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灰野敬二/河端一/吉田達也 「一と一と一が重なってしまうまで Live At Mission’s 2008」





灰野敬二、河端一、吉田達也のトリオ。ギター/ギター/ドラム。灰野さんは唄も歌うが。
ブックオフの安い棚に突っ込まれていたので、観た事が無い事を確認して即レジへ。このネット社会にあっても、マイナーなレーベルの物はいまだにこうやって粗雑に扱われ、それなりに競取り屋からスルーされている。

灰野敬二関連のCDは、どれも外れないのでとりあえず安ければ買っている。でもよく考えたら映像作品は、単独で出してるのはそんなに無いんだよね。
何の前知識もないまま、見つけて2秒くらいでレジに行ったのだが、観てみると、河端一( ACID MOTHERS TEMPLEなど)はこのユニットではこういう感じなのかぶっ飛んだソロプレイで対決というよりは灰野さんのサポートというかバッキングに重きを置いている感じで、吉田達也もいつものイメージの凝縮されたプログレ感のある手数の多いドラムで暴れるというより、軽快でリズミックな部分が出てて、どことなくのニューウェーブっぽさみたいなものを感じた。時にポップだとさえ思う瞬間さえあったり。
イメージとしてはその2人がバックにいて、その上で主役の灰野さん、という感じ。いつもの、というか「灰野敬二」としか言いようの無い感じはいつ観てもさすが。こう書くと、こじんまりした感じに思えるかもしれないが、灰野さんが加わるとやはりさすがとしか言いようの無い音楽になる。メンツ的にも分かるがけっこうロック寄りの音で、取っ付き易いんじゃないかな。
映像は明るくて鮮明だし、サブカルものにありがちなもったいぶったような変な編集とかが無く真正面から捉えられており、本当にライブそのまま。アマゾンの説明読んで気がついたけど、確かに舞台上が、表情がはっきり見えるくらいわりと明るいし。

しかし、河端一もインタビューで言っていたが、灰野さんモノは全部ジャケが似てて見分けがつかない、そしてリリースが物凄く多い。なので、まぁ中古屋で安く見つけたら買うって感じが多いんだけど、聴くとやっぱりやられるんだよなぁ。好みはあるにせよ、全くなにも感じないってことは無い。
最近、去年の年末の大掃除で数十枚貰ったCDをいい加減片付けないとと思ってガンガン消化してるんだけど、あまり好きではないジャンルが多いのもあるが、これが本当になんとも思わない、ただBGMとして流れて終わるってのが多い。
そんなのと比べてもアレだけど、こんなに適当に買ってて、ハズレ無いってのも凄いわな。

このDVD、先にスタジオDVDがあって、その発売記念のDVDなんだな。スタジオ盤も観たくなった。

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Air 「The Virgin Suicides [Original Soundtrack]」





ソフィア・コッポラの初監督映画『ヴァージン・スーサイズ』のサントラ。
これもまた、夏の夜にでもタルーンと聴きたいアルバム。
映画自体好きで、いわゆる「ガーリー」みたいな価値観をはっきりと打ち出した最初の作品なんじゃないかな?
もうホント、それをただ眺めてるだけしか出来なかった僕ら、みたいなのにもう同調してしまって・・・あぁぁぁぁ!ってなりますよ。ぁあぁあぁあぁあ!って。

