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Tony Parker (原著)沢木 耕太郎 (翻訳) 「殺人者たちの午後」

仕事の休憩時間にこの本を読んでいたら、上司に
「おいおい、爆弾の作り方とか読んでんじゃないよねぇ〜?w」
と、非常にベタなネクラのイジり方をされたんですが、
「いや、殺人者のインタビュー集っす」
と答えたら妙な空気になりました。
そんな就職2ヶ月目。

はい、まぁそんな事はどうでもいいんですが、この本ですね。
元々、サブカルっ子あるあるとして、猟奇殺人やシリアルキラーには興味があって、それに関する本もよく読んでいたので、その感じでこの本も手に取ったのだけど、これはまたちょっと違いました。
原題が『LIFE AFTER LIFE』。「LIFE」は生活や人生といった意味の他に、「終身刑」という意味もあり、それを知って原題を考えると本の内容がなんとなく分かってきます。
いわゆるシリアルキラー語録とか猟奇殺人者獄中インタビューとかそういうモノではなく、終身刑を受け、仮釈放になり社会復帰をしている、又はそれに向かっているような人たちのインタビュー集というか、それを題材としたドキュメンタリー作家の作品という感じ。

三流大学法学部中退の私が法律云々書くのは恥ずかしいのですが、「終身刑」というのは、言葉通り死ぬまでという事でもないんです。
というか、この本の舞台のアメリカだと仮釈放ありの相対的終身刑と、仮釈放無しの絶対的終身刑(Life sentence possibility of parole)があって、この本でインタビューされている人の多くが、刑務所の外で暮らしています。
とはいえ長く刑務所にいたせいでいろんな問題を抱え、まともに職にも就けずに生活保護を受けながらアパートで1人で暮らす人もいます。

難しいな。なんか傑作ノンフィクションなのは間違いなくて、題材がこれだからね。なんか肩に力入っちゃうんだよな...。
うん、おもしろかったっす。本として、買った時の予想とは違ったんだけど、凄くいい本だった。

最近亡くなったチャールズ・マンソンや、古くは切り裂きジャックなんかをダークヒーローとして扱う感じのものや、下世話でショッキングな面を強調したモノが多いなか、淡々としたトーンで殺人者との会話を描く。
そして、「もしかしてあなたの隣にも」どころか、本当に仮釈放されてて普通に暮らしているわけだ。

当たり前だけど「死刑」と「終身刑」では大きな隔たりがあります。
そして、「終身刑」というのは仮釈放される可能性があります。法律上は10年経過ごとに仮釈放を認めることが出来ますが、実際には日本では20年以上後の事がほとんどです。
そして、この本を読んで行くと非常にその事を考えてしまうのだけど、悪い事が重なると、この判決が出てしまうかもしれません。

...っていうのもおかしいんだよな...この本に出てくる人たちは確実に1人は殺めてしまっていて、「何人から〜刑じゃないと」ってのもナンセンスな議論なわけで。


「運悪く」「出来心で」なんて常套句が出てきそうでグッと堪えているんだけど、この本を読んでも、シリアルキラー本を読んだ時のようなダークな高揚感や、普段の生活の鬱憤が晴れるような反社会的な爽快感も無い。
隣人どころか、自分にだっていつか起こるかもしれない。カッとなって、当たり所が悪く、手持ちが無かったのでそこにあった財布を持ってタクシーに乗った。
全部が悪くとられたら終身刑もあり得る。
そして、そこからは『LIFE AFTER LIFE』なのだ。

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