アフィリエイト広告を利用しています

櫛野展正 「アウトサイドで生きている」

元々アウトサイダーアートには興味を持っていたので各種連載も無料で読めるものは読み漁り、『櫛野展正のアウトサイド・ジャパン展』も行ったのだが、おそらく最新作である『アウトサイド・ジャパン 日本のアウトサイダー・アート』の印象があまり良くなく、そういえばこのブログでは触れていなかった。
『アウトサイド・ジャパン』そして、まぁ『アウトデラックス』かな。けうけげんの紹介者みたいな感じで出てたんだけど、あまり印象が...まぁテレビは難しいんだろうけど。

なのでまぁ、この本を手に取るのが遅れたのだが、まぁこのご時世ですから。買っておくか、っていう。

でもですね、この本は凄く良かったです。
『アウトサイド・ジャパン』に感じた私の悪印象というのは、簡単に言うと詰め込みすぎてカタログっぽくなっちゃってるな、という感じだったんですよね。もちろん、できるだけ多く紹介したい、という情熱故だとは思うのだけど、バックグラウンドがあまり見えないままで特に老人芸術的なものの写真を見せられても、正直困ってしまう部分はあって...。
ただ今改めて見返してみると、あの本1冊で135人も紹介しているのか...意図的にやってたんだろうな。今さら理解できたわ。

そしてこの本『アウトサイドで生きている』。ここで紹介されているのは18人、当然その分一人一人を深く紹介できているので、その部分では満足。その点は読む前から分かっていた事なのですが、まず「はじめに」で著者の櫛野さん自身の人生が語られている部分で、かなり掴まれた。
現在では後出しで様々な問題が指摘されているいわゆる「90年代サブカル」「90年代鬼畜系カルチャー」に関わった人たちの中で私がやはり否定できない人たちは、傍から嘲笑ったり石を投げて遊んでいたわけではなく、リスクを背負って自身の人生の中で彼らと関わっていた人たちで、それと同じように感じたからだ。

この本の前に『シルバーアート 老人芸術』を出しているせいか、この本で紹介されているのは比較的若い人が多い。もちろん、芸術に年齢は関係ないのだが、やはり親近感がある。私の母親も裁縫が好きで、今でも何かと作り続けているのに辟易している、というのもあるが。
特に、実際に『櫛野展正のアウトサイド・ジャパン展』で作品を見て感銘を受けていた西本喜美子、遠藤文裕、ラーテル(あなぐまハチロー)などの項は、既に知っている情報も多かったが、改めて興味深く読んだ。
いわゆる分かりやすいアウトサイダー・アート然としたものから、老人芸術、武装ラブライバー、ホームレスなど、著者のあらゆる興味の向かう先が見て取れる。
デビュー作、というわけではないのだが、その後の活動の広がりのキッカケとなった一冊なのだろう、「デビュー作にはその作家のすべてが〜」みたいな感じ。
やはり彼の活動に興味を持ったら、まずはこの本を読むべきなのだろう。

TEDx Talks出てた。




アウトサイドで生きている

新品価格
¥1,980から
(2020/3/31 21:55時点)


ハルオサン「警察官をクビになった話 」




たぶんTwitterで知ったんだと思う。自分の興味のあるものをフォローしていれば、こういう新しい才能が出てきた時にすぐチェックできるから便利だ。
「半年で警察官をクビになった」という物凄くキャッチー、と言ってしまうのもいかがなものだが、とにかく多くの人の興味をそそるような文句で登場した著者は当然ながら私も気になったのだ。
出自と経歴から察する通り絵は上手くない。漫画かと言われれば、モノローグとイラストという方が正しいかもしれない。いわゆるSNS発のエッセイ漫画などのように特殊な経験一発で書き飛ばした作品の系譜になるだろうが、軽く読み飛ばせるものではなく、情念にまみれた暗く重いものである。