このサントラだけでも十二分にその感じは味わえると思います。1曲目の「Playground Love」のイントロからもうノスタルジー全開です。
で、
I'm a high school lover  and you're my favorite flavor
Love is all  all my soul
You're my playground love
とウィスパー気味に歌われるわけです。
もう、高校生活をぶん投げて地下でデスメタルをやっていた日々が本当に・・・いや、それが今の自分を作ってるんですけど・・・もう、泣きますよね、正直。
このサントラは全編フランスのエレクトロポップ・デュオのエール(Air)が作っているので、アルバムとしても一貫していて、とても素晴らしいです。
1曲目だけ歌入りで、最後の曲に劇中のセリフとかが入っているくらいで、あとは全部インスト。
タイトル通りの事が起こる映画なので、後半に行くにしたがってダークになっていくので、私はけっこう前半だけで止めてリピートしたりします。
というかやっぱ「Playground Love」につきるんだよね。
こういう、どうにもこうにも持ってかれて泣かされる曲ってのは何曲かあるんだけど、これは英詩がいまいちわかんないうちからけっこうきてたんだよな。映画が好きだったってのもあるけど、あのイントロでもう持ってかれる・・・。
最近、あ、俺今年30じゃんって思ったら、めちゃめちゃいろんな事がウンザリしたり怖くなったりしてきてるんだよなぁ。こればっか聴いて、昔を懐かしんで、自分をカワイそがってばかりもいかないんだけどね・・・。聴いちゃうね。



このPV、映画の映像がいっぱい使われてる、この感じ!絶対に手に入らないものと、今ではもう手に入らないもの、あぁ・・・。
ソフィア・コッポラも凄いよなぁ、初監督作だよ。

久々に聴きたくなって買いなおしたとたん、15周年を記念してデラックス・エディションなんてものが出てるのね・・・。まぁライブ音源とかスタジオ・セッションはそんなに聞きたいって感じでも無いからいいけど、どうせ買い直すならこっちにしとけば・・・ってちょっと思いました。
そういえば映画のDVDは廃盤のままで今はプレミアついちゃってて、しょうがないから輸入盤買ったんだよな。これを期に日本盤も再販されるのかな?

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東村アキコ 「かくかくしかじか」 1〜5巻(完)





東村アキコの自伝的マンガ。

前に2、3年、黄色い看板の古本屋で働いていたので、売れているものや映像化されたものはけっこうチェックしている。高価買取リストというのが毎月きてたからだ。
元々サブカルっ子なので、そういうものには背を向けてつげ義春とかを好んでいたのだけど、毎日毎日買い取ったり、それがすぐ売れたりしているのを観ていると、「そんなに面白いのかな?」と思うようになったのだ。今はマンガ喫茶もあるし、マンガだからチャッと読めるしね。
なのでたぶん「海月姫」かな?この作者で最初に読んだのは。そんなに好きではなかったけど、面白いから売れるのはわかるなぁ、という感じだった。その後、作者が美人だと知って興味を持ったりして、「西原理恵子の人生画力対決」に出てるの読んで思い出して、育児マンガがヒットしてんのか、と思って読んだらどうにも全く面白いと思えず・・・「主に泣いてます」もおもしろいと思えず・・・。
で、もういいか、と思ってたらまたヒットしてるじゃん、という。この前ジュンク堂行った時にマンガ大賞受賞って書かれて平積みしてるのを見て、気になっていたのでとりあえずマンガ喫茶へ。

これが超面白ぇ。

これはよく言われることで、吉田豪も「本人の人生掘った方がよっぽど漫画が理解できる」みたいな事を言っていたが本当にそうで、結局、漫画家本人が一番面白いよねっていう。
西原理恵子しかり、卯月妙子しかり、島本和彦しかり、安野モヨコしかり、といくらでも。
そんな濃いィ中でも、いやぁこれもマジでいいわっていう。
ハチクロに「あんなん俺等の知ってる美大じゃねぇ」っていってたリリー・フランキーとかみうらじゅんも、これなら納得できる部分も多々あるんじゃないかな。

