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Gregory Mcdonald(原著)安藤由紀子(翻訳) 「ブレイブ」

平山夢明のインタビューで出てきたので買ってきて読んでみました。

まぁ粗筋だけ見るといかにもなんですよ、極貧のネイティヴ・アメリカンのコミュニティに住むアル中の少年がお金のためにスナッフムーヴィーに出る事を決意するっていう。

いかにも平山さん好きそうだなー、って感じで、実は逆に期待してなかったんですよ。まんまじゃんって。
そのまま期待せずに読んだら、コレがね、素晴らしいんですよ。あの、思ってたのと全然違ったんですけどね。

いわゆるホラーというか、マイノリティーと絶望、ゴア描写と後味の悪さって感じかと思ってたんだけど、もっと淡々とした、通奏低音としての貧困と、絶望も過ぎ去った後の寒々しさを感じる物語でした。

粗筋でフックとして書かれていたスナッフムーヴィーの詳細は早々と序盤で語られます。それはさすがにエグいものではあるのだけど、ごく普通の...普通のスナッフムーヴィーなんて無いが、まぁ想像通りのもので、この本が出版された20年以上前ならショッキングであったかも...という程度。
もうこの時点でショッキング要素より、主人公とスナッフムーヴィー製作者との会話の噛み合わなさや、騙されっぷりなどで哀しい気持ちになる。
そこからは、多少の前金をもらった主人公が、希望と絶望を抱えながら買い物をし、集落に戻る所が淡々と描かれる。
今更ラストを言う言わないも無いだろうし、まぁ想像はつくんだけど、置いておこう。

序盤から最後まで、ただただひたすらに哀しい。絶望も通り越したような主人公の一挙手一投足が、そしてそれにたいする周囲の反応が淡々と、それでいて緻密に描かれていて、つい入り込んで読んでしまう。
そして、哀しく、やりきれない気持ちになる。

これは、凄いわ。

偶然、自分がここ数年関心を持っている貧困や差別の問題に、環境は違うとはいえ通ずるものがあったので、余計に入り込んじゃった、ってのもあるだろうけど、これはちょっと凄かったな。
粗筋のフックなんてなんでもなかったって言える、予想と違う衝撃があると思う。

最初に思ってたのと違う意味で、平山夢明作品への影響が感じられます。平山夢明の、特に長編小説が好きな人には凄く興味深い内容だと思います。

名作!って感じではないけど、ちょっとやっぱ避けて通れない本だったなぁ。

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本谷有希子 「嵐のピクニック」

昔何気なく借りた『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』の映画が良すぎて、凄くビックリしたのがキッカケで本谷有希子を知った。
その後は演劇には疎い事もあって、『hon-nin』でちょっと読んだりするくらいだったけど、小説が目に入ってなんとなく買った。
面白い。
というか今wikiを見て驚いてるんだけど、メッチャ受賞してんのね。芥川賞獲ってるやん。なんでスルーしてたんだろ?まぁ3〜4年前にノンフィクション以外の本読めなかった時期あったからな...。

はい、という事で著者初の短編集にして大江健三郎賞受賞作。
やっぱり面白いんだよなぁ。
「他の女性作家とは違う!」
とか書くとアホみたいだし、言うほど女性作家の小説を読んでもいないのだけど、『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』でも分かる、客観性というか、いわゆる「女性が書く女性」みたいな揶揄視線でもなく、それでいて男性には書けないような洞察があるっていう、ちょっと不思議な感じなんだよな。
作品と自分の繋げ方が特殊な感じ。

この短編集では作者と直接的に近しいような主人公ではないものも多く、動物が主人公のものもあるので、その部分はあまり感じなかったものの、やはり「アウトサイド」のようなやさしいピアノ教師と反抗的な生徒(両者とも女性)や「哀しみのウェイトトレーニ−」「亡霊病」のように主人公が女性ものが印象に残った。

長編小説のようにどっしりしたものは無いが、短編小説としてスポッとキチンとオチをつけ、温かい気持ちになったり、予想を裏切られたり、とても面白かった。
いい読書でした、って感じ。

うわー、なんか凄いなこの人。天才なんだな。

なんかの記事で読んだ同級生の
「『(好きな人がファンなので)電気グルーヴのCD全部貸して』って言われて、それどうなのよ?全部って!好きな人に近づきたいなら買えよ!って思いません?」
みたいな証言に笑った記憶があるんだけど、うわー天才じゃんこの人。
しかも今ググッたら私が一番尊敬する小説家の村上龍の息子さんと結婚してんじゃん。
うわー、全てを手に入れてんジャーン。

