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卯月妙子 「人間仮免中つづき」





「あの卯月妙子が復活!?」
と驚いたあの『人間仮免中』のタイトル通り、つづき。

元々、卯月妙子の漫画のファンであったので、その復活は大いに驚くと同時に喜んだし、その復活作の『人間仮免中』がまたとんでもない作品で、精神状態の悪化や薬物による(又はその断薬による)トリップや妄想をここまで渦中の人間が直接的に表現できた例というのは少ないだろう、というアウトサイダーアート作品として素晴らしかった。
90年代サブカルのバッドテイストブームの中で漫画家としてデビューし、お手軽な「AV女優本人が書きました」的なエッセイや漫画を吹き飛ばす圧倒的な表現で名を上げ、行き着くところまで行ってしまい作品は未完になりお蔵入りになり、やがては漫画以外の活動もなくなり・・・という復活が考えられない状態からの復活、しかもこんどはアウトサイダーアート持ってきやがった!という興奮が、前作にはとにかくあった。

当時も書いた↓自分語りが長すぎるけど・・・。
https://fanblogs.jp/gateofdoom/archive/57/0

と同時に、いわゆる「感動の作品、こんなにも壮絶な愛がどうの」みたいな宣伝文句とは違う感想しか持てなかったのも事実。

漫画が描けなくなって以降の小劇団やパフォーマンスアートの世界での評判や、本人のブログ(web日記)、それを受けての2chのヲチスレの住人との不毛な争いなど、正直褒められたものではなく、自己顕示欲を持て余しているように感じた。
ここは難しいところだけどね。私もフリージャズが好きだけど、まがいなりにも13年くらい音楽やっててほぼ理解されたことがないし、そもそものパイが小さすぎてどうにもならんし、だからといって「あれって下手な人が逃げる道で、デタラメなんでしょ?」と言われるとそりゃ反論もしたくなるってのもわかるし・・・。
それでも、端的に「周りの人は大変そうだな・・・」というのが感想で、個人的に10年ほど付き合いのあった精神病者の友達を思い出してウンザリしたりしていた。

そして、この本に関しては、正直面白くなかった。
2度読んだがこの先読み返すことはないと思う。

前作のヘタウマという域を超えた、アウトサイダーアート的な線の震えなどの絵の狂い方はかなりおとなしくなり、内容もボビーとの平穏な日々の話だ。
勿論、卯月のファンや前作を読んでいる人なら分かる通り、病気のこともあるし平穏ではないのだけど、仕事にも煩わされず田舎でどうにかやってます、という感じ。

平穏なのは悪くないし、2人で幸せに暮らしているようなのでおめでたいのだけど、この普通のエッセイ漫画的な出来事(ボビーと派手に喧嘩しちゃった、とか)の裏に、周囲の多大な労力が掛かっているのが散見されて、上っ面しか読まされていないように感じる。

病気でも絵を描くと、はい、何億の値がつきました、という草間弥生のような天才はさておき、それ以外の大多数というのは総じてそういうものであって、その中で平穏なフリをされても・・・という。喧嘩も、病気が悪化して病院に行く事になった事がその「平穏」の中に入るのも当然で、むしろそれを作品に入れるに至る、なんというか本を面白くする為の作為というか、そこは選んで入れたのね、という感じがなんとも・・・。
それに、私は短歌や俳句に詳しかったりはしないけど、挿入される短歌が、取るに足らないような評価しか受けないであろう事はなんとなくわかる。そういう評価の低さなんかに逆ギレしていたのが過去のネット上のあれこれだったと思うし、変わってないんだな、と思ったり。


結局の所、私が読んでいて一番グッと来て息が詰まったのは、具合が悪くて病院に行くも、パニックが来そうな気配がしていて、結局幻聴とパニックが来てしまう、という話だった。
だからといって、バッドテイスト的な部分を求めてるわけではないんだけどなぁ・・・なんか『新家族計画』の没部分ばかり読まされているような感じでした。
「作品より本人の方が面白い」というタイプの作家は多くいるし、卯月妙子もその中の1人だとは思ってたんだけど、こうも本人の自己愛みたいなものだけを出されると、読むのがしんどかった。

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