テーマ的にも珍しくない、っていうか西原の「上京物語」もこんな感じだったよな。そりゃ西原も警戒するわっていう。クリーンで、よい師匠に出会っったバージョンかな。漫画的に考えると、ちゃらんぽらんな主人公とエキセントリックな師匠っていうキャラはよくあるわけだし。
美大に行って、「こんな上手い人たちがいるなら自分は別の部分で勝負しないと」とエロ本にイラストの仕事もらいにいった西原に対し、「本当は漫画家になりたいけど、とりあえず進路としては美大で、在学中に漫画家になれないかな?」と軽く考えてたら、いい先生に出会ってしまい現役で美大に入り、卒業まで遊び、就職したが嫌過ぎて漫画を本気で描き始めた東村。
うーん、こう書くとなんか凄くダメな感じだな・・・。まぁ実際、「こんなに親に応援されてたんだな」「いまだに連絡取り合うようないい友達いっぱいいるんだな」「西原の美大時代の貧乏っぷりに比べると・・・こりゃけっこう仕送り貰ってんな」「ずっと先生のとこに通ってたんだな」とか、羨ましいとしか言いようの無い部分もあるんだけど、これも本人の人間的な魅力だったりするからね。
でも今こう書きながら考えるとイロイロ思うこともあるのだけど、読んでて違和感は無かったんだよな。ただ超面白いっていう。
モノローグから、早くに先生が亡くなった事は容易に汲みとれ、「ねぇ先生」に続く言葉で、過去を俯瞰して見られているからだろうか?先生に厳しく教えられているからだろうか?作者が現在も一線で、そしてこの傑作を書いたからだろうか?

また比較するのもなんだが、描き続ける事、ということの一点において西原も東村も全く一致している。
作家、というのは結局どこまでいってもそれしかないのだろう。

東村アキコちょっと舐めてたわ。これはたしかに傑作だわ。そりゃ賞取るわ。こういうのがたまにあるから、ヒット作とか賞取ったものとかは、一応チェックしようって気になるんだよな。

で、こんなに人気でヒットしたのに、5巻で潔くキレイに完結なのよ。いやー、これはなかなか出来る事じゃないよなぁ。町山智浩が以前「最近の漫画はダラダラ長い!『火の鳥』は全16巻だぞ!」と言っていたが、そんな昨今の中にあって異質だ。このくらいなら、買って本棚に置いといてたまに手にとって、ってしやすいんだよな。実際俺も、4巻まで漫画喫茶で読んで、5巻は無かったから我慢できなくて5巻買ったし。
深刻さが違う、病気が、といえばそうだが、単行本にも未収録の安野モヨコの「よみよま(黄泉夜間)」が中断したままなのに対し、よくちゃんとここまでキレイに描ききったなぁ・・・と思う。

うん、これは面白いわ。読んだほうがいい。

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Helmet 「Unsung: The Best of Helmet 1991-1997」





ヘルメットの98年の解散までのベスト盤。「解散までの」というのは、その後再結成し、アルバムも出しているから。
ただまぁ、やっぱり思い入れがあるのはこの時代だ。

中心人物の、というか再結成後はペイジ・ハミルトン以外はメンバーが違った事からも判る通り、このバンドはペイジ・ハミルトンのバンドと考えて差し支えないだろう。最近もリンキン・パークとのコラボレーションがあったが、ヘヴィーミュージック界の重要人物だ。
個人的にも、TODAY IS THE DAYのスティーブ・オースチンと並んで、凄くシンパシーを覚える、大好きなギタリスト/ソングライター/プロデューサーだ。なんかこの2人の立ち位置って近いよね。別ジャンルだとスティーブ・アルビニとかも。
マンハッタン音楽学校でジャズやクラシックを本格的に学びながらも、「理論を勉強したら、今度はそれを忘れて曲を作るのさ」なんてインタビューで言ってた通り、ヘヴィーミュージック界に入ってきたのだ。
わざわざ『ヘヴィーミュージック』なんて書いてて物凄くうっとうしいのだが、90年代前半のこの時代はグランジが大ブームになったと同時に、いわゆるその後ブームになるラウドロックの祖となる多くのバンドが結成したり、アルバムが出たりしている時代。例えば1stの「Strap It On」と同じくPANTERAの「Cowboys〜」やメタリカの「Metallica」(通称ブラックアルバム)が90年だ。
このバンドの場合、『メタル』と呼称するのが憚られる音楽性の幅だったりするんだよなぁ。意識して型としてはメタルを選んでると思うけど・・・。
音楽性はメタルをベースに、インディーロック的な実験的なノイジーさ、さすがの経歴だと思わせるミッドテンポでの知的なリズムの捻り方や変拍子、不協和音などが特徴だろう。

