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卯月妙子「鬱くしき人々のうた 実録・閉鎖病棟」




まさかの復活と思えた『人間仮免中』そして続編の『人間仮免中つづき』、過去作の電子書籍での復刊。そしてTwitterやpixivなどでの活動を見ていたので以前ほどの驚きはないものの、実際に本屋に並んでいるところを見るとやはりびっくりした。
17年前に序章だけ掲載され、その後病状が悪化し、描けなくなってしまっていた本作。復活したとしても一番辛い時期だったはずの事を思い出しながら作品にするのは難しいだろうし、pixivでスケッチ的なモノを発表して終わりだろうと思っていたので、一冊の本として出版までいったのは素直に凄いと思った。
さて、内容ですが……うん、うん、こんな感じですよね。
いや、度々名言として出す、クリーンになって曲に刺々しさの無くなったデイブ・ムステインへのダン・リルカの「もう一回ヘロインやれ」じゃないんですけど、まぁ端から見りゃボーダーライン上が面白いわけだけど、一回落っこちて戻ってきた人に「もう一回」ってのはあまりにも酷なわけで、まぁ無事出てよかったな、ここまで回復したんだな、というのがファンである私の心情かな。
前作の感想も好意的では無かった筈なんだけど↓
卯月妙子「人間仮免中」感想↓
https://fanblogs.jp/gateofdoom/archive/57/0
卯月妙子「人間仮免中つづき」感想↓
https://fanblogs.jp/gateofdoom/archive/570/0
今作も一読して「絵本か?ってくらいコマがデカいな、細かい絵は書けないんだろうな」「『人間仮免中』が特殊だっただけで、絵がどうのって人でも無かったしな」「長編は無理だろうからコラムっぽいというか短い話で一話完結っぽくなっちゃうよな」という感想になってしまい、良くも悪くも全て丸出し実況中継される現在で、閉鎖病棟は特殊な環境とはいえ既に語られつくしているような現状で、さらに本作で描かれるのが日常エピソード的なモノが大半なので困ってしまう。書きたくなる気持ちはわかるんですけどね、以前の感想で少し書いた、病気だった私の元友達も「閉鎖病棟に入院していた」というのが持ちネタというかアイデンティティみたいになってたんで。
でも正直、ブログ本ブームでイヤってほど「特殊な経験/環境」とやらを見せられたあとでは、そう特別とは思えないんですよね。良くも悪くも絵は普通になったし(後書きを読むと仕上げはアシに任せたっぽいし)。
もちろんファンだし、待望の作品ではあったんだけど、作品としては引っかかるところはほぼ無かったなぁ…。
しかしこう考えてみると凄い時代だね。自殺でもテロでも実況中継されるんだから。



あとは、あとがきで謝辞を述べられている中に太田出版の村上清氏もおり、最近起きたいわゆる「小山田圭吾問題」を思い出してしまったのだが、20年近くに渡ってこうやって辛抱強く著者と付き合っているという事実をとっても、過去の事もただ面白がってただけの悪人だとはやはり思えないんだよな。
もちろん商売っけも、時代なりの配慮の無さも、自己顕示欲も、この著者の卯月さんほどの才能を感じさせない対象への軽い扱いもあっただろうが、やはり私は一方的な非難は違うと思うんですよね。
そういうアレコレも含めて「17年越しの出版」という事で色んな意味での変化を感じた一冊でした。
ファンとしては、現在は落ち着くところに落ち着いて、緩やかでも活動できている、という事がただただ嬉しいです。
ただまぁ、初めて読むなら電子書籍で読めるようになった過去作、特に『新家族計画』の方をやっぱり勧めるなぁ。あれは本当に鬼気迫る作品だったので。

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