一通り買ってしまったらしばらく離れて、ある日ふと思い出してまた買い始める。
出来るだけ荷物は少なくしておきたいので、家に置いておくのは『スペインの宇宙食』の文庫だけということにしてなにかにつけて読み返していたのだが、何か物足りなくて『歌舞伎町のミッドナイトフットボール』を買いなおした。
偶然表紙になった号の『KAMINOGE』を古本屋で見つけたので買った。
それでもまだ足りなかったので、本屋に行き、なんか新しいの出てないかなー?と探すと、追悼文を集めたものと『M/D』とこれがあったので、結局これを買って帰った。
「単行本が今度出るのか、読みたいな」と思った記憶があるのだが、いつのまにか文庫になっていてビックリ。文庫になっても千円超えるのか、と貧乏な私は思ったりするのだが、千円以下だったら勢いで『M/D』上下も買っちゃいそうだったからまぁいい。
私は映画は好きだけど、あくまで好きなだけな上に「ミニシアター」という棚にしか行かなかった嫌なガキだったので、『ダイ・ハード』や『ランボー』はパロディでしか観た事がなかったりする事に最近気が付いて今更観たりする感じだし、そもそも2000年代はyoutubeと2ちゃんねるばかりで、ほとんど映画を観なかった。「有名だから」という理由でゴダールは2、3本観てみたという程度だ。
そんな状態なのだが映画の本を読む事自体は面白くて、例えば中原昌也の映画本は何度も読み返しているくらい好きだ。ただ、その本の中で触れられている映画はほぼ観ていないが、別にそれでいいかなと思っている。
この本は凄くザックリ言うと、松本人志、ゴダール、いくつかの作品/作家論と映画音楽ベスト10など、『セッション』騒動、『バードマン』、という感じになっている。
まえがきでの「できれば、まえがきから順番に、総て読んでほしい」という作者のささやかな願いをぶっちぎって、最初と最後だけまず読んだ。
松本人志映画は、『大日本人』で「あれ?俺けっこう好きなんだけど、みんなそんなに嫌い・・・?」というくらいで、『しんぼる』以降は「さすがにこれはちょっと・・・」と避けていた。
この本の最初に『大日本人』で書かれているような評は、「同じ思いをしている人は沢山いるはずだ」と書いてある通りだと思う。私もそう思った、というか怪獣映画や特撮映画ってそういうものだ、という前提で観ていた。しかしそれを、きちんと松本人志監督と結びつけたところはさすがとしか言いようが無い。
というか、たしかにこれは軽はずみに「映画批評」という枠で話したり、雑誌の中の映画評で書ききれる事ではないと思うので、こうやって単行本で書かれる事しか出来ないだろう。
そして、映画評論家なら単行本に入れないよな、とか思って、最初から「この本ならでは」感がありありで、とても面白く読みはじめた。
で、まぁその後「うーん・・・ゴダールねぇ・・・」とちょっと読んで、一気に『セッション』騒動まで飛ばして、となってしまった。
結局順番は入れ替わったとはいえ一度全部読んだんだけど、さらに三度ほど読み返した時は最初と最後だけ読んで間は抜いてしまった。
興味深く読めたのだが、なかなかゴダール全部観るのしんどいしなぁ・・・という感じ。今、家に買っておいて観ていないゴダール映画が2本あるが、バイトから疲れて帰ってきて、ラーメンとか啜りながら観る気には中々ならなくてねぇ・・・・・・・・。
で、まぁ『セッション』騒動ね。これは映画は観ていないけど、リアルタイムでwebで読んでた。
ジャズでラテンな菊地成孔と、ロックでパンクでフォークな町山智浩という対立かなぁ、という感じで見ていたんだけど、音楽映画は難しいよね。
ただ「映画評論家は勉強不足だ。『2001年宇宙の旅』だって、感覚で観ればいい・・・とかばっかりで、ちゃんと台本なり設定資料なり読めよ!全部書いてあるんだから!」という事を言っていた町山さんなんだけど、音楽については書いてても、初歩的な音楽理論や歴史すら知らないと思うんだよね、で、感性が、情念が、生き方が、とかに行っちゃってると思うんだ。というか、あんまり音楽詳しくないんだと思うんだよね。前に映画『BECK』について話している時に、いわゆる「ロックはテクじゃない」的な話で出した例がGuns N' RosesとThird eye blindっていう、疑問の残る上に通じにくいセレクトだったし。ルー・リードとか、もっというとザックリPUNK/NEW WAVE/NO WAVEとかでいいんじゃないか?と。
ロックとパンクとフォークだけならけっこうそれで良かったりもするんだけどね、でもそれ映画で同じことやられたらキレるっしょ?っていう。
今、偶然youtubeにあった、大谷能生がやったイベントの『ニッポンの音楽批評 第ゼロ回』ってやつを聞いてて、小林秀雄についてはっきりと嫌いだと言ってるのを聞いて、わかるわーと苦笑しているんだけど、そういう感じだよね。
ちょっと話変わるけど私も音楽映画は一時期コレクションしてて、その中でも『ガレージ・デイズ』がけっこう印象に残ってるんだよね。最後にフェスのステージで1曲やれる事になって、演奏するんだけど、すごーくイマイチな曲と演奏で、それまで「いいぞー!やれやれー!」ってなってた客がシーンとしちゃうのよ、であっさりステージ降ろされて、ミュージシャンは諦めたけど、今は身内の前でたまに演奏するんだ、これもいい人生さ!みたいな終わり方なんだ。
音楽映画でクライマックスに流れる曲って、大体大盛り上がりになるってパターンなんだけど、そんなにいい曲ってない気がするんだけど、これはちゃんとイマイチな曲を、そのままイマイチな曲として描いて、客も冷めてる感じにビックリしたんだよね。
なんにせよ、「俺は好き!俺はいいと思った!」って言われちゃうとそこで話終わっちゃうんだけどね。
なんか両方好きだから悲しくなった記憶があるんだよな。そして読めば、完全に菊地成孔に同意しちゃうし。またこの場合は比較対象として挙げてるのが音楽映画だからほとんど観ちゃってる分よく解るし。正直、映画の宣伝見た時点で「うわー、観ないだろうなぁ・・・」と思ってたらこの騒動だったからさ。
だからまだ観てないんだけどね。観てないで書いてるんだけど。
で、この本の特徴として、単行本とはかなり違う(らしい。私は単行本は買ってない)ということだ。元々あった部分をビルドアップし、ネット日記の部分をバッサリ落とした、ということらしい。
「映画批評本」としては良くなったんだろうなぁ、と思う。だってたぶん、もしそのままだったら最初と最後とネット日記しか読み返さないもん、俺。
そしたらもう「映画批評本」として読んでないよな、映画についてのエッセイ集だよな、と思う。
思う・・・けど、サイトが新しくなってから日記が読みにくくなって、読むのやめちゃったから、残してほしかったなぁ。