このベストアルバムは、ただアルバムから何曲かずつ選んでリリース順に並べました、というような、凝った作りのオリジナルアルバムとは違った、「まぁ再結成前に出しとこうか」くらいの温度で出されたものだとは思うのだが、彼らの変化の仕方がわかりやすいし、便利は便利。映画のサントラに提供してたのも入ってるし。
初期のまだ焦点が絞りきれておらず、いかにもニューヨークのインディーロックに影響受けましたみたいなパートとか入ってたりするのが微笑ましい前半から、大傑作の「Meantime」、ジャッジメント・ナイトのサントラの曲を経て、徐々にキャッチーになっていく後半。
急に聴きたくなったから、とりあえずベスト盤に手を出したのだが、改めて聴いてみると以前には理解できなかったいろんな曲の仕組みが聴き取れて、今聴いても楽しい。
基本的に全部悪くは無い。好みを言えばやはり「Meantime」だけど、どの時期もクオリティは高い。
前述のリンキン・パークをはじめ、90年代後半にはこのバンドを下敷きにしたバンドが何百何千と出てきた。その後進のバンドたちとの圧倒的な差、というのが「Meantime」にはあるんだよなぁ。キャッチー方面なら、もっとそれを進めたバンドがいっぱいいるんだけど、「Meantime」のシンプルなフレーズに隠された情報量にはやはり目を見瞠るものがある。

この時代のバンドは、リズム隊も素晴らしいバンドが多いのだが、ここでのドラムも後にTomahawkやBattlesでも活躍するジョン・ステイナーだ。
じゃあ最後にPANTERAのRiseはこれに影響されて作られたという、このベストアルバムのタイトルにもなった「Meantime」からの曲を。



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Chaos UK 「Enough To Make You Sick Plus The Chipping Sodbury Bonfire Tapes」





CDの情報が出てこない。廃盤かな?まぁ今は亡き雑誌「DOLL」のパンクコレクションシリーズとか書いてる日本盤だしな、そうとう古いわ。
ロックンロールっぽい色が強くなった時期の2作品をカップリングでCDにしたもの。
なんて言うのだろう、グルーヴィーで踊りたくなる、というのとは違う、なんか無茶苦茶な動きで踊り狂いたくなるような音楽だ。カラッとしていて、暴力的では無い、不思議な感じだ。メロコアみたいな軽快さや明るさではないんだけど、あいかわらず所々入れてくるバカにしたような変なイントロやセリフとかのおかしさとかで何か親近感というか。マジで何も考えずにノリノリで暴れられる。
銅鑼声ってこういうのをいうのだろうか。粗野さ満点のボーカルも素晴らしい。
初期のノイズコア時代の刺々しい切羽詰ったハチャメチャさも勿論大好きなのだが、これはこれで超イイ。
GBHとかこれとか、この感じが出したくてサイドプロジェクトで似たような事をやりたくなる気持ちが凄く分かる。Genocide SuperstarsとかSuperjoint Ritualとかね。
しかし音が悪い、小さい。もうおっさんの私は、なんか最近のCDって妙にハイファイで音でかくて違和感があったので、これが妙にツボに入るんだけど。
真昼間に部屋で1人踊り狂っておりました。
いろんな支払いが終わり、歯医者もやっと終わり、あとは足の捻挫だけだから1回500円で済むし、これから少しずつ借金を返して・・・と思ってたら、区民税の支払い用紙が昨日郵送されてきたので、とにかく無茶苦茶に暴れたかったんです・・・でも暴力はいかんしね、踊ります。


