2014年04月29日
早田英志/釣崎清隆 「エメラルド王」
「これは事実談であり…この男は実在する!!」
という『空手バカ一代』の冒頭を飾る有名な一文を本の最初に入れたくなるほどのハードボイルドな一冊。
70年代に単身でコロンビアに渡り、さまざまな危険を乗り越えながらエメラルドの事業を成功させ、今や大成功を収めた早田英志の伝記だ。
最初に知ったのは根本敬の本だったか、サブカル系の雑誌だったか、『KEI チカーノになった日本人』と共に、一時期よくプッシュされていた気がする。「死なない限り問題はない」という、本のタイトルにもなった言葉はよく覚えている。
内容は期待通り、ハードボイルド極まりない死と隣り合わせの危険の中、女に愛され、死地を乗り越えた仲間と共に成り上がっていく男の一代記。
現在も麻薬組織によって非常に危険な状態にあるのは、ネット上に腐るほど転がっているフレッシュな死体写真で嫌というほど確認できるコロンビアだが、当時から内戦もあって、成り上がるためとはいえ日本人が一人で行くような所では決して無い。パブロ・エスコバルなんてトニー・モンタナなんかと一緒で、ラッパー達のある種のアイコンになっていて、日本でも有名だ。
そんなわけで、ハードコア過ぎる修羅場が日常となっている早田氏の人生を、死体写真家で有名な釣崎清隆が書いていくのだが、釣崎さんが以前に出した著書を読んだ時から思っていたのだけど、この人文章上手くないんだよなぁ、なんかやたら過剰に比喩表現を使って派手に盛り上げようとしているんだけど、間延びしてるとしか感じられなくて。
しかも今回の場合は自分が取材してきたことを書く、という類のものではなく、早田氏の思い出話を拝聴し、彼のお気の召すようにまとめ、共著として出版する、という流れだと推測されるので、彼の都合の悪い部分が描かれるはずも無く、ひたすらにその無駄の多い文体でやたらに早田氏を褒め上げる文章が続いていくので、正直、内容の凄まじさを差し引いても半分も読めばゲンナリしてしまう。
だからまぁ、「これは事実談であり…この男は実在する!!」なのだ。今や「空手バカ一代」のほとんどのエピソードが梶原一騎による創作だったというのは広く知られていることだ。
この本が創作だとは言わない。生き延びたことすら尊敬に値するコロンビアにおいて、実際に大成功を収めた早田氏は偉人だ。
でも、これは客観性の無い昔話で、それを調べるどころか過剰に持ち上げていて、しかもそんなに文章が上手くないのも事実だ。
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