ケータイ小説。というのももはや懐かしい。
昔はバンドのホームページも魔法のiらんどが多かったよねぇ・・・(遠い目)。
はい、『恋空』ですね。名前だけ知ってたシリーズ、そして時間が有り余ってる今じゃなきゃ絶対読まないであろうシリーズ。しかも拾いました。タダじゃなきゃ読まなかったかな。
まぁいかにも本好きっぽい嫌味をまず書きましたが、実は興味はありました。
中学生の時に、新刊だったYoshiの『Deep Love』を偶然で書店で見かけて購入したので、わりと早くからケータイ小説には触れていたと思うし、中学生だったのでそれなりに面白く読めた。
同時に、それなりに面白く読んだ中学生の私でさえ、その文章の稚拙さ、語彙の少なさ、それに対する過剰な性描写や不幸てんこ盛りな上に都合のいい話の展開等に違和感を覚えた。
ただ、その前にしばらく桜井亜美(速水由紀子=宮台真司の元パートナー)にハマってた事もあり、「こういう商売の仕方もありか」と思っていたし、はっきりと「小説家Yoshi」の作品として出してる分いいのかな、と。
文章のクオリティの低さには辟易したが、「急速に普及したケータイで読む事に特化した」「普段本を読まない女子高生向け」に「オジサンが商売として書きとばした」と考えると、こんな感じだろう、と。それにしても上手くいったもんだ、と拍手を送りたい感じ。
なので、むしろそれを誰が買って、どう受容して、どのくらい広まっているのかという事に興味が湧いて、他のケータイ小説もいくつか読んでみたが、本田透の『なぜケータイ小説は売れるのか』の方が面白かった。
そんな感じで久々のケータイ小説でした。
もうこの本が出た頃には売れるモノとして「ケータイ小説」というジャンルは確立されてたし、ちゃんと売れて、漫画化、映画化、テレビドラマ化とポンポンいって、凄いけど、まぁパイオニアよりフォロワーが一番売れる的な感じにしか思えなくて、興味を持てなかったのだ。
今回偶然拾ったので読んでみたのだけど、これが中々ね、うん。
いわゆる論壇というか、文芸評論家に評価されるような代物ではもちろん無いですよ。
でもまぁ、はじめて『Deep Love』を読んだときの強烈な「こんなもん小説じゃねぇ」的な違和感もかなり薄くしているように感じたのよ。私が読んだのが何刷りか見てないけど、ある程度ちゃんと編集者が直しているんだろうし。
とりあえずそういうありがちな批判を除くと、これストーリーの配分おかしくね?というのがある。
彼氏出来て妊娠、元カノから嫌がらせレイプ流産、彼氏と別れるまでが最初の100ページくらい詰まってるのよ。おいおい、詰め込みすぎじゃね?っていう。単行本上下巻あるんだけどって。
で、まぁ彼氏は癌だってわかったので自ら身を引いてたって事に気がついて今彼と別れて元鞘に、そして闘病彼氏死去っていうのが終わりの200ページくらい。
それ以外は他の男と付き合ったり、大学行ったりがダラダラとモノローグ的なのが並ぶ文章で書かれるだけっていう。「でもまだ忘れられないよ・・・」みたいなのが延々と。
配分をもうちょっとさぁ・・・。
ガチャガチャってはじまってダラダラ延ばして、バタバタって終わる、そしてさらに亡くなった彼氏の日記発見で今までのダイジェスト版を再放送みたいな。
豊崎由美のいう「コンデンスライフ」だけど、1作にどころか、1作の3分の1くらいの部分にそれが凝縮されてるって言う。
でも、上手い事やったんだろうな。
作者は歳の近い女性のという事の方がいい、更にノンフィクションの方がいい、本田透のいう「ケータイ小説七つの大罪」の内、売春、薬物、自殺はメディア化を考えて入れないでおこう、みたいなさ。
あとがきで、小説の最後で彼の忘れ形見を身篭っていたが、亡くなりました、と書くところとか。
文芸評論家の福嶋亮大は「偽史的想像力」って評したみたいだけど、要は「オッサンが書いてるだろ」って事だと思うしねぇ。
2chでさ、「暇なJKだけど」ってスレたてて、言葉の使い方とか学校生活の描写の矛盾で「働けオッサン」って書かれてすぐ終了、みたいなのあるけどさ、あの感じが読んでてビンビンしたんだよね。
去年で書籍化10周年だったみたいだけど、その間も表に全く出てこないし、ノンフィクションのはずが「事実を元にしたフィクション」になるし、どうかなーと。
『Deep Love』や『リアル鬼ごっこ』のナチュラルな狂いっぷりに対して、あまりにあざといというか、作られた感が強かったかなぁ。
アウトサイダーアート的なおもしろさも感じられて好きだった部分はスポイルされて、うまく商品化される、そして大ヒット、っていうのはどのジャンルでも一緒ですな。