人生は凸凹だからおもしろい 逆境を乗り越えるための「禅」の作法 (光文社新書) [ 枡野俊明 ] 価格:990円 |
「吾唯足知」われただたるをしる
「知足の人は地上に臥すと雖も、安楽なりとす。不知足の者は天堂に処すと雖も、亦意に称(かな)わず。不知足の者は、富めりと雖も而も貧し」お釈迦様の「遺教経」
足ることを知っている人は、地面に寝るような暮らしをしていても、心は安らかで幸せを感じている。足ることを知らない者は、天にある御殿にようなところに住んでいても、思いが満たされるということがない。足ることを知らない者は、どんなに裕福であっても心は貧しい。(P131)
「いまあるもので十分だ。それだけでありがたい」という心でいること、その心をもって生きること、だといっていいでしょう。
龍安寺 画像リンク元
禅の修業でいちばん耐え難いと感じるのは食事です。肉、魚が食べれない精進料理がつらいのではなく、量が少なすぎるからです。
「少食(しょうじき)」と呼ばれる朝食は一杯(おかわりも可)のお粥が主食。おかずはゴマと塩を一対一の割合で炒ったゴマ塩、そして香菜(漬け物)少々だけです。
「点心(てんじん)」は昼食のことで。麦を混ぜたごはんと香菜、味噌汁がその全内容です。
「薬石(やくせき)“夕食”」は点心に別菜として大根やがんもどきの煮物などがつきます。
修業に入ってから一ヶ月ほどで、全員が十キロ〜十五キロ体重減となります。
ところが、三か月もすると、ひもじさが和らいでくるのです。質素な食事からできるだけ栄養を取り込もうとして、消化吸収の効率が高まるからでしょうか、体重をかなり戻ってきます。
この頃になると、驚くような変化もあります。座禅をしている時などに、頭が冴えわたった感覚になるのです。少量しか食べないので消化に使われる血液の量が少なくてすみ、そのぶん脳に送られる血液の量が増えて脳が活性化されるからだと思われます。
もりろん、修業中の食事をそのまま日常生活にもち込むことには無理があるでしょう。
たとえば、週のうち朝食三回をお粥にするのです。お粥は消化がきわめてよく、消火器にかかる負担が大幅に軽くなります。脳の血流がよくなって頭が冴え冴え。週に一度「精進料理の日」をつくるというのもいいかもしれません。(P135)