お金の流れで読む 日本と世界の未来 世界的投資家は予見する (PHP新書) [ ジム・ロジャーズ ] 価格:1,012円 |
■歴史は韻を踏む(P5){作家マーク・トウェインの言葉}
世界の出来事のほとんどは、以前にも起きている。まったく同じことが起きるわけではないが、何かしら似た形の出来事が、何度も繰り返されている。戦争、飢餓、不況、外国人迫害、貿易戦争、移民問題----。
現在と類似した問題が以前どのようにして起きたのかを理解すれば、現状がある程度把握できる。それがどのような結末になるかもわかる。よく、「歴史は繰り返す」というが、まったく同じことを繰り返すのではない。韻を踏むように、少しずつ形を変えながら反復をし続けるのだ。
■いつか「安倍が日本をダメにした」と振り返る日が来る(P53)
いまの日本の状態は、「紙幣を刷れば株価が上がる」という市場の原理に則っているだけだ。過去のアメリカ、イギリス、ドイツの例をみたらわかる。アべノミクスが成功することはない。いつかきっと「安倍が日本をダメにした」と振り返る日がくるだろう。とはいえ、皮肉なことに私のような投資家にとっては、株価が上がるので、最高の状態と言える。
■日本の対外純資産は世界第一位の300兆円(2018年5月)。一方、国内の財政は、地方を除いて国だけでも約898兆円の大赤字(2017年末)。しかも、その額は年々増える一方だ。借金を返すために公債を発行し、その借金を返済するためにまた公債を発行と、どうでもない悪循環に陥っている。
債務が大きい国は、常にひどい姿になって終焉する----。こういうことは、すべて歴史が教えてくれる。(P30)
■もし私が日本の総理大臣になったなら(P83)
@歳出を大幅カット
A関税を引き下げ、国境を開放
B移民を慎重に受け入れる。(日本には労働力人口が少ないため。しかし、ドイツ、シンガポールのように一度に受け入れると失敗する。)
■価格競争に走ってはいけない。(P74)
品質を犠牲にし、低価格でビジネスをすることはできる。しかし、低価格にして長続きした会社は、歴史的に見て存在しない。
1830年代、大英帝国のミッドランド(イギリスの中部地方)には、世界の機械の半分以上が集中していた。それから30年後、アメリカは、イギリスよりはるかに安い価格で商品を売った。その後、日本に移り、中国に移り、いまは、ベトナムがカンボジアに移っている。 一方で、カルティエは1847年の創業以来世界中に展開し、1926年創業のメルセデス・ベンツもそうだ。品質を落とさないからビジネスが続いている。
■教育は政府がコントロールしているので、ある意味「洗脳」と言っていいかもしれない。アメリカの学校では、全校生徒が一日の始まりには、アメリカ国旗に忠誠を誓い、国家を歌うことになっている。「ここは自分たちにふさわしい国で、アメリカ人でいられるのは、なんと素晴らしいことなのだろう。」と思わせるために。小学校に入学してすぐにこう思い込まされる。
アメリカ史も、世界史も、アメリカ式に教えられる。初めて中国を訪ねた時、私は怖くてたまらなかった。中国人は邪悪で、悪意があり危険な国民であると、それまで読んだもののせいで思い込んでいたからだ。
教育は人々の思想をコントロールするほどの力を持っているということだ。(P88)
■キャシュレス経済と各国の思惑(P226)
キャッシュレス決済は今後も世界中で進んでいく。政府は一刻も早く物理的な金もなくしたいと思っている。なぜなら、紙幣の印刷や貨幣の製造には莫大なコストがかかるからだ。紙幣・貨幣の運搬や保護にも、同じように莫大な経費がかかる。
金銭のやり取りがすべてコンピューターで行われるようになったら、政府は私たちの行動をすべて把握できるようになる。あなたが、コーヒーを飲み過ぎていることも、映画に行きすぎていることも、政府は把握するだろう。あまり気持ちのいいものではない。
■朝鮮半島が迎える劇的な変化(P93)
現在、北朝鮮は世界最低レベルの経済状況ではあるが、1980年代の中国とおなじで、これから二桁成長を遂げる。韓国と北朝鮮は統一される。
北朝鮮は昨今、多くの人材をシンガポールや中国に送りこんでいる。起業や資本主義、所有権や株式市場について学び、開国の準備をしているのだろう。
金正恩は幼少期をスイスで過ごした人物で、完全なる「北朝鮮人」とはどこか違う。彼だけではない。北朝鮮の将官たちは、若い頃に北京や上海、モスクワなどの都市に駐在した経験がある。そんな別の世界を知る者たちが国のトップ層に就くことによって、北朝鮮では、前向きな変化が起き始めている。
金正恩によってもたらされた新しい風と、昔から培われた勤勉な国民性----それを韓国の経営能力や資本へのアクセスというノウハウとうまく合わさると、非常に刺激的な国になることは間違いない。
■やがて世界を史上最悪の金融危機が襲う。通貨の混乱やインフレから身を守るには、リアルアセット(実物資産)を持つしかない。
ドイツでは第一次世界大戦後、ひどいインフレが起きた。その時生き残ったのは、不動産や株に投資していた人だった。株でなくても、金や銀でもいい。そうやって自分の身を守るのだ。
近年では、ジンバブエやベネズエラがいい例だ。ベネズエラでは、金が現地通貨で急騰している。リアルアセットを所有している人は生き残り、政府を信用しきっている人は金儲けをすることができない。特にインフレの時は政府を信用してはいけない。ベネズエラでは人がどんどん国外へ出て行っている。
アルゼンチンは過去100年の間に数回破綻したが、破綻するたびに人は金を買っていた。みな、そうやって自分の身を守ってきたのだ。トルコでも、現地通貨でいま金が急騰している。米ドルでは急騰していない。
金融緩和が進めばリアルアセットに資金が流れ込む。これは、歴史を通じて変わらぬ事実だ。
特に2008年のリーマンショック以来、金融商品に対する信用は地に堕ちた。いまは世界的にみて、金融セクターから、実際にモノを作りだしている産業へのシフトが起きている。鉱山労働者や石油生産者、そして農業従事者に、世界の中心が移りつつある。天然資源が多く存在している市場は、このシフトのおかげでますます好調になっている。
世界中が紙幣を刷りに刷っているいまこそ、リアルセットを持つべきである。世界の歴史を振りかえってみても、これだけ世界中が自国の通貨価値を低減させようと試みている時代はない。紙幣の価値が下げれば下がるほど、リアルアセットの価値が高まるのは当然の摂理だ。(P206)
■ベトナムは単一民族でみな勤勉である。多くの宗教や民族がいない地域には、多民族・多宗教の地域より安定した未来が約束されている。(P211)
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