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Love and Death「Between Here & Lost」




ソロ名義でのシングルを挟み、ついにヘッドのリーダーバンドが始動。ソロアルバムでモロに初期KORNなサウンドを出したことでまだまだやれる事を証明したが、いかんせん音がショボく、ウワモノ以外への配慮が全く足りていなかったので、きちんとメンバーが集まってバンドになったのは素直に嬉しい。このアルバムの前に出ていたソロシングルである「Paralyzed」のPVに出ていたメンツがそのままバックを固めているようだが、彼らもクリスチャンロックバンドでプレイしていた実力者だ。
バンド名義のEPに続いて発表された1stアルバム。
メンツも固まり、ソロアルバムよりアレンジや音がきちんと作られた結果、普通に現行のKORNのサウンドに近づくというのは皮肉だが、ボーカルもたまに真似というレベルでジョナサンっぽくなる。悪くはないがゴス要素やエレクトロ要素はジョナサン由来で、ギター隊は元々メタルヘッズだったはずなので借り物感は拭えない。
このアルバムを聴くと、ヘッドは知られていたパーソナリティやこれまでの経緯を考えると意外なほど器用であることが分かる。やはり結局のところ一人KORNであるものの、当時のラウドロック以降のDjentなどへの目配せもあるように聞こえるサウンドで、ボーカルも本職と遜色なくこなしている。本当に意外なほど器用だ。
それは良くも悪くもだ。世の中にKORNフォロワーのバンドなんて山ほどいるので、逆に埋もれてしまったようにも感じる。
歌詞はクリスチャンになった自己から出ているだろうが、もっとクリスチャンロックに寄せてくるかと思ったらそうでもなく、サラッと聞いた感じは「KORNでいいじゃん」と思ってしまう。
よく出来ているが故に伸び代も特殊性も感じられない残念な出来だ。色々ショボくてもソロ名義の作品の方がヘッドの作品である意味があったと思う。

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Brian “Head” Welch「Save Me from Myself」




ヘッドのソロ名義の正式な1stアルバム。
同名の自叙伝を出すくらいなので、ドラッグ中毒から抜け出したばかりのこの時期は自身との戦いだったのでろう事が察せられる。

サウンドは一聴すると、当時ジョナサン由来のゴスやエレクトロ要素が強くなっていった本家KORNよりストレートに初期KORNを思わせるサウンドで、初期好きのファンから好評ではあった。
だがいかんせん音が宅録並みにしょぼい。ドラムは薄くおそらく打ち込み、ベースはほとんど聞こえない。まるでデモ音源のようだ。
1曲目は「L.O.V.E.」でモロに「Love me, don't hate Me You're angry, it's okay Trust me, come this way Live in eternity」とクリスチャンロック丸出しの歌詞だったり、PVにもなった「Flush」はモロ初期KORNなサウンドに乗せてドラッグやアル中、飲酒運転への警告な歌詞で「Come on!Get up!Let's change!」と自分に言い聞かせるように絶叫する。当時の心情そのまんますぎて無防備にすら感じる。
あまりにモロでストレートで深みもなく、これといったフックにも欠けるため数曲で飽きてしまうが、前作の自己満インストより数億倍マシで、「ヘッドがロックに帰ってきた!」という興奮と、全然まだ正気じゃなさそうな不安定さが魅力ではあり、「Flush」のpvはいまだにたまに観る。
とはいえお勧めできるような作品ではない。


以前「Flush」一曲について書いたモノ↓
https://fanblogs.jp/gateofdoom/archive/507/0

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Brian “Head” Welch「Into the Light: The Testimony」




2005年の突然のKORN脱退からの2007年の初のソロ作。ファーストEPという事になるのだろうか?どうも自主制作のようだ。
内容はいかにもギタリストの作りそうな自己満ソロ作。
ダイムバックに捧げるならもっと練習してくれよ...と思ってしまう「A Letter To Dimebag」をはじめ、基本はインストでたまにうっすらボーカルやお祈りやお経的なモノが入りながら進んでいく。
おそらく一人で自由に作った今作は「Korn脱退後にドラッグを抜くためにで引きこもってた時期のレア音源」という事なら理解できる程度のシロモノ。
ジョン・フルシアンテほどマニアックでも無ければ、ブライアン・ウィルソンのような天才性もない。
バンドマンとして、KORNのメンバーとしては最高でもソロアーティストとしてはヒヨッコの作った稚拙と言っていい作品だ。
何となくの雰囲気もの。ダラダラとソロを続けるダイムバックへの曲が象徴的だろう。
彼にとっては意味があり、やりたかった事でも、外に出してどうなるレベルでもない。
私はKORNファンというだけでなく、彼の人生に興味を持っているので記録として聴けなくも無いが、もう一度聴きたいとはとても思えない。
まぁでも自主制作だからねぇ、これでいいのかもしれないけど。