ちなみにこの後、年末の大掃除で貰った全く趣味ではないメロハー(メドディックハードロック)のCDでも踊り狂いました。追い込まれすぎてなんでもいいんじゃねぇか、俺。

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スティーブ・ロペス 「路上のソリスト」





昔、10年ほど重度の精神病者と友達だった。
10代のはじめから20代前半くらいまで。
彼と、ある映画の話をしたことがある、その映画はこの本と同じようなストーリーで、最後に少し希望の持てるような、心を通い合わせたような感じで終わる。
「あの後、どうなると思う?」と訊かれ、
「・・・・何も変わらないだろ。同じだ」と私は答えた。
「さすがだな。そう答えたのはお前だけだわ。みんなハッピーエンドだと思ってんだよな」
と彼は言った。

そう、何も変わらない。
数度の閉鎖病棟へ出入りを繰り返し、病名がころころ変わり、自傷も自殺未遂も留学も1人暮らしもいくつかの夢への挑戦も終わり、彼が20代半ばで再び閉鎖病棟に入り、自分が20代前半になった頃に疎遠になった。正確には、ウンザリして連絡を取らなくなった。
当然ずっと無職なので、こちらが通話料を持ち、こちらが奢らなければ成り立たない関係は簡単に終わった。
彼はどうしても音楽や文章で人に認められたがっていた。そうでないなら死ぬ、と。そして、残念ながら私から見ても才能が無かったし、努力も出来なかった。「どう考えても才能無いんだから、死ねば?」と言える人間なんか誰もいない。本当に死ぬかもしれないのだ、彼の死を知らされた自分にくるダメージを考えたら言えないですよ。小金を持った親は養ってくれる。だからずっと生きていた。たぶん、そのまま今も。

人は変わらない。慣れ不慣れがあるだけ。
自戒を込めて、私はそう思っている。

「この本と同じようなストーリー」って言われても、と思うかもしれないが、表紙をみたら一瞬で理解できるだろう。
ロサンゼルス・タイムズ紙でコラムを書いている筆者が、ある日路上でボロボロのバイオリンを弾くホームレスに出会う、話を聞くとジュリアードにもいたことがあるそうだ、こりゃコラムのネタになるわい、と書いたら大反響。そして彼は徐々に心を開き、精神状態も良くなっていき・・・みたいな。
まぁ、予想通りとしか言いようがない。音楽家なんてみんなクズでみんな壊れている。よくある話だ。

ただ、この本はとても正直だ。その事が大いに好感が持てて、だが逆にこれが実話で、正直に書いたことが大ヒットにはならなかった原因だろう。
主人公のホームレス、ナサニエルは精神疾患を抱えているので、「はい、読者から贈られてきたチェロとバイオリン、ホームレス支援施設に行けば食事も摂れるしシャワーも浴びれる、個室も与えられるよ」「ありがとう、頑張ってまた音楽をやるぞ」というわけにはいかない。そういえばちょっと前に話題になった、アメリカの元ラジオパーソナリティのホームレスは上手くいってたけどね。
著者であるライターのスティーヴは結婚しているし、可愛い盛りの娘もいる。新聞でコラム、というと凄そうに聞こえるが、安定しているとは言えず、出版不況だ。共働きなのに、日々成長していくかわいい娘がいるのに、ただのコラムのネタという枠を超えて「友人」と言えるナサニエルだが、精神疾患がある、ということはこちらが全てを提供し、全てを我慢しなければ成り立たない関係だ、時間も精神も削り取られていく。法律、制度、ホームレス支援、すんなりいくはずが無い。