...もっとこの人の作品読もう。

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平山夢明 「東京伝説―死に逝く街の恐い話」





前の記事と同じような事を書くが、同シリーズを2冊一気に読み、今一気に感想を書いているのでどっちがどっちだったっけ?的な。
同じシリーズだから内容も似てるもんね〜ぺろぺろりーん〜ってわけにもいかないが、そういう感じ。

今回も都市伝説的、というかやっぱりあんまり怖い感じでもない。なんというか
「すぐに引っ越したという」「現在は実家で暮らしている」
的な最後で、ちゃんと避難したりしているからね。
そういう職業や、度を越えたお調子者やバカでもなければ、そりゃ逃げて正解。「君子危うきに近寄らず」なのである。

霊とかだと逃げようも無いかもしれないけど、変な人が家に来るようになったら引っ越すもんね。仕事の都合とかで中々引っ越せなくてもさ、本当にヤバかったら引っ越すよ。
実家に帰ればだいぶ離れてたりするし、一緒に居てくれる人もいるから安心だろうしね。

だから、まぁやっぱそんなに怖くなる前に終わるというか、いや十二分に嫌なんだけどさ。
私も最近就職して、電車通勤になったんだけど、週に3日は嫌な事起きますよ、やっぱ。イヤホンして下向いて急ぎ足でも声かけられる時はかけられるし。

他人ってのはやっぱコワいっすよね。

だからそのー、本として読むならもっとぶっ飛んで怖かったりして欲しいけど、「実録」って事だと、対人間だとこんな感じなのかなー。

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平山夢明 「東京伝説 溺れる街の怖い話」





お馴染み、平山夢明による実話都市怪談集。
なのだが、このシリーズはより都市伝説よりっぽい感じで、ストレートに怖いというより都市伝説とか、ガキの頃にあった不思議な話、会った変な人みたいな部分もある。
ストーカーや変質者による、不可解な(犯人の中にだけしか理屈の無い)犯罪、みたいなオチは他のシリーズでもありがちなので、まぁいつもの感じ。
でもその中でもやっぱ不思議に寄ってる感じかなぁ。
単純にこの巻がイマイチだったのかもしれないけど、サラッと読めてしまった。慣れてきて、ネタが被ってるのとかもあるからなんだろうけど。

やはり印象深いのは最後の、おそらく平山さん自身の経験であろう話。
それはやはり平山さんの小説のように、ちょっと変だけどそれ込みの日常の中で更に事が起こり、不思議と最後は切ないような気持ちになる話で、やっぱこの人はこういう経験を多くしてきて、なるべくしてこうなったんだなぁ、とか思ったりしました。

なんだろ、幽霊とかの怪談話よりかはこっちの方が好きなんだけど、そこまでではない巻だったかな。

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村上龍 「歌うクジラ」

しかし、またここにきて名作書くかね。と空恐ろしくなりました。

村上龍の、今の所は最新長編小説になるのかな?けっこう前に出たけど。
最初、電子出版で出してて、そのために電子出版の会社も作って、みたいな話だったのを読んで、なんかあんまり興味をそそられないというか、ファイル共有ソフト全盛期からの事を考えるとあまり上手くはいかない気がしたので、読むのが遅れた。
電子出版という自分的にイマイチな出し方の上、タイトルがファンタジックだったので、ちょっと様子見をしていたのだ。

この前文庫が出ているのを見てやっと買ったんだけど、名作。ビビッたね。
私が活字中毒になった原因は間違いなく村上龍で、ずっと好きでほぼ全作読んでいるし、これからも読む気なのだけど、正直、最初に『限りなく透明に近いブルー』や『コインロッカー・ベイビーズ』を読んだ時のような衝撃というのは望むべくも無いわけですよ。
村上龍が65歳、私ももう31歳です。
このベテラン作家から、いいオッサンになって本を読む時間も減った一読者が受けるものなんてたかが知れてるだろうと。
エッセイを読んで、相変わらずだなぁ、あぁ最近はこういう事もしてるんだとか。芥川賞の選評を読んで、そりゃそうだよなぁ、賞をあげたいような作品なんか毎年は出てこないわな、とか。そういう感じで、まったり好きな作家の文章を読む、って感じが続くと思っていた。

