とされている。医者たる者は患者の不利益となるようなことはしてはならないという意味だが、医者になってからその教えを実践する者はあまりにも少ない。
医学生はもうひとつ、こんな教えも学ぶ。
「ひづめの音が聞こえたら、シマウマではなくウマが来たと思え」
シマウマはウマと違いアフリカにしか生息していない。この鉄則が意味するのは、患者の体になんらかの症状が現れれば、論理的に考えて的確な判断をくだし、そのうえで症状の原因を考えよ、ということである。この鉄則も医者になってから実践しつづける者はほとんどいない。こんな悠長なことをまじめにやっていては、高価な劇薬を使う治療や儲かる医療はできなくなってしまう。
そこで、医者は患者の足音を聞けば「シマウマが来た」と思い、論理的に考えず、不的確な判断をしたうえで治療に当たることになる。子供が授業に退屈してそわそわしだせば、注意欠陥・多動性障害だから薬。血圧が少したかければ薬。鼻が詰まれば薬。気分がふさいでも薬。なんでもかんでも薬、薬、薬。
医者の周囲にはいつもシマウマが群れをなして走っている。
医者がシマウマの幻想を見つづけるのも、ひとつには多額の報酬が絡んだ製薬会社との癒着があるからだ。製薬会社が派遣する医薬情報担当者(MR)、といっても実際にやっていることは営業マンと同じなのだが、彼らは医者と莫大な利益を分かちあうために、医者と友好関係を取り結び、販売活動の一環として、豪勢な接待はもとより、使い走りから御用聞き、薬の無料サンプルの配布と日々東奔西走りしている。
薬の使用と乱用の知識について、医者が製薬会社から入手する情報は、悲しいことに営業マンや医学雑誌の広告から得たものがほとんどである。治療データ(未許可の薬を医者が患者に飲ませ副作用を調べる臨床試験の報告資料)なるものは、製薬会社が研究費を払って医者にわざわざご提出願ったものがほとんどだから、その内容はかなり疑わしい。(P78)
■医者の都合と手術
・手術は患者の症状を改善し、病気を取り除くという建前で行われている。だが実際には、手術には隠れた目的がある。医学生の重宝な教材として、人体を使っていろいろな実験ができるのだ。
・金銭欲もまた手術のやりすぎを招く原因である。もし不要な手術をすべて廃止すれば、外科医のほとんどは路頭に迷い、まっとうな仕事を探さなければならなくなる。外科医は手術で生計を立てている。
・手術のやりすぎを招くいちばんの原因は、基本的には「信念」の問題である。医者は手術に意義を見出すばかりか、メスで人の体を切り裂くことになんとも言えない魅力を感じる。だから、その魅力を堪能すべくあらゆる機会を利用して患者を手術台に招くのである。
・手術とは、医者にとって進歩を意味する。進歩は医者に優越感を与え、ほかの医者を凌駕したという意識にひたらせてくれる。(p117)
■母乳とミルクと小児科医
お湯や水で溶かせばできあがりというミルクは、カロリーが高いだけで、栄養価は劣悪なインスタント食品の元祖である。牛乳はあくまで子ウシのための母乳であり、ヒトの赤ん坊はヒトの母乳で育てるのが生物学の法則である。ウシとヒトの母乳では組織と成分が異なり、それぞれの種の母乳は、その種の乳児が発育するのに必要な栄養素を満たしている。哺乳類同士であっても、例えば子ウシにブタの乳を与える(異種授乳)と、病気になって子ウシが死んでしまうことがよくある。ミルクのようなインスタント食品を命の糧とする赤ん坊は(人口栄養児)は、母乳で育てられた赤ん坊(母乳栄養児)と比べて有病率がきわめて高い。(P160)
■保育園と早すぎる独立(P166)
一般に、仕事を通じて自己実現を図るというのは、幻想にすぎない場合が多い。仕事の多くは期待しているほど「充実感が得られる」ものではなく、退屈で決まりきった労働をただ機械的にこなすだけである。それでも働きつづけるのは食べていくためである。
家庭をつくり、子育てに励むことほど、女性に充実感を与える仕事はあるまい。女性も自己実現を目指して家庭にこもらずに積極的に外にでて活動の場を求めるべきだか、お金になる仕事でこの目的をかなえてくれる仕事は、男性の場合と同じでなかなか見つからない。たとえ見つかったとしても、日々忙しく働き続けていくうちに、やがて自分がいちばんやりたいことをする時間がなくなっていることに気がつく。しかも、ただ働いていればいいというものでなく、出世競争に勝ち抜くことが求められる。だが、こんな生存競争は、誰にとってもストレスがたまる不健康なものなのである。