経験が特殊、というのはさんざん他でも見てきた、というか特殊な経験一発で本一冊みたいな感覚がいわゆる「ブログ本/Twitter本」にはあった。
生まれ、育ち、事故、病気、性癖、職業。なんなら「〜をよく見に行きます」くらいでも本が出ていた。もう特殊、というものも分からなくなってしまってはいる。
そういうものの一つであるのだが、著者は警察官を半年で辞めた以前も以後も特殊といえばずっとそうで、この本で出ている部分は単に一番キャッチーな部分に過ぎない。

しかし、とにかく異様なものを読んでいる、という感覚がとても強くあり、著者のTwitterが更新される度にチェックせずにいられないくらいハマってしまった。
「コミックエッセイ」というものからは遠く離れた、版画のように黒く塗りつぶされた画面の中で白く抜かれた目、ちぎり絵のような不安定な線の中で硬い動きのキャラクター、そしてシンプルで抒情的、そして絶望的なモノローグ。
こういう類の作品では著者の経験より作品自体に惹かれることはほとんどないのだが、この著者の場合は完全にそうだった。そして、もちろん著者の経験自体も物凄く興味深く、しかも底無しに思えるほど引き出しがあった。



今回のこの本は内容が内容なのでたしか一度出版が流れていたと思う。その為出版が決まり、本屋に並んでいるのを見たらすぐ買った。警察学校内部の暴露、というわけでもないのだが、イジメ、暴力、辞職の強制などは薄々世間の知るところであっても、こうハッキリとは示されると困るのだろう。

今回、出版にあたり全編描き下ろしたという事で私が最初に感じたような異様さはかなり薄れている。だいぶ漫画らしい体裁に近づき、絵も見やすく、多少可愛らしくなっている。
それが残念にも思うのだが、大幅にページ数が増え抒情的な部分が増えているのでこれはこれでいいのだと思う。Twitterで発見した時と実際本になったものは違って当然だ。両方を知れた私は幸せなのだろう。

前述したようにネタはいくらでもあるであろう著者なので、これからも出版は続いていくだろうと思う。
うーん、なんか歯切れが悪い感じ。応援はしたいけど、やっぱり洗練されてしまったのは悲しいな。あのインパクトが恋しい。スマホに慣れてる世代でもないので余計に紙で感じたかったかな。

IMG_20200322_184127.jpg


著者のnote→http://note.com/keikubi


追記
完全に余談でただの私の昔話だが、昔居た会社で元警察官の後輩に暴行を受けた事がある。
怪我も無かったし退職も決まっていたので、刑事事件にはしない代わりに残りの期間を楽な部署への異動という事で納めた。
そいつも退職届出したしね。正確には逃げただけだけど。彼は警察を1年で辞めていたが、その後も1年程度で転職が続き、その時もちょうど1年くらい勤めた時。
やっぱりみんな「勿体無い」みたいな感じで、なんで警察官を辞めたか話を聞こうとしてたんだけど頑なに過去を語ろうとしなかった。
元警察官って事は一応地方公務員試験に合格してるって事で、その後地方の役所で働こうとしたみたいだけど不採用になったから戻りたいって言ってきてる、って所まで話は聞いた。もう辞めてたからどうでもよかったけど。
彼には1ミリも同情とかしないけど、まぁ元警察官って事は一生付きまとうんだろうなとは思う。

警察官をクビになった話

新品価格
¥1,430から
(2020/3/26 10:55時点)





「モッシュピット」





『遭難フリーター』で注目を集め、大森靖子や豊田道倫、前野健太などと作品を作り、カンパニー松尾率いるAVメーカーハマジムにも籍を置いていたことのある岩淵弘樹監督が撮った、2015年リキッドルームでのHave a Nice Day!のフリーパーティのドキュメンタリー映画。

...なんてことは全く知らず、『モッシュピット』というタイトルと出演バンドから、「なんか聞いたことあるバンド名だな、ハードコアバンドのドキュメンタリーかな?」と勘違いしつつなんとなく買ったのだが、これが大当たり。ちなみに名古屋のバンドのNICE VIEWと勘違いしてた。

中心となるのはHave a Nice Day!なのだが、これがなんとも説明が難しく、まぁやはりロックバンドなのだが、自らを「ジャンク・ディスコ・バンド」と名乗っているくらいで、編成もこの時は独特だったりする。「ニュー・ウェイヴっぽい」ってのが一番わかりやすいのかな?

