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Ihsahn「Arktis.(遥かなる北極点へ)」

元EMPERORというのはいい加減いいんだろうか?Ihsahnのソロ6thアルバム。
エンペラーは大ファンなのだが、イーサーンのソロはチラッと何曲か聴いただけだったので、ちゃんとアルバムを聴くのは初めて。
一聴して音が明らかに丸く、曲調も爽やかとまでいえてしまえる部分さえあるのにビックリ。
正統派のメタルとプログレ趣味に、多弦ギターのチューンダウンされ、刺々しさの無いサウンドプロダクションも加わり、とても聴きやすい。ボーカルもクリーントーンが多く、エクストリームメタルという範疇からは外れてきている感じ。

で、内容がどうかというと、私的にはそれ程だったんだなぁ...。
なんというか、こういうと語弊があるんだろうけどなんか若々しいというか、まだ照準が定まってない頃のデモテープみたいですらある。多岐に渡る音楽趣味を全部出そうとしているところが微笑ましいとさえ思ってしまう。
とはいえ、70年代ロック〜ハードロック/メタルやプログレ、フュージョン、テクノ、アンビエント、フリージャズ、ノイズなどの趣味は意外と筋が通ったもので、意外性は実はさほど無い。
よく使われる「アーティストとしての成長」みたいにはあまり思えなかったんだよね。EMPERORが最初から凄すぎたんだけどね。最初のレコード16歳の時だもん。

ソロプロジェクトっぽいな、と思うのはソロプロジェクトだから当然なんだけど、本当にそんな感じ。
バンドと別で好きにやってます、というならわかるんだけど、バンド解散後のソロ活動ももう10年以上やってて、6作目にしてはちょっと頂けない。
比較するとしたらデヴィン・ダウンゼンドになるかな?
でもあれ程はぶっ飛んでは無いんだよな。そこはやっぱテクニックや音楽知識の差かもしれないし、変人のデヴィンに比べて、まとも過ぎるのかもしれない。
基本はやっぱリフ、繰り返しなんだけど、そこから離れたい、アヴァンギャルドに行きたい、又はクリーンボイスも大胆に導入してじっくり聴かせられるくらい音楽的にしたい、ってのが両面出てて、両方そこまでかなぁ...っていう。

「あのイーサーンが明るく疾走感のあるフレーズを!?」
とか
「あのイーサーンがこんなLAメタルみたいなリフを!?」
とかを聴き進めながら驚いたり楽しんだりできるくらいにはファンなので(EMPERORの、ではあるけど)最後まで面白く聴けたんだけど、この作品自体がどうかと聴かれれば、とりたてて褒める所はないと思えてしまう。
勿論クオリティは高い、エンペラーらしさが垣間見える曲もある、新味もある、だけど衝撃は無いんだよなぁ。

「あのイーサーンのソロ」と考えると難解なモノを想像してしまうが、むしろとてもわかりやすいと言えると思う。
いわゆる「〜っぽいフレーズ」というのを排除して徹底的にEMPERORたらしめていた時代より、自身の影響をオープンに出しているので、イーサーンのファンには嬉しい驚きはあると思う。

ただ、聴きやすく、ポップになったとも言えるのに、ファン以外に受けるとは思えないんだよなぁ...。

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