家庭の外に求めた充実感は、多くの場合、幻想でしかないが、その幻想が家庭に及ぼす影響は現実のものとなって深刻な影を落とすことがある。昔の子供は六歳になってから集団生活を始めていたが、いまでは保育所が各地にできて、入所が認められるとすぐに子供を送りこむ。
保育所で子供の面倒をみるのは母親ではなく赤の他人である。本来、子供は家族に育てられるのが自然な姿であり、そこに家族間の微妙かつ繊細な力学が働く。しかし、現代社会では、子供は幼児期という人格形成上、きわめて大切な時期を他人の手によって育てられている。
そうなると、親子の間に生じた溝を埋める教育が保育所に求められるようになる。そこで、大学や短大に「幼児教育」という学科が設置され、育児経験のない育児の「専門家」が養成されることになった。
こうして、子供の成長期に欠かせない一家団欒の時間が減っていく。やがて、子供は家庭の大切さを忘れて、成長していく。
■テキサスの小学校で実際にあった話(P75)
この小学校では、脳損傷治療のために支給される政府の助成金を利用するために、いいかげんな診断基準だけで、一年間に全児童の40%を「軽度の脳損傷」にしたてあげていた。二年後、助成金は打ち切られたが、次に言語障害をもつ児童が支給の対象となると、軽度の脳損傷をもつ子供は姿を消し、今度は35%の児童が「言語障害」と診断されてしまったのである。
■生命をおびやかす危険のある医療行為
・定期健康診断を毎年うけること。
・栄養に対して無知であったり、間違った考え方をすること
・子供に予防接種を定期的に受けさせること。
・そのほか、現代医学が健康に貢献とするとして勧めているさまざまな行為(P250)
■いんちきな医学研究
科学記事が信用できるどうかを見極めるには、資金源はどこかを注釈などで調べることだ。薬の安全性についての製薬会社のデータは信憑性に乏しい。医者というものは大きな利益が絡むと、データの改変や捏造に抜群の才能を発揮するものである。(P205)
■病院がストすると死亡率が減る
1976年、南米コロンビアの首都ボゴタで、医者が52日間のストに突入し、緊急医療以外はいっさいの治療を行わなかった。現地の新聞はストがおよぼした奇妙な「副作用」を報じた。ストの期間中、死亡率がなんと35%も低下したのである。国営葬儀教会は「この現象は偶然なのかもしれないが、事実は事実である」とコメントした。―葬儀屋は、医者にストをしてもらうと死亡率が減少して、仕事が減って困ると語ったらしい。―
同じ年、ロサンゼルスでも医者がストライキを決行した。この時の死亡率の低下は18%だった。
1973年には、イスラエルでも似たようなことが起きている。ストが決行され、診察する患者の数が一日6万5千人から7千人に減らされた。ストは1ケ月間続いたが、エルサレム埋葬教会によると、死亡率が半減したという。
この現象について説明を求められた医者たちはこう答えた。
「緊急患者に限って診察したので、労力を重症患者の治療に集中することができたからだ。」
この発言は、医者が治療の必要のない軽症患者に対し、不要な治療をしなければ、人命救助に専念できるということを意味している。
■著者の栄養学に関する考え方
現代医学は四大食品群から毎日バランスよく食べるという画一的な考え方を提唱している。四大食品群とは1956年にアメリカ農務省が提唱した指針で次のようなものがある。
第一群 肉、鶏、魚
第二群 牛乳、乳製品
第三群 穀物、豆
第四群 野菜と果物
この食事指標には二つの問題がある。ひとつは、白人以外の多くの民族には、牛乳を消化するために必要な消化酵素(ラクターゼ)
が十分に分泌されないために乳糖不耐の人が大勢いること。もうひとつは、数百年の伝統によって受け継がれ、それになじんできた食生活の方が、栄養的にバランスがとれていること。
現代人の栄養に対する考え方は、さまざまな食品メーカーの利害を考慮に入れて情報操作されている。健康のことも時には考えられているようだが、ほとんどの場合はそうではない。(P243)
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