そのHave a Nice Day!がより大きな規模でのパーティーの為にクラウドファンディングで資金を集め、同じシーンでの仲間であるNATURE DANGER GANGを対バンに、Limited Express(has gone?)やおやすみホログラムなどをゲストに迎えて行ったライブの記録。

絶対長くなるので、ここで切って続きは追記に。とりあえずそのクラウドファンディングの際に公開したMVを。



モッシュピット [DVD]

新品価格
¥2,644から
(2019/12/27 00:36時点)


カワノアユミ 「底辺キャバ嬢、アジアでナンバー1になる」





twitter見てて、丸山ゴンザレスとの繋がりで知った著者の初単行本。それで分かる通り、裏アジアモノというか、サブカル目線のアジア放浪記みたいなやつの一種。
珍しいのは女性であることと、行った先でキャバ嬢として働いていた事。
この手の本は元々大好きだし、若い女性のニューカマーということでキャッチーなタイトルもあって読んでみました。

とりあえずやはりタイトルに目を惹かれたこともあって、期待して読み始めたんだけど、

「そんな私の9か月におよぶアジア(タイ、香港、シンガポール、カンボジア、ベトナム)のキャバクラ潜入&夜遊び体験をまとめたのが本書である。 p.3 『はじめに』より」

っていきなり「はじめに」に書いてあって、なんかこう...短くね?って思っちゃったんだよね。
5ヶ国で9か月?それでナンバー1?っていう。

いやまぁ期間はそこまで重要ではないといえばそうなんだけど、にしても...と思いつつ読み進めると、やはり予想通り、勤務期間は最長で3か月半、最短で1週間。一度はナンバー1にはなったらしいがキャストが数名しかいないお店の上に、1か月ですぐにその座を明け渡している。

う〜ん、ちょっとタイトル負けしている感じが...というかさっき引用した「はじめに」の続きの

「実際は『ダメ人間の人生と、カオスな仲間たち』程度に読んでくれると嬉しいです。  p.3 『はじめに』より」

が本当のところ。

こういう本に文章力は期待してもしょうがないし、日本でもずっとキャバ嬢で小金ができちゃアジアで遊び、その延長でちょっと働いてみた、という感じの著者にはやはりタイトル以上のインパクトのあるものは 出てこない。
男のライターだともっと一攫千金を考えて怪しいビジネスとか、ドラッグや銃、死体などのサブカル/アングラカルチャーや、キャパに憧れて...みたいな使命感や夢を持った、暑苦しいのが多いので、そういう意味では新鮮といえば新鮮なくらい、軽い感じではあるんだけど。逆に、男にありがちな借金や犯罪で金を何とかするでもなく、一応ちゃんと働いているので日々の暮らしは質素で地味なんだよね。それはそれで書くこと無いよね。

さすがに9か月の海外キャバ体験記だけでは持たなかったのか後半3分の1くらいはコラム形式で書いていくが、そこはもうありがちな感じで、よくあるアジア放浪記で書かれているものでしかない。

貴重な体験記だと思うし、やはり若い女性ならではの話題、例えば日本では通ってる脱毛サロンが無い、とか美容院やネイルサロンの話題は新鮮ではあった(それこそ普通のガイドブック見ればいいのかもしれないけど)し、文章も上手くはないが読みやすくて本人のキャラも出ていると思うので、悪くはないと思う。

「六本木では数々の店を飛び、歌舞伎町では『あの子、豆ばっか食ってんのよ!』とキレられ、香港では寝てばかりいた私が、バンコクのキャバクラでナンバー1!!   p.74」