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高橋健一郎 「ロシア・アヴァンギャルドの宇宙論的音楽論: 言語・美術・音楽をつらぬく四次元思想」




いや、全くわからねぇよ。

としか言いようがないですね。もう、「アヴァンギャルド」な上「ロシア」だし、「宇宙論的音楽論」を「四次元思想」で書いてますから。
こらー、相当なもんですよ。
「ブックオフで安く買ったらマケプレでいい値段してた本」の第二弾なんですが、もう、ちょっとわからな過ぎて読み進めませんでした。
ロシアの現代音楽とか現代美術とか全く浮かばないっすよ。固有名詞全部わからなかったんですもん。

マケプレで5000円くらいだけど、当てにならねぇよな、と思ってたけど、ユニオンで1000円近くで売れました。本の下3分の1が一度水没したような感じだったのに。
第一弾の「ラスタマン・バイブレーション」が20円買い取りだったのに比べて遥かに優秀でした。

とりあえずyoutubeで「ロシア・アヴァンギャルド」を検索してみた↓

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英検S-CBT2級(12月受験分)結果。




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合格。

いやー、それなりにTOEICで点数を取って、まぁなんとかなるだろ、と思って転職活動をしていたんですが...難しいですね。本当に。で、転職活動はじめてひと月も経たないうちに一気に鬱状態ですよ。
そんな中、いいニュースでした。
やっぱり英語の勉強続けたいなぁ、と思いますね。

後、関係ないですが海外ドラマNAVIさんから『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』のブルーレイ&DVDとシールが当選しました。
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こういうのがね、ポツッ、ポツッとあるから、どうにかなってるんだよな。
行動あるのみですね。やったことに対してしか結果出ませんもんね。
とりあえず今月いっぱい転職活動頑張ります。

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ジャー・ヒロ「ラスタマン・バイブレーション」




「なんとなく買ったらプレ値で取引されてたシリーズ」第一弾。
いや、アマゾンのマケプレの値段なんて当てになんないんですけどね、「えー、9千円って」と思いましたよね。古書店で5000円くらいで出してたとこもあったから、まぁレアではあるんでしょう。
私はブックオフで500円くらいで買いました。結構シミも入っちゃってるし高く売れるとは思えませんが、なんかこういうのちょっと嬉しいですよね、最近なかった掘り出し物感をちょっと味わえました。

著者は「80、90年代に原宿でトレンチタウンというレゲエ・グッズの店をやっていました。」というジャー・ヒロさんです。twitterやってますね。さっき書いたのもプロフィールからの抜粋です↓
https://twitter.com/jahhiro100?lang=en
ブログもありますね↓
https://sites.google.com/site/trenchtown21/
「それは日本でまだレゲエが殆んど知られなかった1980年代の頃の話だ。83年の10月にオープンした、原宿のレゲエ・グッズの店『トレンチタウン』」とあるので本当に早い。日本におけるレゲエの第一人者ですね。レゲエ・ファンジン「JAMMING」に文章を書くようにもなり、小説も書き...という事のようです。

というわけで、レゲエはそこまで詳しくなく、ダブとか結構好き、くらいの私なんですが読みました。

もう本当にね、いろんな意味で凄いというか、90年代の景気のいい時にはこういう面白いものも出てたんだよなぁ、という感じ。
上記のプロフィールで予想できる通り、当然の如く文章は上手くないです。校正をちゃんとしてないのか誤字は多いし、話は飛ぶし、挿絵はめっちゃ粗かったりするし、急にラスタ豆知識集や単語集がインサートされるしで、小説としての評価はとてもじゃないけどできない代物です。
ただねぇ、なんというか、まぁあっちの言葉でいう「グッドヴァイブス」に溢れてるっていうか、もうレゲエへの愛情のみで突っ走った感じでね、嫌な感じはしないんですよ。むしろレゲエへの興味をかき立てられたんですよね。読んだ後ボブ・マーリーのDVD買うくらいには。

