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村上龍 「歌うクジラ」

しかし、またここにきて名作書くかね。と空恐ろしくなりました。

村上龍の、今の所は最新長編小説になるのかな?けっこう前に出たけど。
最初、電子出版で出してて、そのために電子出版の会社も作って、みたいな話だったのを読んで、なんかあんまり興味をそそられないというか、ファイル共有ソフト全盛期からの事を考えるとあまり上手くはいかない気がしたので、読むのが遅れた。
電子出版という自分的にイマイチな出し方の上、タイトルがファンタジックだったので、ちょっと様子見をしていたのだ。

この前文庫が出ているのを見てやっと買ったんだけど、名作。ビビッたね。
私が活字中毒になった原因は間違いなく村上龍で、ずっと好きでほぼ全作読んでいるし、これからも読む気なのだけど、正直、最初に『限りなく透明に近いブルー』や『コインロッカー・ベイビーズ』を読んだ時のような衝撃というのは望むべくも無いわけですよ。
村上龍が65歳、私ももう31歳です。
このベテラン作家から、いいオッサンになって本を読む時間も減った一読者が受けるものなんてたかが知れてるだろうと。
エッセイを読んで、相変わらずだなぁ、あぁ最近はこういう事もしてるんだとか。芥川賞の選評を読んで、そりゃそうだよなぁ、賞をあげたいような作品なんか毎年は出てこないわな、とか。そういう感じで、まったり好きな作家の文章を読む、って感じが続くと思っていた。

だから、最初は重いっちゃ重かったんだよね。単純に長いし、元々苦手な近未来SFみたいなやつだしさ。
なんだけど、読んでいくとメチャメチャ引きこまれていって、前作と同じく、最近の経済とかに関わりだしてからの色も濃く、それでいて今までの色もあせておらず、寄りくっきりとしたようにも感じる。『愛と幻想のファシズム』や『コインロッカーベイビーズ』の近未来版のような感じというとあまりにも単純化してるかもしれないけど。
ただ、近未来小説でありながら、よしもとばななも巻末の解説で書いていたが、これは「近未来小説であり、すでに今の現実でもある」といえると思うんですよね。

村上龍は文芸春秋の芥川賞の選評で、「小説は『言いたいことを言う』ための表現手段ではない。言いたいことがある人は、駅前の広場で拡声器で叫べばいいと思う。だが、『伝えたい事』はある」みたいな事を書いていたんだけど、自分がちゃんとこういう小説を出すんだもんなぁ...何の文句も言えないわ。いや、元から文句無いけど。

しかし、これは凄いな。ここまでとは思わなかった。
過去作のブラッシュアップ版とも思えるし、結末はストレートに希望や祈りを感じさせるものなので少し今までの村上龍の作品とは違う感じも受けたが、これは現在必要なものだと思うわ。

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