2021年07月18日
フラワーカンパニーズ(著)「消えぞこない メンバーチェンジなし!活動休止なし!ヒット曲なし!のバンドが結成26年で日本武道館ワンマンライブにたどりつく話」
名前は知ってる、あぁそうだ「深夜高速」の!
という事でフラワーカンパニーズのヒストリー本。初の武道館公演に向けて盛り上げるためのリリースのひとつだったようだ。
「メンバーチェンジなし!活動休止なし!ヒット曲なし!のバンドが結成26年で日本武道館ワンマンライブにたどりつく話」というタイトルの文言そのままの本です。全員へのインタビューで結成からの事を順に聞いていく感じの構成ですね。
さて、フラカン。一応知っているは知っているし、評価が高いのも知ってる。「深夜高速」は名曲だ。でもそれしか知らない。
難しいのは、ある種、硬派で飾らないロックバンドというのは一番どうとでもなるわけで、それこそ90年代ならHey! Hey! Hey!だのうたばんだのに出て、面白くいじるポイントを見つけられたり、偶然でもトークが盛り上がったりすれば何かしらのキャラクターがついてポッと露出が増えてそこそこ売れたりした時代だった。
コミカルにも、イキった感じでも、本格派でも、悪く言えばテレビサイズに切り取られていた時代。
ミッシェルやブランキーさえ普通にゴールデンの歌番組に出ていたし、それこそロマンポルシェ。なんかも出ていた。エレカシは素晴らしいバンドだが、テレビが無ければ初期のアルバムからあの売れ方は想像できなかっただろう。
そんな中で売れるタイミングを逃し続け、一般的なヒット曲も無く活動を続けているこのバンドは稀有な存在だ。いわゆるアンダーグラウンドやサブカル的なバンドでは無い、むしろバンドブーム的なマスに開かれたロックバンドである彼らが「他にやれる事もないし」とばかりにただ愚直に、「DIY」などという言葉をご大層に出したりもせず淡々と自分でできることをこなしている姿は、とても清々しく、ある種の理想でもある。
もちろん、この生活が保障されたものでは無く、「晴天雨読」のようなのんびりした生活でも無いのはわかっている。
ご多分に漏れず「深夜高速」くらいしかちゃんと聞いたことが無かったのだが、この本の中に出てくる他の曲の歌詞もやはり同じ様なテーマで、葛藤や焦りなどを振り払おうと懸命な姿が描かれたものが多い。
こんなにもこの状態が長いているというのも珍しい。やはりテキトウなところで降りるというのが普通の売れないバンドの行く末なわけで。ヒット曲が無いままバンド一本で食い続けるというのは凄いとしか言いようがない。ある種青春ともいえる異様に長いモラトリアムを生きながら、その中でもがき続けているようだ。
前書き代わりの元ロッキング・オン編集者の兵庫慎司の「まともに考えたらソールドアウトなんか無理で損するだけだしあんまり意味ないから武道館なんかやるべきじゃない(要約)」という文章からはじまるこの本だが、検索して当時の記事を読む限り、うまくいったようだ。
まぁその後バンドがブレイクするようなことも今に至るまでないので、状況は以前変わっていない、むしろコロナでライブができなくなったのは致命的だろうと思うが、「青春ごっこ」を続ける彼らは、そこから降りた人間からするとひたすら眩しい。
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