2016年08月20日
沖田×華 「透明なゆりかご 産婦人科医院看護師見習い日記」1〜3巻
なんかそのまま勢いがついて買ってしまった、沖田×華作品。
しかしコレがまた良い。
何度か書いた通り、凡百の「エッセイコミック作家」とは一線を画す人生と才能のある人だとは思っていたのだけど、コレはかなりそれがはっきり出ているのではないだろうか。
一連の作品を読んで、幼少の頃からの自分の病気や職歴を切り売りしているだけ、と思う人もいると思う。
実際、90年代には風俗嬢やAV女優本人が書いた本などがやたら出てたし、職場の内幕ものなんていうのは今でも『本当にあった〜な話』的なコンビニコミックで毎月出ている。
そりゃ、八百屋より風俗や病院の方がディープな話が出てくるだろう、とは当然思う。しかも看護婦保育士介護士なんていう汚物を片付けたりしなきゃいけない(そして想像されるより給料の安い)仕事というのは意外とエロ業界に繋がってたりはするので、実は珍しい経歴ではない。
しかし、そこではないのだ。この漫画でハッキリしたのは、創作している部分の面白さ、才能、という事。
たしかに漫画家になるためにいるような「ネタだらけ女」ではあるのだけど、あったことをそのまま書いてどうにかなる世界ではないわけで。
今まで読んだものでは、実際の自分の生活や身内の事が多かったので、「そのまま書いてる感」があったのだけど、今回はあくまでバイト先の病院の事な上、まだ看護婦になっていない学生時代の話なので、当然想像して書かなければいけない所が多かったはずなのだ。17年前の学生時代のバイトの記憶なのだし。
そう考えると、いわゆる「エッセイコミック」なら売りになる、知らない人にはショッキングであったりする堕胎の描写やその後の処理、使われる専門用語などを除いた、いわゆるドラマ部分の、例えば「患者さんが家でこういう話し合いをご家族でされたであろう」みたいな所は創作なわけだ。
で、そこがね、凄く良い。
今考えてみれば、「ネタだらけの人生」であれ、漫画にする上では全てそういう過程を経てきているわけで、当然といえば当然なのだが、今回はストレートにその部分での才能が理解できた。
安易に西原理恵子と卯月妙子の中間、とか言うと絶対に違う感じなのだけど、でもまぁその2人の作品が好きなら好きなんじゃないかな?
うん、面白いです。
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