2013年11月23日
Paul Gilbert「Alligator Farm」
ポール・ギルバート、2000年リリースのソロとしての3rdアルバム。
前に書いたと思うが、もともとは苦手だったポール・ギルバートのソロアルバムだ。
とはいえ、メタラーでギタリストなら避けて通れるはずもなく、レーサーX、Mr.Big、ソロと相当数買っている。途中からは「好き」とは言い切れないものの「尊敬」という感じで聴くようになったのだが、思い出すとその前からもちょくちょくチェックしていた。まぁそのくらいの存在感のある人だ。
ヤングギター誌を愛読していると、飛び抜けて親切で的確な奏法解説が本人から語られているし、それは練習フレーズの宝庫なわけで、テクニカル系ならポールのコピーが一番の近道だと思うしね。
という訳で意外と数聴いている中で1番好きでいまだに愛聴する一枚。
シュラプネル出身のギタリストのソロ、というとインストでピロピロ弾きまくりメタルかフュージョン、あとはリッチー・コッツェンやヌーノ・ベッテンコートみたいなボーカルも取れる器用さを使った渋い路線とかがほとんどだと思うが、こうポップに出来る人も珍しい。
「歌おうと思ったらジェフ・マーティン(Racer X)みたいなメタルっぽいハイトーンは出なくてガッカリしたけど、ポップスやロックなら歌えると思ったんだ。ちょっとジョン・レノンみたいな感じでね(笑)」
みたいな事をインタビューで言ってたのを読んだ記憶があるが、ここまでうまいことやれるってのは本当に凄い。
Mr.Bigを聴けばわかるが元々ポップスもブルースも大好きな人だし、当然といえば当然だが、自分の持ってる武器だけでここまで出来る人はそうはいない。
とはいえ、1st、2ndアルバムは好きな曲もあるがイマイチ、というか印象に残る曲が少なく、いわゆる「歌モノに挑戦したギタリストのソロアルバム」という枠から出ていなかったように感じたのだが、ここに来て大きく飛躍した感がある。
あらゆる種類の音楽が好きで、笑ってしまうほどの引き出しがあるポールだが、その「なんでも巧く出来てる感」の調整の難しさが前のアルバムで出てしまっていたのだと思うが、ここでは全て奇跡的に上手くいっていると思う。
1曲目「俺はお前よりいいコード知ってんぜ!」と歌う1分ちょっとのパンクソング「Better Chords」から5曲目までの、テクニカルになり過ぎないながらもちょっとずつヒネったリフと、ポップなメロディー、そしてさすがのギターソロを兼ね備えた、疾走感のあるポップロックを揃えた前半を一気に聴いてしまうと、次に来るのはシットリとしたSPICE GIRLSのカバー「2 Become 1」、軽いお遊びの楽しそうな雰囲気の「ランセロット・リンク」、もう1曲シットリ目のミッドテンポでコーラスもいい感じの「Rosalinda Told Me」を挟み、ハードなインストの「Let the computer decide」、中国の琴をフィーチャーしたオリエンタルな「Koto Girl」、ちょっとオアシスみたいなスケール感のある「Dreamed Victoria」、オシャレな感じのカッティングのAORっぽい1分半ほどの「Six Billion People」、幼き頃のポールにギターの手ほどきをしたジミーおじさんとのギターバトルを長めに押さえた「The Ballad Of The Last Lions」、そして最後におなじみとなったクラシックのギターアレンジ曲「Whole Lotta Sonata」(お題はモーツァルトのピアノソナタ・第10番・第3楽章)。
今までのキャリアの総括であり、良い曲が揃っている。そして何より吹っ切れた明るさが爽快で、何度も繰り返し聴きたくなるアルバムだ。
アホなジャケットや「ポール・ギルバート」という名前で敬遠せず、ぜひ聴いてみて欲しいアルバムだ。
バックのメンバーも良かったのであろう。特にMike Szuter(B, THE SZUTERS)とJeff Martin (Dr, RACER XではVo) が良かった。演奏やコーラスはもちろん素晴らしいのだが、なんか変なプレイヤーとしてのエゴが出るわけでもなく、お仕事でもなく、いい距離でプレイしている感じがする。楽しい雰囲気はこのメンバーだからこそだろう。
次の4thアルバム「バーニング・オルガン」も同じ路線で好きなのだが、やっぱり曲の出来の良さと雰囲気の良さでこっちが1番かな。最高。
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