だから、最初は重いっちゃ重かったんだよね。単純に長いし、元々苦手な近未来SFみたいなやつだしさ。
なんだけど、読んでいくとメチャメチャ引きこまれていって、前作と同じく、最近の経済とかに関わりだしてからの色も濃く、それでいて今までの色もあせておらず、寄りくっきりとしたようにも感じる。『愛と幻想のファシズム』や『コインロッカーベイビーズ』の近未来版のような感じというとあまりにも単純化してるかもしれないけど。
ただ、近未来小説でありながら、よしもとばななも巻末の解説で書いていたが、これは「近未来小説であり、すでに今の現実でもある」といえると思うんですよね。

村上龍は文芸春秋の芥川賞の選評で、「小説は『言いたいことを言う』ための表現手段ではない。言いたいことがある人は、駅前の広場で拡声器で叫べばいいと思う。だが、『伝えたい事』はある」みたいな事を書いていたんだけど、自分がちゃんとこういう小説を出すんだもんなぁ...何の文句も言えないわ。いや、元から文句無いけど。

しかし、これは凄いな。ここまでとは思わなかった。
過去作のブラッシュアップ版とも思えるし、結末はストレートに希望や祈りを感じさせるものなので少し今までの村上龍の作品とは違う感じも受けたが、これは現在必要なものだと思うわ。

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平山夢明 「メルキオールの惨劇」

平山夢明、長編小説第2作にして秀作。

とはいえ、さすがにまだ第2作目なので、影響を受けた作品のパッチワークに見える所もあるし、魅力的なキャラクターが数多く登場するものの読ませ続けるパワーは若干弱く、中弛みはしてしまう。
それでも最後まで読ませ、そして切なく、少し爽やかですらあるラストまできっちりと持っていく所は素晴らしい。
著者には短編のイメージがあったんだけど、2作目で早くもキチンと長編小説で秀作といえる作品になっているのは驚いた。
その後の作品ではたまに食傷気味に思えてしまう露悪的な部分とストーリー、キャラクターのバランスがよく、後に発現していく要素の萌芽が見えているのもファンとして楽しめた。例えば、後に『ダイナー』で存分に発揮されるやたら上手そうな飯の描写とか。
逆に、初期作だからこそバランスに気をつけて、小説という型に合わせていったのかもしれないけど、それが良い具合になってる。
傑作、とまではいかないかもしれないけど、間違いなく秀作ではある。

これ読んじゃうと、プレミア値になってる『沈むもの sinker』が読みたくなるなー。
レビュー読むとそっちはもっとモロに、著者がバイブル的に読み返すという『羊たちの沈黙』の影響下にあるようだけど、それを聞くと余計興味が湧くんだよな。『独白するユニバーサル横メルカトル』にも「egg man」っていうそのまんまな設定の話があったけど、それもよかったし。
再販して欲しいなぁ。

樋口毅宏『さらば雑司が谷』はどうも馴染めなかったけど、こっちは大好きなんだよなぁ...。「影響を受けた作品のパッチワークに見える所」もさ、小賢しい所が見えなければ全然気にならないんだよ。そら似たようなの書くよ、好きなんだから。当然当然。

つか今amazonで見たら「カテゴリ ハルキ・ホラー文庫」でベストセラー1位なのね。凄いね。

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平山夢明 「つきあってはいけない」





『怖い本』などで一躍平山さんを有名にした実録怪談本の、今回は男女関係の中であった事なんかを主にまとめたもの。
ストーカーとか、そういうのですね。

それなりに怖いんだけど、他のやつみたいに、全く関係の無い人にいきなりなんかされたり、イカレた人に遭遇するとか、巻き込まれるとかよりかは、なんか怖くないね。

いや、私もモトカノに軽くストーカーされたりしたんで、やっぱ怖いし嫌なんですけど、ちゃんとキッカケがあって、自分で選んで、なんなら軽率な自分にも多少非があって、みたいになると、あんまりね。
わけわかんないのが一番怖いじゃん、やっぱ。

あとは、所々に入る挿画にドキッとさせられるね。あれ、なんであんなにドキッとすんだろ?よくある、CG絵のさ、三白眼気味の無表情だったり薄く笑ってたりするやつなんだけど、油断して読んでるとビクッとするね。

