2016年09月21日
雲田はるこ 「昭和元禄落語心中 1〜8巻」
絶対好きに決まってる、って思っていたものの、スルーしてたのをやっと読んだ。
好きだとは思ってたんですよ。「落語」という、現代においては娯楽でありながらちょっと教養寄りになってしまったものを知れる、というのもあるし、既に評価も高いし。
でもなんか狙いすぎじゃね?とスルーしてたんですよ。
BL漫画家の一般狙い的な感じかなと。
落語とか演歌とか、男社会な上に、芸事の師弟関係という擬似家族関係を結ぶ世界というのは、ゲイ的な目線で見ればいくらでも見られるわけだし、『タイガー&ドラゴン』とかのドラマなんかで落語モノはあったし。
なわけなんで、どーもねー。と。
まぁ絶対面白いに決まってるからある程度、巻を重ねたら一気に、とも思ってたんだけど。
で、読んだけどね、やっぱ面白いよね。
元極道が違う道、それも芸事の道に行き、今度はその道を極めようとするが、一般社会との齟齬があったり、昔のしがらみに絡め取られそうになったり、みたいなやつはそれこそ『タイガー&ドラゴン』はじめたくさんあるし、現実にも音楽業界にはけっこういる。
なので、そこはどうかなー?主人公も師匠もキャラはイイんだけど、と思って1巻を読み終えて、2巻の2話からもう師匠の回想シーンなんですよ。
「長ぇ夜になりそうだ 覚悟しな・・・・・・」
から5巻の第1話まで回想シーンっすよ?主人公一切出てこない。
あのね、そこまでの覚悟は無かったわ、っていう(笑)
ただコレがね、物凄く面白かったんですよ。
で、5巻の2話目から主人公久々に出てきたー、と思ったらもう真打昇進っていう。
なんかね、とても変わったバランスです。
落語を現代人にわかりやすく、漫画として登場人物のキャラも合わせて「お話」として解説するってのが主でもなく、上記したような主人公が起こすドラマが主なわけでもなく。
いや、師匠の回想は超面白いしドラマチックですよ。お互い親に捨てられて、同時に入門したタイプの違うライバル、戦争中に禁止された落語があったり、落語どころじゃない状況で踏ん張り、お互い切磋琢磨し評価されるようになり、そして1人の女を巡って悲劇が・・・みたいな。
勿論、元ヤクザの主人公だから起こることもあります、落語の内容も解りやすく入ってきます。
でもね、なんか不思議なバランス。
なんというか、いわゆる主人公の修行っぽいシーンは無かったのよ。だからといって、天才って感じでもないし。落語も、現代に置き換えて、というのではなく、そのままなんだけど、どうおもしろがるか?みたいな感じの解説なのよ。それを演る人間によってどうなるか?とか。そこら辺はちょっとジャズと重なる部分があって、落語家でジャズ好きとか、ジャズマンで落語好きが多い理由がわかったり。
これからは主人公の事が主になっていって、そこでまたお話が動いていくんだろうけど、なんか不思議な漫画だなぁ・・・。これ、連載なんだよね?掲載誌の『ITAN』ってどんなんなんだろ?見た事ないや。
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