令和3年度 2級建築施工管理技術検定(後期)
第一次検定問題 [ No.01 ] 〜[ No.14 ] 解答・解説
令和3年11月14日(日)※問題番号[ No.1 ]〜[ No.14 ]までの
14問題のうちから、9問題を選択し、解答してください。
[ No.1 ]
通風及び換気に関する記述として、
最も不適当なものはどれか。
1.風圧力による自然換気では、換気量は開口部面積と風速に比例する。
2.室内外の温度差による自然換気では、給気口と排気口の高低差が大きいほど換気量は大きくなる。
3.室内における必要換気量は、在室人数によらず一定になる。
4.室内を風が通り抜けることを通風といい、もっぱら夏季の防暑対策として利用される。
答え
3
[ 解答解説 ]
1.◯
風圧力による自然換気では、風による換気を期待できる開口部が風圧を受け、それによって換気される。このため、開口面積が大きいほど、また、開口部に対する風が強いほど、換気量は大きくなる。
2.◯
室内外の温度差による換気を温度差換気という。室内空気が屋内空気より高温(室内空気密度が屋外空気密度よりも小さい)の場合は、空気は下方から室内に流入し、反対に、室内空気が屋外空気より低温(室内空気密度が屋外空気密度よりも大きい)の場合は、空気は上方から室内に流入する。換気を促進させるためには、給気口と排気口の高低差を大きくする。
3.×
室内における必要換気量は、在室者の人数によりその値が変動する。
4.◯
室内を風が通り抜けることを通風という。通風は、主に夏季の防暑対策に利用される。
[ No.2 ]
日照及び日射に関する記述として、
最も不適当なものはどれか。
1.日照時間は、日の出から日没までの時間をいう。
2.太陽放射の光としての効果を重視したものを日照といい、熱的効果を重視したものを日射という。
3.1年を通して終日日影となる部分を、永久日影という。
4.天空日射量とは、日射が大気中で散乱した後、地表に到達する日射量をいう。
答え
1
[ 解答解説 ]
1.×
日の出から日没までの時間は可照時間という。日照時間とは、実際に日照のあった時間、すなわち可照時間のうち晴天の時間をいう。
2.◯
日照とは、太陽が直接地表面を照射した状態をいい、設問のとおり、太陽放射の光としての効果を重視している。また、日射とは、太陽から受ける熱の強さを表し、熱的効果を重視している。
3.◯
建物などにより1日中照射がない場所を終日日影といい、1年を通して終日日影となる部分を永久日影という。日照に最も有利な夏至でも終日日影となる場所は永久日影である。
4.◯
日射とは、太陽から受ける熱の強さを表すもので、日射量は、単位時間に単位面積当たりに受ける熱量である。日射量は、直達日射量(大気を透過して直接地表へ到達した日射量)と天空日射量(大気中で散乱した後、地表へ到達した日射量)に大別される。
[ No.3 ]
採光及び照明に関する記述として、
最も不適当なものはどれか。
1.室内のある点における昼光率は、時刻や天候によって変化する。
2.昼光率は、室内表面の反射の影響を受ける。
3.全天空照度は、直射日光による照度を含まない。
4.モデリングは、光の強さや方向性、拡散性などを視対象の立体感や質感の見え方によって評価する方法である。
答え
1
[ 解答解説 ]
1.×
時刻や天候によって屋外の全天空照度が変化しても、それに比例して室内の測定点の照度も変化するので、昼光率は変化しない。
2.◯
昼光率は、通常百分率(%)で表され、次の式で求めることができる。
昼光率(D)=ある点の面照度(E)/野外水平面照度(E0) × 100(%)
ある点の照度は、室内表面の仕上げ材の反射等により変わるため、昼光率はその影響を受ける。
3.◯
全天空照度とは、全天空が望める場所で、直射日光の照度を除いた水平面照度のことをいう。
4.◯
光の強さや方向性、拡散性などを、立体の対象物の立体感や質感の見え方によって評価する方法をモデリングという。人の顔などは当たる光の方向性、拡散性によって印象が大きく異なるため、モデリングによって適切な照明で表現することが重視されてきている。