みたいな文章はキャラと勢いと面白さが出てて魅力的だ。

話したら面白いし魅力のある人なんだろうな、だからライターが仕事になって、本の出版までいったんだろう、とは思うんだけど、この本単体ではあまり評価はできない感じ。気にはなるからたまに検索したりするんだろうけど。

底辺キャバ嬢、アジアでナンバー1になる

新品価格
¥1,404から
(2018/12/6 21:16時点)







「デビルズ・メタル」




めっきり減ったレンタルビデオ屋の中で唯一残ってる、近所とは言い難いくらいの距離のレンタル屋でさえ、ゲームやコミックに押されてCDは扱いが無くなり、DVDコーナーも規模を縮小し、レンタル落ちのDVDがセール中。

ということで、「返さなくていいレンタルDVD」くらいの気持ちで200円くらいで買って、観てなかったやつをやっと観た。
タイトルでもう買うのは決定だったんだけど、どう見てもバカ音楽スプラッタ映画なわけで、マジでなどうでもいい時用に積んでたんですな。で、「もう今日はマジでなんもしねぇ!」と妙な気合が入った時が来たから観たんですな。

いやー、長々とこんな事を書いてるのはですね、普通に面白くてよく出来た映画だったからなんですね。
ナメきってダラダラ観てたら面白くてねぇ、これが。

とりあえずね、この映画作った人、マジでコアなデスメタル/ブラックメタルファンです。
音楽関連の映画って私も好きでかなり観てるんだけど、大体さ、音楽知識甘々なんですよ。
もうホント、いまだにホテルの窓からテレビ投げるシーンを自慢げに入れて「どうだ!ロックだろ!」みたいなレベル。
バンドが出てきても、メタルっつってんのに一番ビッグな出演者がアリス・クーパーとかさ、カリスマとしてジミヘン持ってきちゃうみたいな。
コメディ要素入ってるとオジーがコウモリ食うとかね、わかるけど...いまだにそれ!?っていう。

はい、そこでこの映画。
主人公が準主人公クラスのバンドメンバーに初めて会うレコード屋の場面、意気投合するのがDevourmentとAutopsyのレコード選んでですよ。
おいおい、ガチガチやがな、と。
お約束としてPOISONのレコード見てオエー、みたいなのも当然ありつつね。

いやー、もうここで掴まれましたよ。こりゃあちゃんと観ようって。

で、そのあともバンドでやるのがブラックメタルのような、デスメタルのような、演奏ぐちゃぐちゃでグラインドコアっぽくなっちゃったりする感じとか。とりあえず
森でPVとかね、もうエクストリームメタルあるあるだらけですよ。
他にもネタ満載で、好きな女の子に「あなたの好きな音楽が知りたいわ」なんつって言われてバックパックからCD出して見せたら、「C...Cattle Decapitation......Anal Cunt!?」とかさ、仲間割れしてブッ飛ばして捨て台詞が「Death to false metal!」、敵のケツにチェーンソウ突っ込んで攻撃しながら「Metal Up Your Ass!」ですよ。
全編この調子でね。


すげーよく出来てるし、メタル愛溢れるいい映画でした。
変な言い方だけど、逆に映画としてよく出来すぎててちょっと物足りないくらい。
それもそのはず、観終わった後に「ガチガチのメタルヘッズ映画やったがな...」と思ってパッケージ観たら、「『ロード・オブ・ザ・リング』のスタッフが贈る、青春爆音スプラッター!」って書いてあってビックリしましたよ。


デビルズ・メタル(字幕版)

新品価格
¥400から
(2020/9/20 04:05時点)





「メタリカ - 不屈のヘヴィ・メタル・モンスター」





もはや世界一巨大なロックバンドとなった感のあるメタリカ。
数年ごとはいえ定期的に新作を出し、精力的にライブをし、各国のロックフェスでトリを務める様を見て、異論のある人は少ないだろう。

