2012年08月21日
岡本太郎 「今日の芸術」
芸術家、岡本太郎の美術評論書。1954年に光文社より刊行されたものを
文庫で復刊したもの。
50年以上前に出版されたものなのか、と思うと唖然とする。
全く古びていない、今もなお新鮮で驚いてしまう。
「中学1年生でも理解できる芸術の啓蒙書を書いてくれ」と依頼されて書いたものらしいが、そのためとても読みやすく、まるで軽いエッセイ集でも読むかのように読めてしまいました。
岡本太郎は、私が10歳の時に亡くなってしまっているので、テレビや雑誌で見る機会は全然無く、岡本太郎のイメージといえば、太陽の塔を作った人で、「爆発だー!」っていうなんというか一発ギャグをする人的な・・・「芸術家」というもののイメージが今やだいぶ安くなってるし、有名すぎてあまり知らなくて「なんか凄いらしい」というくらいの感じでした。
むしろおもしろ偉人伝みたいなのを読んで、岡本かの子(岡本太郎の母、作家)のムチャクチャさに驚いて、岡本かの子の本を読む方が先でした。
最近、興味を持って岡本太郎を調べていくと、アヴァンギャルドなイメージより、むしろ真っ当すぎるほど真っ当な芸術家だったんだなぁ、とイメージとのギャップがあり、作品も好きだったので、それなら本を読んでみようと数冊買ったうちの1冊。
中学生でも理解できるようにとのことなので難しくはないですが、キチンと美術史もざっくり学べます。こう言うと堅苦しような感じがしますが、具体例を上げながら飄々と口語に近い文体なので、ほとんど実際の絵の写真などが挿まれていなくても面白く読めてしまいます。ソルボンヌ大学で哲学・心理学・民族学などを学んだだけあって、引用元も豊富で、イメージと違いインテリなんだなぁと思わされます。
そして岡本太郎は繰り返しこう書いています。
「同じ事を繰り返してはならない」
「常に気持ちは新鮮で若くいなければならない」
「今日の芸術は、うまくあってはならない、きれいであってはならない、ここちよくあってはならない」
この本は、美術に限らず、文章を書く人も、音楽をやる人も、みんな1度は読んでみたほうがいい素晴らしい本だと思います。
しかし、2、30年前の本ならまだしも、半世紀以上前の本か・・・本当に天才だったんだなぁ。
新品価格 |