2022年04月05日
山川健一「ブルースマンの恋」
ちょっと村上龍の『恋はいつも未知なもの』に印象が近いな、と思ったら、この本の著者である山川健一も一年違いで群像新人文学賞を獲っていた。
村上龍は『映画小説集」の中で「基地の街にいるとブルースが音楽の王様だと素直に思えたが、都会に出るとそう思えなくなる」というような事を書いていた。そして、『恋は〜』の中ではジャズの事を「暖かくいつも変わらず受け入れてくれるもの」として書いている。
2人とも同様にブルースに衝撃を受けているが、良くも悪くも基地の街で黒人兵と色々と共有してきた村上龍と違い、著者は浪人〜大学生時代にレコードを聴いて想像を膨らませながら文学と音楽に揺れる青年という感じだ。この本はただただ好きなブルースに関するエッセイという感じで。女性誌での連載だからかタイトル的にはラブソングにフォーカスしているように見えるが、特にそこに限定しているわけではない、というか「あいつは行っちまった〜」「いい女だった〜」もたいなのはブルースでよく出てくる歌詞なんで、まぁ普通にブルースに関するエッセイ集という感じ。
文庫やKindleでも買えるが、単行本にはなんと本に出てくるミュージシャン達のコンピレーションCDがついていて、これがブルースの入門盤としてめちゃめちゃ良いので見つけられたらそっちを買った方がいいと思う。むしろ本は長いライナーノーツとして考えてもいいかもしれないくらいだから。
得た知識を元に「こうだったんじゃないか、ああだったんじゃないか」と自分の境遇と重ねたりしながら当時の状況やブルースマンの生活を想像していく様は本当にブルースファンという感じで、何でも情報が揃っていて些細な間違いすら瞬時に訂正される今となっては懐かしく感じる文章だ。小説家であり音楽評論家であり自分でもバンドをやってたりする著者が素直に書いているような本。
なんかブルースファンの友達と話しているようで心地よく読めました。
ちょっと前に『27クラブ』の感想で「いいのよ、伝説は伝説で。」って書いたけど、あまりにも情報がガッチガチに揃ってて検証されちゃうとやっぱちょっと息苦しいんだよね。想像する余地が欲しくなる。↓
https://fanblogs.jp/gateofdoom/archive/799/0
しかし女性誌でこんなモロにブルースの連載できたなんていい時代だよなぁ。
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