「メタルとか関係なく〜」というのを唯一と言っていいほど実践している稀有なバンドだ。トゥルヒーヨ(慣れない、トゥルージロって書きたい)加入後は特にライブでの存在感が増し、若いロックファンにも開かれている感じがする。

その出自から、数々の不幸な事件、衝撃的なニュース、そして栄光、しかし作品は賛否のあるものも多く...と語るべき事はいくらでもあるので、こういったムックは数多く出ており、毎年のように見ている。

何冊か私も買ったし、良かったものは以前に感想も書いている↓
「メタリカ ヘヴィ・メタル革命 バンド黎明期とメタルの勃興」
https://fanblogs.jp/gateofdoom/archive/476/0

しかしまぁ、昔のインタビューの再録や、単にデータを羅列した、「安く作れるし、フェスの季節に出しとくか、新規やおっさんが買うべ」という感じが嫌になるものも多い。

そんな中、これはかなり良心的、どころか非常に読み物として面白かった。

いつものBURRN!界隈のライターに加え、道尾秀介など小説家が寄稿しているのだけど、単に「ファンです、これが好き。ライブいってます。グッズ持ってます」というのではなく、自分の生活の中にハッキリとメタリカが大きく存在していた時期があり、その後にどんな生活になってもキチンと自分の中にメタリカの存在している場所がある人が書いていて、とても面白かった。中原昌也はいつも通りなので浮いていると言えば浮いているが、でも正直に書いてる感じで嫌な感じはしない。
よく言われることなのだけど、メタリカの音楽性って実はけっこう変わってて、いくら「名作」と言われるアルバムがあるのは理解できても、ある種アイコンとなった後は単純にいろんな場面でメタリカに初めて触れる事になり、その時の新作の推し曲から入る事になったらまたね、人によって思い入れのあるアルバムはバラけますからね。

データ的なこともキチンと押さえているし、歴史もちゃんとわかる、アルバムごとの考察もテーマごとの論考も的確だと思う。
このサイズのイイ感じのムックがあるとすぐ「いい時の『炎』みたい」とか言いそうになるオッサンな私なわけですが、うん、とても良かったです。
BURRN!のいい部分というか、キチンと愛があるからかな?当然知識もあって、キチンとした検証と考察があって、自身が書きたい事もあって、でもちゃんとバンドに敬意を持っていて、みたいな。そして外部からの意見も入って。
全てがいいバランスで、読み物として素直に面白かったなぁ。メタリカ、だからこそだよな。

しかし、マーティ・フリードマンの「メタリカが成し遂げたこと、メガデスが成し遂げられなかったこと」ってインタビューは今だからこそ言える、そしてムステインは一生言わないであろうくらいの身も蓋もなさで、かなり興味深かったな。

メタリカ ---不屈のヘヴィ・メタル・モンスター (文藝別冊/KAWADE夢ムック)

新品価格
¥1,296から
(2018/5/28 00:54時点)



蟹めんま 「バンギャルちゃんの日常 2」

不思議とあと引く作品だったので、ブログも全て読み、さらに単行本も購入。

というか、実は2、3巻をまとめて買って読んでて、感想書こうと思って「この話は2巻と3巻どっちに入ってたっけ?」とか思って何度か読み返しているんだけど、その度に2冊とも読みふけっちゃって終わるんだよね。
エッセイコミックって軽く読み飛ばす用に買う事が多いんだけど、この人の漫画って派手なエピソードとか有名人がたくさん出てくるわけではない(バンド名はほとんど伏せているか仮名になっている)のに、なんか何度読んでも面白く読めちゃうんだよ。

派手なエピソードでは無く、地味な、というか生活に根ざした庶民的でありながら情熱だけはあって工夫したりしているところが共感できるのかなぁ?
私はバンギャではないどころか、そこまでV系に興味があるわけではないんだけど、なんか読ませるんだよなぁ、この人の漫画。いつのまにか自分の事と重ね合わせて共感できてしまうっていう。
そう考えると、コミックエッセイの作家としてめちゃめちゃ才能あるんじゃないだろうか、この人。
普通におもしろく読んでただけなんだけど、ちょっとこれは凄いわ、何度も読めてしまうくらい作品の強度が高いというか。