そんな感じで、私はそこまでだったかな。『怖い本』シリーを初めて買った時は、何気なく深夜のバイト帰りにコンビニで弁当と一緒に買って、家帰って読んでちょっと後悔するくらい怖いし嫌な気分になった覚えがあるけど、これは全然でした。

実録モノだから、当たり外れがあるんだろうけどね。今回はそんな感じでした。

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樋口毅宏「さらば雑司が谷」





『民宿雪国』はちょっと引っ掛かるところはあったものの、「ちゃんとエンターテイメントとして昇華されていて素晴らしい」という感想だったんだけど、この本はダメだった。
『民宿雪国』は、現実とのリンクがあった分、こっちで勝手に補完できたから良かったのかな?なんか全然良いと思えなかった。
挙句の果てにオマージュ元を大量に羅列って。こういう、あえて、みたいなのはもう通じないと思うんだよな。たぶんアルバムのスペシャルサンクス的に書いたんだろうけど、なんかね。
水道橋博士も、わざわざタモリ本人に訊いて...とか書いてるけど大袈裟っていうか、2chまとめとか読んで、面白いのを拾ってるだけなんだろうから、そんな事しても意味が出てくるわけではないと思うんだよ。
芸人の感動エピソードとか嘘ばっか、みたいなのは最近水曜日のダウンタウンでもあったしなぁ。
ネット上の文言なんかもう一人歩きして、事実かどうかは関係なくなってる部分もあるし、それが拡散されてる時点で多くの人が面白いと思ってるんだから、それまんま持ってきてもしょうがないでしょ。

私はオリジナリティなんてものは無いと思っているので、オマージュ云々はどうでもいいんだけどさ、単純にそれほど面白くなかったから、そこら辺の話するしかない感じ。

ロマン優光の本ではないけど、最近は町山、水道橋が薦めていると、逆にちょっと避けてしまいそうになる。
今回も読んでて、「そんなに、評判ほどではないと思うけどなぁ」と思っていたら、ばっちり二人揃って巻末の解説書いてました。
オッサンが元ネタでキャッキャしてる感じとか、今はなんか気持ちが悪いんだよな。

こういう系統だったら、『果てしなき渇き』の方が全然面白かったし、映画もヒットして、この著者がしたかった事をちゃんと出来てるよな。

なんか志は立派なんだけどなぁ。ちゃんと小説が評価されて、売れたんだから才能もあるんだろうけど...なーんか俺はダメだったな。

『民宿雪国』の感想↓
https://fanblogs.jp/gateofdoom/archive/578/0

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Agota Kristof(原著)堀茂樹(翻訳) 「悪童日記」





名作と名高い作品で、戦争の中で祖母の家に疎開した双子の少年の過酷な日々での成長、みたいに聞いていたのでとても興味はあったのだけど、硬い本かな?洋書だし、と思って後回しにしていた。

でもいざ読んでみると、読みやすく、そしていわゆる「過酷な戦中でも力を合わせて生き抜いた少年たち」とかいうステレオタイプな物語ではなく、不条理な事は起きるし、人は簡単に死んでいく。生きる為に脅しも暴力も使うし、性描写もかなりあり、獣姦もSMもスカトロ要素も、という作品でした。戦争文学として有名でも、これは学校とかで薦めないわな。

かといって扇情的なものでもなく、あくまで自分達の勉強のために努めて客観的に書いた日記、という設定の本なので、朴訥としていながらドライな筆致なので、非常に読みやすく、コンパクトにまとまっていて、サラッと読めてしまう。
ただそれ故に、サラサラと読み進めていくうちに、「ちょっと待てよ、これって・・・」と何度も読み返してしまったりもして、読み終える頃にはどっしりと満足感のある、まさに名作でした。

固有名詞は一切出さないんだけど、著者がハンガリーから亡命して書いた最初の作品ということで、実際のヨーロッパの歴史を強く感じさせられる作品です。だけど、私みたいな世界史が苦手な人間でもちゃんと面白く読めました。

イライジャ・ウッドとマコーレー・カルキンの出てた『危険な遊び』をちょっと思い出したかな。勿論、戦争だからもっと過酷なんだけどさ。
つか映画化もされてるのね。どうなってるのか観てみたいな。

そして、この作品は三部作の一作目だ、って今知って、ウキウキしてます。続き読みたい。

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