2013年01月30日
ひろゆき 「2ちゃんねるはなぜ潰れないのか?」
今更感バリバリです。出た時にすぐ買って読んでその後売ってしまっていたのを、古本屋で最近見かけてなんとなく買い直してみました。
この時はまだ2ちゃんねるの管理人、今はアドバイザーで有名なひろゆきの本。
私らくらいの世代は、一度くらいは2ちゃんねる見てるだろうし、途中から見るメディアはそっちがメインになっている人も多い。
特にサブカル系はそうだと思う。御多分に洩れず私も、ニコニコ動画(これもひろゆきらが作った)で最近だと東浩紀×岡田斗司夫のニコ生対談なんかを観て、2ちゃんねるを見て、って感じの日があった。
元々サブカルっ子で、クイック・ジャパンとエロ本の白黒ページのサブカル記事が原点で、その後バンドやりながらロフトプラスワン行ったりしていた自分からすれば、「この2つがあれば全部家で済むじゃん」って感じになっている。完全にひろゆきの手のひらの上だ。
作品を好きになると作者を深く知りたくなる性質なので、当然ひろゆきにも興味を持ってイロイロ読んだり観たりしているのだが、やっぱりこの人も面白い。
よく言われることだが、「身も蓋もなさ過ぎる」のだ。ニヒリストって感じでも無く、飄々と「無理じゃないですか?」「それ必要っすか?」「僕はいらないですね」みたいな事を言ってしまうのだ。
それもちゃんと理論付けが出来ているので、論破も出来ないという。
ただ、まぁ卑怯というか、「家でゲームやってるのが好きで、元々学生時代は景気が悪かったので将来家も車も買えないだろうと思っていたし、今も欲しいとも思わない」という前提で、なおかつおそらく今はもう働かなくていいくらいお金を持っていて、完全に全てを他人事として語っているので、相手が当事者としてもがいている状態では端から相手にならないのだ。
とはいえ、雑誌の「本人」で語ってた通り、基本的にはただただ「世の中の仕組み」に興味があるんだろうな、という姿勢がとても共感を覚える。
違う言い方をすれば「構造」「フレーム」「理論」言い方はイロイロだが、これを物事の中から見出さないと、なにも語れないだろうと思うのだ。チャック・ベリーが「音楽は数学だ」と言ったように、町山智浩が「『感性で見ればいいんだ』じゃねぇよ、シナリオや発注書くらい当たれよ」と吐き捨てたように、花村萬月が好んで取り上げた「感性は馬鹿の言い草」という音楽学校のコピーのように。
そして、そんなにドライな感じなのに、酒も飲むし煙草も吸うし、世間的に最も無駄だと嫌われているゲームが好き、というのもおもしろい。
同じように捉えられている人に堀江貴文がいるが、彼は宇宙へのロマンがあるし、選挙に出たりもして、基本的に世に出て行って変えていこう、という気概があるのでこれもちょっと違う。この人もこの人で凄く面白いのだけど。
この2人の対談も面白いのだが、
堀 「海外だとなくさないようにパスポートとか財布は袋に入れて首からかけてるよ。俺財布よく無くすし」
ひ 「え、それはしないなぁ・・・・それカッコ悪いじゃないですか。財布にチェーンはつけてるけど」
堀 「そう?便利だよ」
みたいな会話があって、よりドライに見られるひろゆきが引いていて、あれだけ露出している堀江さんの方が無頓着だったりしていたのが面白かった覚えがある。
この本が出たのは2008年。センセーショナルな話題があまり無くなり、なんとなく、「あぁ、結局ひろゆきって捕まらないでこのままいくんだな」と思うようになってきた時期だ。「web2.0」とか「セカンドライフ」とかが話題に出ているので、その頃。
そういえば、当時バンドの練習でスタジオに行く時に電車で読んでて、ポケットに本を入れてるのを見たメンバーに「何の本?2ちゃんねる?あぁ。この人誰?え、ひろゆきってこんな顔してたんだ」って言ってたのを思い出した。その人も2ちゃんねるはよく見ていたのにだ。「僕は小物なんで。誰も僕の事知らないですよ」とひろゆきが語っていたのはけっこう当たってるんだな、と思ったんだよな。
出てる話題からしておそらく世間的に、ただただ「ネットは悪で敵」っていうのから「新しい可能性、パソコンは必須」っていう感じに完全に切り変わっていたのだと思うのだが、今となっては懐かしい、あったな、としか思わないような、一時期話題になったサービスやサイトを、ひろゆきがいつもの調子で「web2.0ってマイナスイオンと一緒だと思いますよ」とかいう感じでバッサリやっている。
ただ、この本自体はおそらく編集者が「今話題になっているこれについてはどう思いますか?」という質問をして、答えたものを文章にしただけのものだ。「インタビューをまとめて出来た本」「僕あとがきしか書いてないです」と書いたり言ってるし、いつも通り「訊かれたから答えるけど特別興味がないです」って感じだ。
なので、今や無いに等しいようなサービスについての話はどうでもいいし、おもしろく読ねる所というとやはり佐々木俊尚、小飼弾との対談だ。
特に小飼弾との対談は物凄く面白い。理系っぽい、スピーディーで直線的な対談だ。「僕らは思考を止めないことが自然」というのは大いに納得。
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