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ISHIYA「ISHIYA私観 ジャパニーズ・ハードコア30年史」




FORWARD/DEATH SIDEのボーカリストであるISHIYA氏のnoteでの連載の書籍化。『関西ハードコア』の感想の時に書いてたやつですね。なにせ30年史で400ページ超えてますから、辞書くらいある厚さに躊躇して中々手を出せないでいましたが、やっと読めました。
内容はとりあえず最高。著者にしか書き得ないであろう本であることは間違いなく、『関西ハードコア』と並んで貴重な記録であり、今後のパンクスにとっては必読書になると思う。
内容としてはいわゆる歴史を年代順に辿っていくものではなく、共に時代を過ごしたバンドや来日した時に交流を持ったバンドについての話、著者が見たハードコアシーンの移り変わり、著者が活動しているにら子供〜DEATH SIDE〜FORWARD〜DEATH SIDE再結成に至るバンドの歴史、ハードコアが盛んだったり思い出に残っている地域の紹介、海外ツアーを行うようになったバンドの話、東日本大震災とハードコアパンクの関わりなどで構成されている。
やはり歴史に残る素晴らしいハードコアバンドたちの話が読めるのは嬉しいし、なんといってもDEATH SIDEについては当然最も深く語れる創始者なので、その文章が読める本はこれしかない。みなさん気になっているであろうCHELSEA氏との話も勿論たっぷりあります。
局地的で刹那的でありながらいまだに全世界にファンが多くいる日本のハードコアをここまで深く、そして広く書けるのは著者しかいないだろう。



......なのだけど、あくまでISHIYA氏の「私観」で、しかもnoteでのDIY的な連載なので、正直読みにくい部分や首をかしげてしまう部分もあった。『関西ハードコア』の時はロフトブックスからの出版でルーフトップ(編集)という表記があったのだけど今回は無いので、おそらくほぼ編集者の手が入っていないと思う。バンド名のスペルなどの誤記や文章的におかしいところもちょいちょい見受けられるし、構成のせいでただのコラム集のような感じに思えてしまう所もある。この本は著者がnote上で書いていた物の書籍化なのでかなりラフな所はラフで、データ的な所は「覚えていない」「知ってるやつは教えてくれ」的な感じだったりするのでそういう本ではあるのだけど、せっかくこういう本を出すならデータ的な所や本の構成は編集者にまかせれば...とは思ってしまった。DIY、著者のキャラクターといえばそれまでなんだけど。
それに例えば「ブラストビートもデスボイスも日本のハードコアバンドが発祥」のような事を書いているが、正直Lärmは?Siegeは?Repulsionは?と思ってしまった。以前にも書いたが、それらはスピードやアグレッションの要求から同時多発的に起こった事で、正規リリースの前にアンダーグラウンドのテープトレーディングで広まっていたので、どこベースで議論するにもよるし...あくまで「私観」だと言われればそれまでだが、「知り合いの海外のバンドに聞いたところによると〜」みたな感じで書かれた根拠の無い話でしかない。
あとは何度も「日本ハードコア界最重要バンド」と回りくどい書き方をしながら、ハリポタの「名前を呼んではいけないあの人」みたいな扱いをしているバンドがあったり...。想像はつくが、著者は誰でもなくISHIYA氏なのに書けないんだね。

そんなこんなで、間違いなく素晴らしい本だとは思うのですが、ちょこっと引っかかるところも感じてしまいました。
いやでもホント、日本のハードコアについて書くのは大変なんだな...と感じましたね。ISHIYA氏でも書けない事がいっぱいあるんだな...と。そう考えればおそらくこれ以上の本は出ないと思います。
昔仲良くなったブート屋のおっちゃんも「日本のハードコアは怖いんで扱ってないんですよ」って言ってたし、いろんな意味でいまだに幻想が膨らむのは凄いわ。

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