2016年10月30日
小出斉 「意味も知らずにブルースを歌うな! ご丁寧に歌詞とコード譜とイラストに加え、ちょっと怪しい英語フレーズ付き」
ブルースっていうのは、今やポップミュージックの根幹であるブラックミュージックの大元になっている。
しかし、それが元々音楽というより文化人類学的な興味から、未開の部族の民族音楽のように、まだ人権の無かった黒人の文化の「採集」というような形で録音されたのがはじまりであり、歴史を辿るのは難しく、残されているのは写真1枚と10曲のみ、なんてのも珍しくない。
故に、ブルースの歌詞というのは、地元の仲間内の流行り言葉やジャーゴンだらけのラップ以上に歌詞の解読が難しい。録音物はあっても当時の録音技術の悪さから歌詞の聞き取りが難しかったり、定型が決まる前のブルースだと尺も様々、歌詞もフリースタイルと言うか、録音ごとに変わったり、カヴァーされる毎に足されたり引かれたり、そもそもオリジナルヴァージョンというのがどれか?初録音は?一番有名なヴァージョンは?などと、事はより複雑になっていく。
しかし、それこそラップのようにボーカルミュージックであるブルースを深く理解するには、歌詞の理解が不可欠だと言える。
ということでブルースの歌詞を、しっかりと解説付きで翻訳されているこの本はとてもありがたい。
解読が難しい、とはいえ、さすがに現代では高く評価され、研究され、次々と新発見があり、事実が整理され、発掘音源がCD化されているので、はっきり言ってそこまで目新しい事はなかった。当然、超有名曲が選ばれているから、というのがあるのだけど。
コンパクトにまとめられた解説と共に、歌詞とコードが書かれておりとても便利だし、本としても面白かった。
いい本ではある。
なんか歯切れが悪くなってしまうのは、和訳が一部のみで歌詞が全部書かれているわけではない事や、単行本にしては載っている曲数が少なく感じられ、「だったら、後半の変り種ブルースより取り上げるべき曲があるんじゃ?」という気になる事だ。
ギター雑誌では定期的にブルース特集が組まれるし、『ブルース&ソウル・レコーズ』も健在だ。この本で得られる情報は、けっこう点在している。というかもう、ちょっと興味を持ったら即ググって、youtube掘ってって出来るし、英語が解れば海外のサイトで歌詞解説なんていっぱいあるしねぇ。良くも悪くもそういう時代なんで、入門編としてはとても素晴らしいのだけど、この挑戦的なタイトルなら、もっと深く広くお願いしたいなぁ・・・と思っちゃったなぁ。
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