という感じで、主人公であるナサニエルより、スティーヴの葛藤が細かく書かれていてとても良い。というか身に覚えがありすぎてウンザリもするのだが、とても正直に書いていて、凡百の類似本に感じるご都合主義的な描写に対するウンザリとは全く違う。
この本は映画化もされているのだが、これは映画だと逆になってるだろうなぁ。エキセントリックなナサニエル→楽器演奏すると天才っていう繰り返しになってしまうだろう。
そもそもジュリアードに在籍した=天才、というのはいくらなんでも無理があるし。「彼はどうでした?」と訊かれて、「あぁ、何の才能も無いクズだね」なんていう先生がいるわけもないし、ナサニエルに対してされるのは、あくまで「ホームレスの演奏家」としての評価だ。そこには大いに違和感がある。どんな環境でも、空き缶に針金張った楽器でも、舞台に立つ奴は立つし、評価を受けるからね。

同じようにどうしようもなく正直にミュージシャンを描いた、それもジュリアードに在籍するクラシックの、という「ジュリアードの青春」という本がある。
この本の方がずっと病的で、ずっと狂ってて、ずっと悲喜交々で、やはり美しかったりもするんだけどな。と思った。
アウトサイダーアートは好きだが、アウトサイダーにこっちが求めた、評価する事をやらせる、というのはあまり好きじゃないんだよな。
ワイルド・マン・フィッシャーの方が好きだよ俺は。一応、フランク・ザッパのレーベルだし。後悔してたのか、再発はされてないけど。



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木多康昭 「喧嘩稼業 4巻」





唯一、リアルタイム(コミックス派なので連載はチェックしていないが)で買っている漫画。あ、あと「闇金ウシジマくん」も買ってるわ。
2巻まで出た時に、「おもしろいし読むけど、こんなゆっくりした展開で大丈夫か?」みたいな感じで書いていたと思う。例によって面倒なので読み返さないが。展開がゆっくりで、その後も3巻いっぱいまで使ってやっと十兵衛が石橋との勝負に勝ち、陰陽トーナメントへの出場権を獲得した。

「そういえばやっとトーナメントはじまるのか。もう4巻じゃんか。でも1回戦梶原さんやん!」とウキウキで買って帰ったのだが・・・。

まぁ私はコミックス派だし、今更ネタばれでもないだろうから書くけど、この巻ではまだ1回戦が行われていません。
元々その要素は多分にあったが、この「喧嘩稼業」になってから、より試合以外のところでの「駆け引き」「心理戦」の要素が強くなったように思う。簡単に言うと「デスノート」的な、というか海外ドラマの「メンタリスト」的な、というか。
その為に展開が遅くなってしまっている、という弊害があるようにも思うが、丁寧にトーナメント全試合を書いていって誰々が2回戦進出とかいう感じでやっていくと途方も無く時間がかかるのも判りきっているので、トーナメントを丁寧に、というより、このトーナメント自体には最強を決めるためのメンツが集う舞台としての機能を持たせるという感じで、そこを舞台に何が起こっていくか、という事になりそうだ。

この4巻は試合は無く、記者会見と、出場者は勿論、セコンド、主催者、スポンサーなども含めた心理戦が、これからはじまるトーナメントの下準備のように描かれていく。
正直、「またこの巻でも1回戦はじまんねぇぇぇぇぇぇ!」と思ったのは間違いないが、そこかしこに今まで完全に分かれていたギャグパートとシリアスパートがいい感じに混ざってたりして、新シリーズでのこの感じだったら、「喧嘩商売」の時みたいに読み返すときはギャグパート全飛ばしって感じにはならないかな、とか思ったりして。で、やっぱり心理戦は心理戦で面白いしね、結局面白く読めたんですが。

にしても新シリーズがはじまっても、結局アンダーグラウンドの試合で、戦っているのは主人公と、ずいぶん前から登場している石橋っていうのは、なかなか焦らすよなぁ。あぁ、連載はどこまでいってるのかなぁ・・・でももうおっさんになって、じれったくて1週間待つとか出来ないんだよな、ドラマとかも終わってから一気観するし。