80年代から90年代前半くらいまでの景気が良かった頃のサブカルの感じだよね。商品として整えられてないプリミティブな愛情がそのまま本になって世に出ちゃうっていう。

情報に溢れた今読んでどうか?っていうと、この本の役目は終わってるんですよ。レゲエは日本でも広く知られるようになり、「ジャパレゲ」なんて呼ばれて夏には大観衆を集めるフェスも開催されるようになったわけですから。
でもね、やっぱこの時期の、どうにかレゲエ/ラスタファリズムを広めたい、でも現地でブッ飛ばされたインパクトをどう翻訳していいかわからない、という中で無理矢理にひり出されたこの本はその時期、その葛藤の中でしか生まれない面白さがある。




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ISHIYA(著)ルーフトップ(編集)「関西ハードコア」




ISHIYA氏が著者でタイトルが「関西ハードコア」という事だったのでてっきりnoteに書いていた日本のハードコア史の書籍版だと思っていたのだが、全然違ってまずビックリ。関西ハードコアの重要バンドのインタビュー集でした。あちらの方は最近「ISHIYA私観 ジャパニーズ・ハードコア30年史」として発売されてましたね。
この本は体系的に関西ハードコアを歴史と共に語るのかと思いきやインタビュー集という事で、これ下手すると変な方向に行きそうだな、と思ったのですが杞憂でした。素晴らしいです。
ISHIYA氏、そして全編にわたってインタビューに参加するRAPESのSHINTANI氏が外部の人間として話を聞くというスタイルが功を奏したのだと思う。
もちろん新谷氏は関西の人間なのだが、大阪や京都ではなく神戸、そして後に拠点を東京に移したという事で、あくまで「めちゃめちゃ仲が良くて昔話も出来る外部の人間」のような立ち位置にいる。
ご存じの通りISHIYA氏はDEATH SIDE、FORWARDなどで活躍するレジェンドでありながらライターとしても活動しており、これ以上の適任者はいないだろう。
以前読んだZERO MAGAZINEのインタビューを思い出したが、あちらが直属の後輩のような極近い関係性で話を進めるのに対し、やはり一歩置いて冷静に聞いている感じがする。そしてSHINTANI氏の存在も大きい。ゲストの1人かと思ったら全てのインタビューに同行しているのも頷ける、重要なキーパーソンだ。
ハードコアという刹那の輝きを、そして強固な人情と地元愛のある関西シーンを外部から俯瞰でまとめられたこの本は奇跡的だと思う。

圧倒的な存在感のZOUO、そしてその実弟率いる中学生でデビューのOUTO、世界にもその名を轟かせたものの悲劇に見舞われたSxOxB、もちろん外せないチャーミー氏&PON氏、SHINTANI氏のRAPES、拠点の一つとなったライブハウスのエッグプラントのオーナーなどなど、物凄いメンツだ。
ただの居酒屋思い出トークにならず、「知らねー、覚えてねー」でナメて流すでもなく、身内ノリだけに終始する事もなく、だからといって評伝のように難しくもなりすぎないバランスで最後まで一気に読める素晴らしい本でした。載ってる写真も全部かっこいいんだよな。必読、必携。

このnoteも読むと関西ハードコアシーンがより立体的になってくる↓
https://note.com/sisterhiyosu


今聴いてもカッコ良過ぎ。

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最近就活をはじめたので前回の就活を振り返る。その2 辞めてからハローワークに行くまで




はい、引き続き2017年4月に書いたやつですね。本当に、30歳にもなって全く何も知らないところからスタートだったんですよね。まぁだからこそ危機感も無く、無根拠な自信を持てたんですが。
それに対して今回はキツイね。もう解ってるからさ、いろんな事が。解ってる分、絶望も早いっていう。2週間でもうドン底ですわ。



ということでバイトを辞めたが、とりあえず1ヶ月は休んでた。
ずっとフルタイムで働いてたし、まぁ20万くらいは貯金があったし、親とは仲が悪いが、それは私が音楽をやるという事に対してだったので、今回ばかりは頭下げて金借りようと腹を決めてたし。

