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マイケル・フィンケル(著)宇丹貴代実(翻訳)「ある世捨て人の物語 誰にも知られず森で27年間暮らした男」




前にも書いたが、私は隠遁というのにすごく憧れている。
以前、半年ほどほぼ引きこもり状態だった事がある。面倒で何も食べずにひたすら本を読んでいたのだが、数日後にトイレに行くのに起き上がることすら辛くなったので、しょうがなく食べ物の為にスーパーにだけは行っていた。
半年間誰とも会話をしなかったのだが、楽しかった。というかストレスが無かった。
何かの拍子にそこそこまとまったお金が入ったり不労所得が得られるようになったら、今度はフィリピンやベトナムで同じように過ごしたいと思っている。

さて、この本は27年にもわたって隠遁生活を送っていた一人の男の物語だ。「森の隠者」として半ば都市伝説になっていた彼は、実の所は人嫌いなだけのコソ泥でした。
いや、そんなまとめは乱暴すぎるのだが、結局のところ自給自足でもなんでもなく、近くの別荘地から食料や酒や生活用品を盗んで、秘密基地みたいな野営地で盗んだカセットコンロでマッケンチーズ作って酒飲みながらラジオ聞いて本読んでたんですよね。
もうだいぶタイトルから考えるイメージと違うでしょ?
なんというか、その身も蓋もなさ、思想の無さが本当にリアルというかなんというか。
本が好きなだけあっていろんな言葉を使うのだが、結局のところ「一人が好き」という事で俗世間から逃げて見つかりにくい所で野営しながら必要なものは泥棒してたんですよ。
それは「1000件以上も犯罪を犯した凶悪犯」とも「スナックや電池を盗んでいく都市伝説のかわいい森の隠者」「そっとしておいた方がいい事情のあるかわいそうな人」などと地元住民には思われていて、結局捕まった後も意見は分かれている。

そして著者は著者で、捏造記事を書いたためにニューヨークタイムズを解雇されたことで有名な記者だったりもする。そんな自分と孤独なこの男を重ねたのか、執拗に彼に会いに行き、最後には今度来たら警察を呼ぶとまで言われている。
著者は古今東西の隠者や隠遁者について調べたようで、中でも小野田少尉に興味を持ったらしい。「あれはドンコーです」と言って現地人を人扱いせずに殺傷し略奪の対象としていたことを全くもって反省していなかった小野田少尉とかぶるところは確かに少しある。英雄でも仙人でも聖人でもない、人間のみっともない生々しさだ。



気持ちはわかる。「Into the wild」のおぼっちゃんよりも好ましくは思う。
27年はとても長い。しかも、冬にはマイナス30度になることもあった土地での野営は大変だったであろう。
人生で色々やり尽くした後ではなく、20歳でふらっと車を捨てて森に入ったというのも特筆すべき点だろう。
孤独を好み隠遁願望を持つと共に見え隠れする自己顕示欲もまた、成長せずにきた男の姿としてすごくリアルだ。
27年もの長期間このように隠遁生活を送れた例というのはまず無いので、彼の経験というのは貴重なのだが、本人があまり語りたがらなかった為、10回ほどの面会と手紙のやりとりしかできていない。よってこの本の大部分は著者の憶測に過ぎない部分が多く、あげくの果てに想像をたくましくしすぎて何度も押しかけて完全に拒絶されるまでに至る。
とても歪な本だ。

彼のその後を検索してみると、野営をし、そして窃盗をしていた地域の住民と和解し、現在はその地域で野外活動についてレクチャーしたりしているらしい。
それを聞くと余計に、この著者がやった事は余計な事でしか無かったと思ってしまう。
まぁネタになりと思ってはじめたら、予想外にハマっちゃったのかな。
隠遁生活や野営などの詳細はさほど書かれてもいないし、この本に興味を持った人を満足させる内容ではないと思うけど、なにせ貴重な記録ではありますからね。まぁお暇でしたら、くらいの感じ。





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