2017年03月29日
ロマン優光「間違ったサブカルで「マウンティング」してくるすべてのクズどもに」
「僕より救われない悲惨な魂を発見!」
と推薦コメントを書かれ、第1回中原昌也文学賞を獲った『音楽家残酷物語』以来、本の出版が無かったのだがここに来て連続で新書が出た。
前著の時は「おー出たか!でもまぁ次はまたしばらく出ないだろうから、そのうち買おう」と思っていたのだが、続けてすぐにこの本が出て、タイトルに興味を惹かれたのもあってこっちから買った。
読んでみると『音楽家残酷物語』の時の、借金返済のため原稿用紙に書かされた事が影響しているのか、ある程度原稿としてカッチリと書かれたものと違い、かなりカジュアルな文章で、まぁ嫌な言い方をするとブログやツイッターの延長のような本でした。新書って元々スピード勝負で、そういう感じはありますけどね。
テーマは「サブカル」という事で、私も「遅れてきたサブカルっ子だ」なんて何度か書いていますが、その定義は人によって異なるもので、いまや「サブカル」という言葉すらほとんど使われず「オタク」産業が一番金回りがいいという現状もあって、もはや定義は人によって全然違います。
私にとってそれは象徴的に「エロ本の白黒ページ」で、それはバブル〜バブル崩壊後数年のまだ景気のいい時に雑誌の「メイン」としてエロ写真があって、それさえあれば「サブ」の白黒の文字ページは好きにやっていい、という余裕がそうだと思っているからです。
ただ個人的にそう思ってそれが好きでいるだけで、「サブカル」の定義っていわれると難しい。
で、この本は「サブカル」の定義、そして同時に近しいもの、むしろ昔は1つだったり被っていたりしていたものとしての「オタク」というものについての本。
本にも書いてある通りやはりこれも「ロマン優光が考えるサブカル」というもので、私にすると『サブカルで食う』という著書もある大槻ケンヂや電気グルーヴなどのナゴム系やエロ本方面の末井昭や山崎晴美なんかにほぼ言及されていないのはちょっと以外だったりもする。大槻ケンヂは町山さんについての文章で名前だけ出ていたし、青山正明の名前も出てたから、そんなことは承知の上で、今回の本としてはそこ以外を重点的に、という事だろうけど。
最初の方の3章は「サブカル」と「オタク」というものの言葉の成り立ちや歴史に関してかなりキチンとした考証がされていて、ここは概ね誰も付け加える事は無いだろうと思います。
そしてそこからがネット上で大きく話題になった部分で、簡単にいうと「ロマン優光が町山智浩を批判!」みたいな記事がバッとでたんだけど実は読むとそうでもない。
「あんたの事、好きだし尊敬してるんだからさぁ、頼むからちゃんとカッコよくいてくれよ!」という悲しい叫びでしかなくて、いくつかの事例を挙げて「これは良くないだろう」という事を書くんだけど、「イベントでハシャイじゃっただけ、ってのは私は分かりますけど、分かってくれる人だけって以上の場に出るようになってるんだから、いつか大きな問題になる前に考えてくださいよ」みたいな感じ。
だからそこはむしろ尊敬の念のほうが強く感じた。
私もそうだけど、町山さんファンは結構そうゆう感じで見てると思うしね。
それより水道橋博士に
「博士は芸能人であって本職の物書きではないですし、年齢的にも『ホモ』という言葉を使ってしまうのはわからないでもありません」
とか
「べつに博士は、サブカル層だけをターゲットにしているわけではなくて、色々な方向性の仕事をすることで様々な層を取り込んでいこうという活動の一つでしかないのですが〜」
とかを、あっさり書いているところの方がキツイと思う。
正直、私は『藝人春秋』あたりから博士が苦手になってきたので凄く頷けました。この本の出版後にツイッター上で軽くやり取りがあった時も「アウティングってどういう意味?」だの「ロマン優光(さん)」とかしょうもない事書いていて、傍から見てても酷かったしね。
あとは、大学で同じサークルだったという編集者/ライターの大塚幸代さんについて触れていて、彼女が亡くなったってのをこの本で知ってけっこうショックだったなぁ・・・。小6の時に投げ売られてた『Quick Japan』を買った事からサブカルの道に入った私としては、うん。
ウォッチ対象になるくらいの人物だったって事も分かるし、私もファンというよりアンチ寄りだったんだけど、なんかその、もどかしい「表現がしたいけど表現するものが見当たらない」みたいな感じが、自分を見るようでもあるっていうか。ウォッチ対象ってそういうところがあるような・・・自分もこうなってたかもしれない、または、自分だってこうなれたのに、みたいな感情で粘着するっていうか。
だから、吉田豪はチクッと言ってたけど「みるく」の堀口綾子についての記事が、私的には一番心に残ってたり・・・。
しかし、確実に時は経っていて、「僕より救われない悲惨な魂」のハズがロマンさん今や主夫かぁ...。
前著も買おう。
いかにもな場所でいかにもなメンツ。
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