2017年06月25日
平山夢明「他人事」
ご存知、平山夢明の短編集。
ファンなのでどれもそれなり以上に満足できるだろうと安心して、本に出会えば買うといった感じできているので今更だがはじめて読んだ。2007年作、私が読んだのは文庫の方なので2010年発行。
いつもの平山さん、といって差し支えないくらいいつもの平山さんな感じ。
奇妙に狂った世界で物語が進行し、最後にどんでん返し、そしてほとんどは救われない。という定型。
なのだが、なんというかちょっとパワー不足な感じが否めない。
いつもの平山さんで、それなりの満足度はあるのだけど、この本を特別視するべき部分が見当たらない、というか。
「さて、最後はどういうオチでくるのだろう」という感じで読み進めていってしまったんだけど、それは慣れてしまった部分もあるのだろうけど、あまり物語りに没入出来ていないというのもあると思うのだ。
「奇妙で狂った世界」の構築にしても、「仔猫と天然ガス」のように露骨に『ファニーゲーム』オマージュのような作品があったりと、なんだかうまくいっていないように感じるし、オチが上手く決まっていないように感じるものもある。
逆に言うと、筒井康隆や思い起こされるホラー/サスペンス映画から、平山夢明の影響を受けたものが透けて見える部分が微笑ましくもあるが、ネタ切れ感がちょっとあるなぁ・・・。
この後に、長編で名作だと思える『DINER』が来る、と考えればとても頷ける感じ。
いちばん「おっ!」と思ったのが、文庫版の解説が漫画家の冨樫義博だった。平山作品との出会いから、この本に収められている短編の感想を一つ一つ書いているのだけど、それが興味深かった。それ程の分量ではないものの、冨樫義博の受け取り方が覗けたのは、冨樫ファンとしても嬉しかった。
平山作品の感想をいう冨樫、という一粒で二度おいしい状態。
なので、この作品自体は読むのを後回しにしてもいいと思うけど、ファンなら最後らへんでいいから、やっぱり読んだほうがいいとは思います。
以前書いた感想
「独白するユニバーサル横メルカトル」↓
https://fanblogs.jp/gateofdoom/archive/478/0
「日々狂々、怪談日和。」↓
https://fanblogs.jp/gateofdoom/archive/579/0
「異常快楽殺人」↓
https://fanblogs.jp/gateofdoom/archive/477/0
「DINER」↓
https://fanblogs.jp/gateofdoom/archive/224/0
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