[ No.4 ]
鉄筋コンクリート造の構造形式に関する一般的な記述として、
最も不適当なものはどれか。
1.シェル構造は、薄く湾曲した版を用いた構造で、大きな空間をつくることができる。
2.壁式鉄筋コンクリート構造は、室内に梁形や柱形が突き出ないため、室内空間を有効に利用できる。
3.フラットスラブ構造は、鉄筋コンクリートの腰壁が梁を兼ねる構造で、室内空間を有効に利用できる。
4.ラーメン構造は、柱と梁の接合部を剛接合とした骨組で、自由度の高い空間をつくることができる。
答え
3
[ 解答解説 ]
1.◯
薄く湾曲した版を用いた構造をシェル構造といい、大きな空間をつくることができる。ドームの屋根などに用いられる。
2.◯
柱や梁を用いず、壁とスラブのみつくられた構造を壁式鉄筋コンクリート構造といい、梁形や柱形が室内にないため、室内空間を有効に利用できる。
3.×
フラットスラブ構造は、柱とスラブを直結して梁をなくした構造で、室内空間を有効に利用できる。
4.◯
柱と梁の接合部を剛接合とした構造をラーメン構造といい、設計において自由度の高い空間をつくることができる。
[ No.5 ]
鉄骨構造の一般的な特徴に関する記述として、
最も不適当なものはどれか。
1.トラス構造は、比較的細い部材による三角形を組み合わせて構成し、大きな空間をつくることができる。
2.H形鋼の大梁に架けられる小梁には、大梁の横座屈を拘束する働きがある。
3.柱脚の形式には、露出形式、根巻き形式、埋込み形式がある。
4.鋼材は不燃材料であるため、骨組は十分な耐火性能を有する。
答え
4
[ 解答解説 ]
1.◯
トラス構造は、三角形を組み合わせた構成の構造形式で、比較的細い部材で大きな空間をつくることができるという特徴を有している。
2.◯
小梁は、大梁の座屈防止のため、また、スラブの荷重を分散して受けるために用いられる。
3.◯
柱脚の形式には、コンクリートに埋め込まない「露出形式」、根巻きコンクリートを建て込む「根巻き形式」、基礎コンクリートに埋め込む「埋込み形式」がある。
4.×
鋼材は不燃材料ではあるが、高温になると強度が低下し、骨組は十分な耐火性能を有していない。したがって、必要な耐火時間に応じた耐火被覆をする必要がある。
[ No.6 ]
鉄骨構造に関する記述として、
最も不適当なものはどれか。
1.ダイアフラムは、梁から柱へ応力を伝達するため、仕口部に設ける。
2.エンドタブは、溶接時に溶接線の始終端に取り付けられる。
3.丸鋼を用いる筋かいは、主に引張力に働く。
4.スチフナーは、ボルト接合の継手を構成するために、母材に添える。
答え
4
[ 解答解説 ]
1.◯
ダイアフラムとは、鉄骨構造の梁から柱へ応力を伝達するため、仕口部(部材の接合部分)に設ける補強材である。
2.◯
エンドタブとは、溶接時に溶接線の始端部、終端部に取り付けられる補助部材をいう。
3.◯
筋かいとは、柱と梁により構成される方形の構面に対角線状に入れる補強材のことをいう。鋼材は引張力に対抗する部材であり、丸鋼を用いる筋かいは、主に引張力に働く部材である。
4.×
設問は、スプライスプレートの説明である。スチフナーは、梁のウェブの座屈防止のために設けられる補強材のことである。
[ No.7 ]
基礎杭に関する記述として、
最も不適当なものはどれか。
1.既製コンクリート杭の埋込み工法のひとつで、杭の中空部を掘削しながら杭を圧入する中掘工法は、比較的杭径の大きなものの施工に適している。
2.拡径断面を有する遠心力高強度プレストレストコンクリート杭(ST杭)は、拡径部を杭の先端に使用する場合、大きな支持力を得ることができる。
3.摩擦杭は、硬い地層に杭先端を貫入させ、主にその杭の先端抵抗力で建物を支持する。
4.場所打ちコンクリート杭は、地盤を削孔し、その中に鉄筋かごを挿入した後、コンクリートを打ち込んで造る。
答え
3
[ 解答解説 ]
1.◯
