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2020年12月24日

自己愛性人格障害とミソジニー

「非モテ男性」を救うのは誰か 「本来女性によってケアされるべきなのに、されない」」という記事を読みました。

そこで紹介されていたミソジニーに関して書かれた本、『ひれふせ女たち ミソジニーの論理』という本が気になったので読んでみました。

ひれふせ、女たち:ミソジニーの論理

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この本では、ミソジニー(女性嫌悪)を「家父長制的規範と期待に対する違反」であると位置づけ、以下のように説明しています。

女性に対する敵意や攻撃といった反応が自然に引き起こされるのは、社会的役割を取り仕切る規範や期待に、女性が目に見えるようなかたちで抵抗したり、違反したりするときである。
注意深く、愛らしいしもべという役割から離脱することほど、女性にたいする敵対的反応にとっての自然な基礎がありうるだろうか。そんなことをすれば、ふだんジェンダーにもとづくこのサービスの恩恵に浴している典型的な層(つまり、男性)の中には「剥奪」されたとか「無視」されたと感じる向きもあらわれるだろうと、容易に想像できる。実際、役割離脱した女性とサービスを期待する男性というこの取り合わせは、感情的で、とんでもない惨事をもたらしかねない。


そして、図式的なモデルとして以下のようなシチュエーションを挙げています。

あるレストランに一人の男性客が食事に訪れたとする。彼は、「お客様は神様」の言葉どおり、うやうやしく対応されること、そして、笑顔と細心の注意をもって注文した料理が提供されることを期待している。彼は食事が目の前に運ばれてくることに加えて自分は特別な存在であり、それに応じた気配りを受けていると感じられることを期待している。ところが、その客は落胆を経験することになる。なぜか彼の元にウェイトレスがやってこない。他のテーブルでは注文を聞いたり給仕したりしているのに。さもなければ、こう想像してみてほしい。ウェイトレスの女性はけだるそうに店内を回っているか、それとも自分のことにかまけて、彼の存在を無視している様である。もっとひどいケースになると、仰天すべき役割の逆転だが、どうやらウェイトレスの方が、客である彼からのサービス提供を期待しるようなのである。
いずれにせよ、そうした状況で彼がふだん慣れ親しんでいるような振る舞いを彼女は示してくれない。この客が混乱し、その後、立腹するさまを想像するのはたやすい。スプーンでテーブルを叩いて音を立てたり、堪忍袋の緒を切らして癇癪を起すといった姿を思い描くのもたやすい。


そして、客である男性が受け取るサービス、ウェイトレスである女性が提供するサービスには以下のようなものがあるとしています。

彼女が与えるべきもの(女性にコード化された財とサービス)
注意、愛情、称賛、同情、セックス、子ども(つまりは、人付き合い、家事、生殖、そして感情にかんする労働)。加えて、安息所、養育、安全、安心、快適などの混合的財。

彼の取り分(男性にコード化された特典と特権)
権力、威信、公的認知、位階、名声、名誉、「顔」、尊敬、金銭、およびその他の形式の富、階層的地位、上方への可動性、等級の高い女性の忠誠、愛、献身などを有することで付与されることになる地位


上記により、ミソジニー事例のほとんどは、女性に対する2つの相互補完的な社会規範の元に理解することが可能であるとしています。

(1)彼女には、女性にコード化されたサービスを、誰かにたいして、できれば、(人種差別主義的、階級差別主義的そして異性愛規範的な価値観に照らした)社会的地位において彼女と同等、もしくは上位を占める一男性にたいして、少なくとも彼がそうした財やサービスを彼女から受けとることを望むかぎり、与えるという義務がある。

(2)彼女は、彼がそれらを受け取ることと保持することを欲するか、または切望する限り、少なくとも、優位を占める男性から(そして、おそらくはその他の者からも)男性にコード化された財をもつこと、および取ることを禁止されている。


なるほどね〜、と思いました。

そして、この本ではミソジニストであることと自己愛的または妄想的であることは矛盾していない、としています。

ミソジニーはまさしくその本質からして自己愛的で妄想的だからである。それは非個人的な失望を、敵意のこもった怒りへと、もしくは社会学者マイケル・キンメルが呼ぶところの、「傷つけられた権利意識」へと転じる。そして、ミソジニーはまったく見知らぬ女性と当該男性との関係を、想像の上で親密なものへと変容する。


私がモラハラを受けたクソバカキモヘドロクズカス男も相当な男尊女卑思考の持ち主でしたが、自己愛が強いと男尊女卑に限らず、訳の分からない特権意識を持ちやすいんだろうなと思います。
(自己愛性人格障害ってそもそも自分が特別だと思い込まなければ生きていけない障害ですからね。)



ところで。

今回読んだこの『ひれふせ女たち ミソジニーの論理』という本ですが、哲学者の方が書かれた本というのが理由なのかは分かりませんが、すさまじく読みにくかったです。

3500円もしましたが、「あ、全部読めないかも…」と絶望を感じました。

でも1週間くらいかけて次第に文章に慣れていき、むしろ他の読みやすい文章が物足りなくなるくらい私も進化しました。

この本のすべてを理解できたのかはよく分かりませんが、アメリカの人種差別などについても住んでいる人目線で書かれており、以前よりBLM問題もその問題の根深さが理解できた気がします。

読み応えたっぷりの本ですので、年末年始休暇の読書リストの一冊にしてみてはいかがでしょうか。






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この記事へのコメント
Pさん、コメントありがとうございます。

自己愛が強い人は、価値観が「他人より優れているか」になりがちですよね。

ルッキズム、私は今までそんなに気にしていなかったのですが、世の中には溢れていますよね。

容姿の良い人が就職に有利だったり。

容姿が良い人の方が出世しやすかったり。

容姿の良い人の方が言動が信用されやすかったり。

しかも、脳科学的にも「美人を見ると脳の報酬系が活性化し、ブサイクを見ると罰を与えられたときと同じ脳部位が活動する」なんてことが認められているそうです。

でも、今まで人間は色々な本能を理性で制御してきました。

例えば、脳内に湧き上がる性欲を制御することで性犯罪を抑える事が出来ています。

食欲を制御することで無銭飲食や自分自身の肥満なんかを抑える事が出来ています。

また、セクハラやパワハラという言葉を作ることで、被害者の理不尽な退職やメンタル不調などを防ぐことが出来ています。

(完璧ではないですが、そういう言葉がなかったころに比べれば大分マシです。)

ルッキズムも、広く多くの人が知るところになれば、自分自身が持っている「外見による差別感情」を自覚し、理性によりある程度コントロールすることが可能になるんじゃないかと思います。
Posted by ばんまつり at 2021年01月17日 08:27
差別主義者ってほぼ自己愛でしょうね。自分以外の価値観を認めず叩きまくります。
男は記事の通り男尊女卑っぽいのが多かったし、女は恋愛脳男至上主義で男に媚びるタイプが多い印象です。ルッキズム、いかに男にモテるか、自分が捕まえた男のステータスなどよる男基準のマウンティング見下し、自慢がすごい。ブログとかインスタにもよくいます。女の価値は男で決まるという歪んだ価値観を持っていて独身を見下しまくってるタイプです。これも男尊女卑の一種ですね。


Posted by P at 2021年01月16日 19:07
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