そんなこんなで2巻なんですが、とりあえず一読して驚いたのが漫画のけっこうな分量がブログで読めてしまう事。
先にブログを全部読んでいたのでちょっとビックリしました。単行本出ると消す人多いんですけどね、太っ腹です。
そして、それを加味しても損した感は無く、用語辞典や4コマ、インタビュー漫画なども合わせて、改めてもう一度漫画を読んでも、前述のように面白く読めて満足する。

2巻では、1巻(というか続くかどうかは売り上げ次第だったのだろう)の好評で、おそらく漫画家専業にもなり、増えたV系人脈や自由な時間とお金によって、バンギャル復帰後の活動範囲も広がった事による、健全な話題の広がり方をしている。
1巻では学生時代、2巻ではそれに加え社会人時代の事も描かれており、さらに復帰した事による自分の現役時代とのギャップも書いている。

学生時代によく行ったショッピングセンターの閉店や、東京で就職して更にバンギャル活動が活発になると思いきや「そのうち行こう」と思いながらフェイドアウト、バンギャルをあがる/あがらないとか、V系のDJイベント、無料イベント、初めての遠征、海外のバンギャにインタビューとか、時代を飛び越えながら盛りだくさんな内容。

1巻よりもアクティブな感じ。好評で2巻出して、ノッてる感じですね。

不思議なんだよなー、面白いんですよ、何度読んでも。

1巻感想↓
https://fanblogs.jp/gateofdoom/archive/670/0

バンギャルちゃんの日常 2

新品価格
¥1,080から
(2018/3/12 23:37時点)






Awful Things (Live) Good Charlotte X Lil Peep Memorial Service Tribute





昨年の年末に21歳の若さで亡くなったLil Peepのカヴァー、というかトリビュートとして発表されたもの。

「ラップ界のカート・コバーン」なんてアホみたいな形容をされたりもしがちなニューヨークのラッパーで、ファッションや振る舞い、ゴシップ的な意味を除いても、音楽的にも実際にグランジ/オルタナティブの影響を物凄く感じさせられるラッパーだった。

というかモロにグランジリバイバルな感じ。それが「ラッパー」の作品として出るのは面白いな、と思って追っかけていた。
わざわざ括弧をつけて書いたのは、まぁ下にリンク張ったんで聴いてみてもらえば分かるんだけど、いわゆる「ラップ」という感じではなく歌ってるんだよね。
最近のUSのラップだともう、「歌うようなフロウ」とかを超えて、ドンドン壁がなくなっているというか融合しているというか、特にトラップってジャンルのラッパーはそうかな?もう全然歌うんですよ。
別にAK−69みたいに両方出来るとかではなく、自然にどっちでもいいって感じで。
今回Lil Peepの命を奪った原因でもあるダウナー系のドラッグが流行ってて、ダルそうにラップするのとダルそうに歌うのが近い感じになるからかな。
ブラインドで聴かせたら、リズムにEDMの影響のあるグランジに聴こえると思う。
というわけで、ギターロックやグランジが好きな同世代にも薦めてたんだけど、まぁ不思議そうな顔されますね。「えーと...でもラップなんだよね?」って。実際に聴かせるまで理解されないですね。

はい、ただまぁ、残念ながら亡くなってしまって、そんなところまで過去をトレースしなくても...しかも更に凝縮された形で...と思わずにいられないですね...。

そして、勿論色んな人がコメント出したりしてるんだけど、Good Charlotteがこの映像を公開して、あーやっぱバンドでやってもいいなぁ、単純にいい曲だよなぁ、とか思って、またイロイロ考えてます。



こっちが原曲ね。


Lil PeepもBlink 182をライブでカヴァーしてたりするから、近しい関係だったんだろうな。


Come Over When You're Sober, Pt. 1 [Explicit]

