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■郵政民営化とは、言うまでもなく、民営化され株式が公開されるのを待って、アメリカが三角合併で吸収合併するか主導権を握って三百兆円の運用権を我が物にしようとしたものです。日本国民が汗水たらし営々と貯めた三百兆円を、日本政府がアメリカに貢ごうとしたのが郵政民営化だったのです。
この売国的と言える郵政改革を、郵政選挙で国民は熱狂的に支持したのです。
アメリカの欲する日本改造を、なぜか我が国の政官財と大手メディアが一致して賛同するばかりか、その旗を振り、国民を洗脳し、ついには実現させてしまう、という流れは今も続いています。小泉構造改革をはじめ、消費増税、TPPなど国論を二分してよい改革を、大新聞が一致して支持する様はまさに壮観かつ異様です。(P13)
■読書がなぜ大事なのか(P151)
これからの教養を構成するものは、情緒や形ばかりか知識も、基本は実体験によって得られるものです。京都がどんか町かは、京都に行ってみなければ完全には理解することはできません。・・・モーツワルトやビートルズの音楽がどんなものかは、聴く以外にはないのです。ぶたれた時の痛さも、貧しくて充分に食べれない悲しさや苦しさも、そんな目にあって初めてわかります。自分自身の体験によって、そういう目にあっている人に同情したり、他人をそういう目にあわせないよう心がけることになります。
ここで大問題は、充分な知識や情緒や形を得るために、実体験だけで足りるかということです。一生の間に実体験できることはとても限られています。自らが生涯に歩いた道路の長さの総和は、世界全道路の長さの兆分の一にもなりません。出会った人の数だって限られています。・・・
にもかかわらず私達は、人間とはこういうものだ、こういう状況ではこう考え、こう思い、こう行動する、というかなり正しいイメージを持っています。これらを持たないと社会生活ができません。私達が、よく知る人はたった数名なのに、そんなイメージを持つことができるのは、映画やテレビドラマや読書などで、貧しい実体験を補強しているからです。
家族や学校で親や先生に教わる知識だって、ほんの基礎基本だけです。人間として真っ当で充実した生き方をするためにはとても充分とは言えません。これからの教養、すなわち情緒や形と一体化した知識を獲得するには、まず自ら努力して得る必要があります。実体験では余りにも足りないので、間接体験(追体験)によることになります。読書、文化、芸術などに親しむことが大切となるのです。人によっては自然や宗教もあるかも知れません。先ほど京都がどんな町かは京都に行って見なければ分からないと言いましたが、注意すべきは、それでは目に見えるものしか分からないということです。
例えば京都の金戒光明寺は、何も知らない人にとって、京大近くの丘の上のだだっ広いお寺に過ぎません。しかし書物をひもとけば、ここは、15歳より比叡山で修行を積んでいた法然上人が、43歳の時に山を下りて草庵を結んだ地であり、初めての浄土宗寺院であることが分かります。・・・
幕末には京都の治安を保ち孝明天皇を守ろうと、京都守護職として会津武士一千名がここに滞在したことも分かります。御所まで2キロ、東海道の京都入口である栗田口まで2キロ、という警護上の絶好の位置であることも分かります。
読書を代表とする疑似体験は、実体験に比べれば概して深さも強烈さもはるかに小さく、人間の教養を豊かにする力としては微々たるもの、という声が聞こえてきそうです。その通りです。力としては十分の一かもしれません。しかし、一つ一つは十分の一の深さや強烈さの疑似体験でも、自ら求めさえすれば実体験の百倍に上る回数を体験することも可能です。そうすれば実体験だけの人に比べ十倍の教養を得ることができることになります。