名医が教える飲酒の科学 一生健康で飲むための必修講義 [ 葉石かおり ] 価格:1,650円 |
■なぜ酔っ払っても家に帰れるのか(P106)
脳には、有害な物質をブロックする「血液脳関門」がある。アルコールはこの関門をやすやすと通過し、脳の機能を一時的に麻痺させるため、さまざまなおかしの行動を引き起こすのだ。
しらふのときは、脳の前頭葉によって人の理性的な行動が保たれている。しかし、ほろ酔いになってくると、前頭葉のコントロール機能が低下し普段は言わないような悪口や秘密、自慢話を言うようになるのだという。
さらに酔いが進み、小脳が麻痺してくると、千鳥足になる、呂律がまわらなくなる、スマホを操作するなど指先を使った細かい動作ができなくなってっくる。小脳は平衡感覚、細かい動き、知覚情報などを司る部位であり、この部位が低下してくると、一見して酔っ払いと認識できる状態になる。
そして、脳の海馬に影響がでると、記憶をなくしたり、同じことを何度も話したりするようになる。海馬には短期記憶を残し、それを長期記憶に変えるという役割があるため、海場の機能が低下すると、新たなことを覚えられなくなり、何度も同じ話をしたり、お金を払ったことを忘れてしまったりするのである。
だが、そんな状態でも、自宅にちゃんと帰ることができるのは、長期記憶のおかげなのだ。毎日同じ道を繰り返し通ることで、長期記憶として固定化されているので、酔っていても容易に取り出すことができる。ほとんど意識がない状態でも家に帰ることができるのはそのためだ。
旅先や出張先などで酔いつぶれてしまうと宿泊先に戻れなくなるのも、その経路が長期記憶として定着していないためなのだ。
■血中アルコール濃度が上がれば上がるほど、深刻な症状が起きる。血中アルコール濃度を急激に上げないためには、空腹で飲まないこと。アルコールは、胃では5%ほどが吸収され、残りの95%は小腸で吸収されとても速い。胃の中に食べ物があると、アルコールも胃の中にとどまり、吸収をゆるやかにすることができる。
また、酒と一緒に水を飲むことでも、血中アルコール濃度の急激な上昇を抑えることができる。(P27)
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