新品価格
¥1,200から
(2018/3/7 23:31時点)




ユース・オーソリティー

新品価格
¥1,543から
(2018/3/7 23:32時点)






ツチヤタカユキ「笑いのカイブツ」




深夜ラジオを聴いていれば当然知ることになる著者の初の単行本。というか、「オードリーの若林の所から実家に帰っちゃって、どうしてるんだろ?」と思ってたら本が出てビックリした、という感じ。
当然興味はあったが、今更読んだ。
なんかね、タイトルから粗筋からインタビューからなにから、なーんか違和感があったんですよ。それで遅れました。

読んでみると、最初は共感できる部分もあったのだけど、徐々に違和感が。最初は「凡人がどこまで出来るか」だったはずがいつのまにか「笑いの能力が高い」「天才」「カイブツ」になってしまう。
変わったのは自意識だけなのでは、と思うんだけど。
結局ね、「凡人がどこまで出来るか」という事だと、優秀な下請けくらいが限界だったりするんだよね...。
いや、私も一応それなりに音楽やってたりしてたんでわかるんですけど、本当の天才以外は普通にサラリーマンと変わんなかったりするんだよね...。例えば、今は教則本で有名になってる先生が、カラオケのバックや着メロを過労で倒れるまで作ってたり、即興しか興味の無いジャズマンが営業バンドでマツケンサンバ弾いたりしてるのを見てきてるからね。超上手いのに「当てフリも立派な仕事ですよ」って寂しそうに言ってたり。
いわゆる「アーティスト」でなければ、音楽だけやるってのは無理なんですよ。
というか、よっぽど売れてなきゃ遅刻とかも出来ないからね。

本の内容は予想通り粗筋通りなんであまり書くことは無いので、この著者と一番分かりやすく比較できる対象を考えると、少し前にアウトデラックスに出ていた、「けうけげん」がいると思うんだけど、あっちはもうアウトサイダーアートに近いからね。それと比べるとどうもね......。しかもあっちのが意外と大卒で正社員っていうね。親のために芸人ではなく安定した正社員の道を...っつっても才能があるからそれで稼ごうとするマネージャーみたいな人も付くし、その人の紹介とかいらないレベルでもう一発で面白がられるわけですよ、でテレビ出て。
ぶっ飛んだ天才で、親も安心させて、安定してて、その上で才能がもったいないっつってテレビに引きずり出されてくるわけ、あっちは。

同じくケイタイ大喜利レジェンドのライターにインタビューされている記事も読んだし。だから...そうも出来るのよ。
「全てを笑いに捧げたからこんな人生です」じゃないんだ。「極端な事をしたから凡人でもそこまで行けました」なんだ、やっぱ。

しかもなんかね、けっこう気になる存在だったから本を読む前からネット上のインタビューとかも読んでたし写真も見てたんだけどさ、「全てを笑いに捧げた」っていう人に見えないんだよね。物凄く自意識過剰な感じを受けるのよ。なんというか、「高くは無さそうだけどちゃんと自分なりにデザインで選んだ服」を着てるように見えるんだよなぁ。普通に自意識があって、自分で選んでるんだけどダサい人って感じ。
本の中でも「ヤクザに殺されるならカッコいいかも」みたいなのが出てきて、結局カッコいいとか悪いとかの自意識モリモリなんですよ。「ヤクザに殺されるのは面白いのか?笑えるのか?」じゃないの?って話。
本書の中でいうと、人と違う「カイブツ」を自称するのに、人に変な目で見られる「町の名物おじさん」にはなりたくない、っていう自意識のあり方。
結局、カッコよくありたいっていうのがさ。

そこに通じるのかな?最初の3000円の話しか書いていなかったけど、あれだけ採用されてればそれなりに金になるだろうし、ほぼずっと実家で家に金も入れてないわけだろうしなぁ。
あ、あと、「27歳、無職、童貞」みたいに帯の裏にデカめに書いてるけど、27歳で彼女出来て童貞喪失してるのね...。しかも本の真ん中あたりでバッチリ1章使ってその話書いてるし。
売る為に編集者とかがした事なんだろうけど、なんかね...。

