2015年12月31日
「黄金のメロディ マッスル・ショールズ」
レンタル屋にある音楽やドキュメンタリーのDVDってグッと減った気がする。元々多くはなかったんだけどね。入れ替わりも激しいから、観たかったら早め早めで観ないとって思っている。
『バックコーラスの歌姫たち』と同時期に入荷していて、どっちも観ないとな、と思っていた1枚。先に『コーラスの歌姫たち』を観ていたのだけど、かなり近いテイストというか、こっちはスタジオ/プロデューサー/リズムセクション(専属のスタジオミュージシャン)という、同様に裏方(こっちのがよりハッキリと裏方だけど)の話だ。
同時代の話なので思い出を語るメンツも似ている。目玉としてミックやキースが出てくる感じも。
こちらはマッスル・ショールズという南部の田舎町に作られたスタジオの話だ。
そこを作ったのは一人の男で、その男リック・ホールはプロデューサーとしても優秀で、田舎町から全米ナンバー1ヒットを何曲も作った。
みたいな。
予告編みたいな話を書いてもしょうがないので、印象に残った話を書くと、そこのリズムセクションという専属のスタジオミュージシャンたちが、2代目まで全員白人なんだよね。
アレサ・フランクリンの一連のヒット曲とか、バックが白人だとは全く思わなかったんでビックリした。それは皆そうだったらしく、「あの黒人のバックバンド使いたいんだけど」と言われる事も多かったみたい。
あんな「ファンキーだぜ!ブラックミュージックぱねぇ!」みたいに言ってて、ブラックネス云々言ってた(いや、言ってないけどさ)のにマジかっていう。
「黒人特有のリズム感が〜」とかってほとんど信仰に近いよな、やっぱ。
それも、人口8000人の小さな町で、そんなに競争があったとも思えないんだけど、まぁノビノビと存分に練習できたんですかねぇ・・・なんかそう考えると、ホント場所とか関係ないんだよな・・・。
しかも映画後半で語られて、もっと驚くのは、アメリカ南部のアラバマ州にあるマッスル・ショールズでは、60年代までバリバリに人種差別が残ってたってこと。
そんな時代に、いい歌だからって全員白人でやってるスタジオでガンガンブラックミュージックのヒット曲を生み出すわけです。
普通に皆で曲作って、一緒に曲アレンジして、録音して。それでいて休憩時間に食堂行くと、黒人は差別的な視線にさらされるっていう。そんな時代によくそんなことが出来たなぁ、って。
バンドみんな白人で、黒人の歌やりたいって奴(ドアマンとか)の歌聴いて、「これはいける!」っつってレコード作ったら大ヒットって。もう笑いますよ。
それも、現在でもみんな聴けば知ってるレベルの名曲なんだよね。
本当に、スタジオの中だけが音楽によって治外法権となるっていう、夢物語ですよ本当に。
さらに驚くことに、2代目リズムセクションはリック・ホールの手を離れて他のプロデューサーとスタジオ作るんだよね。しかも人口8000人の小さな町マッスル・ショールズで。
で、2つのスタジオともその後もちゃんとヒット曲を出し続けるっていう・・・。
もう、今書いてて嘘なんじゃねぇかって思うくらいですよ。なんだよそれって。
いやー、今ってさ、パソコンあれば本当にどこでも一緒っちゃ一緒なんですよ。ちょっと前に『デスメタルアフリカ』って本を読みましたけど、ちゃんとしてるバンドは欧米と遜色ないんです。
昔だってそうだ、と強弁すればばそうなんでしょうけど、映画を観て当時の状況を知るにつれ、これは本当に革命的なことだよなぁ、と。
音楽のドキュメンタリー、ということを超えて、公民権運動とか生き様とかにまで思いを巡らせられる、素晴らしい映画でした。
『バックコーラスの歌姫たち』とテイストが近い、って最初に書いたけど、『バックコーラスの歌姫たち』はハッキリと音楽の力を、こちらはそれももちろん踏まえているんだけど、さらに大きい視点で観られるという意味で、全然違う方向でした。
どっちも素晴らしいからみんな観たほうがいいと思う。
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