中掘工法は、先端が開放されている杭の中空部にオーガーを挿入し、地盤の掘削を行い、杭を圧入する工法である。比較的杭径の大きなものの施工に適している。
2.◯
プレストレストコンクリート杭(ST杭)は、杭の先端支持力をより大きく確保するために、先端部を太くした既製コンクリート杭で、大きな支持力を得ることが可能である。
3.×
杭の種類には、支持杭と摩擦杭がある。
支持杭は、軟弱地盤を貫いて硬い層まで到達させ、主としてその先端抵抗力で支持させる。摩擦杭は、大部分を杭周面の摩擦力によって支持させる。
4.◯
場所打ちコンクリート杭は、あらかじめ地盤中に削孔した抗内に、鉄筋かごを挿入した後、コンクリートを打設することにより、現場において造成する杭である。
[ No.8 ]
建築物の構造設計における荷重及び外力に関する記述として、
最も不適当なものはどれか。
1.床の構造計算をする場合と大梁の構造計算をする場合では、異なる単位床面積当たりの積載荷重を用いることができる。
2.屋根面における積雪量が不均等となるおそれのある場合、その影響を考慮して積雪荷重を計算する。
3.風圧力は、その地方における過去の台風の記録に基づいて定められた風速に、風力係数のみを乗じて計算する。
4.地上階における地震力は、算定しようとする階の支える荷重に、その階の地震層せん断力係数を乗じて計算する。
答え
3
[ 解答解説 ]
1.◯
建築基準法施行令第85条第1項に「建築物の各部の積載荷重は、当該建築物の実況に応じて計算しなければならない。ただし、次の表に掲げる室の積載荷重については、それぞれ同表の(い)、(ろ)又は(は)の欄に定める数値に床面積を乗じて計算することができる。」と規定されている。(い)は床の構造計算をする場合、(ろ)は大梁、柱又は基礎の構造計算をする場合、(は)は地震力を計算する場合である。したがって、床の構造計算をする場合と大梁の構造計算をする場合では、異なる単位床面積当たりの積載荷重を用いることができる。
2.◯
積雪荷重は、屋根面における積雪量が不均等となるおそれのある場合には、その影響を考慮して計算する必要がある。
3.×
建築基準法施行令第87条第1項に「風圧力は、速度圧に風力係数を乗じて計算しなければならない。」と規定されている。
4.◯
建築基準法施行令第88条第1項に「建築物の地上部分の地震力については、当該建築物の各部分の高さに応じ、当該高さの部分が支える部分に作用する全体の地震力として計算するものとし、その数値は、当該部分の固定荷重と積載荷重との和(第86条第2項ただし書きの規定により特定行政庁が指定する多雪区域においては、更に積雪荷重を加えるものとする。)に当該高さにおける地震層せん断力係数を乗じて計算しなければならない。」と規定されている。したがって、地上階における地震力は、算定しようとする階の支える荷重に、その階の地震層せん断力係数を乗じて計算する。
[ No.9 ]
図に示す単純梁ABに等変分布荷重が作用するとき、支点Aの垂直反力V
A及び支点Bの垂直反力V
Bの大きさの比率として、
正しいものはどれか。
1.V
A:V
B=1:1
2.V
A:V
B=2:1
3.V
A:V
B=3:1
4.V
A:V
B=4:1
答え
2
[ 解答解説 ]
図-1のように、等変分布荷重、梁の長さを仮定する。
図-1
仮定した等変分布荷重を集中荷重に置き換えると図-2のようになる。
(三角形の重心の位置)
図-2
ΣV = 0 より、
VA – 9 + VB = 0
VA + VB = 9 ・・・@
支点Aは回転支点なので、モーメントMAは発生しない。
よって、
MA = 9 × 1 − VB × 3 = 0
3VB = 9
VB = 3 kN(上向き)
@に代入して、
VA + 3 = 9
VA = 6 kN(上向き)
∴ VA : VB = 6:3 = 2;1
[ No.10 ]
図に示す単純梁ABのBC間に等分布荷重wが作用したときの曲げモーメント図として、
