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Sylvie Simmons(原著),田村 亜紀(翻訳)「セルジュ・ゲンスブール ジタンのけむり -ねじれた男への鎮魂歌」




ん?これアダルト商品なの?Amazonで見たら警告出て「本›アダルト›小説・サブカルチャー」のカテゴリに入ってるんだけど。普通のアーティストの伝記だったけどなぁ......まぁ流石っすね!ってことで。

イメージといい意味で違うというのはこういう本を読む読む時の醍醐味でもあるのだけど、とてもいい意味で裏切られた一冊。
本自体はゲンスブールの人生を割と淡々と描きながら進む、というか才能のある人で、基本裏方で曲の提供や脚本家、CMプランナーなどで多方面で常に活躍しているのである種安定はしているのだ。基本的には皆が頭に描くあのスタイルで(途中で一度スタイルを変えたが、皆が思い描くのは変えた後のスタイルだろう)ずっと作品を出し続けているのだ。
意外だったのは彼がひどいあがり症で、だからこその飲酒であり、結局ステージに上がることを止めてしまいカムバックまで十数年かかっていた事。そして恋愛面ではプレイボーイではなく誠実だった事、酒とタバコと無精髭のイメージからだらしないように見えて潔癖であった事。
しかし世界的に有名な、ある種アイコニックなアーティストなのに私を含めてぼんやりとしか知らないのは、なにより使用言語がフランス語であったためだろう。英語圏の人達への波及の仕方が鈍く、非英語圏の人間にしたら更にわかりにくいのだが「言葉わかんねぇけどあのクソエロい雰囲気の曲の作者かよ!」とか、自己破壊的というか退廃的でありながら高尚な感じのする雰囲気やパフォーマンスが後のニューヨークパンク勢に人気があったのもわかるし、更にそれはバブル期の日本にさえ繋がっていくのも理解できる。そして映画やCMにも出ているので分かりにくいのだが、先述した通り基本は裏方の人間だということだ。



この本で何より感心したのは、彼のあのスタイルを「『二流の画家になるより一流の作曲家になった方がいい』という考えで選んだ道なのだろう。そして、ポップスやロックのスターにはそういう傾向を持つものが意外と多い」みたいな記述で分析していたことだ。これはすごく納得したな。急になんでこんな事し出したの?ってアーティストは多いですからね。そして、彼がフランスを愛していたのも事実だろうが、それが英語圏を目指さなかった一因だろう。
厭世的というか、そういう自分に対しても自嘲的になって、酒の影響も相まってお札を燃やすパフォーマンスしちゃったりして賛否両論になる感じもすごくわかる。
音楽的にもフレンチポップというのは馬鹿にされるような部分もあるのだが、パンクに接近したり、ジャマイカに行って世界的に有名になる前のスライ&ロビーとアルバムを作っていたりと幅広い。「夢見るフランス人形」と「ジュテームもアノンプリュス」のイメージしか無かった自分はもっと聴いてみようと思いました。
あ、モーツアルトなんかの才能のある芸術家にありがちとも言えるんだけど、タブーに挑戦というより肛門期という感じのアナルカントばりの曲タイトルも意外だったかな。唯一書いた小説もタイトルが「スカトロジー・ダンディスム」だし。

もっと早くこの本を読んでゲンスブールにハマってたら大学の第二外国語のフランス語の授業もっとちゃんと受けてたのにな、とも思うが、アンダーグラウンドな音楽ドップリだった時期だとやっぱり否定したかな。
まぁハイブランドショップの警備で、ゲンズブール気取りのイタいただのヤニ臭い不健康そうなメタボオジさんもいっぱい見たから、あれもどうかと思うしね。

いい本でした。ほぼ知識無くても面白かったですよ。
しかし、まぁ一番は言語の問題だけど、文化が違うな〜って凄く思うね、ヨーロッパは。この人もそういうのの一つの象徴だけど、ホント生活臭はしないというか、それは自分の人生においてのプライオリティが低い感じ。憧れるけどちょっと無理だよなー。

これとかメチャメチャ格好いい。

あ、これアダルトカテゴリだから広告貼れないじゃん。代わりに他の本を貼っときます。

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