2015年01月30日
中村うさぎ 「狂人失格」
裁判沙汰にもなったので、そこそこ有名になったと思われる1冊。
小学生の頃から、親が週刊文春を毎週買っていたおかげで全盛期の「ショッピングの女王」時代の中村うさぎを連載時から読んでいて、単行本さえ買っていたくらい好きだった中村うさぎ。
そのままずっと読んでいたのだが、この本で本人も書いてある通り、買い物依存症→ホスト→整形→風俗という風に移っていくにつれどんどんツマラナくなっていき、だんだんと100円の古本でしか買わなくなり、そのうち完全に読むのをやめていた。風俗に至っては3日で辞めたのに、よく本1冊分に嵩増ししたもんだと、心底呆れた記憶さえある。
西原理恵子、岩井志麻子、倉田真由美、マツコデラックスなど、その周辺、というかサブカル女性作家は好きでよく読んでいたので、ちょいちょい話しには出てくるものの、たまーに雑誌で書いてるのを見ると、なんかテキトウで絶対取材ろくにしてないな、と思わせるものか、擦りきった自分語りで、なかなかしんどいものがあった。
この本は雑誌「hon-nin」での連載をタイトルを変えて書籍化したもので、たまに抜けはあるもののそこそこ買っていた雑誌だったのだが、連載時に読んでいてもあまり好きではなく、というかこの雑誌自体がサブカルの凋落を捉えているというか、こんなにサブカル界隈ってツマンナくなったんだな、って悲しくなった雑誌だった。町山智浩、吉田豪、安野モヨコくらいだったかな、おもしろかったの。
この本にも言えるのだが、後に町山智浩が吉田豪インタビューで語っていた通り、「『誰にも言いたくない、言ってない自分の事を書く』っていうテーマなのに、誰もちゃんと書いてないんだよ!」という事。ちゃんと書いた安野モヨコ「よみよま 黄泉夜間」は連載中断となってしまった。
まぁ、そこは続けて「でもまぁ書けないよね!浮気とかは相手があることだからね」という事を言っていた町山さんが最近愛人発覚でどうなったか、というオチまでついてしまうのだが。
ということで基本的にそんな身も蓋も無い、相手に迷惑までかけまくる作品なんてよっぽどの破綻者しか書けないし、そもそも商業誌に発表なんてされないので無理があり、結局は逆に「この作品には何が込められているか」という考察をするしかないのだ。
前置きが長くなったのだが、まぁこの本はそんな感じで、この時期の中村うさぎ作品として順当につまらない。
ネットウォッチされるようなイタイ作家志望を本当にデビューさせたら、という事なのだが、見積もりが甘過ぎて、一度対談したのみで即企画がポシャる、という有様。
で、結局それをまた風俗の時と同じく、薄めて薄めて嵩増して、自分語りと下手な推測をいれて1冊に、というわけです。
で、ここぞとばかりに訴えられる、という。
論壇への復讐だ何だと書くが、どんなに才能がないと自己卑下しようが、ラノベ作家〜ショッピングの女王時代は間違いなく才能のある作家だったわけだし、友達の女性作家(岩井志麻子だと言われている)の上から目線の発言に凄く反発を感じる、と書いた直後に「私はオリジナルの才能」みたいな事を平気で書いてしまう錯誤に、ずっと首をかしげっぱなしだった。
私は私にしか興味が無い!みんなもういいよ読まないで!もう辞めるよ!みたいな絶筆宣言とも取れる最後なのだが、かといって他に稼ぐ道があるわけでもないからその後も本は出し続けているし、有料メルマガみたいな、完全にファン向けで批判の来ない、同人誌じみたものまでやっている、という。
なんというか、悲しいなぁ、という感じ。
小説でも音楽でも絵でも、作品を表に出すというのはとても恐ろしい。しかも、自分が好き、小説より音楽より絵より、とにかく自分が好き、と言う人がほとんどだから、アーティスト志望というのはろくでもない。
自分は一応音楽畑なので、多くの自称ミュージシャンを見ているし、時には一緒にやったりしているのだが、ゴッドタンの「マジ歌選手権」以下の代物を聴かされ、感想を求められるような事ばかりだ。
怒りさえ覚える時間の無駄だが、その時に裏側に見えるのは「とにかく誰か相手をしてくれ」という欲望で、とてもとても、ひたすら悲しくなるのだ。
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