まぁ少なくとも、大喜利やネタ作りにかけたのと同量の情熱を文筆には傾けていないのが丸見えなので、「面白くないやつが出世して!」「才能無くても媚びるだけで稼いでるやつがいる!」というのが、文筆で金を貰っている自分に跳ね返ってこないのは何故なんだろう?と思ってしまう。
もちろん、編集者もついて直しているのだろうけど、漢字や言葉の使い方に不自然さを感じる。個性を出そうとしているのかもしれないけど、端的に言って失敗だと思う。
「燃え殻」「こだま」「爪切男」と文筆の世界にブログやツイッター界隈から本物の才能が出てきちゃってる中、正直これでは勝負にならないと思うわ。
また10年文章だけ書き続ければ何かしら生まれるかもしれないけど、結局、中途半端に培ったものを切り売りして金にしちゃってる現状だもんな。

最大のテーマであろうお笑いや、そこにかけた情熱と極端な生活より、意外と、彼女の事を書いた章の、彼女と別れた時の

「アナタがまだ僕を好きな間に、アナタの隣で、死んでおけば良かったと、僕はその時、思った。」

って一文が一番好きだったな。
たぶん彼が自意識から出てきたのは彼女と一緒の時だけで、その最後に書かれたこの一文が、私には一番心に残った。



「BODY COUNT - Raining In Blood / Postmortem」







『ジャッジメント・ナイト』で共作したとはいえ、なんで今スレイヤー?
しかもベタベタな選曲で完コピ?
更に曲順まで入れ換えて?

と疑問は尽きないカバー。しかもビデオまで作る(スタジオの映像だけどさ)という力の入れっぷり。

不思議な気持ちで観ていたが、ちょっと自分の中で考えていた事の疑問が解けた事がある。
あのね、スレイヤーってメチャメチャ歌詞の量多いのよ。単語数っていうかな?
めちゃめちゃ詰め込んでるんだよね、曲が速いからその分減らすんじゃなくてそのままギュッと詰め込んでる感じ。メタルバンドだと、ジューダス・プリーストのロブ・ハルフォードも歌詞詰め込むんだけどね、あっちはミドルテンポの中に詰め込んでる感じだけど、こっちは曲自体が速いからさ。
ヴォーカル/ベースのトム・アラヤが歌詞書いてないっつーのもあるかもしれないけど、めっちゃ歌うのキツイんだよね。リズム感もいるし、どこでブレス入れるとかも。しかもデス声でもないじゃない。NWOBHMの流れをちゃんと汲みつつ叫ぶように歌っているっていう。
デスメタルバンドなんかがカバーしてもなんかイマイチなのはやっぱこのあたりでさ、難しいな、と思うわけ。

で、正直面白半分でこのビデオを観はじめたんだけど、まぁ完コピだってのもあるけど、ボーカルがけっこうしっくりきてんな、と。やっぱリズム感イイよなラッパーは、と。アイス-T流石だな、と。
そういや昔友達に「スレイヤーってボーカルがラップみたいじゃね?」って言われた事あったなーとか思い出したり。その時も「んー...歌詞の量は多いかな。ラップってこたないけど」と答えたけど。
今回、実際にラッパーが歌ってる音源聴くと、ちょっとだけ納得も出来たり。
いや、元々リズム感が素晴らしくて、ロックやメタルにも造詣が深いラッパーが上手い事歌いこなしてるだけなんだけどさ。
あんまりにも完コピで、過去に言われた事とストレートに繋がったんで不思議な気持ちでした。

いや、勿論このカバー自体への感想は、「完コピやがなwww」くらいのもんなんすけどね。

Bloodlust

新品価格
¥1,158から
(2018/2/16 23:26時点)



<< 前へ     >>次へ
<< 2024年11月 >>
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
カテゴリアーカイブ
月別アーカイブ