なにより、どう正社員になっていいか全くわからない。
今まで一度も就職活動なんてした事ないからね・・・。

なので、ハローワークってやつに行くのが一番かなと思ってたんだけど、バイトを辞めた時に人事課の人に
「離職票ってのが役所からきたら家に送るから、それ持ってハローワーク行って、そしたら失業保険もらえるから。でも今回の場合は自己都合だから、3ヵ月後になると思う・・・次決まってるの?決めてない?そうかぁ・・・もったいないなぁ」
なんて言われてて、じゃあ離職票来たら就職活動はじめよう的な感じ。
あ、ちなみに、バイトでも有給休暇があった(法で決められてるけど、あったのはこのバイト先がはじめて)んだけど、辞めると自然消滅するって知らなくて4日分損しました。会社の人間も言わないんだよなー・・・。そういうもんなので、きっちり計算して使い切って辞めましょう。

12月末日までで辞めたから、正月だったし休んでもあんまり罪悪感が無かったのもあったね。

離職票は2週間くらいで来るはずが、正月を挟んだせいか3週間かかりました。
で、親に頭下げて金借りて、その流れでケアハウスに入ってるばあちゃんに会いに大阪行ったりしてて、まぁ1ヶ月ですわ。

で、やっとハローワークへ。

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「電気グルーヴのメロン牧場ー花嫁は死神〈5〉〈6〉」




いやー、転職活動しんどくてねー...。前回の時のをちょっとずつ移動しつつ読んでるんですが、あの時はどんだけ余裕で自身あるんだよって呆れますね。
今回はもう早々に、はじめて2週間でドン鬱ですよ。いやー、最悪だもんね、今は何するにせよ。

ということで、なんか笑いたい、とすがる様に年始に買ったこの2冊。もう6巻まで出てるんですね。
ちなみに「電気グルーヴの続・メロン牧場―花嫁は死神 上」の感想はこちら↓
https://fanblogs.jp/gateofdoom/archive/279/0
ここで4冊目となった前作に関しては
「どちらかというと『いまだにこんなにふざけた話できますよ!ウンコネタもあるよ!』という方向に持って行きたそうな山崎側の空回りが見えるのが少し不満、といった程度。」
とちょろっと不満も書いていますが、基本メチャメチャ面白いです。



この2冊も、間違いなくオモシロい。
前作に少し見えた空回りも無く、活動再開後のいい感じのまま、ずーっと進んで行きます。
ホントね、このいい感じのままズーッと進んで行くのを読めるってね、メチャメチャ貴重だと思うんですよ。なんかね、たまに疲れるんですよ、ネット。というか、特に私が今あんまりお金使えないし、そもそもこの状況ではどこにも行けないからこそって所もあるんですが、「最適化」「効率化」みたいな事を進めて、ひたすら刺激を求めてドンドン掘っていく、でも基本広告ばっかり。みたいなのにね。
損得とか考えずに、ダラダラオジサンのバカ話読んでられるのって本当にいいもんだな、と風呂に入りながらダラダラ読んでて思いました。

6巻では2018年12月号掲載分まで収録という事で、まぁみんな一番読みたいであろうあの事件の後の回はまだ収録されていません。
前回の記事で
「1冊目は、まりん加入〜「シャングリラ」でのブレイクとそれによる苦悩〜名作「VOXX」の製作〜まりん脱退という怒涛の時期で、それに付随する話は当然物凄く面白く、この時期にしかないミラクルが起こっていて最高なのは当然」
と書いてた通り、その後がまた絶対面白いし、卓球がタトゥー入れたりとかもあったので次巻も期待です。

何にもなくても、何かあっても、ずーっと面白いんだよな。本当に特異な存在だ。
この流れで「DENKI GROOVE THE MOVIE? ~石野卓球とピエール瀧~」もう一回観ようかな、と思ったらアマゾンビデオから観れなくなってるんですね...。当然あの事件の余波でしょう。残念です。
「ピエール瀧 YOUR RECOMMENDATIONS」もコロナの影響でどうなるかわからないしね。

