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■体質は生まれた時に受け継いだものと我々が日々創っているものとがある。この作るものは、環境であり、食物である。食物はその住んでいる土地に密接な関係がある。特に日本のごとく特殊な島嶼国、モンスーン地帯とシベリア寒大陸の中間にある稀な風土は、なおその食生活に特殊性と伝統を持っている。
ここに民族の伝承ということがある。長御食、遠御食という語がある。先祖代々長く続いた食物は、それだけに尊いものがある。民族の知恵、先人の知恵がこもっている。科学的に証明する、しないは、この後の問題、私達の責任である。科学的に証明できないからといって捨てて省みないのは逆の順である。五穀、味噌汁、これらの食品は日本人の血であり肉である。
言いかえると、この五穀と味噌を尊重して、生命の親として、今まで伝えてきたからこそ、日本人はこの島嶼国に数千年繁栄してきたのである。何故この味噌が科学的に立証されず、また尊重もされなかったのか。それは、私達の学んでいる医学は、日本で近々百年に充たないもので、しかも戦前はドイツ、戦後は米国を師として、学ぶに急であったためである。(P56)
■私は味噌汁を食生活の要において、それで体質を観察している。味噌汁を毎朝食べているということが、病気にかからない。病気にかかっても治り易いということと、重大な因果関係があることは信じてよいであろう。
味噌汁を食べ始めたからといって、すぐに病気に効くものではない。毎日欠かさず味噌汁を食べていると、体質がいつの間にか、病気に負けない体質になっているのである。薬の効きやすい体になっているのである。古くから医学の先哲が養生説に説いている。
薬物は上、中、下と分たれる。下薬とは服用すると、立ち所に効果のあるような薬物であるが、副作用があるものである。中薬というのは、効果はあるが、運用していると身体に害がでてくるものである。上薬とは、長く続けても、害の出て来ない、ますます身体の良くなる薬物のことである。
現代は何と、下薬の多いことか。また中薬の多いことか。そして、現代人は速攻でないと納得しない。今、薬を服用して、今、すぐに効かないと納得しない。だから上薬は影をひそめる。
味噌は上薬に類するものとさえ考える。(P26〜)
■日本人の食べ物は米麦が主食である。西欧人もパンが主食だろうと考えてはいけない。西欧人は乳製品が主食である。パンは副食である。日本人は米飯にほとんど頼っている。そねに頼りすぎるところに日本人の食の欠点がある。それは、脂肪の過少、蛋白質の不足、ビタミンBの不足、ミネラルの不足である。しかし、味噌汁を食べることにより、これも補うことができる。(P35)
■特に米飯に肉・魚肉・牛肉を食べる子にアレルギー体質、アチドージスが多い。味噌汁にはこの害がないのみでなく、動物性蛋白の腸内腐敗を処理してくれる。凍豆腐の味噌汁、麩の味噌汁は、先祖が残した私たちの身体にいちばん無理のない蛋白源である(P37)
■わかめの味噌汁を週二度くらい食べるということは生活の知恵である。わかめは、優れたアルカリ食品である。(P27)
■味噌の中に乳酸菌の種類が多種多様あることは事実である。腸内の腐敗を防ぎ、消化を有効ならしめる。これがメチニコフのいう乳酸菌の不老長生の薬である。(P54)
■昭和20年8月9日の原子爆弾は長崎市内を大半灰燼にし、数万の人を殺した。爆心地より1.8キロメートルの私の病院は、死の灰の中に、廃墟として残った。私と私の病院の仲間は、焼け出された患者を治療しながら働き続けた。
私たちの病院は、長崎市の味噌・醤油の倉庫にもなっていた。玄米と味噌は豊富であった。さらにわかめもたくさん保存していたのである。
その時私といっしょに、患者の救助、付近の人びとの治療に当たった従業員に、いわゆる原爆症が出ないのは、その原因の一つは、「わかめの味噌汁」であったと私は確信している。(P22)
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