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市橋達也 「逮捕されるまで ―空白の2年7カ月の記録―」





私は昔から隠遁願望がある。

どうしようもなく嫌だった実家を出た後も、何時間もボウっとアマゾンでアウトドア用品や防災用品なんかを眺めながら、「これとこれさえあれば失踪出来るのかな」とか思ってたり、実際に買ってリュックに詰めて部屋の隅に置いておいたりしている。
2年ほどのロクに働いていなかったり無職だった時期に、数千枚あったCDやDVD、本、一生使うだろうと思っていたギターなどの機材も売ってしまった。
ちょうどネットが一般的になりYoutubeなんかが有名になってきたりした時代だったので、部屋の四方にあった棚にも収納スペースにもギュウギュウに突っ込んでいたモノがなくなっても、そう困らなかった。
自分はオタクでコレクターだと思っていたが、思ってたより平気で、むしろさっぱりした。
また音楽はやり始めたので機材はまた買っているが、最低限のもので構成したいといつも思っている。そうは言っても色々欲しくはなるのだが、最近、汚ったねぇ古本屋の片隅でそこそこ使えるギターを7千円で手に入れて、もうこれでいいんじゃないかと思ったりしている。大事にするものとかは無くしたいのだ。

長々と自分の事を書いたが、要は私は犯罪者に興味があるが、それ以上に今回は着の身着のまま2年7ヶ月も指名手配されているにも関わらず逃げていたという点が気になって読んでみたのだ。
ただ内容は、文章力は中学生のようだし、精神的に成長しきれていない人間の言い訳や現実逃避や泣き言のような羅列が多く、逃走初日にすぐ自分で整形手術をしたりするなどのウィキ見りゃ分かるような情報と、定番であるドヤ街で仕事を探す、という定番パターンでしかなかった事にガッカリした。ほぼ無人島の離島での生活は多少興味がわいたが、結局のところ働いて貯めた金が尽きると戻って働くという繰り返しで、飲料水すら隣の島からという感じだったので、そう成功しているとも思えなかった。
どちらかというと、
「僕はけんかにならないように、周囲にあいさつするようになった。現場ではよく笑うようにした。うそ笑いだった。そうすると仕事がうまくいった。
仕事が終わり、部屋に戻ると、よく涙が出てきた。涙を流すと、すっきりした。
職場では笑う。でも部屋では涙がボロボロ流れた。

細かい事は気にしなくなった。潔癖症も消えた。」
という様な、26歳で大学卒業、事件当時の28歳になっても働いた事がなかった市橋達也が、初めて働いた時のどうしようもなく正直な感想が印象に残った。


この本を読んで思い出したが、中学の時、身近に失踪した人がいた。
私の通っていた中高一貫校は進学校で、プレッシャーなどで潰れ、失踪する人が年に1人くらいは出るような学校だった。
当時、何度もプリントが配られ、テレビでも人捜しの番組かなんかで流れていた。
そして、1年ほどして見つかった。歳をごまかして住み込みで、ファミレスだかパチンコ屋だかで働いていたらしい。
学年は一つ上だったのだが、偶然知り合いだった先輩と友達だった事で、一度喋った事がある。
「こいつ!いなくなってた奴!」
「えへへへーすいませーん」
「あー!マジすか!何してたんすか!?」
「住み込みで働いてたよー」
「へー!そうなんすかー。はぁー」

程度だが、凄いな。本当に失踪して、成功(まぁ見つけだされたわけだけど)した人が身近にいるんだな、と思った記憶がある。
当時から家族との関係が最悪で、毎日のように深夜に、玄関のドアノブのを見つめていながら、行動に移せなかった自分には、大きな衝撃だった。

私は1人暮らしをしている今でも、「俺はこれ以上どこに逃げればいいのかな」とか思いながら、少しずつ自分の荷物を捨てている。

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