全部うまくいくといいなぁ、とか思いつつ、休める時はちゃんと休む為に、こういう本を求めてます。

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「ヘンリー・ダーガー 非現実を生きる」小出由紀子 (著, 編集)




おそらく最も有名なアウトサイダー・アーティストであるヘンリー・ダーガー。
「アーティスト」というが彼は生前に一切作品を外に出していない。彼を知る誰もが「孤独で貧しい気難しげな老人」で「会話と言えば天気の話ばかり」と言う事から考えれば、一切誰にも作品を見せていない、どころか存在すら知らせたことがない可能性すらある。
彼の死後に片づけに入ったアパートの大家が偶然にも写真家でもあり、審美眼のある人であったので幸か不幸か世界に彼の作品が披露されたのだ。
多くの人がここまでは知っている。
そしてあのインパクトのある絵、特に少女に男性器がついている、カラフルでファンタジックでありながら内臓などを細かく描く残虐性などで強いインパクトを受けるあの絵。それに対して、物語自体はザックリとした「ヴィヴィアン・ガールズが戦争を云々」程度の概要しか知らない。
私も似たようなもので、デカくて高い画集なども買ったりしたし、彼の人生にはとてつもない影響を受けたがその作品については細かく説明できる気はしなかった。

実はこれは当たり前と言えば当たり前でもあって、「1万5千ページを超える世界最長の長編小説」なんて事も言われるが、まぁ「こち亀」とかね、「グイン・サーガ」とか考えると全然読める範囲ではあると思うんですよ、古文書とかではないんで。ヘンリー・ダーガーともなると熱心な研究者もいますからね。
でも全文が刊行された事が無いっていうのはやはり理由があるわけですよ。
内容的には先程も書いた「ヴィヴィアンガールズとグランデリニアの戦争で〜」みたいな概要以上のものはほぼ無く、それも彼が好んだ少年少女向けの空想小説からインスパイアされたものが多かったりもするんですね。研究者によると、膨大な長さの小説だが丸々他の小説を写した部分や、彼が偏執的にこだわった天気や戦争描写に急に千ページ単位で費やされていたりと、読んで得られるものは多くなく、概要が全てだったりするとの事なんです。
絵に関しても、2〜3メートルあるものもあったりするそのサイズには驚かされるし、切り取った広告や新聞の写真を頼りに、それを参考にしたり、足したり、最後にはコピーしてサイズを変えることを覚えたりと、その変換や、異なる手法やクオリティのものが交じり合う異様さはあるが、いわゆる「絵画」としての価値があるとはいえない。
彼の人生、そして死後に見つかった誰にも見せる事のなかった膨大な小説と絵という事から受ける初めの印象というのが、実の所その全てだったりする。



孤独だった彼の人生は謎に包まれている、という伝説が長く信じられてきたんだけど、実は彼は「非現実の王国で」だけでなく、自伝も書いていれば日記をつけていた時期もあるので、彼の視点のみではあるが、彼の人生を追う事はそれほど難しくない。

一番特徴的な点である「少女に男声器が」という部分も、最近の研究では納得できる説明もついてしまっているようだ。端的に言うと彼は抑圧されたゲイで、彼の住む貧しい地域では女装した少年が売春していた、という。
答え合わせというのはあまり意味が無いが、確かに腑に落ちる説明だ。
同様に、彼は孤独で貧しかったが知的障害は無かったようだ。

伝説は全て否定されたし、その膨大な作品群は引用の塊でもある。

孤独な老人の中に秘められた豊潤なイマジネーション、という幻想は消えうせ、荒涼とした世界が浮かぶ。
丹生谷貴志氏の評論でも象徴的に出てくるが、大きな「空白」である。
「アウトサイダー・アート」「アール・ブリュット」というのは随分曖昧で、些かロマンチックに過ぎる定義ではあるのだけど、ヘンリー・ダーガーとその作品はその響きに含まれる幻想というのを全て引き受けえる存在と分量だったんだな、というのは今改めて感じる。

この本は画集にも収録されていなかった絵も収録されているので、すでに画集を持ってた私にも新鮮だったが、とにかく最後に出てくる丹生谷貴志氏の評論だけでも読む価値があると思う。



「もはや壁は無い けれど深い空白が閉じている 世界の結び目はつんつるてんに滑る」





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