正しいものはどれか。ただし、曲げモーメントは、材の引張側に描くものとする。
答え
2
[ 解答解説 ]
集中荷重での曲げモーメント図は「力×距離」より、比例(直線)となる。
等分布荷重での曲げモーメント図は、反力の「力 × 距離 」– 荷重の「力 × 距離」より、2次曲線となる。
よって、A〜C区間は直線、C〜B区間は曲線となり、肢2又は肢4になる。
また、支点Aは回転支点であるから、モーメントは発生しないため、肢4は不適切である。
∴、正解は 2となる。
[ No.11 ]
構造用鋼材に関する記述として、
最も不適当なものはどれか。
1.建築構造用圧延鋼材SN400の引張強さの下限値は、400N/mm
2である。
2.引張強さは250〜300℃で最大となり、それ以上の高温になると急激に低下する。
3.線膨張係数は、約1.2 × 10
-5(1/℃)である。
4.ヤング係数は、約3.14 × 10
5 N/mm
2である。
答え
4
[ 解答解説 ]
1.◯
鋼材の材料記号において、数字は、保証される引張強さの下限値であることがJISで定められている。
2.◯
引張強さとは、物体に張力が加えられるとき、破断に至るまでの最大の応力をいう。鋼の引張強さは温度によって変化し、250〜300℃程度で最大となり、それ以上の高温になると急激に低下する。
3.◯
線膨張係数は、1 × 10-5(1/℃)程度である。
4.×
鋼材のヤング係数は、約2.05 × 105 N/mm2で、常温では鋼材の強度にかかわらずほぼ一定である。
[ No.12 ]
木材の樹種に関する一般的な圧縮強度の比較として、
適当なものはどれか。
1.ス ギ < ヒノキ < ケヤキ
2.ヒノキ < ス ギ < ケヤキ
3.ケヤキ < ス ギ < ヒノキ
4.ヒノキ < ケヤキ < ス ギ
答え
1
[ 解答解説 ]
設問の樹種の一般的な圧縮強度(kgf/cm2)は、
スギ 350
ヒノキ 400
ケヤキ 500
である。
よって、選択肢 1が適当である。
[ No.13 ]
日本産業規格(JIS)に規定する建具の性能試験方法に関する記述として、
不適当なものはどれか。
1.耐風圧性の性能試験では、変位及びたわみを測定する。
2.遮音性の性能試験では、音響透過損失を測定する。
3.結露防止性の性能試験では、熱貫流率を測定する。
4.遮熱性の性能試験では、日射熱取得率を測定する。
答え
3
[ 解答解説 ]
1.◯
JIS.建具の性能試験方法通則における、耐風圧性能試験の測定項目は、変位・たわみである。
2.◯
JIS.建具の性能試験方法通則における、遮音性試験の測定項目は、音響透過損失である。
3.×
JIS.建具の性能試験方法通則における、結露防止性能試験の測定項目は温度低下率である。熱貫流率は断熱性試験の測定項目である。
4.◯
JIS.建具の性能試験方法通則における、遮熱性試験の測定項目は、日射熱取得率である。
[ No.14 ]
防水材料に関する記述として、
最も不適当なものはどれか。
1.金属系シート防水のステンレスシート又はチタンシートは、連続溶接することで防水層を形成する。
2.ウレタンゴム系の塗膜防水材は、塗り重ねることで連続的な膜を形成する。
3.アスファルトプライマーは、下地と防水層の接着性を向上させるために用いる。
4.防水モルタルに混入した防水剤は、塗り付ける下地に浸透して防水効果を高めるために用いる。
答え
4
[ 解答解説 ]
1.◯
ステンレスシート又はチタンシートは、連続溶接してステンレスシート防水層を形成するために用いられる防水材料である。
2.◯
塗膜防水とは、塗膜防水材を塗り重ねて防水層となる連続的な膜を形成するものである。塗膜防水材には、ウレタンゴム系やゴムアスファルト系などがある。
3.◯
アスファルトプライマーは、下地と防水層の接着性を向上させるために用いられる。
4.×
塗り付ける下地に浸透して防水効果を高めるために用いるものは、プライマーである。防水モルタルに混入した防水剤は、モルタルの防水性能を高めるために用いられる。