2018年01月10日
西寺郷太 「噂のメロディ・メイカー」
すっかり80年代音楽の識者として各メディアで引っ張りだこの西寺郷太初の小説。
本書のテーマはワム!。
知らない人はあまりいないであろう「ラストクリスマス」のWham!ですね。ジョージ・マイケルはソロでも大ヒットしました。
帯にでっかく「ワム!のゴーストライターは日本人だった!?」とあります。キャッチーですな。家に来た職場の同僚(30代後半)も「この本なんですか?」と反応してました。
はい、いつもの細かくデータを調べ上げ、本人にも取材した経験から導き出す手法は同じものの、本作は「ノンフィクション風小説」になっている。
Amazonで本は「文芸作品」kindleでは「ノンフィクション」になっちゃってるけど...。
地元でのイベントにDJとして出演した時に聞いた与太話からはじまり、しかしそれが偶然、自分が以前から疑問を感じていた部分と符合してしまい、それについて書く機会を得た事でさらに調べ、人に会いに行く。
東京、岡山からサンタモニカまで移動しながら謎を解明していく。
ちょっとロードムービーっぽかったり、ミステリー小説っぽかったりね、ちゃんとノンフィクションじゃなくて小説と考えて書いているので、ワム!のファンではない私も読みやすかった。
帯を読んで気になる、少し前にも話題になったゴーストライターの事だけでなく、いろんな人に会う中で、若い頃にバンドをやってた人たちのその後の生活や、バンドの1人だけスカウトされるという事で起こる葛藤や軋轢なんかも描かれていて、その部分も興味深く読めた。
メルマガ連載という事でコラムっぽい感じも受けたが、思いのほか小説としてちゃんと読めたので、ビックリ、というか凄いな、と。
もちろん、データ的なことも、ワム!への深い愛と深い考察によって書かれた部分も大いに楽しめ、読みながらyoutubeで聴いたりしてしまう部分も今までの著作と同じ楽しみも出来た。
オチというか結末は、まぁ「だろうね」「こうなるよね」という感じでスッキリはしなかったものの、「ノンフィクション風小説」だからね。こんな感じでしょう。
今までの著作と同様やはり面白かったですし、自分の事や同世代のバンドマンとの交友の中での事がイロイロ盛り込んでる分、読み物としては単純に一番面白かったです。一気に読んじゃったなぁ。
当然、小説家ではないので「小説」の部分はそこまで上手だとは思えないけど、そこをことさら求めて読む人もいないだろうし、かなり力作だし秀作だと思うなぁ。
ちょうど読んでたのは年末で、いい感じの年の暮れでした。
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